イベント/白昼夢の喧噪

Last-modified: 2011-11-01 (火) 02:28:54

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


白昼夢の喧噪

出会いの夢

レミリアは夢を見ていた。
それは夢であり事実であり過去である。
それは少し前の夢。主人公が森に迷い崖下をローリングするより少し前の夢。
それは過去の夢。

 
 

レミリア・スカーレットが夕食前に森で軽い散歩をしていた時の事である。
濃霧のせいで視界がぼやけているが、霧はそれほど深くはない。少なくとも散歩の支障にならない程度には。
しかし、いつになればこの霧は晴れるのだろうか・・・自然現象にしては些か疑問と問題点が沸く。

 

クゥン……クゥン……

 

思索を行いながらの散歩の最中、森の茂みに獣の力ない鳴き声が聞こえた。
……野犬の子供が親とはぐれたのだろうか?そんなことを考え、レミリアは好奇心から鳴き声の方に向かった。

 

実際には子犬なんて可愛らしいものではなかったが。

 

鳴き声の先には地べたに鎧を纏った青年が倒れ、傍に巨大な獣……ベヒーモスが佇んでいた。

 

ベヒーモスはか細い鳴き声をあげて騎士の横顔を必死に舐めている。……このベヒーモスが鳴き声の主か。
よく見ると、ベヒーモスの首には首輪のつもりなのだろうかベルトが巻きついていた。……目の前の騎士に飼いならされているのか?

 

レミリアは地面に力なく横たわる騎士に近寄り、その姿を見下ろす。
騎士は体を上下を繰り返していることからなんとか息はあるようだ。

 

(このまま見捨てるのもなんだか居心地が悪いね)
そう思ったレミリアだが、その口元に悪魔的微笑が浮かんだ。
吸血鬼は他者から得る血液を生命活動の糧としている。普段は城で働くメイド達から少しづつ分けてもらう形で摂取してきたが
実は彼女は生涯を通じて人間の異性の血というモノを味わったことはない。
そのため今のレミリアには目の前の死にかけの血はどのような味がするのだろうかという好奇心にも似た欲求があった。

 

獣臭い野盗の下賤な血なぞ、頼まれてもこちらから願い下げだが目の前の騎士は鎧や腰の得物からしておそらくは格式高い家柄の人間。
高貴な家柄の血の味。想像するだけで思わず唾液が口内に滲む。お助けついでに血を少し抜いても罰は当たらないだろう。

 

内心そんなことを考え、鼻歌交じりに騎士に近づく吸血鬼。

 

グワァウぅ!

 

次の瞬間、ベヒーモスが吼えた。

 

レミリアを外敵と思ったのか、敵意と警戒心を剥き出しに騎士の目の前に阻む。

 

ベヒーモスは魔獣と呼ばれる種族である。獰猛な気性と凶暴性とそれに見合うだけの戦闘能力を持ち、闘争本能赴くままに荒らぶる。
屈強な戦士の十倍以上の剛力と、怒れる闘牛の数倍の闘争本能と、高位魔法を扱える程度の魔力を備えた怪物。
猛り狂う彼ら相手には狡猾な魔族ですら畏れ手出ししようとは考えない。
しかしその一族であろう一匹が目の前の人間を守ろうとしている。主の身を案じる忠犬のようにレミリアの眼の前に立ちふさがっている。

 

ベヒーモスがここまで必死になるとは。
些かの驚きとともにレミリアの中で騎士への評価が変わった。単なる死にかけから得体のしれない、興味の対象へと。

 

「……安心しなさい、命を奪うつもりはないわ。そいつはお前の主人?」
自身の評価はどうあれ、血こそ欲しいが命まで取る気はない。

 

レミリアの問いに対し鼻先を突きあげ、鼻を鳴らすベヒーモス。レミリアはそれを"YES"と捉えることにした。

 

「そう、だったら助けてあげる。だからそんな怖い顔で睨むのはお止めなさいな」

 

その言葉に僅かに敵意は薄らいだようだがベヒーモスは騎士の目の前から動かない。

 

「ずっと舐めるだけじゃそいつの怪我は治らないよ。ほら、そこをどいて。お願いだから」
レミリアはあくまで諭すように語りかける。

 

暫し視線が拮抗。

 

クゥン……

 

やがて小さく鳴いて、ついにベヒーモスはレミリアに道を譲った。

 

「ふふ、いいこ いいこ」

 

ベヒーモスの巌の様な額を軽く叩くと、レミリアは騎士の体を持ちあげ肩に担ぐ。
重そうに見えるが吸血鬼の怪力ならば人一人持ち上げるなど容易い。
レミリアは心配そうに主を見つめるベヒーモスの鼻を優しく撫でる。
よく見るとベヒーモスの体には切り傷の様な擦過傷が無数にあった。

