2021年から2023年に至るまで:対戦開始前における戦いのすごく大きな変化

Last-modified: 2023-07-26 (水) 20:46:42

対戦開始前における戦いの大きな変化

2023年の夏季から導入された新しいBan&Pick制度で、試合の戦略性が一層深まりました。サバイバー側が最初に選択した2キャラクターはその後のラウンドで使用不可なり、Mapの選択権だけでなく使用するキャラクター選択によって、各ラウンドの重要度に影響を与えるようになりました。序盤で強力なキャラクターを消費することはセットを取れなかった場合を考慮するとリスクを負う選択となりました。また、ラウンドが進んだ時、前半に勝負をかけて重要なキャラクターを消費済みのチームは不利になり、反対に温存していたチームが有利となるなど、試合展開を考慮した上での最適なキャラクター運用を求められるようになりました。つまり、新しいBan&Pick制度により、どのキャラクターをどのタイミングで切るのかという選択するという戦略性が高まりました。
また、Ban&Pick制度のもう一つの影響は、下のグラフにあるように使用するキャラクターの範囲が広がったことです。Banされるキャラクターの数が増え、その結果、各チームは使用するキャラクターの範囲を広げました。2022秋季IJLでの各チームの平均使用キャラクター数が19.5だったのに対し、新制度導入後の2023年の夏季では23.9と、第3ラウンドで固定banされる4キャラクター分ほど使用キャラクターの範囲が広がりました。
このページでは、第五人格の大会における、試合開始前の戦略に焦点を当てます。しかし、ここでは概要を述べるに留めてマップのBan&PickとキャラクターのBan&Pickについては個別のページで詳しく考えます。
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これまでのBan&Pick関連の進化の振り返り

競技としての第五人格では試合開始前の戦略として4つの要素があります。それはマップのBan&Pick、キャラクターのban&pick、スポーン選択そして人格選択です。

マップのBan&Pick
2022年の夏季より、マップのBan&Pick制度が本格的に導入されました。以前は第3試合にアウェイ側がBanできるだけの形式でしたが、現在では第1ラウンドと第2ラウンドでBan&Pickを行う形式に移行しました。以前は、特定のマップを得意とするチームは確実にそのセットを取得することで試合展開を有利に進めていました。例えば、2019年における「結魂者」「夢の魔女」「血の女王」という三種の神器を兼ね備えたppxは平均4吊りの男と評され、所属のGr戦隊は「軍需工場の工場長」と称されていました。また、銀河戦艦時代のZQはkenの2020年の夏にサバイバーたちを恐怖に陥れたガードNo.26だけでなく、秋には彫刻師でリーグトップの平均得点3.21を記録するなど、赤の教会のマップが得意とするハンターを複数所持していました。また、MKの祭司を中心としたサバイバー陣も教会で20試合中16勝4分0負、平均得点3.1でした。どのチームもZQとの赤の教会戦ではセットを分けることすら困難なほどこのマップはZQにとって強力な得点源となっていました。日本ではLittle Magic戦隊そして後継のREJECTが、月の河公園のギミックや地形を巧みに利用した立ち回りや、赤の魔術師のキャラクタープールを活用した戦略で、「園地はLMの庭」と呼ばれるほどの圧倒的な地の利を築き上げていました。しかし、マップのBan&Pick制度の導入により、この戦略は通用しづらくなりました。つまり得意なマップは必ずbanされ、一方的に有利な条件で試合を進めることはもはや難しくなりました。現在では、相手の得意なマップや不得意とするマップを分析し、いかに自分たちに有利になるようにマップを選択、禁止するかということが非常に重要となっています。しかし、以下のグラフのように現在のIJLではホーム・アウェイやマップ選択による利点を活用できていないようです。
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このグラフから7チーム中5チームがホームよりアウェイの試合で著しく勝ち越しているいます。さらに、リーグ全体でマップをPickした側よりもBanした側の方が成績が少し良いことが見て取れます。これらの結果から3つの可能性を考えることができます。1つ目は、今季のIJLの各クラブがホームゲームやマップ選択という利点を十分に活用できていない可能性があります。もう1つは、現行の環境において、これらの権利が勝敗に対してそれほど重要ではないことを示唆していると考えられます。最後にMapのbanが導入されたことにより極端に有利なマップを作ることより満遍なくマップを練習することに注力している可能性があります。

