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世界カワウソの日によせて
ワシントン条約(CITES)
コツメカワウソは
CITESⅠ「附属書1」
2019年8月26日に決定し、2019年11月26日からワシントン条約の付属書Ⅱから付属書Ⅰになりました。
1977年にカワウソ亜科単位でワシントン条約附属書IIになった。
2019年8月17日から28日にかけてスイスのジュネーブで開催されているワシントン条約の第18回締約国会議(CITES-CoP18)で、インド、ネパール、フィリピンが、コツメカワウソを条約の「附属書Ⅰ」に掲載し、国際取引を原則禁止すべきとの提案を提出した。
CITESとは?
簡単に言えば動物たちを絶滅から守るための条約。
CITESとは日本語では「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」と呼ばれており、通称「ワシントン条約」や英文表記の頭文字を取って「CITES」(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)と呼ばれている。
ワシントン条約では種の保護レベルに応じて「附属書1」「附属書2」「附属書3」の3つの分類を用意している。
附属書1に指定されると、商業目的の国際取引が全面禁止。
附属書2では、商業目的の取引には、輸出国の証明・許可が必要となる。
附属書3は、指定された国からの国際取引に限り、輸出国の証明・許可が必要となる。
このうち締約国会議で決議するのは、附属書1と2のみで、附属書3は締約国が一方的に指定することができる。
生息地における扱い
農地開発や森林伐採による生息地の破壊や水質汚濁およびそれらによる獲物の減少、毛皮用の狩猟などにより生息数は減少している。
生息地では保護の対象とされ後述するように国際的な商取引は規制されているが、密猟・密輸が横行していると考えられている。
マレーシアでは飼いならされた本種が漁業に利用されることもある。
水田を荒らす害獣とみなされることもあり、駆除の対象にされてしまう。
現地では生活が裕福とは言えず、密猟・密輸で海外に高く売りつけることで高収入を得ている場合もある。
近年ではエビの養殖で川を開拓してカワウソなどの動物が住めなくなるため問題視されている。
密輸の個体の多くは日本へ
タイなどでは密輸業者への裏取引なども横行しているという。
現地で捕獲する場合は罠を仕掛けて捕獲したり、幼獣を捕獲するために巣を狙って親を殺して幼獣を奪う。
密輸する場合は隠すために麻酔で眠らせて靴下などに入れて無理やりキャリーバックに衣類などと一緒に押し込む。
目も開いてないほどの幼獣であることが多く、この段階でほとんどが死亡してしまうと言う。
日本で密輸で逮捕される者は大抵がバイトなどのトカゲのしっぽ切りであり、裏で大きい組織が動いている可能性もある。
密輸が可哀そう理由は単純に無理やり連れてこられたからではなく、多くの犠牲を経て可哀そう状態で連れてこられたからである。
ペット問題
なぜペットにする事は問題があるのか?
