動物のミルクを主な原料とする加工食品(乳製品)の一種。
その歴史は非常に古く、いつの時代から製造され、食されていたのかは正確には分かっていない。
なお現代では滅多に使わないが、日本語では「乾酪(かんらく)」とも呼ぶ。
概要
- 妊娠・出産に伴い乳汁を分泌する哺乳類系の家畜から作られる、いわゆる乳製品の代表格のひとつ。
現代では主にウシやヒツジ、ヤギなどから搾取した乳に凝固や発酵などの加工を施して作られるが、
変わり種だとラクダやトナカイ、スイギュウにヤク、ヘラジカなどと言う生き物からも製造が可能。
なおその原理上、ウマなどはもちろんヒトの乳でもチーズは出来る。諸事情で実現は困難だろうが。
- 地域や時代、製法や工程などによって種類は様々で、一説にはその数は1000を超えるとも言われている。
一般的に独特な香りとクセのある味が特徴で、少々好き嫌いが分かれやすいが、
牧畜民、特に家畜に依存する遊牧民にとっては主力となる食品であり生命線で、
家畜が仔を産み育てる春から秋にかけてはクリームなど他の乳製品ともどもお世話になる。
なお、乳が出なくなる冬には家畜を殺して作った干し肉や燻製肉などで食いつなぐ。
それ以外の文化圏ではそのまま食べるほか、サラダやピザなどの料理のトッピングにも重要。
家畜を生かしたまま生産できる良好な経済性から、牧畜文化ではとにかく重宝される食品と言え、
また生き物の殺生を厭い血肉を口にしない文化でも、家畜を殺さないチーズなどは食べたりする。
その食料生産効率は、ただ屠殺して肉にする場合と比較して3倍以上になるとさえ言われている。
極端な例ではチーズや乳製品抜きでは牧畜は語れないと断言されるほどに大切な存在なのだ。- ただし、いわゆるアフロユーラシア大陸においてはおおむね上記の通りであったのだが、
実はリャマやアルパカを飼っていた南アメリカ大陸には乳製品が無かったと言われている。
地味に本作に登場する家畜のモチーフにもちょっと関係するお話なので、詳細は後述する。
また日本も乳文化はかなり乏しいものの、古来から家畜の飼養や放牧は行っていたので、
生業としての牧畜が一切存在しかったとは言い切れない側面がある。
- ただし、いわゆるアフロユーラシア大陸においてはおおむね上記の通りであったのだが、
- 広義のチーズは世界中の牧畜文化に存在するが、冷涼湿潤な気候でチーズの加工と保存に適した
ヨーロッパでは特に発達した。現在の日本人が連想するチーズや乳製品も殆どが欧州由来である。
モンハンでチーズを一推しするベルナ村も、ぱっと見だとヨーロッパのアルプスを彷彿とさせる。
現代日本に定着している乳製品は、そのほぼ全てが欧州由来の文化と技術で成り立っているため、
本作でもチーズやその産地がヨーロッパ風のイメージに寄っているのはその影響だと思われる。
当然だが豆腐のようなインドのパニール、乾燥したヨーグルトみたいなモンゴルのアーロールなど、
欧州系の乳文化由来ではないチーズやそれに類する乳製品は現代でも多種多様に存在する。
- 日本でも古代の頃には製造されており、「醍醐味」の醍醐も牛乳由来の乳製品から来たものである。
ところが時代が下ると畜産物の供給自体が廃れた。「乾酪」が死語と化したのもそういう事情による。
理由としては仏教の殺生禁止などが挙げられるが、上述のように牛を殺さずに済む乳製品まで消え去ってしまい、
幕末に至ってすら「ミルクが飲みたい」と嘆いた米国の公使に「んなもんウチの国にはない」と幕府が突っぱねたほど。- 江戸後期には輸入した白牛の乳を搾って砂糖と煮詰めた「白牛酪」なる乳製品が
将軍に献上されお褒めを預かり、薬用として一部で流通はしたものの一般には普及せず*1、
結局のところ役畜ではない、食用目的の畜産が本格的に再開されたのは明治以降であった。
本邦に限ったことではないが、日本の畜産史には謎が多く複雑な経緯を辿っている。
牛馬自体は存在するのに乳文化が無かった理由だけでも幾つもの仮説があるが、
現状だと明快な結論はないので、気になる方は是非ご自分で調べて頂きたい。
- 江戸後期には輸入した白牛の乳を搾って砂糖と煮詰めた「白牛酪」なる乳製品が
- 熱を加えると柔らかくなり、充分に加熱するとほぼ液体に近いレベルまで軟化する。
そしてその軟化したチーズに白ワインなどを加えて煮込んでソースとし、
