宅地建物取引主任者(宅建)とは
「宅建」の略称で知られる宅地建物取引主任者は、不動産の公正な取引を行うために必要な人気資格です。その人気の秘密は独占業務にあります。
(1)契約締結の前に重要事項の説明をする(説明書への署名・押印)、
(2)契約締結後に相手方に交付する書面に署名・押印する、という業務は、この資格を持った人でなければできません。
つまり、不動産業界において本資格取得者なしでは、土地の売買や賃貸の営業活動はできても、契約をかわすことはできないのです。
・受験資格条件
年齢・性別・学歴・国籍等の制限は一切なく、誰でも受験できる
・科目免除条件
通信講座とスクーリングで実務知識を向上し、終了すると宅建試験で5問免除される講習を「登録講習」といい、「登録講習」修了者が宅建本試験で免除される科目は次の通りです。
(1)土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること(宅地建物取引業法施行規則第8条第1号)
(2)宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること(宅地建物取引業法施行規則第8条第5号)
・実務経験
2年以上の実務経験を求められますが、登録実務講習実地機関が行う登録実地講習を受けることで、2年以上の実務経験と同等に認められます。
・資格の取り方
受験申込みはインターネットでも受け付けていて、試験は年に1回各都道府県で行う。
| 合格率 | 15.3%(平成25年度) |
|---|---|
| 難易度の目安 | ★★★★ |
| 勉強期間の目安 | 100~300時間 |
・試験内容
宅地建物取引業に関する実用的な知識を有するかどうかを判定することに基準が置かれています。(宅建業法施行規則第7条)試験の内容は、おおむね次のとおりです。(同第8条)
1.土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。
2.土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。
3.土地及び建物についての法令上の制限に関すること。
4.宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。
5.宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。
6.宅地及び建物の価格の評定に関すること。
7.宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。
・試験方式
「四肢択一式」のマークシート方式
・受験地
国土交通大臣が指定した指定試験機関(一般財団法人不動産適正取引推進機構)が、すべての都道府県知事の委任を受けて実施しています。選択できる試験会場は、申込者の現住所がある都道府県の会場に限られます。
・受験料
7000円
・受験日程
年1回(10月第3日曜日)
・参考リンク
• QandA
具体的な仕事内容は・・・
宅地建物取引主任者の仕事は、土地や建物の売買契約、貸借の代理、仲介を行う際に消費者保護の立場で活躍するエキスパートです。
主に建設業界、銀行・証券・保険などの金融業界で活躍する人が多いです。
具体的な仕事内容は、契約を締結する前に宅地建物取引業者の相手方に対して重要事項の説明を行うこと、重要事項説明書(宅地建物取引業の業界用語で「35条書面」とも言います)の説明を行い、記名・押印すること、契約書(宅地建物取引業の業界用語では「35条書面」と言います)への記名・押印をすることです。これらの業務を無資格者が行うと法律違反になり罰せられます。この独占業務が認められている理由は、土地や建物の契約は多大なお金が関わることなので、複雑な契約手続きが必要であり、公正かつ安全な取引を行うことができるように宅地建物取引業法で定められているのです。
なお、就職した企業によっては契約時だけではなく、営業アシスタント(新規の物件や顧客を獲得してくる)をしたり、顧客が実際に住みだした後の物件管理をしたり、修繕業者の手配をしたり、オーナーからの相談を受け付けたりというような、こまごまとした仕事も宅地建物取引主任者に任せられることもあります。
どの位の給料?・・・
宅地建物取引主任者の給料形態は固定給プラス歩合給という形態をとっている企業が多くあります。
