ルナ

Last-modified: 2020-12-31 (木) 02:32:19

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『Ciel courir hope…空を駆ける希望にようこそ、困った事があればお気軽にお申し付けくださいませ…*』
『あらあら…*ご機嫌よう』
『Yes, My Lord…私が…お供致します』

▼基本データ

キャラ作成者:ルナ@創作

【名前】ルナーシア・エルド・ミルカッセ(ルナ)
(Lunashia・eld・Millcassee)
【性別】女性
【年齢】不詳
【身長】156くらい
【種族】ホーリーエルフ
【外見】

金色の髪に青い瞳のエルフ耳、肌の色は白い、細身、スタイルは割といいかなくらい。
左腰骨盤近くに呪印が付いているのを隠したいのもあり、露出が高い服の着用は極力避けている。
集中するとき、咄嗟の行動や真面目な時等は開眼する事があり、カモフラージュはされているものの魔術に長けているものが見れば左眼には薄く魔方陣が描かれているのが分かる。
月の名の通り月の満ち欠けや状態にも影響されるとかされないとか。

【性格】

口調は基本穏やかで丁寧、瞳を常に閉じ、いつも微笑んではいるものの自身の事情から感情をあまり表に出さない為に考えが読みにくい面があり、リアクションは薄め。口癖は「あらあら…*」
基本的に博愛、平和主義で助けを求められると向かう精神、長寿故他者の変化等には敏感だが自分に向けられる感情に関しては疎い。
最初は過干渉や不要なかかわりを避けるための術として接していたためどこか一歩引いた付き合いをしていた、そのため仲間と呼ばれたときには戸惑いを感じていた。
一度死ぬ覚悟をしたせいか自分を顧みず、また信頼たる仲間を犠牲にしたくないあまりに危うい行動をすることも、自身に対しては悲観的。

【家族構成】

人間の様に遺伝する様なものではなく、どちらかといえば蜂に近い、一族の中で最年長の男女が導き手や一族の親係である以外は先に生まれたものが後の指導をするといった程度だが今回に限っては途中で導き手が交代されたため兄としての役割もいる、といったところ。
異世界には兄役、親役の他に兄が信頼している弟で世話役的な存在がいたとか。
成人していれば姉や兄、友人感、未成人なら妹か弟といった認識感らしい、そのためシエルでも同じように接する事ができる。
親密な間柄であれば呼び捨てで呼んだりもする。

【所属】シエルクリールホープ
【職業】シエルのメイド(聖/盾)
【特技】楽器演奏、治癒術、家事全般、魔術、簡単な製菓料理等、人と動物(魔物)の世話

【好物】カナリア亭のバームクーヘン.平和、かわいいもの、綺麗な物、紅茶、アーレムの手料理

【苦手】争い、細かい虫の大群や巨大な昆虫種、辛い物
【呼び方】
・一人称 私(わたくし)
・二人称 ~さん、様、貴方等

【イラスト・SS許可連絡】不要

▼経歴

【ストーリー一覧】

0話【異世界編】

とあるエルフ一族の【導き手】だったという、この一族は左目に魔方陣を授かりし者は導き手として代表になる仕来りがあり、天に至る道と言われている神殿の守護を主として勤めを果たしてきた、しかし通常は導き手が何らかの理由で消失しない限り他者に移ることはないのだが、存命しているうちに継承された為異例として対処、前導き手であり兄役から力の使い方と弓、閉眼術式、魔方陣のカモフラージュを指導される。
一族のエルフは基本的に弓の扱いに長けた者が多かったがルナーシアにおいては中々に奮わずに高い魔力を保持していた為メイスの適性を高めたとされている。
その後友人関係であった四素精霊ルフィナと契約し、たんすと知り合う形に、暫く平和を保っていた。

ルナーシアを庇い兄がバル・ヴィレインの策略により幽閉される、責任の強さから単独で向かうも捕らえられ、怒り、憎しみ、妬みといった負の感情を基盤として人格を作り出す呪術【闇の天秤(シア・ヴィレイン】の呪印を左骨盤に入れられ同じく利用価値のあるとされた兄と共に一族を滅ぼしてしまい結果神罰を受ける。
呪術は兄と仇を討つ事で一時収まりを見せるものの、それ以降神罰により一族が新たに生まれる事はなかった。
その後長い時を経る、神殿とは建物ばかりで周りには墓碑が並び、手にかけた兄の亡骸を棺に入れ、未だ財宝や噂を聞いてやってくる輩から神殿を一人守りながら生きるも次第に感情を失っていき神殿の扉を封印するとこれ以上の存在は無意味だと兄の亡骸と共に海に身を投げる、沈みゆく中で契約していた四素精霊であるルフィナとミトラに導かれこの地に転移、漂流する形でマチルダに接触した。

【ミトラ編】
1話 漂流 出会いと思い

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ミトラで女王と会った後初めは言語を習得しながらクレリック見習いをしマチルダ達の助言をもらいつつ過ごす、過去の経歴から死に切れなかった為隙を見ては死にたがる為仲間が必要と踏んだマチルダ達はとある旅団…後のシエルクリールホープにメイドとして加入させルナーシアは「ルナ」と名乗りつつクレリックメイドとしてシエルでの生活を開始する。
他種族との交流はあまり経験もなく、印象も悪かった為に最初は警戒し大人しく口数も少なかったが人の優しさや感情に触れだんだんとシエルの仲間に心を開いていった。

2話 遭難 魔女の儀式

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「雪山遭難するとわかるんじゃないかしら?」
それは何時ものようにメアリーから発せられた言葉で幕を開ける。
アーレムから告白をされ長い時間(リアル2ヶ月程)をかけて漸く「恋愛感情」を習得し一応は恋仲になるも、そもそも人間の感情や形のないそれに首を傾げる日々だった彼女はそれに関してメアリーに聞くと、その返答が帰ってきた。
「2人で」と言うワードをすっ飛ばし成る程と頷いた彼女はクロの突っ込みも他所にシエルを留守にする「ちょっと遭難してきます」という置手紙を遺して。
どういうわけかメイド修行もかねてエリアのエキスパートのボスを一人で討伐しに行ったり遭難と言うよりは修行がメインとなっていっていた、ちなみにこの時縁あってニイマロのばぁばとも手合わせをし、蜂を追い払ったお礼とその実力の証として清酒を貰っている。
そしてエドルの空賊の騒動に巻き込まれそれを退けるとそれを見ていた青年から声をかけられた「最近見つかった洞窟に落し物をしてしまって、自分一人ではいけないために明日共に拾いに行ってほしい」と。
翌日洞窟に向かってみればそれは洞窟近くの祭壇に落ちていた、海色をした指輪を拾うと現れた魔法陣と闇の手に引きずり込まれる、咄嗟に首にかけていたネックレスを投げて闇に消えた。
転移したその先には檻、骸が散乱していたり血が壁にこびりついたりしているそんな中で紫色の髪をした魔法使いは棺の上でルナを見つめこう言った。
「あなたが次の魔女様の生贄かしら?おめでとう」
暫くしてネックレスとベネチアの案内もありシエルのメンバーが救助に駆けつける「ごめんなさい」と言いながら四肢を繋がれたその姿はみるにたえないものであったという(アーレム君が発狂するくらい)
魔力を封じた部屋ではあるが物理的火力が申し分ないシエルの面々により敵は一次離脱をしルナは無事救出され、そこに在った魂はニイマロによって昇天した・・・一部を除いて。
そして拷問のような生贄の儀式は終わりを告げた。
一次離脱した敵はミクアリアによって影ながら討伐されている。

番外 変身 機械騎士と適正

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「ヘーイ!バトルドームが完成シターヨ!」
そう声高くシエルに新しく作られた広大な部屋を嬉しそうに両手を広げて喜ぶ団長・・・萌え魔神の姿があった。
ランク、ミクアリア、ニイマロ、アーレム、ルナーシアの5人は萌え魔神に呼び出されこの場に集まっていた、各々が首を傾げながら続きを待つとそのままのテンションのまま萌え魔神はそれぞれに武器のようなものを手渡して人差し指をぴっと立てると自慢げにこういった。
「アナタ達にーハ、ワターシが作ったソレを使ってみて欲しくーてね!」
皆々形が違うソレは「チェンジャー」と言うらしく、それを使って「機械騎士」を呼び出しそれを操ることができるという代物だそうだ。
それぞれ固有の力と特性を持ち「来る脅威を振り払うため」にと。
召喚の詠唱があるらしく、頭に記憶しながらそれを発動させると視界が高くなったような、どこか浮遊しているような錯覚を持ちながら「瞳」を開いた。
「グッド!ルナガール、成功ネ!」
何時もは同じ背丈のはずの萌え魔神が足元に居るような距離でそう親指を立てた、この視界は機械騎士のものだと理解して周りを見渡したり手を開いたりと動作を確認する、最初はズレがあったものの次第に安定してきて、一通りの扱いを教わればタイムリミットから元の姿へと戻る。

『・・・アナタは』
戻る最中、青い髪をした美しい顔立ちの和装の女性が見えた気がした。
それぞれ適正と判断されたのか魔力を吸われぐったりしながら理解する、その力と託された重大さ、強大さに。
戻る際にバチリ、と今まで反応の無かった呪印が音を立てたのを感じながら、ルナは一人俯いた。

3話 月蝕 傾いた闇の天秤

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「今日は月蝕なんだってよ、そのせいかは分からねぇが魔物が活性化してるから気をつけろよ?」
そうランクが一層暗い夜を窓からみてそう仲間たちに言った、外もであるがシエルは何故か人外が多く、髪の色が変わっていたりテンションが高かったりとその影響は少なからず出ているようでその様子を対応しながら眺める。
【・・・出せ、この鎖から・・・】
頭の中に声が響く、どくん、と魔力が呼応し、溢れる、何時もの扱う光ではなく、それは深い闇だった。
膝を付き息を荒くするとそれは自身へと吸収され立ち上がる、心配したアーレムが伸ばす手を払い、甲板へ駆け上がったその姿は・・・何時ものルナではなかった。
「・・・御機嫌よう、とでも言ったらいいのか、くだらない」
がりがりと甲板に魔法陣を書きながらルナだった者シア・ヴィレインはそう苛立った様な表情で追ってきた面々を眺めた。
「近寄るな、コイツに味方し・・・人間に手を貸す奴らは気に食わない」
ミトラを床に放り投げながらカースシンカーを取り出すと、魔法陣を発動させ左目と呪印を隠すことなく黒い羽根を形成させ月のない空へ浮く。
疑問と問いかけを口にする仲間に苛立ったように魔力による怨念を呼び寄せながら、力を貯める、その最中に鈍色に身を包んだ銀髪がシアの前へと歩みを進めると、こう言った。
「僕はルナの婚約者だから」
控えめに、しかしながらしっかりと見据えながら左手を掲げるとシアは露骨に嫌そうな表情をする。
『理解』した、何故自分が今出てこれたのか、月蝕の影響と、同じように自身にはめられた指輪をちらりと見ながら恐らく「制御できない感情」をルナが此処で習得したから「鎖が緩んだ」のだと、小さく舌打をして。
「だから・・・えっと、これからもよろしk「無理」」
「「・・・」」
「うぉおおい!そこはオーケーの流れだろうが!固まってるだろ!どーしてくれんだ!」
「・・・私には必要ない、要らない」
「私達には必要なのよ!」
言い終わる前にシアは即答すれば硬直し動けなくなっているアーレムと咄嗟に突っ込みを入れたランクやメアリーを他所に此処から出るために再び詠唱を開始して。
「その身に呪いを・・・この身に力を!」
そういって切り捨てるようにメイスを掲げるもしかしながらそれは発動することなくその指輪から光の鎖がシアに伸び絡めば元の姿ルナに戻り、自覚と見られたという恐れを抱きながら気を失い月蝕は終わった。
その闇にまぎれて何処からか竜の鳴き声を聞きながら。

