彼女は静かに空を見上げた。雲ひとつない青空が広がっている。いつもと変わらない、冷たい表情のままだが、その目にほんのわずかな揺らぎがあった。
「呆れた。あなたの役目でしょう?」
声が聞こえた気がした。ただ、無言のまま歩き出す。
彼女の目がそれを語っていた。
責務──それがすべてだった。作戦に私情を持ち込むことなど許されない。それは彼女が最初から理解していたことだ。
けれど、今日の青空は、どこか違って見えた。
あの日、幼かった彼女が手を伸ばして掴みたかったもの。
それが眼の前にあるのだから。
「戻れるなら、戻りたい?」
突然の問いに、彼女は一瞬だけ足を止めた。
しかし、返事はしない。足元に影を落とし、再び歩き出す。
プロブレムは、今日ほどモノの背中が大きく見えたことはなかった。
──『DIVE-A-LIVE』より抜粋