絶滅危惧種であり数が少ないこと、ペットショップに入荷されるまでの経緯、飼育環境などに問題があるからである。
・飼育環境の問題
カワウソの飼育には広い運動場と広いプールが必要である。
国内の園館も狭い場所が多くこれの条件を満たせていないところも多い。
運動できないとストレスになり、異常行動をみせたり自分の毛をむしってしまったりすることがある。
・エサについて
カワウソは基本的に魚やキャットフードを食べることで知られているが、エビ・カエル・鶏肉・ニンジン・サツマイモなども食べ雑食に近い。
カワウソは腎臓病になりやすい事が知られており、園館で飼育されている個体も腎臓などに結石を持っている場合が多い。
エサの研究は専門家の間でもおこなわれているが、明確にはわかっていない。
動物園や水族館では水分をとらないと結石ができやすいとされており、その対策で氷やゼリーを与えることが多い。
ペットは生のアジやワカサギなどの魚を毎日与えるのは難しい場合も多く、エサはキャットフードばかりになっていく傾向にある。
キャットフードばかり与えられたカワウソは栄養がかたより、病気になりすく早死にする傾向にあるという。
カワウソは食べたのものを2時間で消化すると言われており、すぐお腹をすかせてしまう。
園館では1日2~3回ほどにわけて与えていえる。
次のごはんの間隔が短い場合1回の食事量を減らしている場合もある。
常にごはんを欲しがるため、ペットの場合かわいいからとおやつを与えすぎてしまうといったことも早死にする原因の一つにもなる。
・健康管理
園館で飼育されている個体は定期的に健康チェックをしていることが多い。
一方ペットで飼育されている個体は見てわかるような症状になるまで病院に行かずに放置されていることが多い。
元は野生動物のため体調不良は隠す傾向にあるため、気づいた頃には重症化して手遅れの場合がほとんどである。
また、町の獣医クリニックなどではカワウソの治療経験のある獣医が少なく、適切な治療が行われなかったり場合によっては断られる可能性もある。
・繁殖について
繁殖が難しいとされ、ペット飼育ではオスメスペア飼育していても子供を産まないケースが多い。
昭和後期にペット業者が目を付けたがブリーディングの方法が確立できなかったことが実現しなかった理由の一つである。
その一方で相性の良いオスメスペアだと同一ペアで最大30頭近く出産することがある。
カワウソの妊娠期間が2か月で最大6頭ほど出産し1年で2回出産することを計算すると、わずか1年で12頭にまで増える計算となる。
ペットでオスメスペアで飼育する場合、繁殖制限をしなければ里親にも出し切れない数が増えてしまうことになる。
園館では飼育できる数だけ繁殖させ、その後多くの園館は別居させる。
オスメス混合で同居させる場合で近親の場合や繁殖を望まない場合は去勢か避妊の処置をおこなっていることも多い。
種別計画管理
(公社)日本動物園水族館協会では野生動物を次の世代に伝えていくために国内で飼育されている希少動物の中から血統登録を行う種を定め、担当する管理者を全国の動物園・水族館から任命しています。
管理者は全国の動物園・水族館と協力しながら繁殖による飼育展示動物の維持、繁殖した動物による野生群の回復、調査研究とその発表などに取り組んでいます。
コツメカワウソの担当園館は2011年まで高知県立のいち動物公園が担当しており、2012年以降は海遊館がおこなっています。
日本動物園水族館協会では国内で飼育している希少動物約150種について、動物の戸籍簿(血統登録)を作成し、種ごとに繁殖計画を作り、繁殖に取り組んでいます。
海遊館の担当者が日本動物園水族館協会加盟園館のみならず非加盟園館も含めて血縁関係を管理し、近親にならないペアリングを提案する役割も果たしている。
ブリーディングローンの取り組み
ブリーディングローン(Breeding Loan)とは動物園同士が相互に動物を貸し出し、あるいは借り入れする契約をいう。
略称:BL
動物の所有権は残したままで、生まれた子どもは貸し手と借り手で分配する。
動物の購入費がかからないので、ゴリラなどの希少動物の移動も活発に行える。
新しい血統を取り入れ近交劣化を防止するメリットもある。
契約は一定期間設けるが場合によっては延長することもある。
(Wikipediaより)
昔は野生動物を捕獲し園館につれてくるなどしていたが、近年野生動物を捕獲して園館につれてくるなどを極力避けるようになった。
これにより、動物園・水族館同士の繁殖の取り組みが多くおこわれるようになった。
国内の園館で飼育されているカワウソの数はおよそ250頭ほどと言われています。
2021年の時点で国内では86%が国内繁殖個体とされている。