4話 魔物 別たれた魂

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「ねぇ、皆・・・ルナをみなk
「お願い助けて!エドルの街に魔物が!・・・あ、ゴメンねお姉さん、大丈夫?っと、とにかく助けて!」
アーレムが周りを見渡しながらそう問いかけた時、バン、とシエルの扉が開かれ緑色の服を纏いピンクの髪をした聖導士らしき子が駆け込んでそう声をあげアーレムを引っ張っていく。
続いて共に向かった一行はミトラリウムの塔に居たエンヴィスールが街で暴れている事に驚く、毒に倒れた人や冒険者を治療しながらその少女は叫んだ。
「もー!何でこんな強いのがこんな街中に居るのよ・・・ってあー!私のブルーメメイスが折れちゃったじゃない、もー!」
解毒をしていた彼女がそう声を上げながらなんとか回復をこなしていたが限界らしく疲れた顔をする、シエルの面々は数匹居る魔物を蹴散らしながら最後の一体と対峙した。
「あなた達つっよいのね!じゃあ最後のアレをお願い!」
そう言ってにっと笑いながらシエルの仲間たちとエンヴィスールを討伐した、どうやらそれが本体だったのだろう、それが地に伏せると周りの魔物も土塊と化した。
「かわいそうだけれど、止めを刺さないと・・・」
シチェークが哀れみかそんな表情をしながら瀕死の魔物に弓を構えると傍にいたニイマロがそれを静止した。
「待て・・・お前は・・・もしかして」
「かえ・・・らな、ければ・・・約束」
地に伏せながら手を伸ばす、絶え絶えの中、その目は見覚えがあった光を放ち。
「・・・ルナ、なのか」
しばしの沈黙の後に、ぱちぱちと拍手が聞こえる、後ろに居た少女、いや少女の格好をした青年はいつの間にか土塊の上に立ち、楽しげに笑っていた。
「あーあ、残念・・・いい感じに処分できると思ってたのになァ・・・いっシ、まーァみんなの顔が見れたからーァよしとするかね☆」
口調ががらりと変わり、くすくすと笑う禍々しさを身にまといながら彼は笑う。
「ルナ!ルナ!」
「あ・・・ぁ・・・ルナお姉さま・・・治療・・・しなきゃ・・・!」
アーレムが盾を投げ捨て抱きしめると後ろで蒼白としていたメイデルが駆け寄り治療を始める。
「・・・マ、ソレが君らのいーぅ、ルナでは厳密にハーァ、ないんだけれどネ?いいの?ウカツーぅに助けちゃうと、また君らを襲っちゃうかもしれないよ・・・っとっと」
シチェーク、ベネチアの弓が笑うバルに飛び、ソレをくるりとかわして避ける。
「まーぁ、血気盛んのことダーあね、ジャー僕は目的は終わったし、退散たいさーん☆」
「待て・・・ッチ、逃げられたか・・・姑息な、コレだから魔術は嫌いなんだ」
オルキスタが抑えることなくそういい捨てればその姿を見る、確かにこの姿は「エルフのルナ」ではなく・・・フードを被ったその髪は紫のウェーブに黒い瞳、そして何より足部分が人間の足ではなく、大蛇で形成されていた一つ違うのは両手の呪印を除けばエンヴィスール、そのものであった。

5話 訪問 消え行く灯火 

ルナが魂を2分され、エンヴィスールに魂を移されて暫くが経った、蛇の足は最初こそ不便だったものの白蛇や大蛇もシエルの皆は受け入れてくれ、時たまに厨房を荒らしながらも比較的平和な日々を送っていた。
しかしマキナの襲来の一件でまたことは動き出す。
長年ニイマロが苦しめられていた呪印と共に、エンヴィスールの呪印も解呪(正しくはシャロンが食べた)され無事解呪となった、しかしエンヴィスールの体はソレで保たれていたのもあり、魂にもその影響は及んでいた。
「んふふ、始めまして♪私は聖女・・・この体の半身、エンヴィスールよ~」
その日を境に、いやもしかしたらもっと前から、ルナの魂と共に記憶がかけていたのかもしれない、記憶が欠如し始めたルナの変わりに呪印が消え、出てこれるようになった彼女・・・エンヴィスールが表に浮上したと説明する、元の体に戻す方法を、と仲間が考えていると柱にもたれていたベネチアがポツリと言葉を発した。
「アテならあるけど・・・シアさんには会ったし、手段もある、上手くいくかはわからないけれど・・・呼んでみる?」
そういうと名札を取りに行くわ、と席を立ち甲板へ向かうと。
「御機嫌よう・・・名札を「落とされた」ようでしたのでお届けにきたのですが・・・」
「・・・人違いじゃないかしら、私だったらそんな高性能な名札はさっさと売り飛ばしているもの」
そう言葉を交わす、見慣れない青髪の仮面の女性が立っていて、手にはベネチアが魔女教団を探るために入ったとされる名札を持って静かに佇んでいた。
「ソレは失礼いたしました、ですが疑わしきは抹消しろとのご命令です・・・もう一つ、用が御座います故」
そう言って首を傾げると丁寧に一礼して双剣を手にするとベネチアに切りかかる。
しかしソレは届くことなくオルキスタの大剣によって弾かれ、その体ごと軽く後方へととべば、その四肢をシャロンの蔦が絡んで捕縛した。
「手厚い歓迎ですね、喜ばしい限りです」
「随分と余裕じゃない、この状況で」
青い髪をしたメイド、メルファ・アンモライトは無機質にそう言葉を紡ぎメアリーの言葉を聞きながら空を見上げた。
するとメルファの四肢を止めていた蔦が焼き払われる、魔法が飛んで来たほうを見れば、シア・ヴィレインがその場に立っていた。
「早くしろ、面倒は御免だ」
「・・・イエス、マイロード」
そう自由になった手足で軽く跳躍をするとシアの前に降り立つ、2人はそれぞれ武器を構えシエルのメンバー達に向かっていく。

6話 聖女 魂の行き先

そうしてシエルの甲板に騒々しく音が響く、メルファはオルキスタと対峙し斬り合い、シアはシエルの仲間たちが拘束しようと技を繰り出す。
「ねぇねーぇ、そこの黒い髪のお兄さんと、緑のお二人さん~」
メーアとアーレムがシアの攻撃を凌ぎながら手を焼いていると後ろの方で様子を見ていたエンヴィスールがのほほんと声をかけ手招きした。
「あん?どうしたエンヴィーちゃん」
「んふふ・・・元に戻るには~魂がないと、ね?だから・・・」
そう自身を指差してゆるりと首を傾げると3人に対してヒソヒソ話をして。
「ではそのように、いきましょう」
シャロンがそう応えてシアに向かっていくメアリーも同時に駆け出す、蔦がシアの傍まで伸ばされればメアリーがそれに掛けて行きシアのエンバーを持つ手めがけて蹴りを放つ。
「・・・っ!」
先ほどアーレムのシールドの光を受けて体の反応が遅れシアのエンバーは弾き飛ばされる。
「君は・・・どうして逃げてばかりなんだ・・・!」
機械騎士となったアーレムが光の足場を掛けながらシアに手を伸ばすとシアはダクソを構えて2,3放つ、しかし機械騎士のそれはたやすく弾くのを見て力をため、黒い魔力を研ぎ澄ませる。
「・・・んふふ~ゴメンね、ちょっとキミの思いを、誰にも負けない思い・・・貸して頂戴」
「・・・え?わっ」
シアに気付かれないように機械騎士の後ろを付いて走ってきていたエンヴィーはそう言って機械騎士の魔力を吸い、アーレムは解かれて落ちていく、エンヴィーが変わらない様子でのほほんと手を振れば。
「・・・巻き込まないようにしなきゃ、ね」
シャロンによって作られた足場に素早く乗り蛇でシアの手足を捉える。
「エンヴィスール・・・!この死に損ないが・・・!」
「あらあら~まだ生きているんだもの、アナタと同じよ?」
そう微笑んでエンヴィーはエトワールメイスを構えて詠唱する、シアの身につけている指輪とネックレスがソレに反応して。
途端ボロリ、とシアの右手の蛇が砂のように崩れていく、肉体は既に限界に達していた。

「っ!させるか・・・くたばれ、あの魂と共に・・・!」
魔力を最大に込めた攻撃を放つと闇は強力な力となり、爆ぜた。
そこに飲まれる直前に、エンヴィスールが微笑んで何かいったように見えたがそれを知ることは叶わない。

7話 帰還 希望と光の下に

少ししてその闇が晴れると、そこにはシアだけが立っていた、度重なる戦闘と一撃により肩で少し息をしながら、エンヴィスールがいた場所を見つめて。
「最初からこうしておけばよかったんだ、くだらない」
「失敗したって言うのか・・・くそっ」
そういいながらシアはもう一度ダクソを構えるも、ドクン、と痛みが走る。
左薬指が徐々に光を増していき、顔をしかめる。
「やめろ、私の中に・・・はってくるな・・・!」
その叫びと同時に、光の鎖が黒い羽根に絡み、ガラスのような音を立てて割れる、その後にシアに絡むと光が更に増し、収束し取り込まれる。
そこにはいつものルナがいるものの気を失っているのかそのままぐらりと地に落ちていく。
咄嗟に駆け込み抱きとめるアーレムと安堵の表情を浮かべるも少し離れた場所から凄まじい圧がかかっている場所から駆け足が聞こえてくる。
「対象のハンテンを確認・・・処置します」
「アーレム!気をつけろ!」
ノイズのかかった声がそう戻ったルナに対して刃を向けて走る、メーアが叫び、その方角を見ればその後ろをオルキスタが追い、剣を振るった。
「お前の相手は・・・私だっ!」
足を踏み込み大剣を振り上げるとメルファはバランスを崩す、空高く自分の腕が飛んで行くのを見ながらもその大振りの隙を逃さぬように回し蹴りをいれ、オルキスタを怯ませれば、弓が飛んできてメルファとシエルの仲間を隔てた。
それを見てメルファは迷わず甲板から身を投げ、少しして飛龍に乗った男がメルファを抱え飛んでいた。
その男は戻ったルナをただじっと見据えて報告が先だ、と呟くとそのままシエルから離脱していった。
各々疲労や怪我を労わりながら、メアリーはあるものを探しているしぐさをする。
「確かこの辺りに・・・あったあった」
それは先ほど落ちたメルファの腕であった、切り離されたはずのそれは魚のようにビチビチとしており、その切り口からは腐敗臭、そして腕の色は人間の肌色と言うよりは灰色に近いものだった。
「・・・メアリーそんなものを持ったら何があるか・・・」
「とりあえず好きそうな人に預けときましょ」
そういいながら嫌そうな顔をしたメーアと平然としたメアリーは船内へと戻って行った。
腕は戻った先にいた魔物さんにより喜んできれいに掃除をした上でホルマリン付けにされたという。

