資料/アニメージュ2005年11月号 冲方丁(ドラマCD脚本)インタビュー

Last-modified: 2014-03-14 (金) 01:58:35

本編では語られなかったテーマを、新たなアイディアの中で描きました。

──まず、ドラマCD『蒼穹のファフナーvol.1 STAND BY ME』についてですが、この物語は本編の何話くらいにあたる話なんですか?
冲方 2話か3話あたりですね。まだ一騎以外はファフナーに乗ってない頃の話です。みんな、パイロットに選ばれたことに戸惑いがあって、アルヴィスの制服を着るかどうかも迷っている時期です。
──前回のドラマCDは、一騎、総士、真矢の電話のやり取りをメインに構成して、アクションシーンがなくても独特の緊張感が醸し出されていましたが、今回はどのようなアイディアが盛り込まれているのでしょうか?
冲方 ファフナーの訓練というのを切り口にしました。訓練の中にメディテーション(瞑想)のカリキュラムがあって、それぞれが思い描く海のイメージを、物語の中心に出来ないだろうか、と考えたんです。
──一騎や真矢たちがイメージした海が、自分の心の有り様を投影しているんですね。
冲方 そうですね。シミュレーション用のコクピットに入って瞑想しているから、それぞれの頭の中には海が具現化される。その海の意味するものが、肯定的だったり否定的だったりと、揺れ動くところに、人間関係のドラマを重ねています。
──今回のドラマで、やりたかったこととは?
冲方 ドラマCDは2枚リリースされるので、序盤のキャラの気持ちと、終盤のキャラの気持ちを、メディテーションによる海の光景で繋いでみようというのが課題でした。『STAND BY ME』では、序盤の各キャラの心情を描いて、次のCDでは、それがいかに変化していくか。それに甲洋や翔子はカノンのことを知らないし、カノンも二人のことを知らないじゃないですか。その断絶された二つの時間を、CDドラマにおいて繋げてみようと思いました。
──2話か3話の段階の話ということで、『STND BY ME』にはカノンは登場しませんね。
冲方 そうですね。カノンは2枚目だけの登場になります。
──『STAND BY ME』では、どんあ人間関係のドラマがあるのか、ヒントをいただけますか?
冲方 大きなものの一つに、真矢、翔子、咲良のドラマがあります。真矢と翔子の関係を、咲良が批判するんですが、そこに咲良の隠された願望が入りこんでいます。一方の真矢と翔子の関係も、単に仲がいい二人というわけではなく、本音を隠しながら付き合っている部分がかいま見えてきます。
──CDの発売が楽しみです。そして、冬には待望の『RIGHT OF LEFT』があるわけですが、冲方さんとしては、『RIGHT OF LEFT』の物語に、どのような思いをこめたのですか?
冲方 1話以前の物語で、新しいキャラクターが登場するということで、本編では語られなかったテーマを、どう描いていくかを考えました。
──本編では語られなかったテーマとは?
冲方 翔子で語るべきテーマが未消化だったので、なんらかのカタチでやってみたい、と。親子の葛藤と、そして戦士として避けられない側面。それが、タイトルの『RIGHT OF LEFT』に込められています。RIGHTは権利とか主張ですね。LEFTは去っていく者という意味があります。島を守るために戦う人たちの、使命感、義務感、何かを達成したいと願う気持ち、そして周囲の人への思いを、ストレートに描いていきたいと考えました。
──第1話以前の一騎と総士は、どのように描かれるのですか?
冲方 かなりぎくしゃくした関係ですね(笑)。そもそも『ファフナー』の物語は、二人の少年がいかに心の交流を結んでいくかの物語だったので、1話以前の二人が、いい関係ではないことは大前提です。もっぱら総士のほうが一騎に冷たくて、一騎はそれにいじけているという感じです(笑)。