キャラクターのban&pick
日本のチームも参加した世界大会であるCOAⅡでは、第1ラウンドでは互いにBanなしで環境キャラ同士の真っ向勝負繰り広げられましたが。しかし、大会直後の2019年の春季Nextからは第1ラウンドでハンター側が1キャラクターをBanできるようになりました。次に大きな変更が加わったのは2021年の夏季で、第1ラウンドでハンター側が2キャラクターをBanできるように変更されました。2年前の記事であるIVL BANのすごく大きな変化で述べた通り、これまで固定化されていたキャラクター選択に大きな変化が加わり、各チームの選手たちはBan&Pickの重要性について語るようになりました。その後、2022年の夏季では第1ラウンドで3キャラクターをBanできるようになり、COAⅥでは4キャラクターのBanが可能となりました。ついに今季からは固定Banが導入され前述のようにキャラクターのban&pickの戦略性はより一層高まりました。下のグラフは第1ラウンドにおけるサバイバーの編成です。このグラフを見てもサバイバーの編成が新しいban&pickやスポーン選択の導入により変化するのが分かります。そして今季はこれまで以上に第1ラウンドのキャラクターが多様化しています。2020年の夏季IVLでは、第1ラウンドのキャラクターといえばほぼオフェンス、傭兵、墓守、機械技師で固定されていていました。時代を経ることに第五人格の競技シーンにおける使用キャラクターは多様となっています。
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スポーン選択
スポーン選択制度は、2022年秋季より導入され、プレイヤーのスポーン位置がランダムから選択制に変更されました。これにより、試合の序盤での不確定性が減り、両陣営が試合の展開をより戦略的に組み立てることが可能となりました。特にこの制度の恩恵を受けたのは、地形を利用する能力を持つ踊り子や玩具職人などのキャラクター、そして強力な補助能力を持つものの、スポーン位置によって試合への関与が難しかったキャラクター(バーメイド等)でしょう。ランダムスポーン制度下では、空間的な移動能力を持つ祭司、位置に関係なく防御可能な占い師や回復可能な心理学者など、距離的な制約を受けないキャラクターがサポートキャラクターとして活躍していました。ランダムスポーン下でそれ以外の補助キャラクターを使用する場合、補助時間と移動時間に対する解読時間との間にはトレードオフ関係が存在し、その結果、安定的な支援を行うことが難しかったです。しかし、スポーン選択制度の導入により、この問題はある程度解消されました。特定の地形を活用するキャラクターの能力を試合展開に組み込むことが容易になり、フライホイール効果の導入もこれらのキャラクターの採用を促進する要因となりました。結果的に、スポーン選択制度により、以前は安定した活躍が難しかったキャラクターが見直され、多様なキャラクターが活躍できるようになりました。また、スポーン配置が固定されたことで、暗号機解読における不確定が減り通電時間を想定した作戦の立案が可能になりました。暗号機の配置は一定のランダム性を持つものの、チェイス役が追われる前提にした作戦を立てることで、最初の暗号機から次の暗号機への移動時間を最小限に抑え、さらに全体での引き継ぎの最適化が可能になりました。これにより、ハンターの内在人格である封鎖の影響下でも通電までの時間を短縮できるようになりました。。解読速度が早いチームと遅いチームの違いは個々の移動時間だけでなく全体の移動時間を考慮した暗号機解読の最適化の連携を実施できているかどうかの違いでしょう。

人格選択
2022年の夏季プレイオフから、サバイバーの人格でほとんど使用されていなかった傍観者がフライホイール効果に置き換わるという大きな変更が実施されました。これにより、かつてはほぼ固定化していたサバイバーの人格に大きな柔軟性を持つようになりました。この変化はサバイバー側における活躍できるキャラクターの範囲が広まりした。
ハンター側にも影響は見受けられ、フラホへの対策を持つ蝋人形師や左右が減ったことでガードNo.26のPickが増加しました。また、Wolvesのグラドスラムという偉業を成し遂げた立役者であり、前年の象徴とも言える破輪が姿を消しました。今季では、左上等の採用も増えており、この変更が環境に大きな影響を及ぼしたことが確認できます。

これらの4要素でどれだけ有利を得られるかが対戦開始前に繰り広げられる戦いです。第五人格は、ゲーム序盤の不確定要素を減らし、試合での作戦を立てやすくし、banなどのルール制約を加えることで、純粋なプレイスキルのみならず戦略的な運用の重要性が増しています。ゲームが複雑化した結果、各チームのコーチやアナリストは選手のプレイスキル以外の負担を軽減し、対戦相手や全体的な試合展開を想定した作戦の立案に重要な役割を果たせるようになりました。
これらの4要素のうちマップのBan&Pickキャラクターのban&pickについて考えます。詳しくは以下のページのリンクをご覧ください。

リンク

マップのBan&Pick
マップの選択権は重要か?脱領土化されたホーム

キャラクターのban&pick
BPについてはデータの探索を行なっていますが、主に能力不足、そして第五人格に対する知識不足から難航中