他の食材(果実類やキノコなど)を潜らせて食する料理をチーズフォンデュと呼ぶ。
同様に液体(半固体)に食材を潜らせて食べる「フォンデュ」は他にもいくつか存在するが、
一般に「フォンデュ」という場合はチーズフォンデュを指す場合が多い。
なお、余計に燃料を消費するため効率のよくない食べ方である。あくまで本来は一地域のマイナーな調理法で、
資源や設備が潤沢になった現代であればこそ、比較的手軽に楽しめるようになったものである。
MH世界のチーズ
- ウシやヒツジなど、現実世界に存在するものと全く同じ種がMH世界に存在するのかは定かではない*2が、
チーズ自体は無印の時代からキッチン食材として登場している。
当時は「粉吹きチーズ」「熟成チーズ」「チリチーズ」「ロイヤルチーズ」の四種が確認されていたが、
いずれも製法や原料については一切語られておらず、正体は不明であった。
ロイヤルチーズは後に食材アイテムとして登場、説明文から多少は概要が読み取れるが、
やはり原料などについては詳しく語られてはいない。
- MHP2(G)ではロイヤルチーズよりも高ランクな食材「幻獣チーズ」が登場。
しかしこちらも詳しい概要は不明。
- MH3では「苔チーズ」と「レッドチーズ」が食材として新たに登場。
今作ではさすらいのコックが食材についていろいろ語ってくれるが、
その会話パターンの一つとして苔チーズの概要が語られている。
なんでも、カビではなく苔を使って製造を試みたチーズらしい。味もそれほど美味しいものではない様子。
また、ロイヤルチーズも続投しており、ロイヤルチーズの会話パターンも存在する。
やはりロイヤルチーズは相当美味しいようで、さすらいのコックも大好物としているようだ。- MH3Gでは食材の表示枠が縮小された影響か、レッドチーズは登場していない。
- MH4(G)では苔チーズ、ロイヤルチーズの二種類が再登場したが、幻獣チーズは幻獣バターと変わってしまった。
なお、チーズ関連の新規アイテムや解説は一切追加されていない。
- MH4(G)ではあまりにチーズに関するネタが無かった反動…という訳ではないだろうが、
MHXではチーズが無視できない存在になった。
というのも、今作の拠点の一つであるベルナ村では家畜としてたくさんのムーファを放し飼いにしており、
そのムーファから採れたミルクを原料としたチーズを特産品としている。
そしてこのムーファのチーズを利用したチーズフォンデュが各地で大流行しており、
どの村にもチーズフォンデュの屋台が常駐しているのである。
今日もハンターは長い串に刺した料理にたっぷりチーズを絡ませて勢いよく平らげている。
わざわざチーズに潜らせなくても、むしろチーズに潜らせない方が良いんじゃないかと思われる料理も多いのだが。
ただ、串に刺した料理は明らかにどう見ても寿司やらシチューやらには見えないため、
チーズにくぐらせているのは選んだ料理とは別の、
いわゆる「お通し」のようなものなのではないか、という説もある。*3- この辺りを考察してみると、チーズフォンデュを食べるには結構な燃料が必要であるため、
逆に言えばこの時点のモンハン世界は、山の上でも燃料に事欠かないということがうかがえる。
だから何だと言うかもしれないが、牧畜は貧しい土地で行われることの多い産業であり、
突き詰めると、加熱が必須のチーズフォンデュを毎回のように作れるほど資源の余裕はない。
前述した日本で畜産が廃れた理由のひとつに、土地が全体的に豊穣だったことが挙げられるほか、
「牧草地があるならより効率のいい田畑を切り拓いて、トータルの食糧を増やすために用いた」
「そもそも牛馬は役畜として極めて重要なので、乳も仔牛や仔馬の滋養強壮のみに振り分けた」
「家畜は凄まじく大量の水を必要とするため、同じく水を要する水稲作と競合し敬遠された」
「乳や肉を食べなくても、タンパク質は水田に集まる魚や鳥、畦に植えた大豆で十分だった」
などの意見がある。畜産に頼らねばならないほど日本の土地は貧しくなかったと言う話なのだ。
ましてチーズは完成した時点でそのまんま食べられる代物であるため、加熱の必要がほぼない。
原産地でもこの料理は、古くなったチーズやパンを加熱して食べざるを得なかったことに由来している。
何れにせよこれは炭鉱夫がお守りのついでに掘った大量の石炭や、それを輸送する飛行船など、
