来たな……とこよ。
吾から話そう。
<(悪路王さん、
いつもと様子が違う……)>
昔、北の大地を守る為、
その身を滅ぼすことを厭わず、戦った男がいた。
その地を狙う中央政府に抗い、
北の民と自然に忠義を尽くし、
最期まで戦い続けた男だ。
……吾と共に。
その名を、大滝丸、という。
<実は、あやかしとなって現れた、
という情報があってな。
学園で調査したが、
どうやら大滝丸で間違いなさそうじゃ。>
大滝丸は、元々は吾と同じ、
「鬼」であったはず。
「鬼」として、
静かに北の地を守っていたはずだ。
<おそらく幽世の影響を受けて……その存在を、
あやかしにまで引き下ろされてしまったのじゃ。>
……
おそらくは、吾も昔のままだったなら、
同じ道を辿っていただろう。
今となれば、阿弖流為の企みに
感謝せねばならぬな。
結果として受肉し、
大滝丸のようになることを免れたのだから。
<悪、オヌシも素直でないのう。
とこよのおかげじゃと何故言えん。>
<オヌシに話というのはそのことじゃ。>
大滝丸を……救ってほしいのだ。
吾はお前と出会ったことで、
身を落とすことを免れた。
そのとこよならば、
あやかしとなった大滝丸と戦い、倒し、
あやかしと化した身の枷から
解き放つことができるかもしれん。
<(だから、悪路王さんの様子が違ったんだ。
昔の仲間が……そんなことになったから)>
<もちろんです!
悪路王さんの友達なんですから!>
……礼を言う。
ああ、大滝丸は、強い。
あやかしとなって更に強さを増しているだろう。
それから、吾からも一つ。
奴は癖のある構えをする。だから強いのだが……
挑む時には、構えに気をつけることだ。
そうしないと、痛い目に遭うぞ。
とこよ……
大滝丸のこと、
頼んだぞ。