校長との会話 壱

Last-modified: 2017-05-28 (日) 00:38:50

[かくりよの門 伍]

 

ああ。そうだな――
久しいな、泉よ。

 

安倍の末裔と、この娘。
どちらもお前の教え子か?

 

こやつはな……足りぬと言ったのだ。
吾との謁見を。
会話をしたいと抜かした。名前を呼べ、とも。
懐かしく思わない方が無理だ。
長く伝えられ、人として呼ばれた名も忘れ、
擦り切れても、覚えていることがある。
お前やあいつに憑いていたときがそうだ。
認めてやろう、退屈はしなかったと。
とこよ。

 

老いた嫉妬は見苦しいぞ、泉。

 

「山城国」へ向かえ。
十分に力をつけながらな。
吾が退屈するまでの間、
こうしてお前に憑いていよう。
だが、力は貸さん。
安倍の末裔に与えた加護もな。
あの娘の力は大きくお前を凌いだが、
お前はその分を自分で埋めろ。

 

京とは限らんがな。
瘴気と共に溢れている「力」がある。
そこを目指すといい。
お前の探す「式」がいるかもしれんぞ。

 

泉から事前にある程度は聞いていた。が、
質問ではなく、刃を抜かれるとはな。

 

さて、吾は少し泉と話がある。
少し、席を外していろ。

 

これで満足か、泉よ。
安倍には力を、とこよには目を。

 

吾とて情はある。知己が討たれようと
しているならば、考えることもな。

 

その話はそこまでだ。
吾をあまり不愉快にするな。

 

概念に過ぎなかった「悪路王」に姿を与え、
使役せんとした欲深き陰陽師の末裔よ。
大門の真相はお前の弟子に伝えた。
吾の与えた力に、貫かれんようにな。

 

何もかも、あの時と同じ、か……
いいだろう。伝言は任された。
だが、お前の考え。いつか全てを
話してもらうがな。