8話 布教 水晶と闇の狭間で

ルナはある日世話になっていた聖導士の教会に呼ばれる、とある貴族の解呪を依頼されそれを一旦退けるとその呪印には見覚えがあった、成り行きでちぎってきたという依頼主を庇うためにも、その先を知るためにもルナと貴族の女性…ユメルは数日入れ替わることとなった。

そのボタンの主はすでに中身を悪魔により喰われており、人とは呼べない力と知性でルナに迫る、狭い地下内を駆け巡りながらアマリリスに貰った銃でそれを撃退すると待ちきれなかったのか、いいやおそらくバレたのだろうと駆け込んできた面々を見て思わず笑う。

「そこっ」安堵したのも束の間、ユメルが光の魔弾を部屋の隅に放てばパリンと空間が割れた音がする、そこから現れたのは魔女教のメルファだった。

「まだいたのですか…希望にすがる者たちよ」

「お迎えに上がりました、お嬢様」

ルナを庇い立つメーアとアーレムを見渡してそう言い放つ、その後ルナに顔を向ける、すっと跪くとそう言葉を紡いだ。

「…行かせないよ」
アーレムがそう静かに言うとメーアも同じく盾を構える、ルナも静かに首を振る、行けば確かにバルの非道を止められるのかもしれないが、一度敗れた相手、そして今の現状を思えば、直接行ったところで手間を焼かせるだけだ。

「…左様ですか…想定の範囲内、ではありますが」
と淡々といって立ち上がり、スカートの砂埃を静かに払うとポケットから何やら水晶を取り出しそれをルナに投げた。
特に呪い等は感じられないが警戒しながらもそれを見つめると。

「…これは…」

「…近頃取れた映像です、それを見た後の新月に…お迎えに上がります」

いつもなら強行手段が多い魔女教がこうして促す暇を与えるのも怪しいものだが、それ以上にその水晶に何かを感じながらも、それをしまう。
相変わらず仮面の下からも、その声からも感情が読み取れない、冷たい部屋の一部であるような彼女はただ、粛々と、機械のようにきれいなお辞儀をした。

「戦闘の許可は残念ながら出ておりません故…これにて失礼します」
一つ区切る、長く蒼い髪をすっと揺らして再び読むように、言葉をつづけた。

「ですが忘れませんよう」

「あなたは人でなく…生命でもなく…」

すっと歩み寄る、メーアとアーレムがそれを阻むもそれをぎちぎちとなる手が払いながらも、淡々と、いいやもしかしたら彼女にとって疑問もあるのかも知れない、機械のようにしかしそれはどこか微かに人を残しながら、ルナに触れるか触れないかあたりで指をさす。

「ただ、物であると」

やけに音が、その声が響いた、思わず目を見開くルナにその言葉を否定しメルファを押しやるアーレム、先ほどとは違いあっさりそれを受け入れるように離れるメルファ。

「…存分に、後悔なされますよう」

それは人を知ったことなのか、仲間を得たことなのか、魔女教に逆らっていたことなのか、定まらないままメルファは一礼すると闇に溶けるように消えていった。

「…後悔…」
2人が心配そうに見つめるまま小さく呟く、ひとまずと屋敷の地下をでた4人はルナの身体検査と状況の報告、休息のためにユメルの屋敷に世話になることになる。
仲間と別れ一人、見るべきかを悩みながらも水晶を横目にひとまず眠りについた。

9話 生戦  「「私」」

ユメルの屋敷に世話になったその日、私は夢を見た、いいや夢だったらどんなに良かっただろう、冷たく水に沈む感覚に覚えがある、息ができず、またもがくこともできない。
何故もがくのだろうか、私は確かにあの時に、生きることを手放したのに…。
暫くして森がざわめく音と雨の音が聞こえた、冷たい感覚は雨に続いてこの身に降りしきる、ゆっくりと体を起こし透かすように周りを見渡す。

「…ここは」

何処かなんてわかりきっている、忘れようもないのだから。
主がいなくなった森は外界を拒絶するように茨と木々が生い茂り、そこは時が止まったように灰色の景色が混じる、一枚灰色と緑が混じった葉を手に持てばそこだけまるで石のように固い。
日も月もない、ただ雨とどこかからくるぼんやりとした明かりに情景は映し出される。

「…」

ゆっくりと立ち上がる、一歩一歩確かに、自分を保つように、自らがあのとき建てた墓標が目に入る。
木の作りで簡素なものに祖の文字が刻まれている、その名前を一人一人呼びながら、自身の罪を数えながら。
いつの間にか雨の冷たさを感じなくなってきた、雨は止んだのかと空を見あげるも瞼に落ちる水でそれはないことを感じ取る。

自身の足音だけが響く、服は水を吸い、雨は髪を伝い、地面へと落ち、足取りは重い。
人のように幾万とはいない、けれども確かに生きていた、所々でその面影を回想しながら、最奥へと進んでいく。

「…サイファー」

最後の墓標の名前を呼ぶ、いつも私の心配をし不機嫌そうにしていた顔が微かに思い出されると、もう一つの気配にその先の神殿を見つめた。

『導き手はここを守護し、均衡を保たねばならない』
『私たちは光に祝福されし者、道を違えてはならない』
『私たちが絶えることなど、あってはならない』

いつからだろう、いいやそれはきっと前からずっと前から、数えきれない年月を経てそうなっていったのかもしれない、現に導き手はあって、道を違えたからこそ…私たちは滅びの烙印を押されたのだ。

「…来たか」

固く閉ざされた神殿の扉の前に、自分とうり二つ…いいや半魂であり、忌むべき存在によって作られた存在が水晶を持っている。

「…貴女がこれを見せているのですか」
「くだらないことを聞くな…私はお前が表でのうのうとしている間、ずっとここにいた…」

怒りを抑えることなく言い捨てるように答えるシア、つまりはここはルナの記憶の、忘れることない意識の底だ、でなければ私たちは出会えなどしないのだから。
黒い髪に赤い瞳、この寒さなど慣れたように烙印と呪いを気にも留めないように肌をさらす彼女は水晶をグっと握った。
足元からいくつもの魂が、唸り声とともに彼女に纏う、帰りたいと様々なところから声が反響して響く。

「いつまでこうしているつもりだ」
「…戻ったとて、方法も、また意味もない…刈り取ったものの命を、魂をもてあそばないで…!」

シアにまとわりつくそれは彼女がここで刈り取った魂だ、まだ生きる者たちだったものだ、なぜ、なぜ、そう思いながらも自身を責める、いまでもおぼろげに思い出す、私ではないにしろ、同族を、家族を手にかけたことを。

「…管理しているだけだ、導き手として、お前は何をしていた?」

やつらに使われる前に、とそう告げる、記憶の中は静寂だがもしかしたらまだあの世界の人間は他種族を巻き込み戦争をしているのかもしれない。
契約していた妖精たちももうきっといない、本当に自分たちだけになったらいったい彼らは次は何を犠牲にして生き延びるつもりなのだろうか。

「短命な奴らが考えることだ、くだらない」

そういい捨てて浮遊する魂を下がらせる、そしてメルファが投げ渡した手に持つ水晶を持ちながらつかつかと歩み寄るとルナの眼前に突き出す。

それを見なければ迷いなんて生まれなかったのかもしれない。

それを見なければ今までのように幸せで在れたかもしれない。

けれど、知ったことを知らなかったことにはできない。

そこに映し出されていたのは、墓標の中を必死に探す_

『ルナーシア!兄者!どこだ!何があった!』

同族であるサイファーの姿だった。

「っ!」
記憶は定かではない、生み出されたばかりのシアが顔と名前を憶えているわけがない、一緒に呪いおとされた兄が手にかけたのかもしれないと思っていた…誰一人いなくなったと思っていた、しかし彼だけは…騒動が起きる前に里を離れていたのだ。

「…選択しろ、いいや、選ばせる…私は向こうに戻り、魂を導き再興させる、誰にも縛られず、何にも従わず、自分の意志で奴らに思い知らせてやる…今一度問う、お前は何をしていた…何のためのお前だ」

鎌を現出させながら彼女は問う、苛立ちを含み赤い瞳に魔法陣を宿す彼女の意志の強さを垣間見ながら、あいまいだった彼女の目的をはっきりと知る。
「…だから貴方はシエルの皆様を嫌ったのですね、歩み寄ることもせず、ただ、それだけのために」
だけ、というにはあまりにも大きい、いいように生み出され理解する間もなく目的のために狩る、魂を取り込み力を蓄えながら生きて帰ることだけをそこに想い、バルから保護するように魂を管理し続けている。

「…知ったような口をきくな、そう追いやったのは人間だ、なぜ許せる、なぜ受け入れられる、理解できない」
「…人間は悪ばかりではない、私はそれをあの船で知りました、きっと私たちにだって自衛のために葬った人の命もあるでしょう」

そう、侵入者はすべからず敵、荒らすもの、乱すものには容赦はしない、人同士の戦争の合間に巻き込まれるようにして森も一族も警戒はより強く過激になっていったのには記憶ある。

「…あの男を置き去りにして、お前は人のココロとやらを選ぶのか」
「…あの映像が本物だという確証はありません、捏造も彼ならば可能でしょう」

静かに水晶をしまいながらシアは鎌を構える、怒りに、どこか悲しみも混じるように、ルナを睨みながら魔力を練る。

「はん…どちらにせよ、ここで決める」
「…そうですね」

同じくメイスではなく光の槍を構える、左薬指に少しだけ触れ、詠唱を始めながらもだんだんと光を蓄えながら。

「「私が私である為に!」」

声が重なる、雨はいつの間にか止んでいた。
__

暫く武器が弾きあい、魔力が弾けて消える音がする、半分石化してとまったような場所で、元は一つの存在が、自分の存在をかけて戦っている。
誰にも知られず、また誰のためでもない戦い、光と闇は相反して受け入れることはない、互いに傷ついてもなお、その構えを解かずにらみ合う。
互いに力は均衡している、ならばとすっと息を吸う。

「_あ_ぁ…ア・・・!」

互いを違わすものはこれしかない、とルナは足元に大きな光の魔法陣を展開させる、それは幾重にも重なり淵にルーンの文字と森を守護したるモチーフがあしらわれている、左目が呼応しこれを認識し確認するとその目からつっと血涙が流れる。
足元のそれは左目に刻まれた魔法陣を同じものであった。

