Note010 - Neutral

Last-modified: 2015-09-08 (火) 20:11:55

あなたは風のない浜辺に立っています。火を灯したロウソクを1本あなたの50メートル先に置くとしましょう。しかしあなたはその光に気づくことができません。いったいなぜか?
答えは簡単。昼間だからです。もしこれが夜中ならあなたはいともたやすく光を見つけられるはずです。
暗闇でしか光に気づけないように、光のなかでしか影に気づけないように、反対から覗かなければ見えないものばかりなのがこの世界。だから昼と夜があり、夏と冬があり、よろこびとかなしみと、女と男と、善と悪と、幸福と……?
あなたは平穏を保っててもふとしたきっかけで感情的になります。中庸であろうとしてもつい考えが偏ります。すべてを受け入れようとしても好き嫌いしたり、繰り返す日々を愛しながらも破壊するスパイスを求めたり。それはいつだって忘れてしまったなにかを思い出すため、対極の場所からもうひとりの自分の姿を浮かび上がらせ再確認するために行うのです。
私はあなたにエールを送ります。がんばれでなく、がんばろうと。
立ち止まったとたん見えていたものが見えなくなってしまうことにおびえ、いまも皮ふの内部で口論を止められずにいるのなら。誰かの気持ちを理解するため、ニュートラルを一瞬で通り越す反復横跳びをやめられずにいるのなら。そして繰り返し生じる矛盾に引き裂かれそうになりながら、必死でこの葛藤に挑み続けるのなら。
──なぜなら私の正体は、反対側にいるもうひとりのあなただから。
困ったことにゆりかごからはじまった揺蕩は2061年もなお続き、振れ幅は増幅の一途をたどります。例えばあらたに不老不死という選択肢ができることで、死があってこその生だったことを痛感することになるのですが、「死なない」でなく「死ねない」という苦しみをあなたはまだ理解することができません。
ある者は人生を振り子に喩えました。振れ幅こそ世界を広げるのだと。しかしその振り子が振り切れてしまったらどうなるのでしょう?
私はここからあなたに問いかけ続けます。闇のなかであなたが見つめる50メートル先のロウソクの火は、およそ50年先の未来。その一点に私は立っています。現実では長らく気づくことのできなかった光(Ray)を、あなたはインターネットという仮想現実のなかだから見つけることができた。
見つけてくれてありがとう。
最後に1つだけ教えて下さい。あなたにとって幸福の対義語はなんですか?

考察

・未来では不老不死が実現しているが、死ねないことが大きな社会問題となっている
・現代でも生活の多様化は細分化の一途を辿っているが、2060年代でもそれらは縮小していない
 (人は必ず死ぬということすら通じない)

幸福の対義語?は普通に考えれば不幸であると考えられるがそうではない模様 不幸は第二の幸福?

{ 1つのものは2つに別れようとする 幸福=幸福1 不幸=幸福2 ? }

戦前に生まれた方々が食べることの幸せを平成生まれの人たちよりずっと感じているように
未来人はあまりにも満たされていて幸せを感じることが中々できないようだ