これまで血統の隙をついてペアリングをしてきたが、2021年の時点で海遊館やHANABI YORIなどが海外個体同士の繁殖ができており今後の繁殖プランが注目される。
また、近年では海外個体や海外と国内のペアの子供の組み合わせの繁殖をおこなっている傾向にある。
同血統個体の繁殖をなるべく避けるため、今後は世界中の動物園。水族館と連携をとって繁殖の取り組みをおこなう必要がある。
園館の取り組み
ハズバンダリートレーニング
ハズバンダリートレーニングとは、健康管理に必要な行動を動物たちに協力してもらいながら行うトレーニングのことです。
これまで麻酔をかけたり捕獲されることで動物たちにかかっていたストレスを減らせます。
同時に動物も飼育員も危険を回避することができます。
カワウソでは主にコツメカワウソにおこなわれています。
例えばハズバンダリートレーニングを積むと触診をすることで腫瘍や傷がないかどうかすぐに確認できます。
仰向けになるトレーニングをしてできるようになるとエコー検査やレントゲン検査など麻酔をしなくてもできるようになります。
肛門に体温計を入れられるようになれば体温がはかれます。
このように健康管理をおこなう上で必要とされている場合が多いです。
水族館ではおこなっていることが多いのですが、動物園ではあまりおこなわれていません。
これは動物園と水族館では根本的な役割と施設の目的の違いによりものだったりスタッフの数などにも関係があるようです。
新江ノ島水族館での仰向けにするトレーニング
リンク:カワウソのレントゲン(新江ノ島水族館)
新江ノ島水族館での吻タッチと触診
新江ノ島水族館で体温測定
環境エンリッチメント
環境エンリッチメントとは、動物たちが心身ともに健康に生活できるよう環境を豊かにすることです。
カワウソが持つさまざまな能力や行動を引き出すことができるよう、展示空間の充実やエサの与え方などに様々な工夫を施しています。
※これに関しては全ての園館でおこなわれているわけではありません。
【展示スペースの工夫】
平坦な場所でなく、岩場を作ったりプールを作ったりカワウソの習性にもとづいて作られていることが多い。
十分な広いスペース、プール、寝床になる場所があるのが望ましい。
園館によってはプールに小魚を入れており、実際にカワウソたちは獲って食べたり遊んだりもしている個体もいる。
。
ユーラシアカワウソであるが、アクアマリンふくしまは、広大な陸地とプールを設けており日本一展示スペースが優れている園館であるといえる
プールに生きた小魚が入っているため、カワウソたちは獲って食べている様子も確認できる。
八景島シーパラダイスではプールにエサではない生きた小魚が入っている
【カワウソの布団について】
カワウソの寝床の布団になるものは麻袋(ドンゴロス)が使用されていることが多い。
麻袋場合嚙みちぎってわずかではあるが糞に破片が混ざっていることも少なくなく、かわりに飼育スタッフの使い古した衣類が使用されていることもある。
寝床になるハンモックは麻袋の他、噛みちぎってしまう心配のない不要となった消防ホースが使われていることもある。
しながわ水族館の寝床に置かれている布団かわりの飼育スタッフの使い古したトレーナー
新江ノ島水族館のカワウソの寝床となっている麻袋ハンモック
【給餌の工夫】
色々な場所にエサを隠して配置したり、フィーダーを使って頭を使ったり時間をかけて食べさせるなど刺激を与えられるようにしている場合もある。
同じ理由でドジョウやザリガニなどの生餌をあたえる場合もある。
ただし、これは複数個体がいる場合、食事量を調節できないというデメリットもある。
秋田市大森山動物園の生餌として与えられたザリガニを食べる様子
【フィーダー】
給餌の際頭を使ったり時間をかけて食べさせるなど刺激を与えられるようするためのエサ箱のことである。
木や適当な素材で作成したり、園館で不要になった塩ビ管などが再利用されることもある
園館によってさまざまな工夫がされている。
カワウソは隙間に手をつっこんで獲物をとる習性があるのでそれを利用した構造になっていることが多い。
サンシャイン水族館の竹筒を工夫したフィーダー
世界カワウソの日
5月の最終水曜日は「世界カワウソの日(World Otter Day)」
国際カワウソ生存基金(略するとIOSF =International Otter Survival Fund /イギリス)が世界のカワウソの現状や保全について考えることを目的として制定しました。
園館の取り組み
園館によっては給仕の時間に生態の解説やおかれた現状などを解説するイベントをおこなったりしている。
可愛いだけなく、絶滅の危機にあることを園館は訴えている。