「_はん、面白い…いいだろう、小細工はなしだ」

同じようにシアがどこかあざ笑うように魔法陣を展開させる、こちらは赤く、また同じように左目が呼応する、バチリ、バチリと赤黒い雷を帯びて纏う。

「_立ちふさがるモノに神罰を与エヨ!_」
「_わが意に従い力を示せ!_」

互いに一番力が高まった瞬間に蹴りだし鎌と槍を構える叫び声をあげながらその武器は互いに届き、またクロスするように互いを過ぎていった。

「…ぁ」
「…」

先に体が地に着いたのは、ルナのほうだった。

「愚かだな、私が何のために作られたのか忘れたのか…お前が私に敵うことなんて、在りはしないんだよ」

槍がからんと落ち、光となって掻き消える、シアは鎌をもちながら少しばかりぐらつくも鼻で笑って見せるとそういってルナに鎌を突き付けながら言う。

「・・・私は私だ、しかしお前を甘やかさない、お前の意志で___想いを切り捨てろ」

そう言って日の差さない森での戦いは幕を閉じた。

10話 決別 さよならが言えずに

魂の深層にてシアとの戦いに敗れたルナ、ともなればいつまで自分でいられるかも怪しい、静々と部屋を整理しながらそこまで物がたくさんあったわけではないと思ってはいたが、自分で買いそろえたものより、仲間からもらった物と、思い出であふれていた。
身を投げたあの日から私には何もないと思っていた、勤めも果たせず、道を違え、何一つできない、この身に価値はないものかと思っていた。
古ぼけた名簿を見ながら名前を読む、読むたび思い出される、この人はどんな人だったか、誰が好きで、どんなものを大切にしていたか。
それを読み終わると机に置いた思い出の品の中に、蒼いガラスのネックレスが生成されていた。

「…あらあら…いつの間にか作り上げてしまったのでしょうか」

そう言って青い光を放つそれを手に持ちながら眺める、きっとこれは、と一つ頷いて渡すために部屋を出る、彼女ならば…渡すのにも難しくはない。

シンとした談話室の扉を開ける、そろそろ皆戻ってくる時間だと感覚が教えてくれる、いつものように上から下へ、破損を確認しながらクロスを張り替え、花瓶の水を差し替える。
今日は少し寒いだろうか、温かい飲み物でも用意しようとひとしきり掃除を終えると厨房に行く、そこは私の管理ではないけれど、とてもきれいに片づけられている、なんとも彼らしくて、思わず笑みがこぼれる。
鍋に静かに水を入れ湧くのを待つ、思えば最初はこれの使い方もわからなかった、魔法もなしに火が扱えるのには驚いた記憶がある。

「今日は少し寒いな…おや、ルナ、やっぱりいたのか」

談話室の扉が開く音がする、彼女は外泊をすることもなく毎日ここへと戻ってくる、今日も変わらず蒼い瞳と髪を揺らしながら海の彼女、メーアはそういって厨房に顔を出した。

「ふふふ…よくお気づきで…今日は少し冷えますから、温かいものをと」

「明かりがついていたし部屋がきれいになっているからな、ルナはバレてないように思っているが案外分かるものだぞ?おぉ!それは有難い、私も貰っていいだろうか?」

「イエスマイロード、勿論ですよ…しばしお待ちを」

何時ものように裏表ない笑顔を見せ接してくれる彼女に、人というものを教わったような気がする、あの場所と同じだったなら…私はきっとこの船にはいなかった。

青いバラの柄が入ったティーカップのセットを大切に取り出す、湯で温めたそれに紅茶を均等に入れカナリア亭のイチゴタルトを切り分けると皿に移してトレイに乗せ待ち人のところに運ぶ、丁寧に並べタルトと紅茶の香りが部屋に移り行くのを感じながら対面に座る。

「いつもすまないなルナ、ありがとう。おぉ…イチゴのタルト…!ミコトが見たら喜ぶだろうなぁ」
目を輝かせながらウキウキと弟の名を出すメーアを穏やかに眺めているとフォークが届くか届かないかあたりでそれはぴたりと止まった。

「…お気に召しませんでしたか?」

いつもならクロに自慢しながらでも食べる彼女が難色を示している、苦手なものではないはずだが、とルナは首をかしげ問いかけると言いにくそうにメーアは口を開いた。

「…紅茶とおいしいお菓子を食べてばかりいたせいで…そのだな」

鎧姿でないメーアがそう一瞬視線を下に移すとまたルナへと向き直り軽くため息をつく、体に変化があるのは生きている証拠であり、そこまで気にするようなこともないとは思うものの。

「あらあら…*でも女性は少し丸みがあった方がとも言いますし…メーアさんは鍛錬もしておりますから、そう気になさるようなことはないと思いますが」

「そうなんだ、敵の攻撃に対し踏ん張るということを考えでも…ウェイトが多い方が安定はする、んだが…まあ、これでも女だからな…」

それを聞きながら彼女の恋仲であるメアリーを思い出す、おそらくそんな悩みなど微塵も問題ないというように、返すのだろうと思い返す。

『ワタシはメーアが抱ける範囲でなら気にはならないけれど…そんなに気になるなら朝まで運動しましょうか?勿論__』

どこで、とは憶測になる、メアリーは軍人でもあるわけだしもしかしたらきちんと訓練をさせてしっかりとした管理をしてはくれそうだが、どちらにせよあいにく彼女は長期任務で船にはいない。
どこか遠い目をしながらカタンとフォークを置き気を取り直すように紅茶を口にすると羨まし気にじっとルナを見つめて。

「それに引き換え、ルナはいつ見ても体系変わらないな…」

「エルフは元々小柄ですし…私たちの種は一定成長すると身体の変化は止まります故…ですがそうですね」

少しばかり考える仕草をする、メーア同じく気にした方が人らしいのかを思いながら冗談も半分交えるようにして一つ頷き。

「上が少しばかり苦しくはなりましたでしょうか」

「…」

これは選択を誤っただろうか、心当たりある事象を述べたはずだったがと思うもじっと鎖骨あたりに視線を感じながらも少しの沈黙の後に小さく「見事だ」と真顔で答えた顔はしばらく忘れそうにないだろう。

「…とはいえサイズを変更するほどではありませんし、メーアさん同じく、微々たる変化で…」

「体型が変わらないといったのは訂正しよう!…しかしながら体の衰えがないということは、不老不死、なのか?」

言葉を切りながら力強く頷くメーアにあらあらと微笑みを返せばふむ、とメーアが疑問を持って質問してくる。

「いえ、私たちも命の理に生きるもの、道を外さなければ例外はありません…猶予は違いますが、寿命はあります、長くて約1000年と聞いてはいますが…」

「千年!?また、途方もないな…それだけの時を生きるなんて想像もつかない」

故に不死ではない、長く生きたとしても、何れそれは終わりを告げる、果たして私はあとどのくらいいきれるのだろうか、いや、向こうに戻るのならば寿命など意味のない話なのかもしれない、実際寿命で亡くなったエルフの話を私は聞いたことがないのだから。

「そうですね…だからこそ、私には人の急ぐ気持ちが少し不思議なものに見えます」

「あぁ、なるほど、そちらから見たらそうなのか…ふむ」

自分にないものはなかなかに理解はしがたい、故に分かり合えない、今までならそう割り切っていれたはずだ、いつからだろう…それを少し羨ましいと、知りたいと思ったのは。
このまま、分からないままなのだろうか、手を伸ばせば…私にも、分かりえることなのだろうか。

「…だから人は子を成し、自分の生きた証を残す…私にも証が残せるでしょうか」

形は同じ人なれど、中身はこんなにも違う、ついぞ叶わない望みを呟きながら、知りえなかった感情の上に立つ。

「…あぁ、もちろんだ…それになルナ、生きた証というのは子を成すことだけではないぞ?」

「…そう、なのですか?」

この世界に来て、人をよく見るようになって、幸せそうな人たちを見てはそういうものなのだろうと理解したつもりだった、それとは違う回答があるのだろうかとゆるりと首を傾げて問う。

「あぁ。今こうして私と話をしている、私の記憶の中にルナがいる_それも「生きた証」の一つだと思うぞ」

その言葉とその表情に思わず眼を開く、心を風が駆ける音がする、だからこそあれが彼女の色になったのかもしれない、そう思いながら、そっとポケットから生成したネックレスをそっと手にもち、微笑む。

「誰かの記憶に残る…それがこんなにうれしいことだなんて、思いもしませんでした…ふふふ、そうですね」

ゆっくりと、一口紅茶を飲んでは一人納得したように繰り返し、思いを紡ぐ。

「皆様やシエルで出会た方々の記憶が…たくさん、こんなに人の、誰かの名前を覚えたのは…本当に久しく、またそれもその人が生きた証…」

「あぁ、だが私は記憶力がよくないからな!頭がパンクしそうになるが…どれもみな大切な思い出だ、今までもこれからも勿論!もっと増えていくしな…というわけでこのイチゴタルトは明日には食べたことを忘れていることにしよう」

ふっと嬉しそうな笑みを浮かべながら冗談めかしてしゅっとフォークを差せば切り分けて口に運ぶ、相まってうれしそうな笑みにこちらも嬉しそうにして。
そんなメーアを眺めながらゆっくりと立ち上がり歩み寄る、そっと両の手を開いてガラス玉に模様の入ったネックレスをメーアに差し出して。

「ん?ルナどうし…これは?ずいぶんきれいな品物だが…」

「…ふふ、蒼い色をしていたので…つい思い出して、メーアさんにと」

「え?これを私にか?貴重なものじゃないのか?」

「…ふふ、それ以上に価値のあるものを、私は貰っていますから…構いません」

記憶にないぞと首をかしげいうメーアに持たせながら手を重ねて静かに言葉を続ける。

「私と長く…シエルになる前から、受け入れたり見送ったり、寂しかったり誇らしかったり…たくさんお世話になりましたから…感謝しています」

「…ルナ?」

少しばかりの不安とメーアの手が軽く力がこもるのを感じる、く、っと手を引かれるような感覚に、悟られるのを避けるように時計を見やると。

「…あらあら*もうこんな時間でしたか…*私はもう少しやることがあるのでした…*」

「ん?あぁ、本当だ、すまないな、片付けは私がしておこう…なあ…ルナ」

「あらあら…*助かります、お願いしますね…はい、なんでしょう?」

瞳を開いて優しく微笑む、少しだけ窓から入る月光を受けて、去り際の金色の髪が振り向き揺れる。
少し間が空く、その不安を直感でメーアは感じながら聞けずに言葉を紡ぐ。

「…また、明日…な?」

「…ふふふ*やはり貴方に出会えて…本当に良かった」

内心驚きながら、それを隠すように深くお辞儀する、一瞬、ほんの一瞬瞳の反射が乱れるのを感じながら、瞳を閉じて背を向けると、静かに談話室を後にした。

「うん…私も…」

一人呟いてそのネックレスを握ると頭によぎった考えを振り払うようにして片付けに入り、メーアは部屋へ戻っていった。

11話 新月 その歩みは誰の為に

綺麗な木から華が舞う、月のない夜は周りは少し見えにくい、きらきらと星が輝く、手が届きそうだとつい、手を伸ばして、以前はよく来ていた、ここから故郷が見える気がして、一人水底に残した兄の亡骸を心にとめながら。
けれども今は違う、だからこそいかねばならない、シアに言われなくてもわかっていたことなのだ。
けれども,けれども…得たものは、あっさり切り捨てられるようなものではない。

「ここからすぐに行けたなら…どんなに良かっただろう…急に出て行ってしまって…いえ、誰にも会わない方がきっと…」

つい思い出す、仲間の顔を、つい思い出すあの時の温かさを…けれどもここからは非情で在らねばならない、あの世界で心を持った人間が居るのは…あまり期待できないことだ。
そしておそらく、私という意識も長くはないのかもしれない主導権は切り替わっている、以前はしっかりと抑えていた感覚があった、今はそれがなく、彼女がどうしているかも把握ができない。

