マップの選択権は重要か?脱領土化されたホーム

Last-modified: 2023-07-27 (木) 00:46:58

脱領土化されたホーム

このページに記載したように、2023年夏季のIJLではアウェイ側が圧倒的に勝ち越しています。このグラフを見た方はアウェイ側の方が有利だと感じるのは当然のことだと思います。では、この事象はただ単に偶然によるデータの揺らぎなのでしょうか?それとも何らかの事実を示唆しているのでしょうか?このページではIJLにおいてホーム側とアウェイ側どちらが有利なのかを実際のデータを元に考えていきたいと思います。

領土ではなくなった地図

現在のマップのBan&Pick形式は2022年の夏季より導入されました。そこで2022年のIJLリーグ戦における全データと今季のIJLのデータを使用します。COAⅥのデータはトーナメントという性質上、不確定性の問題があるのでここでは除外します。ここで、ホーム側とアウェイ側が得ることができる権利を再度整理しましょう。
ホーム側が得られるのは第1ラウンドのマップの選択権、第2ラウンドのマップの制限権と陣営選択権と第3ラウンドのマップの選択権、第4ラウンドの陣営選択権です。アウェイ側は第1ラウンドのマップの制限権と陣営選択権、第2ラウンドのマップの選択権、第3ラウンドの陣営選択権、第4ラウンドのマップ選択権です。
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このグラフを見ればわかるように今季は多くのチームでアウェイ側の方が勝ち越しています。そして今季のIJLではホーム側は17勝でアウェイ側は25勝となっています。2022年の夏季はホーム側21勝、アウェイ側21勝、秋季ではホーム側17勝、アウェイ側25勝となっています。合計するとホーム側は55回勝利し71回敗北しています。仮設検定を行うため、帰無仮説にホームとアウェイには統計的に差がないとし、対立仮説に有意な差があるとします。計算するとP=0.02とP=0.05の水準においてホーム側とアウェイ側で有意に差を持つという結果になります。つまりIJLにおいてはアウェイ側の方が有利である可能性が示唆されます。

では、なぜアウェイ側の方が勝ち越しているのでしょう?まず、第1に考えたいのはマップの選択権と制限権はどちらが有用な権利なのか。一見するとマップを選択する方が有利です。しかし、それと同じぐらいにマップを制限する権利も重要な影響を及ぼしているのではないでしょうか?そして陣営選択権は実際の試合においてどう活用されどう効果を及ぼしているのでしょうか。これまでマップのBan&Pickに焦点が当てられ陣営選択権の影響はあまり考察されていませんでした。しかし、IJLにおいてアウェイ側が大きく勝ち越している現状を考えると、陣営選択権の強力な行使がその要因となっている可能性が浮かび上がってきます。

陣営選択権はどう行使されているか

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このグラフは各シーズンにおいてラウンド1のアウェイ側の先攻陣営選択を示しています。2022年を見てわかるように多くのチームがどちらか片方の陣営を優先して選択しています。
2023年夏季においてサバイバーの勝率が1位のZETAと3位のAXIZは、サバイバー陣営を先に出場させています。しかし、実際のAXIZの試合を観戦すればわかりますがアウェイ時前半のサバイバーが攻撃的な編成で勝利を目指したのが裏目に出て、多くの試合で後半ハンターであるDmingがカバーしています。SZとFLは陣営選択を半々にしており、選手の調子や対戦相手との相性によって決定していると考えられます。反対にハンターによる勝利を期待しているAWG、FAV、RCはハンター陣営を先攻させ、得られた点数を後半のサバイバーが保守することを志向していると考えられます。特にFAVは先攻のChikinが全勝しかなり戦いを優位に進めています。これらのデータからは、IJLにおいて陣営選択権が有効に活用されていることが示されています。

陣営選択権の方が重要か?

