桃花台新交通

Last-modified: 2023-03-02 (木) 14:28:36

桃花台新交通とはかつて愛知県に路線を置いていた鉄道会社である

概要

  • 小牧市中心部と桃花台ニュータウンを結ぶ新交通システムとして1991年に開業
  • 桃花台東駅と小牧駅以外は無人駅で全駅にホームドア完備、全線高架
    • だが桃花台センター駅だけは地下
  • 終着は桃花台東駅
    • 実はJR中央線の高蔵寺駅まで延伸する計画があった
      • 一応建設用地は一部確保していたが多額の負債を抱えていたのと県の試算で約1000億円かかることになったので計画は凍結された
  • 終着駅の折り返し方式が珍しい*1
    • ループ線で折り返すため列車が一方向にしか進まずバスみたいにドアが右側にしかなかった
  • 延伸予定だった桃花台東~高蔵寺は1992年から名鉄バスが運転開始(今の春日井営業所83・73系統)
    • さらに追い打ちのごとく桃花台ニュータウンの住民たちが春日井駅へ行く会員制バスの運転を開始した
  • 開業から名鉄小牧線とダイヤが合わなかったため経営はもちろん悪化、2006年に惜しくも廃止
  • トランパスは一応使えたが線内の券売機では使用不可(新規購入・チャージはもちろんカードを使って切符を買うことすらできない、小児用も非対応)
    • 利用できる改札機も各駅1台だけで他社線との乗継割引も適用されない

はかなく終わってしまった桃花台線の歴史

  • 1991年3月25日
    桃花台線小牧ー桃花台東が開業、運賃は初乗り180円
    ダイヤはラッシュ時5本/h 昼間は4本/h 早朝と深夜は3本/hで一日片道70本
  • 1992年6月1日
    桃花台線桃花台東ー高蔵寺の代替路線として名鉄バスが運転開始
  • 1997年4月1日
    一度目の運賃値上げ、全線300円から350円に
    愛知県は「桃花台新交通経営改善委員会」を設置
  • 2000年4月
    経営改善計画」が策定され愛知県と小牧市から10億円の融資を受けた
    減便が行われ3本/hに
  • 2001年5月
    小牧市で「公共交通機関利用促進協議会」が発足
  • 2002年7月31日
    国土交通省中部運輸局で「尾張北部地域を中心とした公共交通サービス向上対策プログラム検討会」が発足
  • 2003年2月27日
    尾張北部地域を中心とした公共交通サービス向上対策プログラム検討会」が「尾張北部地域を中心とした公共交通サービス向上対策プログラム」を策定
    3月27日に地下鉄上飯田線が開通、運賃を350円から250円に値下げし共通乗車カード「トランパス」を導入
  • 2004年
    経営改善策で8億5600万円の経費削減を達成
    7月22日に愛知県が「桃花台線のあり方検討会」を立ち上げる、7月26日と11月2日に検討会が実施された
  • 2005年
    3月15日に第三回検討会が実施され「桃花台線をIMTS*2に転換して存続を図る」という案が出て3月30日に愛知県に提出される
    11月に愛知県が「転換しても存続は困難」という発表がされ大学教授が「建設段階で需要予測に問題があった」と新聞で発表された
    12月に愛知県が廃止する方針で決定
  • 2006年
    3月28日に愛知県と小牧市の支援が打ち切られ廃止が決定
    4月28日に株主総会で廃止が決議
    6月7日に廃止許可申請が国土交通省に提出された
    9月19日は代替バスの運転が開始
    9月30日に営業を終了し11月7日に解散が決定
  • 2007年度末に解散
  • 2015年10月に愛知県が全線撤去に方針転換
    廃線跡は現在撤去が進んでいる

車両

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100系が導入された、廃止後は大宮の鉄道博物館や山万ユーカリが丘線に売却する予定だったがユーカリが丘線は物理的に入線不可
鉄道博物館は「設置場所がない」ということで断られ個人・企業に5両が売却されただけで残りは惜しくも重機の御馳走となりました重機「うめぇ!!」

路線

駅名営業キロ乗り換え
小牧0.0名鉄小牧線
小牧原1.3名鉄小牧線
東田中2.2
上末3.7
桃花台西5.5
桃花台センター6.5
桃花台東7.4

廃止までの流れ

2004年7月に愛知県は有識者による「桃花台線のあり方検討会」を実施する、そこでは存廃議論が行われた
2005年3月に同会は「桃花台線を愛・地球博で使用されたIMTSに転換すること」で運行システムを無人化し人件費の削減を狙うものだった
だがこのシステムはこれまでより運行費用が高くなるのとトヨタ自動車で開発が遅れていることから事実上頓挫した
同会では他にも自動運転化・現行車両の2両化・現行軌道で走るバス・ガイドウェイバス化などが上げられたがどれも車両開発や設備改修に巨額の費用がかかるとしてIMTSへの転換案が決定した

同年12月に愛知県は「桃花台線の営業を停止し廃止する方針を固めた」と一部報道機関から報じられる、代替交通機関は路線バスとし「2社に運営の打診をしている」と発表

2006年1月に行われた住民説明会で桃花台ニュータウンの整備費用の一部が桃花台線の建設費用に流用されていたことが判明した
桃花台ニュータウンの分譲住宅の価格や家賃は桃花台線の建設費用が上乗せされていたことになる