「私の選択…そう、元に戻るだけ…誰かを信じたことも…誰かを愛したことも…武器を取らず、平和に笑えていたことも…」

誰に言うことなくそう呟く、手に持つ水晶がかすかに光り、再び強い風が吹く、頭上には飛竜、一層華を散らしながら降り立つ。
顔を思わず腕で覆い、収まるとともに外せば土に降りる音が聞こえる、その手には黒い弓を持ち弓筒を背負った魔女教の弓と呼ばれる男だった。

「…いくぞ」

「…はい…」

最後に来た道を振り返る、言えなかった言葉を今なら言える気がする、きっと届かないけれど。

「さようなら…私の希望」

それをまるでかき消すかのように、再び風の音が鳴る、独特の機械音に覚えがあり上を向く、それは巨大な飛行船、それは希望の船…そして聞き間違えようのない声が響く。

あぁ、どうしてあなたは_

「ルナァアアア!」
着地を待たずにその身一つで降り立つ、通常の人ならば心配するレベルではあるが、私は知っている、彼がいかに頑丈であるか、彼がいかに、希望を持ち続けてくれる存在であるかを。
小さく名前を呼びながら思わず手を伸ばしそうになる、それに割って入るように弓が入り制止する。

「…何も言わずに、どこに行く気だ」
ミトラスと共にふわりと地に降り立つ、ネックレスを手に持ちながら不安げにしているメーアが、花びらを纏いながらミトラスが…置いてきたはずの希望が、集う。

「…随分な見送りだな」

合間に立つ弓がそう驚くこともせずに呟く、数でいうなら一気に劣勢になったわけだがそんな焦りなども微塵にも出さずに、ただじっとシエルの面々を見つめている。

「見送るつもりなんかない、よ」

「アーレム君の言う通りです」

じっと睨んだまま弓に対して言い放つ、人ならざるものなのに、彼らは人の心を持ち、案じ、思ってくれている。

「昨日のルナはどこかおかしいと思っていたんだ、こういうことか」

「…すみません」

メーアが辛そうにしかしながら真っすぐに言うと私は瞳をそらした、ミトラスの憂いを含む表情を感じながらも、思わずそう謝罪して。

「私は…私の務めを果たしに、向こうへ帰ります」

「理由を聞いてもいいか、ルナ、どうして急に…」

「具体的な理由を述べてください、場合によっては力ずくで止めます」

「ルナ…」

「…そう、ですね…見てもらった方が早い…私の「過ち」を」

メルファからもらった水晶が黒い光を放つ、それを地に叩きつけるとそれはパリンとガラスのように割れ、シエルの仲間を取り囲むように特殊な空間を形成する、ホログラムのようにいくつかの画面と場面が流れる、ルナは中心に立ちそれをまとめる。

『記憶媒体_ル、フィナ_起動します_』

『昔々あるところに__』

時々姿を欠きながらも緑色の長髪を揺らしながら歴史を語る、私たちは見捨てられた世界の住人だということ、人が人を忘れ、共存を忘れ、傾倒していく様が映し出されていた。

ルナはそんな世界の調停者…森を管理する光柱の一人だという、光と闇はそれぞれ3種族が抜粋されておりルナ以外に5種族がそれぞれ選ばれてはいるが、人間がそれを押しやり均衡を崩して乱しているという話だった。
その発端となった、いや、加速させている人間が_バル・ヴィレインである。

一番最後に映像が大幅に飛ぶ、ルナと同じくエルフの耳をして、黒い短髪を乱しながら、墓標の中を必死に叫ぶ青年の姿だった。

パリン、という音がして水晶の映像は終わりを告げる、すっと元の景色と星の瞬きに戻るのを見つめながらルナは静かに口を開いた。

「…誰一人いないなら、私はきっと帰らなかった、けれど、一人でもいるなら__私は導き手に戻らないと、あの世界に、彼を一人にしては置けない」

勿論問題は様々ある、バルに押されたこの呪い以外にもう一つ…神からの烙印を何とかしなければいずれ滅ぶ、それでも、と身を固くして。

「…」
ミトラスがぐっと右腕に力を込めたのを見やりながら、周りを見渡すとそれぞれ何も言えないような表情をして、押し黙る。

「…大丈夫…きっと、時間が何とかしてくれます…だから私を…どうか忘れ…」

「そんなわけあるか!忘れられるわけないだろう!」

メーアが言葉を遮るように感情を高ぶらせて声を上げる、ルナの手を引いて連れ出そうとする勢いで一歩一歩踏み出しながら。

「ルナはいつもそうだ、確かに私たちには異界のことなどわからない、責任の重さも、辛さも…それを変わってやることも出来ない、無力だ、だが!」

「それでもどうして…どうしているも一人で何でも背負おうとするんだ!」

その表情は怒りにもかなしみにも取れた、痛みを感じそうな叫びを聞きながら、しかし目をそらすことはできずに、歩む足は弓により止められる、しかしそれをミトラスが蹴り飛ばすようにすると飛竜が爪で応戦してその身を飛ばしながら飛竜とミトラスはにらみ合い対峙する。

「…バルも元はといえば私をおって…彼が来なければ、あの子も皆も、巻き込まれることなんてなかった」

「拒絶されるくらいなら、巻き込むくらいなら、一人傷ついた方がマシだと?…それがルナの想いなんだな」

ぐ、っと強い瞳を崩すことなくメーアは問う、それに小さく頷いてだんだんと声は落ち着きを取り戻しているようで、考える仕草をする。

「…なら私たちの思いも聞いてくれ、ルナ、もし同じことを…アーレムがしたとしたら?」

隣にいたアーレムをびしっと指さすと小さくふえっという言葉が聞こえる、少しそんなことはしないよというような視線をメーアに向けながらも同じくルナを見て。

「ルナはそれを黙って見送るのか?」

「それは…」

言い淀み、俯く。
そうだと答えなければならないのにやはり言葉が出てこない、彼なら強くなった、私よりも十二分に…だから、きっと、一人でも…いいや、皆がいるから、きっと、大丈夫だと。

「…巻き込まれてもいい、どこか一人で苦しませるくらいなら…たとえ傷つこうとも、共に在って、立ち向かいたい…そうは思わないか?…たとえ過去に何があったとしても、最初は偽りだったとしても、私たちがルナからもらった優しさや、言葉や温かさは、何があっても何をしても、消えることはない…だから一人で悩んで抱えるな、私たちを…頼ってほしい」

飛竜とミトラスの攻防が過激になりつつあるのを見かねた弓が応戦しに行く、それと同時にメーアがしっかりとルナの肩をつかんで願うように、祈るように。
そんな貴女たちだからこそ、同じ茨を踏ませたくはない。

「…あなたたちは、優しい…そんな人間に出会えただけで…人の心を知れただけで…誰かを好きになれただけで…私にとっては奇跡だったのですね、だからこそ巻き込めない…私と同じく同胞や人を殺めるなんて…させたくはない、だから、私のわがままなんです」

メーアとアーレムを真っすぐ見つめる、私がしった感情をくれたあなた達の心を殺すわけにはいかない、それこそ悔やんでも悔やみきれないものだと、私は知ったのだから。

「終わったか」

弓が飛竜を連れて戻ってくる、後方に負傷したミトラスを庇いうかがうヤオガミを様子見ながら淡々と興味なさげに、メーアとルナを引きはがすとメーアに向いて。

「それが器の選択、仲間だというのなら今までしてきたように尊重すべきではないか、偽善だけで何事も捻じ曲げようとするのは…いつ見ても不可解だ」

「あぁ、そうだろうな、結局はわたしもただわがままなだけなんだ、そんなのはわかっている、私だけが正しいわけじゃない、それでも、ただ一人苦しむのを見てはいられない」

珍しく長く言葉を紡ぐ弓、相変わらずフードのしたはわからずその言葉にも感情はない、それでもメーアは諦めない意志を持っていう。

「…人間は理解できない」

「理解してくれとは言わないさ、ただ、私がそういう人間だというだけだ。」

それを聞くと弓は静かに手に持ったエールデエアーチをメーアに向ける、それ以上話しても無駄だという判断なのだろうか、どこか怒りを含んた口調になるとそれを引く、反射的に盾を構えるメーア、ギリギリを弓を引く音だけがそこに響く。

「…させない、よ!」

弓の死角から盾のブロードソードが飛んでくる、それは弓の引く手に向かって投げられそれを避けるとともにメーアに定められた照準は逸れ、メーアの手前に刺さるとそれはモグラのように土に潜り壁のようにせりたち進路を阻む、次いで足元に絡まる蔦に取られながら悔しげにそれを見上げ。

「メーア姉!」

「私は大丈夫だ!それよりルナを!」

視界を遮断されたものの無事を確認するとアーレムは再び弓に対峙する、あの時も助けられたなら、今回だって。
アーレムの赤い瞳を見つめながら、弓は再び構え、その視線から感じ取ったのか弓が代弁するように言う。

「…あの時と同じだから大丈夫と思うのか」

「アーレム…」

「ルナ、帰ろう…僕らの希望に」

弓の横を駆け抜けルナのもとへと駆け寄ると手を引き、ぎゅっと抱きしめながらそういうとルナは震えながら_。

「アーレム君!避けて!」

「え…?」

ミトラスの叫び声と共に_浅く首後ろに何かが刺さる音がする、弓が妨害したのだろうか、いや、弓が動いた音も気配もない、少しして高い金属音が傍の石にあたって落ちる、途端にアーレムはぐらりと意識を手放した。

「…ルな…?」

「アーレム…いや、いや…!私…!」

その重みを感じながらハッとしてルナはその手を力なく卸す、遠い記憶がフラッシュバックする、また同じことを繰り返すのかとどこかから声がする、震えながら離れればルナもまた、意識を引かれる。

「…いつまでそうしているつもりだ、最初に言っただろう、無理だと」

ヤオガミ剣技とミトラスの花によって壁と拘束を抜けたメーアたちが見たのは、アーレムの首元に何かを差したルナと、地に伏せたアーレムに静かにそう告げる、シアの姿だった。

ヤオガミとミトラスが技を繰り出し周囲に花びらが舞う弓はそれを打ち払いながらシアは飛び避けると。

「私の邪魔は、させない」

「何故だ!出てこられないはずじゃ…!」

「…簡単なことだ、主権が変わった、ただそれだけのこと…それよりもいいのか?毒かもしれないぞ」

アーレムをしゃがんで抱えながらルナの説明を思い返しメーアは叫ぶ、シアはそういうとはん、と見下げて言って。
その様子を見ながら弓は3人に告げて。

「…無駄に抗うのも人間だったな…他の未来を捨て、その未来を望むならば来るがいい」

「無駄話が過ぎる、いくぞ」

素早く乗り込み飛竜が一声泣く、ぐんと魔力を拡散してくらませながら羽ばたいていき。

「ルナ!!私は…私たちは諦めないからな!!」

「…っち、バル、許さねぇぞ…」

「…これは…」

飛び行く飛竜を見つめながら、叫び、静かに睨みながらそれぞれ決意を新たにする面々、ミトラスによりそれは即効性の睡眠薬と知ると負傷した面々のためにもいったん帰還することとなる。

