資料/Newtype2005年2月号「412日の歓喜 創作者たちの喜びと苦悩」

Last-modified: 2014-06-01 (日) 02:18:43

ファフナーに携わったクリエイターたち
企画スタートから放映終了まで、彼らが過ごした
1年以上にわたる時間が意味するもの

 

今までにない楽しみや苦しみを味わった作品だった

「キャラクターひとりひとりの行動やストーリー、そしてSF的な設定がとてつもなく深くて……その中で演技、セリフ、画面づくりなど、すごく悩みつづけながら完成度を高めていった作品でしたね」
 すべてが終わった後、そう語るのは羽原信義監督だ。そんな監督がこの作品の監督として力を尽くしたのは、ヒューマンドラマとしてキャラクターたちの深い心情を描くことへのこだわりだったという。
「顔では笑っていても、心では泣いている。そういった、それぞれのキャラがもつメンタルな部分を、できる限りわかりやすく見せるように気をつけました。映像的には、スタンダードを踏襲しつつ、光源などはあえてリアリティを無視するように指示しました。影の付け方によってキャラの気持ちがより強く表現でき、そのカットごとに必然性のある絵になると考えたからです。今からみるとそれは正しかったと思います」
 また、完成度の高いシナリオをどれだけアニメ作品として昇華させるか、難しい話をどこまでわかりやすくするかというバランスにも気を遣ったという。羽原監督はそうして「蒼穹のファフナー」という作品を、築き上げていったのだ。
「自分にできることはすべてやったという感じです。足りない部分はたくさんありましたが、そこは優秀なスタッフたちのものすごい頑張りに助けてもらいました」

羽原監督を支え作品をつくり上げたこだわりの職人たち

 強いこだわりをもって作品に臨んでいたのはもちろん羽原監督だけではなかった。彼を支えたスタッフたちも、この作品に強いこだわりを抱いていたのだ。
「監督から要望されたものについて、現場でさらに一歩踏み込む形で、より高いクオリティをめざしました」
 撮影監督として神秘的なファフナーのコクピット内部の映像や、フェストゥムなどをはじめとした美麗な映像をつくり上げた広瀬勝利はこう語った。また、音響監督の三間雅文はみずからの仕事を振り返る。
「難しい部分や謎が多い作品で、それを自分の中で消化するために、アフレコ前は監督への30分の質問時間を設けていました。ほかにも心情の芝居が多い作品ということで、役者がお互いに納得するまでアフレコをやりました。テイク12とか13とかはザラでしたね」
 さらに助監督として、また作画監督のひとりとして監督を支えた山岡信一はこう語った。
「違うなと思ったら、時間の許す限り描き直しましたね」
 最後に能戸隆プロデューサーが、スタッフみんなの気持ちといえることばを語ってくれた。
「いろんな汁が出るぐらい(笑)大変だったけど、やりがいがある仕事でしたね。この作品が、みんなの中で一生忘れられない作品になるんじゃないかな。そして、『ファフナーが自分の代表作』と言える作品になってくれればいいと思うよ」
 アニメでできる限界を極めた高い完成度を誇る「蒼穹のファフナー」。不断の努力と、プロとしての矜持をもってをこの作品をつくり上げた創作者たちの戦いは、ここにひとつの終止符を迎えた。だが、これが真の終わりを意味するわけではない。彼らは創作者である限り作品をつくりつづけることをやめない。われわれはいつかまたどこかで彼らに再会するだろう。その日が楽しみだ。

STAFFが語る「蒼穹のファフナー」の思い出

撮影監督・広瀬勝利

作品の映像の部分の監督を務めていたんですが、今回は現場の若手にセンスを求めて、新しい映像にチャレンジした作品でした。撮影のチームとして結束できたこともあり、ぎりぎりまでクオリティを出し切れたと思います。

助監督・山岡信一

助監督のほかに、作画監督などもやっていたんですけど、すごくキャラの表情が微妙な作品で、最初は難しかったんですが、後半はかってにキャラが動いてくれたという感じで、体はきつかったけどやりがいがありました。

プロデューサー・能戸隆

原作ものが多い中、オリジナルということで、キャラの服やメカなどけっこう好きかってやらせてもらいまして、そういった部分がおもしろかったですね。ここまでのめり込んだのは、久しぶりでしたし、やり終えた感に満たされました。

音響監督・三間雅文

監督ともいろいろと意見を戦わせたし、熱くなる現場でしたね。いちばん印象に残っている役者としては、遠見真矢役の松本まりかですね。彼女は、テイクを重ねるごとによくなるので、妥協しないでとことんやりました。

文芸統括・冲方丁

小説は文章を書けば終わりですが、アニメは逆にそこから制作が始まります。ゴールだと思っていた場所がスタートであるという刺激あふれる体験をいただきました。この体験を、しっかり昇華します。ありがとうございました。