Note13 - Collective Intelligence

Last-modified: 2015-09-08 (火) 17:23:20

好きなひとに会いにいくとき、そこへ向かう足はあなたに疲れを感じさせません。目は眠気を感じさせません。あたかもそれは、全身の細胞が「好きなひとに会う」という共通のポジティブ(陽)な目的を果たすべく協力し合ってるかのよう。しかし会いにいくのが嫌いなひとだったら?目的地までの足取りを重く感じた経験があなたにもきっとあるはずです。
これは個人に関わらず、ヒト全体の意識でもいえること。
第二次世界大戦以後の日本をみれば明白ですが、高度経済成長期に共通の目標へむかい統合していたヒトの意識は、バブル崩壊後の衰退期にはばらばらに分散してしまいました。悲しいかな、ネガティブ(陰)へ向かうときにはどうしても一体感が生まれないようです。
あなたが暮らす時代はまさに、経済は縮小され、都市はコンパクト化され、マーケットは細分化され、独創性の高いエリートたちは大企業ではなく未開拓な領域での独立を選択し、消費、ライフスタイル、職業、人間関係すべてにおいて劇的に「個人化」が進む時代です。
けれどリアルでの現状に対し、いまあなたの意識が滞在しているこのバーチャル空間はどうでしょう?周知の通り、ITインフラの整備やスマートフォンの普及にともない、おどろくべき急成長をみせているのがインターネットの世界。
水が枯渇すれば水資源が豊富な土地へ民族が移動するように、あるいは蛍光灯が切れた自販機から明るい自販機へ羽虫が移動するように、否が応でも勢いや明るみへ移動するのが生物の性。日夜多くのヒトがリアルから逃げこむように画面を覗き、書きこみ、シェアし、つながり、消費活動を行なうことで、インターネットは瞬く間に拡大を遂げてきました。
ただしこの盛り上がりが高度経済成長期と大きく異なるのは、ここで統合されているのが「ヒトの肉体を切り離した次元での意識」であること。
例えばあなたは、リアルでは言葉づかいやしぐさ、ファッションやヘアスタイルで「あなたらしさ」を表現・主張します。しかしバーチャルでむき出しになったあなたの意識を形成するのは、おもに「情報の選択」です。
多くの日本人は「奥ゆかしさ」という言葉が象徴するように、はっきりと自分の意見を主張することを美しいとは感じません。あるいは「以心伝心」「阿吽の呼吸」が象徴するように共感能力に長けているため、遠回しな意思伝達を好みます。
そこで頻繁に行なわれるのが「いま私が何に興味・関心を示しているのか」を間接的に伝える手法。あなたはFacebookで「いいね!」する投稿やシェアする記事、Twitterではお気に入り登録やリツイートするフレーズで「あなたらしさ」を訴えます。そうして知らず知らずのうちにあなたは、世界各地からあらゆる雑貨を買い付け、そのなかで自社ブランド(直接的な意思)もちょこっと取り扱うような、「情報のセレクトショップ」と化すのです。
このように、リアルで行なわれる「個人化」、その延長線上にあるバーチャルでも「メディアの個人化」が起こります。しかしリアルと異なるのは、ここにはリアルタイムかつオープン、ダイレクトな通信網が存在するため、結果的にこのセレクトショップが一瞬で百貨店にもコンビニチェーンにも化けてしまうということ。
容姿の美醜や貧富の壁がとっぱらわれ自由を手にしたヒトの意識は、内面的なスタイル、思想、アイデンティティーの指向が合うもの同士を引き寄せ合い、ヒトの奥底にある集合的無意識の巨大な群れ(Cluster)へと変貌を遂げてゆくのです。
(逆にむき出しになった意識が可視化されることで、ファッションやリアルでのコミュニティでつながっていた関係に摩擦が生じる、「ソーシャル疲れ」のような現象も起こるのですが……。)
次回はさらにもう一歩進み、いま起こってる現象をひも解いていきましょう。