 

「お前も怪我しているの?」

 

その言葉を聞いたベヒーモスは鼻を鳴らす。『この程度、屁でもねえやい』とでも言いたげに。

 

「お前の主人は我慢強い従者に恵まれているのね。さ、一緒においで。城(あっち)で手当てしてあげる」

 

その言葉を聞いたベヒーモスはやがて起き上がり、のっしのっしと彼女に追従する。

 

「お前も、お前の主人も悪い様にはしないよ」

 
 
 
 

突然の客人である一人と一匹に驚いたメイド達は急いで彼らに治療を施した。
魔獣は傷口に細菌が侵入していなかったのですぐに快復したが、騎士の方は目覚めるに一週間ほどの時間を要した。
しかし眠りから目覚めた騎士は自身の記憶のほとんどを失っていた。
自分が騎士であることと、ブロントという自分のものであろう名前を除いて。

 
 

「つまりお前は自分自身が何者なのか、何処から来たのか、全く分からない、と。ふぅむ……(しかし変な言葉遣いだこと)」

 

「うむ 困った事に俺は記憶喪失というものになっちぇしまったらしい。これは取っ手も面倒な事になってしまった感」

 

「どうしたもんかしらねぇ……」

 

「【むむむ。】」

 

「何がむむむだよ。こっちも悩んでいるのに。ま、ベヒーモスに『悪い様にはしない』なんて言った手前、なんとかしなくちゃね……」

 

「……お嬢様。あのモンスターに言ったことを貫き通すつもりで?」

 

「筋は通すさ。例えモンスター相手でも。うーん、そうねぇ。お前、しばらく私の城で住み着かない?」

 

「住み着く?」

 

「そ。そのまま記憶喪失状態で外に出ても右も左もわからないだろうし、まだ霧が濃いからまた事故を起こすかもしれない。だったら状況が改善するまで居座った方がいい」

 

「……穀煮てもいいのか?」

 

「最近は娯楽に飢えていたからね。客人は歓迎するよ。……で、お前はどうする?
私は案を用意した。でもお前の今後はお前の意思が決めること。お前はこれを受諾してもいいし無視してもいいわ」

 

「目の前の親切を断るくrあいなら俺は喜んで受け入れるだろうな hai!【お願いします。】」

 

「よろしい、決まりね。早速だけどよろしく。えーっと、なんて言ったけ……」

 

「……ブロント。謙虚だからサーではなくさん付けでいい」

 

「あら本当に謙虚。レミリア・スカーレットよ。よろしくお願いね。ブロントさん」

 
 
 

思えばこれがレミリアとブロントさんが出会った瞬間だった。
そういえばこんな感じだったな、そんなことをおぼろげながらに考え、
回想が先に進もうとした時、

 
 
 
 

『何でレミリアが俺の部屋にいるんですかねぇ……?』

 
 
 
 

居候の困惑する様な声が聞えて、
レミリアは夢の底からゆっくりと目を覚ました。

交りの現

……ブロントさんが紅魔城へ滞在してから少し経ったある日、レミリアは彼に対しある頼み事をした。

 

それはブロントさんの血を自分に提供してくれないか、というもの。

 

ブロントさんは拒否した。当然である。血を吸われるなんて気分のいいものではない。
特に吸血鬼相手となれば・・・下手すれば同族にされるかもしれないのだ。

 

それを聞いたレミリアは自身は少食であり、相手を同族に変化させられるほどの量を吸引することは狙っても難しいこと
頻繁に提供してもらう必要はなく、多くても一か月(九か月でいい)に一回程度でいいと話した。
最後に、強制はしない。断ってくれてもいい、と。

 

……自分には彼女に助けてもらったという貸しがある。その上、彼は彼女から寝床を提供してもらい、更には食事を頂戴している身分。
加えて相手はかなり下手になっている。ここで無下に断るのは些か謙虚ではないのではなかろうか。否、断じて否、下手をすれば命にかかわるだろ常考・・・

 

……長ーい長いシンキングタイムを経て、ブロントさんは彼女の頼みを渋々ながら承諾することになった。
それ以来、彼は彼女に月に一度の間隔で血を少し提供している。(血税)

 
 
 
 

霧の化け物が滅び、森から霧が消え去ってから暫く経ったある日の昼のこと。
鍛錬と昼食とベヒんもスの餌やりを済ませ、自室に戻ったブロントさん。

 

「…………おいィ?」

 

部屋の扉を開いたブロントさんの目に最初に入ったのは、ベッドに横たわり、すやすやと寝息をたてるレミリアの姿だった。
「何でレミリアが俺の部屋にいるんですかねぇ……?」