この会で愛知県に提出された案は以下のものだった

  • 運賃を2.5倍*3に値上げし年間2億5000万円の税金投入
  • 桃花台ニュータウンの住民に年間数万円の負担を求める

また次のような試算も発表された

  • 2006年9月には運営資金が無くなる
  • 今後の利用客増加は期待できずむしろ減る可能性がある
  • 車両の老朽化に伴う設備投資や橋脚・路面の改修費用として約70億円が必要
  • 耐震補強工事に28億円程度費用が必要
  • 廃止した場合駅や線路を撤去するのに100億円程度必要で工期も1年半~2年かかる

同年3月28日に愛知県と小牧市からの支援が打ち切られ9月末に廃止することが決定、2006年10月1日に廃止され最終営業日は9月30日だった

沿線住民の反応

2006年1月に住民説明会、2月に沿線住民との意見交換会が実施されそこではそこでは存続を求める人たちが多数だったので廃止に反対する意見が多数出た
このことで小牧市の市議会議員と地元地区長は愛知県に存廃の結論を延期するよう求めた、その後小牧市長も延期を求めている

このような動きとは対照的に沿線住民による存続運動や利用促進活動は一切行われなかった
さらに新聞で桃花台新交通の常務取締役は「住民からの廃止に関する問い合わせや励ましの電話は一切なかった」と発言している

2004年7月に検討会が実施されても2005年3月に廃止決定が報じられても沿線住民による存続運動や利用促進活動は行われなかった

諸問題

累積赤字の原因

桃花台線は開通から廃止まで1年も黒字になったことがない、そのため大きな赤字路線になり開業16年目の2006年に廃止が決定する
赤字の原因は以下の通り

  • 唯一接続している名鉄小牧線が名古屋方面へ向かうには不便だった
    2003年までは地下鉄上飯田線が開通しておらず名鉄小牧線も上飯田で止まっていたので名古屋市中心部へ行くには上飯田駅からバスを使うか歩いて地下鉄名城線平安通駅まで行く必要があった
    2003年からは地下鉄上飯田線が開通し名古屋市中心部への接続は多少改善したものの名古屋駅へは久屋大通駅か栄駅で東山線へ乗り換える必要があり運賃もJR経由より高くついた
  • 建設時の需要予測はJR中央線やバス・自家用車の利用を全く想定していなかったザルのような予測だった
    桃花台線の需要予測は1979年の建設開始時には約30000人/日、1983年には一度下方修正が入り約23000人/日となっていた
    これは「沿線住民が名古屋方面への利用の際は全て桃花台線を利用する」という前提で計画され国鉄・JR中央線・バス・自家用車などの競合路線の利用を全く想定していなかったザルのような予測だった
    開業初年の利用者は3281人/日、計画段階の9300人/日を大きく下回っており翌年には3000人/日を切ってしまい利用者は年々減少していった
    桃花台ニュータウンの事業終了予定である1998年度の利用者は計画段階では20000人/日の所2547人/日と大きく下回っていた、そもそも桃花台ニュータウンの人口が計画4万人に対し実際は25000人と思うように伸びなかった
    開業10年目の2001年度は2182人/日まで落ち込んでいる、1987年の国鉄分割民営化以降はJR東海が中央線のダイヤを改善したことにより桃花台線の利用者は更に減少した
    2005年11月に名古屋大学大学院の森川教授が愛知県を批判したとともに「黒字計画を出さないと建設を許可できないシステムにも問題がある」と指摘、それに対し愛知県は「調査はきちんと行われていた」と主張していた
    そのため桃花台の住民が小牧市に対しJR春日井駅へ向かうバスの運行を懇願したが桃花台線を理由に許可されなかった、その後住民たちの手でJR春日井駅へ向かう会員制のバスの運行が開始された
    会員制バスは後にあおい交通運行の路線バスになっている
  • 近年の桃花台ニュータウン住民の動向として工場や物流拠点の多い小牧市に通勤・通学する人が増えている
  • 中央道経由で名古屋市中心部直通高速バスの運行が始まったことにより競合路線が増えた
  • 沿線に施設やショッピングセンターなどがない、大学や施設はあるにはあるがアピタ桃花台店以外の施設は駅から遠く自家用車などを使った方が便利なので沿線地域以外の利用者が少なかった
  • 小牧市内で完結するので沿線住民以外の利用はほとんどなかった(あっても鉄道ファンくらい)
  • 普通鉄道とは異なるシステムを採用しているので製造費や部品代・維持費が普通鉄道より高かった

【おまけ】経営改善策でやったこと

  • 運賃値下げ(350円→250円)
  • トランパス導入
  • 市役所職員に通勤利用を義務付け
  • こまき巡回バスの運転
  • 桃花台線を使った場合こまき巡回バスが無料で利用できこまき巡回バスを使った場合桃花台線の運賃が割り引かれる特例を作る
  • 無料レンタルサイクリングの実施
  • イトーヨーカドー小牧店で買い物の割引
  • 沿線でお祭りやイベントが開催時には利用者にプレゼントを渡す
  • 写真・絵画コンクール
  • 企業向け一括割引定期券の販売など沿線企業へ営業
  • 年末年始特別割引切符やファミリー往復トクトク切符、キッズ切符など割引切符の販売
  • 学生向け定期券の販売
  • 名鉄が行うハイキングの誘致
  • スタンプラリー実施
  • 保険代理店の業務
  • 小牧駅にパンの自動販売機を設置
  • 小牧駅と桃花台センター駅の構内に利用者が無料で借りたりもらったりすることができる本を集めたコーナーを設置
  • 桃花台新交通本社の敷地と桃花台西駅の空き地に駐車場貸出
  • アピタ桃花台店で従業員向け駐車場貸出

これで8億5600万円の経費削減を達成利用者は1000人程度伸びた運賃値下げで利益が増えず焼け石に水状態で利用客からは「ピンチライナー」と揶揄されるようになった

出典

wikipedia

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