資料/「スタチャマニア?!」vol.5(2005年)夏号 どこよりも早い!PD3氏ぶっちゃけ座談会

Last-modified: 2014-03-14 (金) 01:17:30

どこよりも早い!PD3氏ぶっちゃけ座談会

(千野 孝敏、能戸 隆、中西 豪)

蔵前果林の生きた姿を見たいというのが、発端でした

能戸 そもそも中西さんが収録時に「作りたいんだよ、作りたいんだよ」って念仏のように言っていて。
中西 違う違う(笑)。最初に言い出したのは僕じゃなくて、テレビ東京の東プロデューサーです。
千野 表向きはそうなってるんですけど、26話のアフレコの日でしたよね。終わって、キャストとスタッフで食事しましょうか、となったときに、ベロンベロンに酔った中西さんが「やりましょうよ!」って(笑)。かなり酔ってましたよね。
中西 そんなことないですよ。もう一回、ちゃんと説明させてください(笑)。26話のアフレコが終わって打ち上げをしていた時に、能戸さんが東さんと二人でテーブルの端のほうで話をしていて。
能戸 東さんが僕を逃がさないようにして、2時間、蔵前果林について熱い話をして。
千野 俺の蔵前はこうなんだ、と(笑)。
――蔵前の活躍する姿が見たくて、そのための続編だった?
中西 東さんの中ではそうだったみたいです(笑)。本当に好きだったんでしょうね、蔵前が。それで場所を移して二次会になった時、ここの3人と東さんで、さらに話し合って。で、「やろう」と決まりました。
――飲みの場で製作が決定して、じゃあ、次の段階は?
能戸 冲方さんと平井さんを説得する。
千野 冲方さんは、打ち上げで話したことを知らないから。
能戸 中西さんが冲方さんに、僕が平井さんに企画をはなすことになって。
――冲方さんの反応はどうだったんですか?
中西 よく覚えてないんですが、「え、マジですか?」という反応だったような気がします。それで「どんな話にしましょうか?」と言われたんで、「蔵前果林でお願いします」と。「ああ!」と妙な納得のされ方をして(笑)。
――それで、冲方さんがストーリー作りに着手した、と。
中西 その前にひと工程あって、能戸さんがプロットを作ってくれたんですよ。
能戸 今回の作品を作るにあたって、やりたいことをつらつらと。
――蔵前を出すということは、1話以前の話であることが前提ですね。
能戸 そこは最初の打ち上げの時に決まってましたね。
中西 能戸さんのプロットは詳しかったですよ。本編で消化しきれなかったことや、説明不足だったことが補足されていて。
能戸 本編から遡って、第1話以前の人間関係やメカの開発状況を整理する必要があったので。
中西 それを冲方さんにわたして、どんな話にするのかのラインを話あって。そこから先が大変でした。
――蔵前の話をというところから、新たな主人公を二人出すということに変わったわけでですよね。
能戸 これも東さんからのアイディアです。1学年上が本編に出てこなかったので、上の世代を見せましょう、と。
中西 上の世代がどうなっていたのか、というのは本編を描く前に設定があったんですけど、それは視聴者には説明してなかったので、それを見せましょうと。
――僚と裕未を作ったのは?
能戸 それは冲方さんです。
中西 最初は苗字が逆だったんです。生駒僚と将陵裕未で。
――平井さんのキャラ表では、裕未は大人っぽい印象ですね。
能戸 裕未は家族構成上、自分のことをしっかりできる女の子という感じを出して欲しいと頼みました。
――逆に、僚は線の細い感じで。
能戸 そこも設定に関わってくるんです。
――人物描写に関して、本編では見えなかった人間関係がさらに分かるというポイントはありますか?
能戸 いろいろあります。たとえば、皆城公蔵がいかに総士に甘いか、とか(笑)。
――そうなんですか(笑)
能戸 総士も公蔵も嘘を言いながら、お互いの本音を分かり合って行動していくという部分があるんですよ。その親子関係が面白いと思います。 あと、1話以前の蔵前が何を知っていて、どう考えていたかというのは、もちろん描写されます。
中西 そこは結構切ないですね。蔵前ってこんな女の子だって知ることができて、そんな彼女が1話ですぐ消滅してしまうのが分かってるわけですから。
能戸 もともと最初はいなかったキャラなんですよ、蔵前は。
千野 1話で出すことにして、小説版でさらに描かれて。こういう子なんだと、僕らも分かって。
――総士は、シナジェティックスーツを着るということでしたが?
中西 能戸さんが、ファフナーの搭乗訓練は描いておきたいと。
千野 総士がファフナーに乗る決意を見せましょう、と。
中西 そうですね。それをやっておかないと本編の総士がイヤなヤツで終わっちゃうので。1話か2話で、総士が一騎に「僕が乗れれば」って言ってたじゃないですか。「でも、この傷があるから」って。その理由を見せておきたいな、と。
能戸 何で乗れないのかと理由を描いておけば。総士の思いも補完できるっていうのは、千野さんと最初から言っていて。
――物語のヒントとなるのは、「そのとき、あなたがいてくれたから・・・」というキャッチコピーだと思いますが、これはどのようにして作られたんですか?
能戸 中西さんからこれで行きたいんですってメールが来たんです。
中西 違います違います(笑)。今回も「あなたは、そこにいますか」みたいなコピーが欲しいねって、冲方さんと話をした時に、冲方さんがちょっと考えて「あなたがいてくれたから」と最初に言ったんですよ。で、「あ、それいただきます」と。それで「あなたは、そこにいますか」という問いかけに対して応えているというふうに捉えた時、「そのとき」という言葉を入れましょう、と能戸さんが言ったのを僕がメモって、みなさんにメールを回したんです。
――本編のコピーとうまく応答し合うようになってると。僚たちの世代と一騎たちの世代を繋いでいる言葉なのかなとも思ったんですが。
能戸 それ、いただきで(笑)。
中西 次に誰かに聞かれた時は、そう答えましょう(笑)。
――『RIGHT OF LEFT』というタイトルに関しては?
中西  これも冲方さんです。
能戸 最初からありましたね。このタイトルは。
中西 RIGHTには権利、LEFTには去るという意味も含まれていて。
能戸 それに総士は一騎の左とか、そういう一巻けのイメージは本編からあって「誰かの隣」という意味も、かなり大きいですね。
――深いタイトルなんですね。いろいろと想像が膨らんできます。
中西 完成をお楽しみに。