資料/アニメージュ2005年9月号 祝ファフナー復活対談 羽原信義(監督)×鈴木利正(演出)

Last-modified: 2014-03-14 (金) 01:53:21

中学3年の僚と祐未 二人が見た戦いとは?

──冲方さんによるシナリオを読んだ時の感想は?
羽原 TVシリーズ第1話の前に、総士に何があったのか、その一端が分かって、興味深く読ませていただきました。上級生から受け継がれたものがいかに大きかったのかが分かって、TVシリーズをもう一度、違った視点で見てもらうことができる作品になるのではないか、と思いました。
鈴木 酷な部分があるストーリーなんですけど、先輩たちが後輩に思いを託していくというストーリーは、魅力的でした。TVシリーズは9話の演出しかタッチすることができなかったので、今回、深く関わることが出来て嬉しいですね。
──シナリオに関して、羽原監督から何か要請したことはあったんですか?
羽原 僕からの注文は、TVシリーズからのキャラクターと新キャラクターのバランスですね。僚と祐未に重きが置かれるのは当然ですが、TVシリーズから見てくれている方のために、TVシリーズのキャラの出番も散りばめてもらいました。尺の都合もあるので、全員というわけにはいきませんでした。
──新キャラクター、僚と祐未の印象は?
羽原 個性あふれる『ファフナー』キャラたちの中に、また別な魅力を持った二人が登場してきたな、という感じがしました。僚は平井さんのキャラデザインもいい具合にワイルドですが、実は体がそんなに丈夫ではない、みたいな。外見と内面の印象が違うという部分で、『ファフナー』のキャラらしいですね。祐未はちょっと大人っぽいデザインになっていますが、実は物語の中盤から、ちょっと外見が変化していくんです。キャラの気持ちの流れと合わさって、外見が変わっていく様子を楽しみにしていただきたいですね。
鈴木 たしかに、外見と内面のギャップがある二人ですね。僚も祐未も、強い心と弱い心を合わせ持っていて、そこをどう見せていくかは、しっかり考えたいと思っています。
羽原 そこが難しいんですよ。シーンによって、感情を表に出す演技に持っていくか、抑えたほうがいいのかの判断は、絵コンテをチェックする際の重要なポイントです。
鈴木 シナリオを読んだイメージだと、僕は抑制された表現の方が二人に合っている思いました。それを顔のアップではなく、カメラを引いた絵で、背景ともどもキャラの情感を語らせるという絵作りをしていきたいな、と。
羽原 そうですね。今回は光の演出を意識した絵作りをしていきたいと思っています。撮影さんや美術さん、色指定の方と綿密に打ち合わせして、きめ細かい画面にしたいですね。新しい景色としては、僚と祐未の家が登場します。実は、祐未の家はTVシリーズにもちらっと出ているんですが。

懐かしいキャラクターが続々と登場!

──一騎や総士の出番も楽しみです。
羽原 まだ仲がぎくしゃくしていた頃の二人です。この二人にも、いい感じのシーンがあるんですよ(笑)。
鈴木 人間関係を作るのが下手なのが、一騎と総士じゃないですか。TVシリーズでも、総士が一騎を自分の部屋に呼んで、何を話していいのか分からないといったシーンがありましたが、今回は1話以前ということで、さらに不器用な二人になっています。
羽原 ちょっとした懐かしさを感じられるかもしれませんね。最初の二人はこんな感じだったなぁ、と。
──さらに蔵前果林が重要なキャラとして登場するということですが?
羽原 1話の時点で島のことを知っていたのは、総士と蔵前だけなんですよ。この二人がどういう気持ちでいたのか、そして上級生たちとどう関わっていたのかが、今回は描かれることになります。さらに、1話で出撃前の蔵前と一緒に亡くなった道生のお母さん、日野恵の登場もあります。
──改めて蔵前を描いた感想は?
羽原 より深く内面が描けたと思います。第1話でなぜあのような表情になっているのか、わかってもらえるはずです。これを観る前に、是非1話を見返しておいてください。また、6話で亡くなった羽佐間翔子の登場シーンもけっこうあるのでお楽しみに。
──ストーリーについて、最後に何かヒントをいただけますか?
羽原 そうですねぇ……。僚と祐未が竜宮島で生きていた重さとか空気感を感じられるドラマになっていると思います。
鈴木 飛び抜けた能力があるのではなく、普通の中学三年生の少年少女が、島を守るために懸命に戦う。そこから立ち現われるドラマを、島の美しい風景を含めて情感豊かに描いていきたいですね。
羽原 スタッフの力を合わせて、いい絵を作れるよう、がんばっていきたいです。