飛騨八賀郷
受注
[八重]
信濃龍神の報と同時に、
新たなかくりよの門の報告と――
両面宿儺の報告があった。
[とこよ]
この間から言っていましたね。
鬼神……でしたっけ。
[八重]
そうだな。これに関しては私よりも
校長先生から――
[悪路王]
泉の手を煩わせるまでも無い。
時が来れば吾から話そう。
[八重]
そうですか……では、お任せします。
とこよ。両面宿儺の前に、
まずはかくりよの門から頼みたい。
[とこよ]
前に、ってことは、
両面宿儺とかくりよの門は――
[八重]
ああ、その二つに直接の関係は無い。
影響は否定できんがな。
[とこよ]
まずは門からですね、わかりました!
場所はどこになりますか?
[八重]
「飛騨国」にある「八賀郷」だ。
既に先遣隊も向かっている。
あの地方に開いた門も恐らくは
これで最後だ。気を抜くなよ。
[とこよ]
はいっ!
道中
飛騨国 八賀郷
(ひだのくに はちがごう)
[とこよ]
何だか、これだけ見晴らしのいい
ところも久しぶりだねー。
[文]
(今までかくりよの門に
縁がなかった土地だそうですよ)
(そのせいか、どこか
のどかな雰囲気すら感じますね)
[とこよ]
かくりよの門はどこに開いたんだろう?
[文]
(報告では少し奥に見える
山の麓だそうです)
[とこよ]
また変わった場所に開いたんだね。
[文]
(どうやら、先生の話では、
その山にある神社に――)
(両面宿儺が顕現(けんげん)
したみたいですね)
[とこよ]
なるほどね……
[文]
(それでは、先に進みましょうか)
[とこよ]
行ってきまーす!
村人(達成前)
[村娘]
かくりよの門は不安だけれど、
きっとあの方が守ってくださるわ!
[村人]
かくりよの門を閉じたら、
帰ってくれないかね?
[村娘]
ウチに何か用?
何もないけど、少し休むくらいならいいよ。
門、閉じてくれるんでしょう?
[村人]
最近、江戸の方から役人とか
怪しい連中が後を絶えなくてねぇ。
別に俺達はおかしなことはしてねぇっての。
[村の庭師]
お参りに行くのに門は邪魔ですしね。
閉じて頂ければ助かりますが、
それ以上は……
[奉公人]
俺は、美濃の方で仕事をしていてな。
暇を貰って実家に帰ってきたが、
皆明るい笑顔をしていて安心したぞ。
[村人]
きっと来年は豊作だな!
だから……余計なことはしてくれるなよ?
[村人]
蜘蛛……どうしたって?
ここらは両面宿儺様がいらっしゃるから、
蜘蛛どころか鬼だって怖かねぇや。
[村娘]
もう大丈夫だ!ってお父さんが言っていたの。
どういうことかしら?
[村娘?]
今回は早かったわねー。伝言よ~。
「惑わされちゃダメよ。あなたは、ああ見えて弱いんだから」
誰からかは、わかるわよね?
守護者前
[文]
(かくりよの門に到着したみたいですね)
[とこよ]
こんなこと思っちゃダメかもだけど、
割合とあっさりしてたねー。
[文]
(あやかしは曲者が多かったですが、
道順は素直でしたね)
[とこよ]
ねえ文ちゃん。この村の人たち……
[文]
(そのことは、門を閉じた後に
先生からお話されるそうです)
(両面宿儺の顕現した社も、
この先みたいですしね)
[とこよ]
どちらにせよ、
この門を閉じないと、だね!
[文]
(守護者は毛娼妓(けじょうろう)。これも
伝承ではなく怪談からですね)
(……理由はあまり考えたくありませんが、
赤子を召喚するようです)
[とこよ]
女の人のあやかしに、
赤子の召喚、かあ……
[文]
(自分と赤子に害を成すとわかると、
姿を変えるとのことでした――)
(気を付けてください)
[とこよ]
うん、わかった!
八賀郷達成報告
[八重]
八賀郷のかくりよの門を、
無事に閉じたそうだな。
[とこよ]
はいっ。えっと、両面宿儺は
その更に先、でしたっけ……?