とにかく安価で豊富な燃料供給と加熱設備の充実がなければ成り立たない現象と言えようか。
まあ燃料には大量に手に入るであろうムーファの糞を燃やしている可能性もあるが。- なお日本だと馴染みは薄いが、冗談では無く家畜の糞を燃料として用いる文化圏は少なくない。
本邦は温暖湿潤な気候のため、燃料は山野の木々を伐採しては植林し薪や炭を作れば良かったのだが、
雨が少なく木が育たない草原地帯や半砂漠などでは燃やせるものは繊維質の家畜の糞しか無かった。
そうでなくとも木材は使い道が豊富な素材なので、可能な限り燃やさず節約しておきたかったのだろう。
むしろ、あらゆるものに木を使う上に燃やしまくっていた日本の環境がかなり特殊だったとさえ言える。
- なお日本だと馴染みは薄いが、冗談では無く家畜の糞を燃料として用いる文化圏は少なくない。
- 余談だが、前述した通り南アメリカ大陸には土着の乳製品や乳文化が確認されていない。
ムーファのモデルであるアルパカやリャマだが、本来は彼らから搾乳をしなかったのだ。
これは常に環境が安定し、搾乳せずとも飼養した家畜のみで生計を立てられるからと思われる。
もちろん本作はフィクションであるし、そもそもムーファは羊もモデルにしている訳だが、
文化面で見ればベルナ村はユーラシア大陸のイメージが強く投影されていると言えようか。 - ベルナ村の貢献度が一定以上に達すると、
勲章として「ムーファのミルク」「ムーファチーズフォンデュ」が入手できる。
- この辺りを考察してみると、チーズフォンデュを食べるには結構な燃料が必要であるため、
- MHW(:I)ではチーズについて直接テキストで語られることはほぼ無かったものの
セリエナの料理長の得意料理の一つとしてグラタンが明言されており
実際の調理ムービーの中にもグラタンの皿に刻んだチーズをふんだんに振りかけているシーンがある。
この描写を見る限り、現代日本で使われているものと外見がよく似たシュレッドチーズがこの世界にもあるようだ。
また、アステラの【煌めきの宴】定食にはチーズフォンデュと思われる料理も登場している。
- MHFでは「ゴーニャチーズ」という食材アイテムが存在する。
特定のクエストやポイント交換でのみ入手可能な貴重品で、いわゆる秘伝食材に属する。
病みつきになる程の臭さが売りのチーズとのことで、体力+100、スタミナ-75の効果がある。
スキル「餓狼」を積極的に使うのなら重宝する食材。
MH世界のチーズリスト
- 幻獣チーズ
- 乳製品では最高グレードとされる食材の一つ。
幻獣バターとの関連性は不明。
- ゴーニャチーズ
- 非常に貴重な調理用の食材。
とてもクサ~いチーズ。そのクサさが病み付きになる。
- 苔チーズ
- カビではなく苔を使って作れないかと試行錯誤されたチーズ。
結果的に完成したものの味の方はイマイチらしく、食材としてのグレードも最低クラス。
- 粉吹きチーズ
- おそらく名前どおり表面などに粉を吹いたチーズ。
発酵の過程で浮き出した成分が粉のような見た目になるチーズは実在する。
最もグレードの低い乳製品として扱われている食材。
- ロイヤルチーズ
- 高価な素材をふんだんに使った最高級のチーズ。
その名に相応しい王の気品に溢れている。
- レッドチーズ
- 辛味のある高級チーズ。発酵の過程でその名の通り赤くなるのが特徴。
普通のチーズに色を塗った悪質な偽装品も出回っているらしい。
- 熟成チーズ
- チリチーズ
武器
- 上記の通りチーズを前面に押し出しているMHXでは、
あろうことかチーズを武器として加工している。
液状のチーズを混ぜるヘラをモデルにした大剣に始まり、
チーズが鞘になっている太刀、
チーズホールに金具をくっつけたスラッシュアックス、
ピザとピザカッターを合体変形させるチャージアックス、
火属性が付くほど熱々のチーズを湛えたフォンデュファウンテンを巨大化させたランスと、
見た目で完全にネタに走っている。
これらの武器は屋台から貰えるビストロチケットを入手することで生産できるため、
ビストロ武器の新顔という見方もできる。
関連項目
アイテム/ロイヤルチーズ
登場人物/ニャンコック - 探究者
武器/ビストロ武器 - MHXにて新規登場した武器はチーズがモチーフである。
アイテム/食材