悪路王の頼み

Last-modified: 2017-05-28 (日) 00:39:57

来たな……とこよ。

 

吾から話そう。

 

<(悪路王さん、
 いつもと様子が違う……)>

 

昔、北の大地を守る為、
その身を滅ぼすことを厭わず、戦った男がいた。
その地を狙う中央政府に抗い、
北の民と自然に忠義を尽くし、
最期まで戦い続けた男だ。

 

……吾と共に。

 

その名を、大滝丸、という。

 

<実は、あやかしとなって現れた、
 という情報があってな。
 学園で調査したが、
 どうやら大滝丸で間違いなさそうじゃ。>

 

大滝丸は、元々は吾と同じ、
「鬼」であったはず。
「鬼」として、
静かに北の地を守っていたはずだ。

 

<おそらく幽世の影響を受けて……その存在を、
 あやかしにまで引き下ろされてしまったのじゃ。>

 

……

 

おそらくは、吾も昔のままだったなら、
同じ道を辿っていただろう。

 

今となれば、阿弖流為の企みに
感謝せねばならぬな。
結果として受肉し、
大滝丸のようになることを免れたのだから。

 

<悪、オヌシも素直でないのう。
 とこよのおかげじゃと何故言えん。>

 

<オヌシに話というのはそのことじゃ。>

 

大滝丸を……救ってほしいのだ。

 

吾はお前と出会ったことで、
身を落とすことを免れた。

 

そのとこよならば、
あやかしとなった大滝丸と戦い、倒し、
あやかしと化した身の枷から
解き放つことができるかもしれん。

 

<(だから、悪路王さんの様子が違ったんだ。
 昔の仲間が……そんなことになったから)>

 

<もちろんです!
 悪路王さんの友達なんですから!>

 

……礼を言う。

 

ああ、大滝丸は、強い。
あやかしとなって更に強さを増しているだろう。

 

それから、吾からも一つ。
奴は癖のある構えをする。だから強いのだが……
挑む時には、構えに気をつけることだ。
そうしないと、痛い目に遭うぞ。

 

とこよ……

 

大滝丸のこと、
頼んだぞ。