経済統計とその見方(トリセツ)

Last-modified: 2024-02-29 (木) 23:16:49

◇この概要は……?

本記事は、統計表のガイドブックのようなものでっす!経済統計を読んで、グラフを作りたいときに、どうやって外国語とか輸入データなどを用いて、グラフを使うのかをできるだけ、簡潔に述べようとした試みだと思ってください。
経済統計や新聞に登場するデータは、昨今の日ペや外国の新聞でしばし目にします。しかし、このデータを用いる際に、よく登場する疑問として、前提知識として、「何が(データ元)」が「どれだけ(元々の数値)」で、現在のデータにどのような変化が起きているのか。というテーマを把握することが困難な場合があります。
大学や大学院、社会人教育などで統計をかじった方があれば、前述の疑問については、ある程度答えられるかもしれません。しかし、スレッドで往々にして見られるのが、新聞やツイッター(X)の語り口をそのまま使ってしまう事例です。言うまでもなく、他人の見方の引用ですので、その情報に正当性があるのかは疑わしくなってしまう可能性があります。
では、どうすればよいのか。本記事は、できる限り、輸入データやグラフ、先行研究を見ながら、データを照らし合わせる際に、使う手引のような元して、この問題を解決するために作成されました。

問題への取り組み方

誤解と偏見は厄介な問題であり、特に、ステレオタイプはなおさらです。例えば、このステレオタイプをご覧ください。

>ドイツ人の主食はジャガイモである。毎日、芋、芋。ただこればかり。
これは、本当なのでしょうか。しばし、このドイツ人の主食が芋であるという話がありますが、実態を把握するにはどうすればいいのでしょうか。スレッドでは、よく、「公式統計を見よう!(提案)」とありますが、公式統計と言いましても、統計局(Statistisches Bundesamt)を参照するべきなのか、それとも、他の省庁の出している統計なのか、見当がつきません。
この場合は、手順として、イメージを作ってみるといいですね。まずは、1.に合わせて、「ジャガイモを食べる」ことから、ジャガイモが農作物であることに注目しましょう。そして、農作物には必ず、重要な食料(日本では米・芋・麦類)のカテゴリーがありますので、これに付随した統計を参照するといいでしょう。

1. 問題に関係するものを概念化する。→2. 関係する統計資料を見るために、概念に合わせた公式統計を出している省庁などを見つける。

次に、2.に合わせるために、ウィキペディアで「ドイツの中央省庁(カテゴリ)」を引いてみましょう。参照すると、いくつかの省庁が出てくるはずです。
農作物ですと、ドイツにも、農林省に相当するBLE:Bundesamt für Landwirtschaft und Ernährung(農業食糧省)がありますので、こちらを参照しましょう。

そして、公刊資料を見るために、検索窓で「BLE Kartoffelnverbrauch」などと打ち込めば、以下のサイトが出てくるはずです。

BLEのデータ:https://www.ble.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2022/221118_Kartoffelbilanz.html

統計を見る上で、まず、数字に注目すると、2021/22という数字がありますので、2021~22年の統計なのだなとわかります。そして、どれくらいの消費量なのかな?と見てみますと、単位に注目すれば、キログラムがないかを探しましょう。すると、jede Bundesbürgerin und jeder Bundesbürger 20,3 Kilogramm Speisefrischkartoffeln (-3,7 Kilogramm) und 35,8 Kilogramm Kartoffelerzeugnisse(ドイツ国民は男女含め、ジャガイモ(未加工)が20.3kg(3.7kg減少)、ジャガイモを含む食料品を35.8kg消費している)というデータが出てきますので、ここから、ドイツ人は20.3kgのジャガイモを食べるとわかります。さらに、下の見出しを見てみますと、ジャガイモを含む製品とはポンフリやポテトチップであることがわかります。そして、この量を合わせた総計は56.1kgであることがわかります。
しかし、これだけでは、数値が多いのか、少ないのかわかりません。そこで、BLEに他の統計がないか、調べてみることとします。

公式統計を調べる前に、ドイツ語で、主食に相当する言葉を引きましょう。つまり、先程の手順と同じく、ジャガイモが主食であるのかを調べるために、主食という考えを概念にするのです。ドイツ語で主食は、Grundnahrungsmittel。まずは、この単語を検索窓に打ち込んでみます。すると、Liste(リスト)という単語が出てくるので、これも一緒に合わせて検索してみます。すると、BLEのアイコンである黒鷲が出てくるサイトがあるので、これをクリック。