_こうして月のない夜に魔女教との全面対立が始まる

_どちらが笑うかは、誰も知らない。

11.5話 仲間 想い人を探して

ルナが新月の日にシエルを去り、数か月が過ぎた。
アーレムは今日も情報を収集しながら思い人を探す。
エドルの酒場、交易所、聖導士教会、エルメキア団体、ジョバリのマチルダやヒルダにも行方を聞きわたる。

「そういえば最近姿を見ないな」

「なあに?また変なことしてるんじゃないでしょうね?ちゃんとつかまえておかないから_「姫様」

「ルナ…?あぁ、確か何か月か前に…」

「あのメイド服着たエルフの嬢ちゃんだろ?懐かしいねぇ」

記憶しているものの、確証たる証拠は得られないままにだんだんとそんな会話に虚しさが混じる。
だった、居た、懐かしい_人々の間で、彼女が「過去」になりつつある。
シエルでもおだやかな日常に表面上は穏やかにしながらも、一人焦りを抱えながらも不安と戦う日々が続く。

今日も情報収集に精を出しながらもシエルに帰還する、「おかえりなさいませ」という声は今日も聞こえないまま少し肩を落とすと仲間であり姉のように慕うメーアと…見知らぬ青年がそこにはいた、話には聞いていた、確か名前は_。

「ん、こんばんは、メーア姉…それに、えっと、ユナさん、だね」

何処か幸せそうな空間に少し控えめに言ってから顔をだせばメーアが気さくに手を挙げて答える。

「おや、アーレムこんばんは、今日はもう厨房のほうはいいのか?」

「うん、そっちは早めに済ませて酒場での情報収集に、ね」

「あれ…俺の名前…初めてなはずだけど…」

そうなのか、とメーアがそういうとユナが訝しげに言ってくる、エスパーとかじゃないよというように小さく両手を上げるとルナに似た耳と金髪に瞳を細めては穏やかに言った。

「と、ユナさんのことはみんなから聞いてて、ね…初めまして、護術士のアーレム、だよ…よろしくね」

「…みんなからってことは…そうか、アーレムさん、よろしく…」

「ふふ…船の情報は回るのが早いからな…と、そうか今日は何か収穫はあったか?」

ユナの対応はそっけないもののきちんと言葉は交わしてくれそうだ、メーアが安心したように笑いながら先の話へと戻しつつ問いかけるとユナがそれに興味を示すように反応して。

「うん、人さらいを3人捕まえたくらい、かな」

「そうかそうか3人か…って3人!?人攫いをか?…それで、ルナに関係あるやつらだったのか?」

「…どうかな、今はアンリが見てくれてるけど…小さな点を結んで線にして、それで描け、って」

「…人を、探しているのか…?」

ワンテンポ遅れて驚くメーアを一瞬見たユナがそうアーレムに問いかけるユナ、アーレムは少し伏せ目になりながらも頷いてメーアがユナに向きながら説明する。

「あぁ、ルナというのは船の仲間で…アーレムの恋人…婚約者なんだ」

「……そうなんだ、想い人だと、辛いだろうね…早く見つかると、いいね」

「うん、地道に…でも絶対探し出す、よ」

ぐっと握った掌からじわりとミトラがあふれ出す、そう、まだ希望はついえていないのだから。

「私も少しでもわかった事があったらすぐに伝えよう、ユナ度ももし何か耳にしたら教えてほしい」

「…うん、わかった…次は10年もかけないようにする」

「うぐっ…そ、それは悪かったと…いや、ありがとうと言ったじゃないか!」

「それはいいけど…何このキメラ」

「何ってルナだが…ってこっちじゃなかった、これは私が人探しに描いたルナだから間違いではないが…こっちだ!」

ユナの最後の言葉に思いきりダメージを受けたメーアがちょっと気まずそうにいってルナの似顔絵をユナに差し出すとユナはその絵に直視してはいけない何かを感じたのかさっと目をそらしながら言うとメーアは慌てて写真を差し出して。
慌てながらユナに向きなおれば時計を見て。

「っと、ではそろそろ失礼するとしよう」

「あ、もうこんな時間だったんだ、ね」

「…大丈夫!必ず見つかる、見つけよう、みんなで…私とユナ殿も再会できたんだ、大丈夫。」
ネックレスを握りながらも最後は笑顔で扉前で振り向くと微笑んで手を振って談話室を去っていく。

「・・・・うん、おやすみ、メーア」

「メーア姉、ありがとう、ね」

軽く手を振りながらメーアを見送る2人に少しの沈黙を経て、ユナが沈黙を破る。

「…アーレムさんも、今日は休んだ方が、いいよ」

顔を背けながらもそっけなく言いうが気遣いを最大限に込めて言う、想い人を探す大変さや辛さは…少なからずわかるつもりだと、ユナはそう思いながら、偽りなく。

「ありがとう…ね、ユナさん」

「…何?」

「困ったときは助ける、から…僕が困ったときも助けてくれる、かな…?」

「別に、俺のことは助けなくていいよ…でも、アーレムさんの事は…助けるよ」

アーレムは真っすぐ穏やかにそういい、ユナはそっぽを向いて、しかしながらいやな空気もなくなんとも不思議な空気の中、アーレムがフフッと笑って。

「ありがと…助けてくれるなら、僕は勝手にユナさんを助ける、ね?」

「…!は、はやくねたらっ!」

思わずアーレムを目を見開いて見やれば慌てて立ち上がり少し椅子の脚に足を引っかけつつ扉に向かっていく、そんな様子を穏やかに見送るアーレムが後ろから声をかける。

「ん、おやすみ、朝ご飯は期待して、ね?」

「…おやすみ」

はぁ、と息を吸い吐くと、少しばかり落ち着いたのか、しかしながら表情は見せることなく軽く手を振りそっと扉は閉められていく。

「ルナーシア…」

そっと呟いたアーレムの声は静かになった談話室に溶けて消えた。

12話 探求 痕跡を探して

_助けてくれるなら、僕は勝手にユナさんを助けるね。

_はは、不思議だろう?ほぼ純粋な人は少ないのに、この船の皆は、きちんと人の心を持っているんだ、だからユナ殿もきっと丈夫さ。

エドルの少し外れでこの季節に咲く薬草の花を探していた、生息地に赴いてそれを見つけてしゃがむ、その白い花をそっと摘み取りながらふとそんなことを思い返した。

「…なんかムカツク…今度実験台にしよう」

白い息を吐きながらそう呟いた、あの時の笑みのまま大丈夫と言ったメーアの顔を思い浮かべながらついそう口に出す、相変わらず天邪鬼だなと心で悪態をつく、安心したから、また出会えたからそう思えるようになったのだと思い返して。

「…会えないのは、辛いんだ…無事、だといいな」

まだあって間もないけれど、アーレムさんの事、よく知らないけれど、それだけは分かる、寿命がもし永久にあったとしても…心は疲弊もしていくし、環境だって変わる、向こうが無事だったとしても、こっちにはそれがわからないし…それに今回はその人は何かに巻き込まれたのが明確だった。
隣に居たテホムがピクリと反応して横を見ると一声泣いて走っていく、慌てて追いかけ森を抜けた先に、テホムがお座りして待っている。

「何…急に…寒…氷の、洞窟…?」

髪先が少しばかり凍りそうな寒さの中息を切らしながら、吸う空気も冷たく体温を奪っていく、テホムを恨み目にちょっと見て先を見上げると土壁か何かが氷で覆われた洞窟がそこにはあった、テホムがまた一声泣くとその足先に何かが挟まっているのを見つけた。

「何これ…うわ、きったな」

テホムがぱっとそれを離すとユナは反射で捕まえる、それはスクロールが焼ききれたような跡が残る切れ端で、その裏には固まり血が凝固したものが付着していた。
思わす手を離すとテホムが吠える、どうやらそれを持って行けとでも言いたいらしい…まあなにか関係あったらあれだしとなるべく触れないようにして持って帰り、メーア達に報告することにした。

___

「で?それでなんで私が右手と左手が同じ動きするポーションをかけられなければならないんだ…!」

「だってアーレムさんは何も悪くないだろ…」

「私も何も悪くないだろ!」

「いいじゃん足が同じ動きじゃなくて、それだったら来れなかったよ」

「だ・れ・の・せ・い・だ…!」

「ふふ…仲良し、だね」

数日後、花の余りで作ったいたずらポーションも無事?完成したのか有言実行して今に至る、一人と一匹で来るより温かさと安心さを感じながらそんなやり取りをするユナとメーア、アーレムは後ろから付きながらアンリを連れて微笑んでいる。
洞窟にはいって少し進んだ先でまた思い返すように言葉を紡いで。

「テホムが、紙を、拾って、その紙に、私が持っている、ルナから、もらったネックレス、が反応したから…っくいつまでこれ続くんだユナ殿!動きにくいぞ!」

「ぷっ…た、たぶん、もうすぐ、じゃない…?」

メーアが指をさしながら確認しようとするも動作が両方同じなためオーバーリアクション気味に指し示したりしている、少し恥ずかしさに顔を赤くしていいながら言うもその動きに思わず笑いながら肩を震わせてユナは答えた。
どこか締まらない空気のなか、静かな洞窟を道なりに進み、唐突にそれは破られる、ふたたびメーアが持つネックレスが淡く光る…。

__ゴゴ…ゴゴゴ…

最初は何か仕掛け扉でも開いたのかと思った…が違う、よくよく聴けば壁が振動していてそれはだんだんと大きくなっていく、
その音の主は進行方向から来ていた、四隅に辛うじて隙間があるくらいの大きな氷塊である。

「なっ…うそだろ!なんでいきなり…!」

「なにあれ…」

「メーア姉、ユナさん…下がって…!アンリ!」

『ダメ元だァ!焼き溶かしてやんよォ!』

ゴゥ、っとその多眼の盾から炎が吹き荒れる、それは氷塊を飲み込むものの…溶解までは至らずにまだこちらに向かってくる。

「っく、治ったか?よし追加でこれもくらえっ!」

もう一振りだとメーアが動きを取り直した腕で盾と剣を振るう、ビシリ、ビシリと氷塊にヒビが混じるもまだ止まりそうにない、大きさは少し溶けたからか少し小さくなって。

「う、うわ…止まらないぞ!」

「…テホム!」

思わずメーアの前に出ながらユナがそう言って手をかざすと相棒のオオカミの名を呼ぶ、飲ませたポーションにより炎を纏ったテホムがその氷塊へとその身をぶつけに行く。

「おぉ!?」

『よォし見せ場だぞォ犬っころォ!』

メーアとアンリがそう声をだす、さすがに3回とは持たなかったかその勢いは止まり、ヒビは裂け目に変わりその破片すら溶かしていく、水に帰った中心にテホムがドヤ顔して立っていてしっぽを振っている。

