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Last-modified: 2021-03-26 (金) 01:45:31

野盗に気をつけろ その2

  話者  セリフ備考
-週刊アドベンチャラー
 連載コラム

   野盗に気を付けろ

      その2
-焦りから 深夜の強行軍を選択した
わたしは 野盗団の棲家に足を
踏み入れてしまった。
普通ならば わたしはそこで
野盗たちに身ぐるみを剥がされ
武器や防具はもちろんのこと
持っていた薬や 金品すべてを
奪われていたことだろう。
抵抗すれば 命まで
奪われていたかもしれない。

しかし わたしは運が良かった。
野盗たちは皆 大きないびきをかいて
眠りこけていたのだ。

きっと 少し前まで
酒盛りを していたのだろう。
周囲にはアルコールの臭いが
立ちこめていた。
九死に一生を得た わたしは
その場所を離れるべく ゆっくりと
踵を返した。

そのとき……
「踵」は「くびす(きびす)」と読みます
後ろを振り返った わたしの目の前に
ひとりの少女が立っていた。
-年のころで言えば
五歳から 六歳くらい。
頭の上に付いた 大きな耳は
彼女が 獣耳族であることを
示していた。
なぜ こんな場所にいるのか?
野盗たちの仲間なのか?

何より いつの間に
足音を立てず わたしの
背後に回り込んだのか?
混乱する わたしに向かって
少女は静かに 問いかけてきた。
「……おじさん 誰?」幼少期リタ
「そっ……それは こっちの台詞だ!」冒険者の男
わたしは 年端もいかぬ子供相手に
剣を構えていた。
怯える わたしの目には
彼女が腰に下げた 小さなナイフさえ
恐ろしい凶器に映っていた。
「お……お前は
 あそこにいる やつらの仲間なのかっ?」
冒険者の男
「そう」幼少期リタ
「みんな わたしの家族」
やはり この子は野盗の一味だったのだ。

今 声をあげられたら すべてが終わる。
すぐに この場から立ち去らねば。
相手は子供ひとりだ。
先手を取れば何とかなる……!
剣を握る手に力を込める。
意を決し 息を小さく吸い込んだ そのとき……
-身も凍るような 殺気が
わたしの背中に突き刺さった。
「リタ どうかしたのかい?」野盗の女
そこで わたしは ようやく
陰に潜む もうひとりの
存在に気付いた。
暗闇から星明りの下に
歩み出た その人影は
確かに 女性の姿をしていた。

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