BLE Vorrattabelle: https://www.ernaehrungsvorsorge.de/private-vorsorge/notvorrat/vorratstabelle

参照すると、Getreide Produkte, Brot, Kartoffeln(穀物類、パン類、ジャガイモ)があるので、ドイツでは、この3つのカテゴリーが食糧(穀類)に分類され、残りが食料(その他)だとわかります。
穀物類は、カテゴリーとして、「とうもろこし、麦、米」となり、パンは「小麦、ライ麦」となります。これを踏まえた上で、小麦粉を統計を調べると、BLEから次の統計が2020/21でているので、これを使ってみましょう(引用)

BLEの2022年報告:https://www.ble.de/SharedDocs/Downloads/DE/BZL/Daten-Berichte/Getreide_Getreideerzeugnisse/2022BerichtGetreide.pdf?__blob=publicationFile&v=2
BLEの公刊統計:https://www.ble.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2021/211201_Getreidebilanz.html

このPDFにある項目を見ると、概要(Zusammenfassung)に一人頭、83kgとあり、公刊統計にも同様の内容が書かれています。このデータを踏まえて、ジャガイモと比較すると、ジャガイモが20.3kgで、小麦粉が83kgなので、4倍近い開きがあり、ドイツではパンが主体なのかもしれないと考えることができます。
しかし、これだけでは、2つの要素を比べただけなので、一概に考えることはできません。念のため、もう一つの要素。麺類(Nudeln)を足してみましょう。
麺類でドイツなどのヨーロッパ圏で広く消費されているのは、スパゲティやペンネのようなパスタ類です。パスタ類は、Hart Weizen(硬質小麦)から作られることも、片隅に入れておきましょう。小麦の消費と、パスタは結びついている可能性があるのです。
そのうえで、麺類を調べてみると、次のようなサイトが引っかかります。

栄養局:https://www.bzfe.de/service/news/aktuelle-meldungen/news-archiv/meldungen-2023/dezember/appetit-auf-nudeln-bleibt-gross/

これによると、時代は一年後になりますが、2022/23の時点で、年に9.8kgの麺類(パスタ)が消費されていることがわかります。注意すべきなのは、これが、乾麺であり、水を与えて消費することです。パスタ類は水を与えると、およそ2.1倍ほどになるので、実際の量は、20.58kgほどとなります。このことから、ドイツ人は統計だけを見ると、ジャガイモよりも、パン類、同じ量で麺類(パスタ)を主に食べていることとなります。
統計を見るだけでも、ドイツ人がジャガイモを大量に食べるというイメージは、あたってはいるが、パスタ類と同様の消費量であり、ジャガイモ以上に、パン類の消費が多いことがわかります。
以上のことから、ドイツ人にとって、ジャガイモが主食であるとは言い難く、実際は数ある主食の一つに過ぎず、ドイツでは、パン食がむしろ一般的なのだとわかります

統計の応用 *編集中

以上の数字だけを見ても、ジャガイモは本当に毎日食べられているのかという問題は全くわかりません。そこで、次に、日本の統計を参照しましょう。
ドイツの場合と同じく、「農林省 ジャガイモ 消費量」と調べてみましょう。すると、次の結果が得られます。

農林省データ:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/r2shiryou.html

イモ類は主として、「かんしょ」という項目と「ばれいしょ」がありますので、ここはばれいしょに注目しましょう。ちなみに、日本では、里芋が作られておりますが、こちらは、イモ類に分類されます。まったくの余談ですが、里芋はドイツでも販売されており、Taro(タロイモ)だったりします。

統計を見てみますと、「全国1世帯あたりの購入数量」がありますので、ここをクリックして、PDFを見てみましょう(引用)。

「全国1世帯あたりの購入数量」:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/pdf/21_02_07.pdf

統計を見てみますと、未加工のジャガイモは平均として、平成30~令和2までに年に9.5kg(芋のみ)ほど消費していることがわかります。
この量は、ドイツの20.3kg(芋のみ)と比べて約2分の1程ですので、ドイツの消費量が多いことがわかります。しかし、日本の場合は米食・粉食(パン)ですので、日本と比較したとしてもそのデータが実際に、客観的に見て意味のあるデータなのかがわかりません。ここで重要となるのが文化的背景への理解です。ドイツなどのヨーロッパ圏では、芋は救荒食として消費されてきた側面があります。特に、南直人の『食から読み解くドイツ近代史』(2015)のように、ドイツではジャガイモがフリードリヒ大王によって広められたクリシェが一般的でありながらも、実は~~~(失念!借りてくる!)