丁度その前に分かれ道がある、右か左か迷いながら面々は考える仕草をして。

「あ、メーア姉、首飾りに反応とか無い、かな?」

「あ、なるほど…ううん、無い、みたいだな…どちらも反応はしていない、のか?」

「そう都合よくはいかないみたい…だね…」

「んん…テホムの鼻もダメか?」

さっきは偉かったなとメーアがよしよししながらそういうと思わず問いかけて、テホムは一つ泣くと鼻を動かし右往左往して、しっぽは先ほどの喜びを表すものでなく下がったまま、しかしこちらだというように左側に座る。

「…行きたくなさそうだな」

「?テホム、左の道が嫌、なの?」

「…狼は危険察知能力が高いから…あの紙を追うなら…嫌がっている左…かもね」

ユナがテホムを見ながらそういって考えを述べたと同時に左側へとテホムが走り出す、それを慌てて追う3人、そこには行き止まりの氷壁と、小さなアンビトリテを模した石造がある、しかしながら何かが足りない。

「…この石造…アンピトリテ?ならやっぱり魔女教絡みなの、かな」

「…そうかもしれないな…ん?だが、なんだか違和感が」

「魔女教…?」

新たな単語に首をかしげるユナに魔女教について説明しながら周囲を見渡す、その中でアーレムがはっとして気づく、レプリカと対峙したときによく見る…彼女の槍がないことに。

「…あ、このアンピトリテさん、槍を持ってない、よね」

「あー!だからなんか違和感があったのか、もしかしてその槍を持たせたら何か起こるんだろうか…とりあえず探してみるか」

「確か凹むんじゃなくて立体的に掘られていたから、から…もしかしたらそこらに破片がある、かも?」

アーレムがその辺りの砕けた破片を拾いながら順々に組み上げるも嵌め込んだだけでは定着しない、そんなアーレムを見て抑えている個所にユナがポーションを垂らすとそれらは凝固して一つの槍になっていく。

_ありがとう

何処かから声がすると同時にアンピトリテの石像の台座部分がスライドして一冊の本が出てくる。

「これ…」

「うん?何か…手記か、これ」

「何が書いてあるか、読める…?」

メーアがひょこっと顔を出して戻ってくるとそれを取ってみて、破かないように静かにめくるとかすれた文字を凝らして読み上げてみる。

【〇月〇日、天気良好】

【…いに、我々の悲願が叶うときが来た、れは切に、切に…書と鍵が揃…魔女様が…贄を、贄をくべよ、再会はすぐそこ…】

『…見覚えのあるこの場所で贄…かァ。』

アンリがそうつぶやくのをユナとメーアが気に掛ける、ひとまずこの手記は回収して後日改めて見ることとなった。

「そういえばさっきテホムが吠えていた壁のほうはどうだ?…鍵穴・・・はあるんだが如何せん鍵がないか…」

『見た事ねェ鍵の形だなァ…』

「泥棒さんでもダメ、か」

「こういう時ベネチア殿が居たら鍵がなくてもささーっと…」

開けそうだよなと手でジェスチャーして見せる、しれっと何かに使えないかしら、とか言っている褐色金髪の姿を思い浮かべればそうだとメーアがまた掌を打って。

「さっき変な壁がこっちに」

「…変な、壁?」

そう唸りながらメーアがその壁の前まで行く、ここも氷壁ではあるが少し下あたりに妙な窪みがあるのをしゃがんで指し示す。

「とはいえさっきみたいに石で…とはいかないよな、破片を詰めるには小さすぎるし…何かで代用できないだろうか」

「うん…何かない、かな」

「鍵の形…してる…たぶん行けると思うけど」

その言葉にメーアとアーレムがユナに振り向くとその前を譲り見守る、少し息を吸って集中すると指でその窪みをなぞる、水は氷となり、その形に添って鍵になった。

「おぉ…やっぱりすごいなユナ殿は…見事だ」

「うん、すごい器用、だね」

「試してみようか…アーレムさんに褒められると、嬉しいね」

言いながら立ち上がると静かに鍵穴に入れてみる、綺麗に作られた鍵は難なく入りカチリと音が鳴る、ズズズ…とスライドして開くと同時に途端テホムが思わず飛びのくと_。

_オォオォ…!

風と共に黒い何かが手のようにこちらに伸びながら体を貫通していく、続いてそれが過ぎたと思えば眼前に広がるのは異臭、充満する鉄の匂い、檻に積まれた躯、檻のまた先には祭壇、手と足加瀬が備わっており乾いているが消えていないそれは_

視覚に、嗅覚に、感覚に、感性に、言いようもない何か、を身体が駆け巡っていく。

「あ…あ…」

『2人ともォ!アーレムを目一杯殴れェ!』

途端アーレムが手を伸ばしながらゆっくりとそこにふらりと入っていく、手を伸ばしながら、祭壇へと歩みを止めない、身に着けた鎧が静かに音を立てながら、うつろに呟きながら髪を縛るリボンをほどくと青白い顔をしながら握りしめている。
アンリが付きながらもそう叫ぶと様子がおかしいと思ってはいたが動けずにいた二人は我に返る。

「…!アーレム、待つんだ!」

「メーア!」

「ユナ殿!アーレムを眠らせてくれ!早く!」

黒い手がアーレムに反応してその足に、鎧に集まりながら手を伸ばしていく、アーレムを止めるようにメーアが後ろから羽交い締めるように何とかおさえるも、その手はメーアにも及ぶ、先ほどより気味悪い感覚が濃厚に漂うそれにもがきながらメーアは状況を呑み込めていないユナにそう声を飛ばす。

「っく…!」

「…!」

_去りなさい、私の大切な人を_害さないで

メーアの五感が乱れ始める、今立っているのか、膝をついているか、抑えているのか、ほどかれたのか、めまいを感じそうに目まぐるしく変わっていく感覚にぐっとこらえるように身を固くする。
ぼんやりとネックレスが見える、それは淡く黄色に共鳴するとリボンと共に淡く光りその手を辛うじて退けていく。
ユナは走り出すと手袋を取る、塗り薬を取り出すとそれをうつろに呟いているアーレムの瞼に塗り、ッシ!と効力をまじないのように魔力に乗せて強めると、がくり、とアーレムは脱力して。

『落ちてりゃ十分だぁ!目覚めるまで世話してやらぁ!』

「ユナ殿よくやった…!感謝する」

「…メーア、一応薬飲んどいて、身体の邪気は残しちゃダメだから」

アンリがアーレムの体にとりつくと炎がその身に宿り、包む、その炎は迫る怨念にまで燃え移る、安堵して離れたメーアがユナにそう言うと膝をついて、それに駆け寄るとユナは採取した花で作った薬を渡して。
悲鳴のような奇声のような、喜びのようにも聞こえるそれを発しながらそれらはじりじりと焼かれ、消えていく。

「…てめぇらの怨念、俺が全部食らってやらァ」

「アンリ殿…ふふ、心強い」

「ったくよォ。同じ場所を二度も焼くのは初めてだぜェ?」

アーレムを包む炎をかき分け姿を現したのは、赤紙の女だった。
どれだけの想いを焼いただろう、最後の一手が焼き切れると多少匂いがマシになったような気もする…しかしこの場はニイマロが浄化し、ミクアリアがその時の魔女を葬ったはずで…その後に再び、何かがあったということは、間違いないだろう。
炎が収まり祭壇を見ると床になにか書いたような跡と…あの炎に巻き込まれてもなお。不自然なくらいに綺麗な紙がそこに一枚残っている、薬を飲んだメーアがよろめきながら立ち、ゆっくりと歩くと吸い寄せられるようにその紙を手に取った。

「クソ、悪趣味極まりねェ…!」

「あれだけの炎で…燃えていな紙…?」

__アハハ、人の魔力を真似っこ…みたいなことができる、んだよね、オリジナルにはもちろん、叶わないけど_

アンリが悪態をついて吐き捨てるように言う
メーアはふと雪山で赤の魔法を真似た彼女が持っていた紙を思い出す、もしかしてと呟く、ヤオガミから彼女が魔女教にいることを聴いてはいたが…半信半疑だった。

「…覚えがあるぞ、確か以前船に遊びに来ていた、モブ子殿が持っていた本もそうだ…燃えないんだ」

言いながらそれを眺めると難解な魔法陣と何かが書かれている、不思議な筆跡にこちらは心当たりがないのかメーアは首をかしげて2人に見せるとアンリがそれを見た瞬間にクツクツと笑い始めた。

「…!クッハハ…クハハハハ!上等じゃねェか!」

突然笑い出したアンリに2人は驚いたように見つめるとアンリはそれを読み始める。

_しぶとい連中だ。良いだろう、相手をしてやる、薄汚い盗賊だった貴様ならわかるだろう_

_私はここにいる。逃げも隠れもしない。やってこい_

_人でなし共_

「…もしや…ハイラノか?」

その感情の高ぶりから思わずその身から炎があふれ出すもその紙は涼しげにはためいている、その独特の語彙からメーアが呟くと炎が止む、ジジ、っと魔法陣がかすんだように見えた、どうやら書いた本人が離れてしばらくすると消える代物らしい、せっかく手にした手掛かりをなくすわけにはいかないとメーアとユナはそれを保存しようと試みる。

メーアは疲労のせいなのか中々難航しつつある隣でポーションを床に垂らして魔法で複製を始めるユナ、ちょっとショックを受けたように見えるのは気のせいだろうか、とにかく3人はメッセージ入りの魔法陣の複製を入手する。

「…これでいいと思うけど…」

「クッハハ!良くやったァ。帰ったら抱いてやってもいいぜェ?」

「いえ、俺はいいです…」

「先にいってろォ。ちょっと野暮用すましておくからよォ」

「ああ…大丈夫だとは思うが、無理はしないでくれな…?」

そんな冗談交じりに言いながら部屋の入口に向かうアンリがぴたりと歩みを止めるとそう告げて、心配そうに見やるもここには危険はないだろうと判断してユナとメーアは退室する、2人が出ていった後に一人その空間に残り、静かに想いを馳せる、とおいとおい、最後の記憶に。

「…わかってる。お前らの分も背負ってやらァ…!ハイリアッシュ!」

再び炎が部屋を包む、しかしそれはどこか温かい、救済の炎の様で、躯と怨霊を包むとそこはただの洞窟へと姿を変えた。

「…じゃァな」

そう呟くように別れを告げ去る彼女の瞳の色は、何色だろうか。

_各々の活躍の末、無事帰還した3人_

_ようやくつかんだ情報、ハイラノのメッセージ、謎の魔法陣_

_これをたどれば確かに厄災に巻き込まれることになるだろう_

_けれど彼らは歩みを止めない_

_その先に、希望があると信じているから_

【現状】
シアに主導権を取られ、異世界に帰るためにシエルを下船しバルに協力をする

▼戦闘スタイル

【基本行動】

メイスによる攻撃や回復バフやデバフ、魔術的防御壁、場合により変動することもあるが基本は回復や補助担当。
魔法攻撃に対する耐性は高いものの純粋な物理には打たれ弱い。
また自身は光属性の為、闇には弱く、また影響を受けやすい、過度に受けたり闇を注がれたり、またルナーシアが気絶や瀕死に至った場合【闇への傾倒(下記参照】が発動する事がある。
手負いや非戦闘員、また戦闘が得意な方ではない人物に攻撃が行った場合身を挺して守ることがある。