ではMapの選択権を持つことはどれほど有利なのかをデータを元に考えていきます。上のページで示したように今季のIJL全体のデータではMapの選択権を持つ側の方が平均脱出数も脱落数も低くなっています。そこでより細かく各シーズンのデータからラウンドごとにMapの選択権を持つ側と制限権を持つ側の平均脱出数も平均脱落数を計算しています。
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まず、左のグラフを見てわかるように多くのシーズンにおいてMapをPickする側よりBanする側の方が成績が良く、第3ラウンドにおいては全シーズンでBan(ここでは便宜的にこう表記しています)する側の方が良い成績を出しています。なぜMapをPickすることはそこまで有利とならないのか、ましてや不利となっているのか?考えられることとしてはMapを制限する権利も同じように重要であることです。MapをBanし相手の得意Mapを封じることでMapを選択する権利をそこまで強く行使できていないといことが考えられます。また、第1ラウンドでは1Banですが、第2ラウンドと第3ラウンドでは2Ban、第4ラウンドでは3Banとラウンドが進むにつれMapの選択肢は少なくなるので、Mapの選択権の価値が低下することが考えられます。陣営選択権という得点状況においてどちらの陣営を先に出すかを決めれる権利は状況をコントロールしやすくなり、特に決着ラウンドとなりやすい第3ラウンドで価値が高くなる可能性があります。このような理由で多くのシーズンで第3ラウンドにおいてMap選択権を持つより陣営有利営選択権を持つ側が成績が高くなっているのでは無いでしょうか?また、右のグラフで第3ラウンドで決着した場合にアウェイ側が大きく勝ち越しています、以上のことを整理するとBO3では多くのチームはマップ選択権より陣営選択権を強く行使し、2回のマップ選択権を持つより、2回の陣営選択権を持つ方側が試合を有利に進めているのではないかと考えられます。

補足:第4ラウンドについて

第4ラウンドにおいて、マップ選択権を持つ側が有利となる原因を考えてみましょう。このラウンドでは引き分けの場合時間勝負という特殊な要素が追加されこれまでのラウンドとは違ったルールでの勝利方法が導入されます。また、わずか12試合が延長戦に突入したということから、偶然の結果である可能性も十分にありえます。
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まず、第4ラウンドにおいて陣営選択権を持つと有利になるかどうかを考えてみましょう。時間勝負が加わるという要素を考えると、能動的に遅延戦術をとれる側であるハンター陣営を先に出す方が有利だと考えられます。つまり、先行してハンター側を出し、状況に応じて遅延を実行することで、後半の試合展開を有利に進めることができます。なぜなら3逃げされた場合でも、遅延を実現できれば、後半の相手ハンターに対する圧を高め、勝利条件に対する制約をかけることができます。サバイバー側で前半に能動的に脱出を早める場合はリスクを取り解読を早める編成を組む必要があります。能動的に行動でき先に条件を決めることを考えると前半にハンターを出す方が有利と考えられます。しかし、2022年はサバイバー側が有利な環境であり、7戦中6戦で陣営選択権を持ちながらサバイバーを先に出しています。その結果はハンター側が先にプレイした方が5勝するという結果となりました。よって陣営選択権をもつホーム側が負け越し、マップ選択権を持つアウェイ側が勝ち越しました。今季ではAXIZ、SZ、ZETAの3チームが陣営選択権を持ち、先にハンターを出すという選択をしました。その結果は先攻のRyzが2吊りしたものの、後半でAKaの狂眼に4吊りされたAXIZ以外は勝利しました。一方、FLは2試合ともサバイバーを先に出して敗北しています。12試合中でサバイバー先攻3勝ハンター先攻9勝という結果から、偶然の可能性は大いにあるものの、多くのチームが陣営選択権を持ちながら、時間勝負が重要となる第4ラウンドで先にハンターを出すという、本来ならば有利となるであろう選択の逆をしたことが、裏目に出た可能性が考えられます。

ホームの再領土化

夏季プレイオフでは、リーグの順位が高いチームにホームチームの権利が与えられます。サッカーや野球などのスポーツでは、ホームチームの有利性が多くの調査で実証されています。第五の大会でもホームという権利を上位のチームに与えるのであれば、ホームを有利となるように設定するのではなく、上位のチームがマップ選択権か陣営選択権のどちらかを選べる、言い換えればホームアウェイの選択ができるようになればより戦略性が高まると感じます。MapのBan&Pickだけでなく観戦の際に陣営選択権を各チームどう使っているかについても注目して見ると特色が出ていて楽しめるかもしれません。

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