30代の宅地建物取引主任者の資格を保有している人の不動産会社における平均的な給料は基本給が30万円プラス物件を販売した場合に歩合給が1件につき1パーセントという具合になります。
中には、資格手当てとして月に5000円から2万円程度の上乗せがある企業もあります。
宅地建物取引主任者は法律によって設置義務がありますので、在職中に資格を取得するとお祝い金を出す企業もあります。しかし、実際は宅地建物取引主任者のみの資格では年収は300万円から400万円の間が多く、宅地建物取引主任者の資格を持っているからといえ、高収入が保障されるわけではありません。
仕事はきつくない?・・・
宅地建物取引主任者の仕事は、契約を締結する前に宅地建物取引業者の相手方に対して重要事項の説明を行うこと、重要事項説明書への署名・捺印、契約書への署名・捺印です。
これらは宅地建物取引主任者にだけ認められている独占業務ですが、これだけの仕事をしていたらいいというわけではありません。
不動産会社によっては契約のときだけではなく、新規の土地や物件を開拓する仕事や顧客が住みだした後の物件管理、修繕業者の手配やオーナーからの相談を受けるなどのこまごまとした業務も宅地建物取引主任者が一手に引き受けるところもあります。
また、扱う商品が土地や建物なので、書面に載っている事がらだけではなく、実際に現地に出向いていって調査をしたり近隣との関係調整を行ったりする仕事も行わなければなりません。
デスクワークのみならず、自分の足で情報を得てくる地道な作業も求められます。
さらに、宅地建物取引主任者には契約ノルマを課されている場合が少なくないです。
土地や住宅の販売の場合はもちろん、賃貸の場合でもノルマがあるので1日中営業活動で出ているということも珍しくないです。
その上、町の不動産屋さんであれば、建物の周りの草取りや、大雨が降った後の見回り、家賃が未納の人への連絡、苦情処理なども仕事に含まれる上に本来の重要事項の説明や契約書への署名・捺印の仕事が加わることが多々あるので、宅地建物取引主任者は体力勝負の激務であると言ってよいでしょう。
将来性は?・・・
宅地建物取引主任者は不動産関連業界とは切っても切り離せない関係にあります。
日本全国どこに行っても不動産会社は存在しますし、これからも不動産関連業界なくなるということはありません。
そして会社の大小に関わらず従業員5人に1人以上の宅地建物取引主任者を置かなければならないという設置義務があるため、景気の良し悪しに関わらず一定のニーズがあり、需要がなくなるということもありません。
さらに今後の法改正で、今まで5人に1人以上の宅地建物取引主任者の有資格者を設置すれば良かったのが、3人に1人以上に変わる動きも出ています。
不動産の健全な取引のために宅地建物取引主任者の数を増やそうということが国土交通省の考えていることなのです。
そうなると、ますます宅地建物取引主任者の需要は高まってくると言えます。
また、宅地建物取引主任者の資格は不動産関連資格や法律関連資格の登竜門とも呼ばれ、宅地建物取引主任者の試験勉強の際に学習したことが他の資格取得でも役立ちます。
土地家屋調査士・不動産鑑定士・マンション管理士・管理業務主任者などの不動産関連資格の受験の際には大部分で宅地建物取引主任者と重複していますし、行政書士や司法書士などの法律系の資格を取得する際にも、宅地建物取引主任者の取得の際に勉強した民法の知識が役立ちます。
宅地建物取引主任者の資格は就職を考える上でも資格取得の際に勉強した知識を生かしていく上でも将来性の高い資格であるといえるでしょう。
• 受験生の声
宅建は、カンタンという人と難しいという人にわかれます。
その「差」は、民法にあります。
「宅建って簡単でしょ」という人は、民法が勉強済みの人です。
法学部出身であったり、他資格の試験勉強で、民法を一通り勉強しているなら、スンナリと宅建の試験勉強に入れるし、やることも単純なので、とても宅建が受かりやすくなります。対して、民法って見たこともありません的な“そうでない人”は、相応の勉強をしないと受からないし、そこそこ性根を入れないと合格できないのが宅建です。一口で言えば、難しいのです。こういう「民法経験」の有無があるから、カンタン派とムズカシ派との2極化が生まれるのだと考えます。
わたしは、宅建は「カンタンではない試験」だと思います。特に、法律初学者の人にとって、「民法」は大きな障害になるはずです。
今も昔も、民法をどう攻略するかが、宅建の合格の大きなキーです。
どれほど他の科目でがんばっても、民法で点数を底上げしない限り、受かりません。