【固有スキル】

  • 導き手の証

    開眼し左眼の魔法陣を作動させると発動するモノ、一時的に身体能力の向上、龍神の持続、羽根を形成して飛ぶ等、通常より強力な効果があり状況に応じてある程度は使えるが使いすぎると血涙する、異世界での役割を果たすためのものであるらしいが本来の扱いはルナーシア本人は知らず、謎のままだという。

  • 闇への傾倒

    体に施された呪印が何かしらの影響で発動してしまった状態、普段は抑えているものの、ルナーシアの状態により制御不能となった場合に発動しシア・ヴィレインへとその姿を変える。
    同一個体ではあるものの性格、体質等々全く違う為別に記載している。
    詳しくはシア・ヴィレイン参照。

  • 『機械騎士005 「ムーンナイト」』

    『古より闇を照らし、光をもたらす。蒼月の女神「カグヤ」よ…我に力を…変身』
    ※全長は約15m
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    聖神石がはめられた短剣(下記参照)を使用して詠唱することで機械騎士へと変身しその力を扱うことができる。
    蒼月の女神「カグヤ」の力を借りた機械騎士。
    回復を得意とし、戦う時は体に纏う羽衣で攻撃する。
    外見は女性フォルムに和装のような装甲だが所々に騎士のような部分もある。
    満月の夜にはムーンナイトの能力がさらにあがりパワーアップする。
    しかしながら適正は認められたものの同調が上手くいかずに未だ上手く扱えていない。

    • 【聖神石がはめられた短剣(チェンジャー】

      萌え魔神がいずれ訪れる脅威に対抗するために制作した物、古の神々の力を宿したクリスタル、聖神石(せいしんせき)を武器に装着することで変身できる機械仕掛けの騎士に変身するための武器。
      武器としても使用可能だが、ダメージは期待できない。
      チェンジャーに装着された聖神石に魔力を込め詠唱、機械騎士へと姿を変える。変身時間はおよそ3分。それ以上は適合者に負担がかかるため、リミッターをつけている。

▼その他

・船室

白を基調とし本棚、机、楽器類、生活に不便ない物が一通り揃っている、基本的に一人の構造だが少人数なら招けるようにはしている。
メイドを務める彼女らしくきれいに整頓されていて貰った物は大切に飾り、段々と部屋も賑やかになってきたようだ。
本棚には貰った本の他、料理本、ブレイズが販売している本、呪術についての本、ミトラ世界の言語書等が並んでいる。

・所持品&頂き物

【ブレイズの葡萄酒】

ある夜に小さな葡萄酒の瓶を預かる、自分が亡くなったらこれを墓にかけて欲しいと願いを受け、魔法により誰からも害されないように厳重に保管されている、自家製なのかとても美味。

【シチェークの手作りクッキー】

バケツプリン制作においての御礼の品、ココアとプレーンの2種類がある。

友人に教えて貰いながら作ったそれは慎重で器用なシチェークらしく形に乱れがなく、まるで売り物のよう。

ちなみにラッピングも可愛らしく丁寧、女子よりも女子だとか。

【☆4スープカップセット】

いつも世話になっている御礼、とベネチアから貰った白を基調としたカップ、耐熱製に優れ、かつお洒落な品。

アーレムと共に貰うも割りそうだからとセットで預かる、いつか使えたらと食器棚にそっとしまってある。

【かわうそ刺繍入りエプロン】

かわうそ師匠からルナの誕生日の祝い品。

白地にピンクリボンがあるフリル、レースもありながら可愛すぎず地味過ぎない一品、エプロンの隅にかわうそのワンポイントが入っている、かわうそ師匠らしい一品。

【とある店の薔薇の花束】

ランクからルナの誕生日の祝い品。

黒と赤以外の様々な薔薇が綺麗にアレジメントされている、花言葉を調べながら自室にきちんと飾っている。

【メアリー厳選恋愛小説】

メアリーからルナへの誕生日の祝い品。

以前の質問で頭を抱えて訛った末だろうか、あれ以降ネキアからも書物(漫画)を買うものの、メアリーの品の方が恋愛に近そう、恋愛を理解した代償か、本の全てが文章読解の様に線や付箋がはられている、尚キス迄理解はした模様。

【コウノトリの銀細工ネックレス】

アーレムからルナへの誕生日の祝い品。

「幸せを呼ぶ鳥」をモチーフに丁寧に細工されたネックレス、手のひらに収まる大きさのそれは小さいながらに確かに存在する、小さな盾、鈍色という控えめな彼らしい品。服の下にこっそり身につけている。

【シエル艇のストラップ】

ランクからのクリスマスプレゼント、船員全員お揃いで小さな艇とシエルクリールホープと書かれた布と一緒に加工されている。

【アーレム修理セット】

ミクアリアからのクリスマスプレゼント、以前身体を借りたアンリから吸ったミトラを薬にしたもの、だが…効果の程は不明、戦闘の際には持ち歩いている。

【座薬】

セーナからのクリスマスプレゼント、小さな袋に入ったままであるものの、彼女の開発する薬は効果が高いものが多々なため机の中に収納してある。

【シンプルな銀細工のペアリング】

アーレムからのクリスマスプレゼント、以前のネックレスは市販品だったが此方は自作との事、内側に名前が彫ってあり、指輪をつけ慣れていない為最初にはめて貰った左手の薬指にするものだと理解すれば意味も知らないままに互いに身につけていた。

ある日ニイマロとシャロン、メーアからその指につけるのは恋人がいる象徴、結婚と婚約を意味すると教わり、婚約指輪として身につけている。

【アリアの牙ネックレス】

ミクの部屋を訪ねた際にアリアと再会し友好の証としてアリアが牙を抜いて作った物、紐は赤いリボンで切れないように守られている。

【トトの着ぐるみパジャマ】

ランクに付く喋る鳥、トトからどう編まれたかは不明だが、それを加工してふわふわな着ぐるみパジャマが作られた、手触り着心地は申し分なく、着ると安眠外から触れてもずっと触れたい触り心地だとか。

【カーネーションとルナーシアの似顔絵】

母の日にニイマロからのプレゼント、違いに親というものを完全に理解しないままではあるが互いの想いから親子の認識になる、似顔絵は額に入れカーネーションも一輪大切に部屋に飾っている

【アーレムのデフォルメぬいぐるみ】

マモノ堂店主、黒羽が作ったアーレムのぬいぐるみ、天海でルナーシアとアーレムのぬいぐるみを互いに持つ、寂しくなったり不安になったりすると一緒に寝るので枕元に置いている。

▼他のキャラとの関わり/印象

【シエル内】

名前:たんす
 内容:ルナと同じ世界から来た妖精、ではあるがたんすは記憶喪失であり名前も変わっている為に互いにまだそれに気付かない、シエルでは小さな妖精さんとして可愛がっている。

名前:アーレム
内容:ハイヴィーバルの討伐に出かけた際に偶然倒れているところを助け、一目惚れされる、人間の感情を知らないルナに長い期間忍耐強く説いた結果、現在は恋人であり婚約者。

名前:ニイマロ
 内容:ルナと同じく呪印に苦しんだ経歴とその純粋さ、種族生き残りという境遇に親近感と心配からか世話を焼く、母の日に「自分にとっての母親」と言われ、互いに親子の関係認識。

名前:シャロン
 内容:天使襲撃の際、首をはねられそうになったルナを庇った事から命の恩人とも呼べる人物、ニイマロへの接し方の参考にしていたとかしないとか。

名前:ランク
口は軽いが根は真面目、そんな印象を持ちながらもそのしっかりとした信念や行動はどこか兄の様だと思う、甘える、頼る、ことについて度々説いてくれるもまだまだ治りそうにはない。

名前:ミクアリア
 内容:イタズラすきなお転婆吸血姫、その人懐こさからつい甘やかしてしまう妹のような存在。
しかしながら戦闘の際は頼もしい為に信頼はしている様子、アリアには姉の様な雰囲気を感じながら得た信頼に恥じない様にしている。

【シエル外関係】

名前:ゼルハイム

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異世界におけるルナーシアの「兄役」「前導き手」として指導と訓練、同じく守護を務めていたエルフ。
スタイルは細マッチョ、性格は優しく厳しいという印象だろうか、導き手の時に弟役としてサイファーに自らの力を分け与えているため一族の中で最も人間に近い関係の兄弟として良くも悪くも一目置かれていた。
バルにより力を利用されシアとともに一族を滅ぼすとルナーシア同じく「神罰」を受け、死した仲間の元へは体は帰還せずに亡骸が残された、後にルナーシアと共に水底へと沈んでいくもその後を知るものは居ない。

名前:四素精霊ルフィナ

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ルナーシアと共に神殿と自然を守護していた精霊。
スタイルはぺったん、性格は勝気でちょっぴり自信家、おしゃべり好きである。
風、土、火、水を操るもその身は小さいため人間に捕まりやすく、人間は扱いが悪いために絶滅しかけていたところをルナーシア一族と契約をすることによって難を逃れていた(人間サイズの姿にも成れるが長時間はムリで力が半減してしまうらしい)
ゼルハイム救出の際にバルに共に立ち向かうがシアへ変わった際に契約を切られてしまう。
その後ルナーシア一族が滅び独りになった後も影ながら見守っていたが再契約には至らなかった。
満月の日にルナーシアが居ないことに気付くとその身を犠牲にミトラ界へのゲートを開いたとされている。

名前:サイファー(製作者:エナガ氏)

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内容:ルナーシアの同郷でありゼルハイムの弟。ルナーシアとは歳の近い兄弟のような間柄ではあるが「世話役」も担っているために公私は分けて接する。基本の弓以外で剣術を得意としていて何故かルフィナに事あるごとにライバル視されていたという。
ルナーシア同様「人間は信用しない」基本理念だったがある日ゼルハイムに「外の世界を見て来いと」言われ里を去ることに、そして騒動を聞き戻るも変わり果てた神殿と墓標だけが彼を出迎えた。
しかしその惨状であっても仲間の生存を諦めなかった彼は異世界で捜索を続けているという、その後は不明。

名前:バル・ヴィレイン
内容:異世界にてルナに呪印を施しシアを作り上げた。ルナ一族に対してあらゆる厄災を招いた人物、人間や他種族を嫌っていたのも彼のせいとも言える。
マキナの友人でありマキナを介してニイマロに別なタイプの呪印を施した。
シアの事を「血を分けたわが娘」と呼んでいるがルナーシア自身にはあまり興味がないようだ。

名前:シア・ヴィレイン
ルナの同一個体、呪印により生み出された存在、中途半端な魂の為に自身が在りながらも自害しようとし諦める生き方のルナとバルを初めとする人間(及び味方するもの)を嫌っている。
転移ゲートを開いたのはルフィナとシアなのだがルナーシアはその記憶がない。

名前:エンヴィスール
邪神の眷属である大蛇と融合した、かつての聖女。
愛する人を敬愛する姉に奪われ、怒りと嫉妬に狂ってしまい、その負の感情によって邪神に支配されてしまった。ヴェールに包まれて見えない表情は今も激しい怒りに染まっている(ミトラスフィア極意引用)
ミトラリウムの塔にてバルに捕らえられその身をさらに改造された上にルナの魂を半分詰め込まれたりと散々である、現在は体は消失しているものの再臨の際に魂だけ呼び戻される状態だとか。