そう言って、スリーは運命を振り返った。
* * *
人の死も積み上がった屍も、とうに見慣れていた。
初めて人を撃った時は、覚えていないが、
きっと気分の良いものではなかったと思う。
それもいつからか感じなくなって、積み上がっていく敵の屍にも、
あるいは味方の屍にも、何も思わなくなっていた。
いつしか命が消えるその様を、ただの事象だと、ただの日常だと、
当たり前のことだと、思い込むようになっていた。
『──死にたいのか?』
『──……死にたいわけでは、ない、けれど』
スリーはかつてのゼロとの問答を思い出す。
死にたいわけではなかった。
けれど、別に死にたくないとも思っていなかった。
味方に死んでほしいと思っていたわけではないが、
死なないでほしいと思っていたわけでもなかった。
そう言いながら数多の屍を踏みつけて戦ってきた。
さっきまで動いていた人間を、
同じ友軍のパッチを付けた人間を、
正義を熱く語っていた青臭い人間を、
楽しそうに家族の話をしていた人間を、踏みつけて戦ってきた。
そうしなければ生きていけないのならば、
それが当然のことであると。
その異常さに気づくこともないまま、スリーは化け物になった。
思えばそれは必然であったのだろう。
とうに、彼は人ではなかったのだから。
* * *
「無事で何よりだ、運命」
「全然無事ではないけどね」
スリーの言葉に、運命はやれやれといった様子で返す。
「スリーもゼロも、一歩間違えば危なかったんだから」
「それをカバーするのが運命の仕事だ」
手厳しいね、と笑った運命に、
ゼロは「信頼だよ」と笑って背を向ける。
とはいえ、オッターに限らず、
GARDENランヴィリズマの騎士は皆不老不死だ。
いってしまえば化け物と遜色ない。
大抵の怪我は問題ないし、
失敗しても人類史が滅ばない限り死ぬことはない。
『──……身体の心配をしているんじゃない、
心の心配をしているんだよ』
それでも、自分たちを気遣う運命の言葉が、
スリーにはなぜだか特別に暖かく感じたのだ。
見つめられて首をかしげる運命を見て、
スリーは何も言わず、穏やかに微笑んだ。
ふと、前を歩いていたゼロが足を止める。
「何か用事でもあったか?」
「……いや、なんでもない。
すまない、待たせたな、ゼロ」
「構わないさ、思い耽る時間を無駄だとは思わん」
ゼロは満足気に踵を返し、スリーもそれに続いて歩き出した。