 

この時間帯、彼女は幸せな眠りの幸福を享受している真っ最中の筈だが、駄菓子菓子よりによって何故それを彼の部屋で享受しているのか。
ブロントさんが声を聞くが早いか、睡眠状態から覚醒。眠たげに体を起こし、目を擦る吸血鬼。・・・こいつ地獄耳か。
訝しげに顔を歪める騎士に対してレミリアは寝ぼけ眼で呟いた。

 

「……おなかへった」

 

「e?」

 

「ちがほしいの」

 

先ほど記述したとおりこの時間、レミリアは睡眠タイムである。しかしながら想像を絶する空腹、もしくは尿意でたまに思わず目を覚ますことがある。
レミリアにとって今の状態が前者であったようだ。
……つまりお腹が減ったから起きて、自分を部屋で待っている間に、睡魔に負けて二度寝していたということか。ご苦労な事である。

 

「……仕方がねぇな」

 

ベッドに座り、服を脱ぐ。
服を脱ぐ必要性はないのだが、以前レミリアが吸った血を零して服を駄目にして以来、上半身を脱いでから行うことにしている。

 

「……ほらよ」
普段なら背中側から彼の肩に噛みついて血を抜いているのだが・・・

 
 

「……ん」

 
 

ぎゅむっ

 
 

眠気で正常な判断ができないのか、おもむろに抱き付いてきた。それも真正面から

 

「お おいィ!?」

 

一応、ブロントさんは肉体精神共に健全な下ネタ嫌いの一般男性である。大統領嗜好なんてない。
記憶喪失前はそういう趣味があったのかもしれないが、あったとしても信じたくないし今の彼は至って健全な謙虚なナイトなので彼がノーマルである確率は初めから100%だった。

 

そして今現在彼に抱きついているレミリア・スカーレットは気儘な面が目立つものの間違いなく美形である。
白磁色の肌には染みのようなものは一切存在せず、水を浴びたかのような艶がある。そして目の前にはやや幼さを残して美しく整った美貌があった。

 

加えて彼女の格好は薄いネグリジェのような寝巻一枚。柔らかな膨らみが"ふにゅっ"とブロントさんの素肌に伸しかかってくる感触が先ほどから気まずさを一助させている。

 

だから、その、あの、なんというか、今の状況はブロントさんの精神衛生的にかなりの悪影響を及ぼしているのであった。ああ地の文もなんだか混乱してきた。

 

「……いただきます」

 
 

かぷっ

 

「っ!……」

 
 

むベなるかな。騎士の葛藤なんて知った事ではないとばかりにレミリアはブロントさんの肩に噛みつき、吸血行為が始まる。
こうなってしまうと、騒がずに行為が終了するまで沈黙に徹した方がいいのは確定的に明らか。

 

ブロントさんは目を閉じ六根清浄の心で構えることにした。傍目から見るともうどうにでもなれという自棄糞な感じだが。
血が抜き取られるたびに僅かな鈍痛が圧迫するように苛むが不思議とそれが苦痛には感じない。
対するレミリアはできるだけ彼が痛くならないように、そして血を吸い過ぎないように、甘く噛み付きながら血を吸う。
睡魔が彼女の体を半分以上支配しているがブロントさんの血液が喉を潤し、腹を満たす感触ははっきりと伝わってくる。

 

そしてどれほどの時間が流れたのか……実際にはとても短い時間だろうが、互いにとっては永く感じられるものだった。

 

やがて

 

「……ごちそうさま」

 

名残惜しそうにレミリアが桜色の唇を離した。口端から流れる一筋の血と、やや紅潮した肌が何とも言えない色気に溢れる。
離れた唇と噛み跡が細い銀糸で つ、と繋がり、唾液で濡れた噛み跡からじんわりと血が滲みだした。
・・・行為は終わった。未だにブロントさんは気まずい気分であるがようやく終わったんだなと心中でホッとしていると。

 

「うおわぁ!?」
思わず変な声が漏れた。
なにやらくすぐったい感触が肩口を伝ってブロントさんの全身に突然襲いかかってきたのだ。
あわてて肩の方に顔を向ける。

 

レミリアが跡から垂れた血を舐め取っていた。
小さな舌が首筋をちろちろ舐めるたびに、ブロントさんの背筋がぞくっと緊張する。

 

「さ さっきかるくすぐったいんですがねぇ!?」

 

「……らっふぇもっひゃいなひひゃない」

 

「だってもったいないじゃないじゃないよ馬鹿」

 

レミリアの額をぺしんと小突いて中断させる。

 

「……んぅ」

 

「(嘆息)さっさと済ませたなら寝るべきそうすべき。生カツ時間を螺子曲げるのはいくない(しきたり)」

 