[八重]
文から話を聞いているようだな。
ああ、その通りだ。
[とこよ]
その、先生……
あの村の人たちって――
[八重]
……やはり、歓迎はされなかったか。
[とこよ]
門だけ閉じたら帰れ、と。
もしかして、あの人たちも?
[八重]
駿河蠱毒の社を思い出しているのだろうが、
それは違うな。
あやかしに襲われたり、
支配されたという報告は無い。
[とこよ]
それなら、どうして……
[悪路王]
そのことは、吾が説明しよう。
まず、報告だけは済ませておけ。
[とこよ]
あっ、はい!
飛騨出羽ヶ平
心を揺らせば刃も揺れる。惑わされるな。
受注
[悪路王]
以前言ったな、お前は信仰を
斬らねばならぬかもしれん、と。
[とこよ]
はい。
[悪路王]
両面宿儺は吾と似た発端だと言われている。
つまり――
時の支配者の地方制圧。それを
正当化するために歪められた存在だ。
歴史の上では吾よりも古い。
だが、両面宿儺にはもう一面が大きくてな。
曰く、黒龍を単身で討伐した英雄、
寺院に祀られている場所もある。
吾よりも、崇拝、土着信仰の側面が強い。
もっとも――
それはここ最近、数百年のことだ。
[とこよ]
ここ数年で数百年って、
ちょっと想像が湧きにくいですね。
[悪路王]
まあ、聞け。新たな伝承はその分
土地の人々の記憶に残る。
土地から人が消え、霧散することも少ない。
かくりよの大門の影響を受けたのも――
そのせいであろうな。
[とこよ]
悪路王さんと成り立ちが似ている、
それとあの村には関係があるのですか?
[悪路王]
土着の英雄、祀っていた神が
その社に顕現した。
それだけで、その土地に住まう者に
とっては大きな希望となろう。
[とこよ]
あっ……
[悪路王]
かくりよの門は災い。だが、両面宿儺は
あの者共にとっての希望だ。
耳を貸すな、とは言わん。
言葉は染み行くものだ。
だが、心まで言葉に浸すな。
信念を持って、先に進め。
[とこよ]
はい――わかりました。
道中
飛騨国 出羽ヶ平
(ひだのくに でわがひら)
[とこよ]
……考えちゃうね、どうしても。
[文]
(信仰……希望、ですか)
[とこよ]
かくりよの大門の影響で顕現し、
もし悪意が無いのであれば――
そのままにしておくのも
ありなのかな、ってね。
[悪路王]
……
[文]
(その、とこよさん……)
[とこよ]
大丈夫だよ、文ちゃん。
もしも、とか考えるよりは――
まずは進んで、
実際に会ってみないと。
[文]
(はい……)
[悪路王]
払子守(ほっすもり)には気をつけろ。
今までのあやかしとは若干異なる。
追い詰めずも全体への攻撃を使い、
逆に追い詰めればその攻撃を使わぬ。
対処の手順を勘違いせぬようにな。
[とこよ]
はいっ!
村人(達成前)
[村人]
これ以上は何もしないでくれ!
助けてほしいときはそう言う!
[村娘]
昔、女の人が、亡くなった自分の子を
湖に沈めたんだって。
以来、湖はどんなに雨が降ったりしても何も起きないの。
[行商人]
両面宿儺を崇める村人は多いですが、
お参りに社へ行く方は少なかったらしいです。
増えたのはごく最近のようですよ。
[侍]
どうにも村人が頑ななのだ。
これもかくりよの門の影響なのか……?
[村娘]
最近神様が来てくれたって
村のみんなが騒いでいるの。
[村娘]
行かないでください。
お願いです、そっとしておいてください!
[社の住人]
この地は両面宿儺様がおられる土地。
何用か知らぬが、討伐するというのであれば……
両面宿儺の間
[両面宿儺]
参ったか、新参者よ。
[悪路王]
吾を新参と呼ぶか。飛騨の鬼神。
[両面宿儺]
時が許せばお主とは語りたいこともあった。
だが、今は違う――
前に出よ、我を討伐せんとす陰陽師よ。
[とこよ]
……はい。
[両面宿儺]
土地の者の言葉を詫びることはせぬ。
我が詫びてよいことでもない――
我を、討伐しに来たのだろう?
