「ひゃあん!」
突然、かわいらしい声をあげたのは久理だった。
ここの名物らしい《暗闇プール》は、暗闇とは名ばかりの、薄暗い中を赤と青のライトが怪しく照らすナイトプールじみただけのものだったが、少女たちを混乱に陥れるには十分だった。
「や、やだなぁ、久理ちゃん。どどどどうしたんですか、急に! そんな、萌え萌えな声をだしてぇー」
そういうのは私の役割なんですけど? とロンドは続けながらも、目を凝らして周囲を警戒していた。
もしかしたら、ゾンビ役の人が久理の足を触ったのかも? いやでも、久理ほどの人が一般人のいやらしい気配を察知できないわけはないし、だとするとゾンビ役にまぎれて本物が……?
「ちがうの! いま、今誰かが足を触って! この辺の──…」
「ぷみっ!」
次に声を上げたのは叢裂だった。
「だ、誰かがいま、蓋裂の背中をさわったあああ!」
「えっ? 叢裂ちゃんほどの剣豪の背中を…?」
やばいやばい! 本当にいるって! と少女たちは大騒ぎ。
久理の足や蓋裂の背中を触れる人類なんてそうはいない。
例えば、心を許した騎士なんかは、特に──
波たつ温水プールの飛沫が、不気味なライトに照らされて
運命は3人のはしゃぐ顔がいつもよりも輝いて見えた。
──『S.D.G.』より抜粋