「ん、そうする」

 

不満げな顔をしていたレミリアであったが、その言葉を聞いてようやく了承したのか、小さな欠伸をかいて……
……ブロントさんのベッドの上に体を預けた。しかも彼の膝を枕にして。

 

「oi miss 甥 みうs 紀伊店のか だからなんで俺の膝のうえで寝る レヌリア!」

 

「……うー、だってへやにもどるのめんどうくさい」

 

「なら俺が部屋まで運ぶまうs!膝の上で寝らるると動けにいのでやめてくらふぁいますか!」

 

「むり、ねる。ぐぅ」

 

「お、おいィィィィィィィィィ!?」

 

「zzz……」

 

「…………ちくしょう; レmイレアは馬鹿だ;; もうどうなっても知らんぞ!」

 

「…………なにがどうなるの?」

 

「いいからもう寝てろォ!

 
 
 
 

「やれやれだぜ……」

 

再び嘆息する……本当に何とも言えない気分になってきたブロントさんである。
眠気のせいか子供っぽい振舞いをしていたが、今ブロントさんの膝を枕に眠りに就く彼女は外見上は大人の女性である。
あんな風に近寄ってきたら……

 

「亜の姿を気にしないのは男として浅はかさが愚かしい……」

 
 

……もう一度溜息。そして未だに脱ぎっぱということに気づき、手に抱えていた服を着る。
寝息を立てるレミリアの髪を軽く撫でながらブロントさんも昼寝をすることにした。
今、この瞬間は意識を中断した方が一番いい気がする。血を吸われたせいなのか少々眠気が湧いてきたし。
起こしていた体をベッドに預け、目を閉じる。かくしてブロントさんも静かに安らかな眠りの深淵へと旅立つことにしたのである。

 
 
 
 
 
 

え、添い寝?ああ事実上そうなるんじゃないかなうん。

騒がしい外界

久々に紅魔城を訪れた主人公。
森を覆っていた霧は晴れたが城の周辺は紅霧が霞みの如くうっすらとかかっている。城主の魔力が漏れ出した結果らしい。
害はないそうだから別にいいけど。

 

「あら、こんにちは」
城の玄関で主人公を迎えたのはものぐさ系メイドのサクヤさん。

 

「今の時間、お嬢様なら棺桶の中で寝てます。いい機会なので今からお嬢様に奇襲をかけようかと・・・え、違う?
……みんなの様子を見に来た、と。はぁ、有難迷惑でございますがどうも有難うございます」
ほんと口悪いですねぇアンタ。

 

「生まれ付きで矯正できないんです。ご容赦くださいましこの野郎」
……^^###

 

そんなこんなで城の内部を散策する主人公。
城内を適当に歩いていると、ある部屋の扉が目に止まった。

 

【騎士様の部屋】

 

扉に掛ったプレートにはおしゃれな文体でそう書かれている。
騎士様の部屋……?

 

「ブロント様のお部屋です」

 

うぎゃあ!
いきなり背後に忍び寄ってきたのはメイド長。
背後から忽然と出てくるの止めてくださいますか!?

 

「これは失礼」
謝辞は出すが全く一切合財全然悪びれない。

 

「部屋の中が気になるんですか?」
まぁ、あの人の部屋ですから、ちょっとばかりは……ってオイコラあーたなにドアノブに手かけてんの!?

 

「えっ」
えっ

 

「だって気になるんでしょう?」
いやいやいやいや!幾らなんでもプライベートってもんがあるでしょう!?

 

「プライベート? そんな形容詞一語如き瑣末な問題です。そんなもの、私の道理で抉じ開けます」
瑣末じゃない! 抉じ開けるな! 立ち止れ!!

 

「いいツッコミだ、感動的だな、でももう遅い!制止不能よッ!(ドアノブ捻る)」
やめてくれないか! そういう腹パンしたくなるようなこと言うのは!

 

「いいや! 「限界」だ! (ドアを)押すねッ!」
ああもう畜生なんなんですかこのメイドさんッ!? なんでこんなにフリーダムなのッッ!?!?

 

あゝ無情。主人公の必死の制止虚しく扉は開け放たれた。メイド長マジフリーダム。

 
 

そして主人公とメイド長が部屋で目にしたものは・・・

 
 

「おいィ……おいィ……」
「すぅー……すぅー……」

 
 

……。
「……」

 
 

戻りましょうか。

 

「……えー」

 

……いいからさっさと戻るんだよ。

 

「わぁーりましただから腕を引っ張らないでください痛いいたいもげるもげっ……」

 
 

……昼寝の邪魔をする訳にはいかないからね。何があったのか知らないけど。あとで散々言われそうだけど。