[とこよ]
は……あっ、いえ。
まずは会話から――
[両面宿儺]
甘いわ!
[とこよ]
うっ……ぐ……
[悪路王]
そう脅かすな、両面宿儺。
内面の力はあれど――
まだまだ、吾らに比べれば
木端のような小娘だ。
[両面宿儺]
随分と優しいのだな、悪路王よ。
……まあよい。
娘よ、我は人の信仰により
再び姿を取った存在。
なるほど今の我の思考は
澄み切って民のことを考えておる。
[とこよ]
……はい。
[両面宿儺]
だが、忘れるな。民の信仰は
簡単に捻じ曲がることを。
力を持つ我が顕現したことで、
よからぬことを考える者も居よう。
信仰が歪み、我が歪む。
それは到底看過できぬ――が、
我には自らを殺すことはできぬ。
それは全てへの裏切りだ。
[とこよ]
あなたは……それでいいんですか?
[両面宿儺]
我、か……
[とこよ]
英雄として祀られた方が、
あやかしとして討伐される――
それは、耐えられるのですか?
[両面宿儺]
もう我を討伐できるつもりか。
まあ、お主ならそれも出来よう。
聞け、とこよ――
[とこよ]
(名前、を……?)
[両面宿儺]
我は飛騨の地を、
住まう者すべてを愛している。
こうして顕現し、再びこの地に
息づくことができたことを感謝している。
だからこそ――
変質することを見過ごせぬ。
到底看過できぬ。
我を討伐し、その力を削ぐのだ。
大門の影響や、信仰の変質を受けても、
歪まぬように、な……
[とこよ]
……わかりました。
[両面宿儺]
かくりよを求め、奔走する小さき者よ。
身に不相応な力を秘めし者よ。
抵抗はしよう、お主の力を見るために。
さぁ――来るがいい。
鬼神「両面宿儺」が相手となろう!
達成
[吉備]
……戻ったか、とこよ。
悪は、離れているようじゃな。
[とこよ]
はい、ただいま戻りました。
[吉備]
両面宿儺の力と信仰は強い。
討伐しても完全に消えることはなかろう。
だが、これ以上力を蓄えることも無い。
ご苦労じゃった。
[とこよ]
飛騨の地を愛している、と
言っていました。
どうしても、それが忘れられません。
かくりよの大門を閉じたら、
あの人の……
[吉備]
そうじゃな。存在は消えよう。
じゃが、残るものもある。
信仰は消えん。そして、
お主に語ったことも、な……
[とこよ]
はい。
[悪路王]
とこよに泉か。
少し遅くなったな。
[吉備]
悪か。とこよには
甘いお主のことじゃ――
どうせ、両面宿儺と
話をしてきたのじゃろう?
[悪路王]
言葉に棘を含めるな。
酒を交わしたのは本当だがな。
[とこよ]
悪路王さん?
[悪路王]
両面宿儺から伝言だ。
大門を閉じること、楽しみにしている、と。
名にかけて、お前が門を閉じるまで、
変質することはない、ともな。
[吉備]
大分気に入られたようじゃのう。
[悪路王]
それと、もう一つ――
手合わせならばいつでも応じよう。
今度こそ相応の力を持って。
その時は信濃妖怪印象を五枚、
我に捧げると良い、少しは力を戻し――
とこよの糧となろう。
いつでも来い、と言っていたぞ。
[とこよ]
は……はいっ!
[悪路王]
その返事は直接伝えてやれ。
今度は、仲間も誘ってな。
[とこよ]
そうですね。会いに行ったときに
伝えるようにします!
[悪路王]
最後に、今回の門を閉じたことで
「常世の境」に新たな反応があった。
どうやら此度は吾の場所。
降雪城址に似たものらしいな。
それだけ印象が強かった、
と言うことか……ふふふ。
力を磨く助けになろう。
彼の地への遠征も考えておくと良い。
[とこよ]
ありがとうございます!
[悪路王]
良い。行け、とこよよ。
方位師が家で待っているぞ。
[とこよ]
はいっ! 失礼します!
