呪文のように覆った
■日本語版 17章 p.430
広い校庭に出るころには、闇がとっぷりと呪文のように三人を覆った。
■UK版 p.244
By the time they reached open ground, darkness was settling like a spell around them.
■備考
- 「呪文のように覆った」は変。
- Spellと言う言葉は呪文だけでは無く、魔法や魔力と言う意味もある。
ここは「魔法のように覆った」等とすべき。
殺人パンチ
■日本語版 17章 p.433
ハリーは大声を出し、あとを追おうとしたが、太い枝が空を切って殺人パンチを飛ばし(省略)
■UK版 p.246
Harry shouted, trying to follow, but a heavy branch whipped lethally through the air(省略)
■試訳
ハリーは大声を出しあとを追おうとしたが、太い枝が恐ろしい勢いで飛んできたので(省略)
■備考
- whipped lethallyの訳として「殺人パンチ」は間違いとは言えないが、
表現が安っぽくて児童文学に相応しいとは言えない。
窓をズーッと見回していた
3巻における代表的な誤訳を参照。
コックリ
■日本語版 17章 p.437
二人はいよいよだと、三度目の目配せをし、三度目のコックリをした。
■UK版 p.248
They exchanged a last look, a last nod.
■試訳
二人は最後にもう一度目を見交わし、うなずきあった。
■備考
- ロンとシリウスを追って叫びの屋敷に入り込んだハリーとハーマイオニーが
ただならぬ物音のするドアの前で突入の覚悟を決めるシーン。
- ここでも「コックリ」という口語的な表現が場面の緊迫感を壊している。
ここに来るまでに確かにハーマイオニーは二回「コクリと頷いて」はいるが(原文はどちらもnodded)、
ここでわざわざ「三度目」と書く理由よく分からない。 - また「二人はいよいよだと」にあたる部分は原文に無いが、
“last”という言葉に後には引けないという二人の決意が伺える。
原文が端的な文でリズムを出し、場面の緊迫感を伝えているのに対し
邦訳は余計な説明をしていて間延びした印象がある。
ニヤリ笑い
■日本語版 17章 p.439
「今夜はただ一人を殺す」ブラックのニヤリ笑いがますます広がった。
■UK版 p.249
‘There'll only be one murder here tonight,’ said Black, and his grin widened.
■試訳
「今夜殺すのはひとりだけだ」そう言ってブラックはさらに大きくにやりと笑った。
■備考
- 「ニヤリ笑い」という表現が日本語として自然ではない上、シリアスな場面に相応しくない。
もう遅すぎる
■日本語版 17章 p.440
「もう遅過ぎる―」
■携帯版 17章 p.492
「もう待てない―」
■UK版 p.250
‘I've waited too long-’
■試訳
「俺はもう十分すぎるほど待った―」
■備考
- 叫びの屋敷でハリーと格闘になってしまったシリウスのセリフ。
- ハードカバーの訳は意味不明。
携帯版の方も仕留めるチャンスをずっと待っていたシリウスの心情が伝わってこない。
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- ニヤリ笑いはおかしいとおもってた -- 2024-03-02 (土) 19:54:13
- 普通は「ニヤリとした」よな -- 2024-03-15 (金) 09:36:16