[吉備]
……本当に甘いな。オヌシは。
[悪路王]
さて、何のことやら。
吾は吾の望むまま、よ。
[吉備]
……今の人払いもか?
[悪路王]
聡いな、いや、さすが、か。
両面宿儺の地より戻るときだ。
吾の加護が一際強く引き出された。
安倍――いや、土御門だな。
[吉備]
……まだ内密に頼む。
確認せねばならぬことが多すぎる。
[悪路王]
そのつもりだ。単純にあの娘が
加減を誤った可能性もある。
[吉備]
学園としても行方を追う。
幕府に勘ぐられる前に、な。
[悪路王]
そうか、姿を消したのか。
[吉備]
ああ――
土御門澄姫が、本家から
出奔したと報告があった――
達成後村人
八賀郷
[村娘]
なんてことをしてくれたの……
勝手に! 考えもせずに!
[村人]
来年不作になって……
黄泉路を行くものが出たら、
それはお前たちのせいかもしれんな。
[村娘]
……出て行って。
[村人]
どうして……どうしてだ!
何をしたって言うんだ!
[村人]
こういうことだったのか……
帰ってくれ! 顔も見たくねえ!
[村の庭師]
討伐してしまったようですね……
ですが、木々は生き生きとしたままです。
これは、どういうことでしょう……?
[奉公人]
村人は色々言っているが、
気にしないでくれ……
俺の里の者が、すまない!
[村人]
こんなことになりそうな気はしていたさ。
あまり、気に病むんじゃねえぞ?
[村人]
蜘蛛よりも鬼よりも、
怖いのはお前たちだったのか!
[村娘]
……来年、不作だったら、
奉公に出されちゃうんだって……
どうして、こんなことになったの?
出羽ヶ平
[村人]
地方の者の声は聞かずに踏み潰す。
ああ、幕府もそうなら陰陽師もそうだったか。
[村娘]
神様が消えたってみんな嘆いているけれど、
最初からそうだったじゃない……
おかしいわよ、こんなのは。
[村娘]
どうして……そっとしておいて
くれなかったんですか……
[社の住人]
村の者には私から時間をかけて説明しよう。
両面宿儺様の望んでおられたことも、な……
※村人は関ヶ原の物語で更に台詞が変わるため後日追加
絆の力
[吉備]
とこよよ……
一つ、聞きたいことがある。
[とこよ]
……? はい、なんでしょう。
[吉備]
両面宿儺は自らの力について
何か言っておったか?
[とこよ]
えっと――
……
自分を討伐するつもりか。
まあ、それも出来るだろう……
とか、ですかね。
ちょっと戸惑いました。
[吉備]
ふむ……そうか。
鬼神にして英雄であれば――
その力も相応のものであるはずが、
さては『絆』を切ったな……
[とこよ]
絆を、切る……?
[吉備]
駿河の蜘蛛もそうであったが、
かくりよのものは――
うつしよのものとの繋がりで、
更なる力を発揮するものが多い。
かの両面宿儺も信仰と言う名の
絆は深かったはずじゃ。
[とこよ]
つまり――
(あの人、討伐されるために……)
(愛している、と言った人たちからの
絆を切ってくれたんですね……)
[吉備]
……そう言えば、オヌシは
式姫と随分仲が良いようじゃの。
[とこよ]
はいっ! みんな大好きです!
[校長]
この「絆」の力はあやかしのみではない。
式姫にも発揮される。
ここから先に進むのであれば、
「絆を結ぶ」ことを考えても良かろう。
[とこよ]
それじゃ、みんなと――
[吉備]
待て待て待て。そう急ぐな。
いくつか制約もあるのでな。
まずは絆を結んでも、かくりよの
力に呑まれぬか試験をさせて貰おう。
[とこよ]
うぐっ……試験ですか……
[吉備]
なに、オヌシの得意な実技じゃよ。
準備ができたら――
「式姫研究員」から受けると良い。
「絆結びの試練 玄武」を出しておこう。
幾つかの試練を達成して貰うことになる。
急がず、着実に進めるのじゃぞ。
[とこよ]
ちょっと、楽しみですね……!
はーい!