イントヴァルド公爵領

Last-modified: 2012-05-10 (木) 22:35:53
城都イヴァインベルク
指導者イントヴァルド公ディルリッヒ
宗教聖教
紋章紫陽花の乙女と交差する槍

概要

ヴァルダム北方の灰色の地イントヴァルドを支配する帝国公爵領。北方辺境の殖民伝道の為に創立された紫陽花騎士団(Hortensier orden)の末裔。
第21代騎士団総長アウグスト・フォン・クレインハウゼンとその子であるディルリッヒ(後に初代イントヴァルド公)の代でその支配圏を大幅に拡大し、辺境公として帝国諸侯に列せられる。
原住民の教化と殖民を進め、現在は帝国北限の文化的、軍事的最前線となる。

地理 イントヴァルド

雪と木々に閉ざされた帝国北限の地。涙は凍り、炎すら氷を前に消え入る。
餓狼に人々は恐れ、空は蛇竜が統べ蛮族との抗争で雪は赤く染まる。

  • ズィルバーシュタウフェン山地
    イントヴァルドに広がる山岳地帯。敵対的な小部族や飢えた狼の群れ、更にはデールクヴァンと呼ばれる牛頭鬼(他地域におけるミノタウロスの亜種か。寒さに順応した堅い体躯は生半可な刃を通さない)やワイバーンが巣食う。
  • イヴァインベルク
    公爵居城にして領内の政治経済の中心地。
  • デオルムント
    公爵領南西に位置する港湾都市。イントヴァルド最大の貿易港であり、かつ最北の不凍港。レイズフィリーク同盟の商館等が並び、ニシンや鮭等の海産物が大規模に取引されている。
  • マーツリンゲン
    公爵領の東の最果ての都市。帝国の北方開拓事業の最前線。公爵領の軍事力の過半がこの都市に集中し、河川を挟んで敵対部族や「人ならぬもの」との小競り合いを続ける。その立地条件から刀剣や鎧の製造が発達し、その結果「マーツィンパンツァー」という急所に薄く延ばしたミスリル板金を覆わせたチェインメイルを生み出し、軽さと十分な防護性能から各地に普及した。

紫陽花騎士団

帝国諸侯の一人、フォン・ザールハイムの後援によって創立された修道騎士団。『紫陽花の乙女』の伝説にあやかり紫陽花騎士団を自称した。初代総長はマックス・フォン・ホーエンライヒ。

紫陽花の乙女

帝国北領一帯で伝承される伝説。竜に捕らえられた乙女を救うために七人の騎士が神から武具を盗み出し、竜討伐の旅に赴くという内容。
騎士達が乙女を捕らえた檻にたどり着いた時には乙女はすでに息絶え、乙女の涙の流れる先に咲いた紫陽花を神に捧げると神は七人を許し、彼らは神の許で永遠の安息についたとされる。
貴族達は乙女と乙女を救い出せなかった騎士達を弔い、彼らの武勇にあやかるとともに自らの死後の安息を願うため、今も紫陽花の花に特別なまなざしを向けているのだ。

文化

紫陽花騎士団によってもたらされた帝国宮廷文化とイントヴァルド原住民のシャーマニックな文化が融合し独特な色彩を放つ。
人間が生きるにはあまりにも過酷な環境、そして確実に存在する死の気配は、脆くもそこに確かにある「生命」を表現した力強さとある種の感傷を秘めた文化を生み出し、戦いに生きる騎士達だけでなく、混乱の中で懸命に生きる民草の心を揺り動かす。

闇魔道

紫陽花騎士団がイントヴァルド征服の過程で手に入れた有意な戦利品として、原住民達が受け継いできた闇魔道の知識と、その術式行使者が挙げられる。
原住民達の独特の宗教観の中で発展を遂げたこの魔道体系は他の地域に見られる術式と比して遜色の無い力を秘め、それが正しく行使されれば闇は民を導く光となり、悪意の下で扱えば災厄をもたらすとされている。また、「闇」を自らに取り込み、それを術式という媒介を通じて行使するというプロセスをとっており、使用には常に高い代償を伴う危険性を持つ。
紫陽花騎士団はこの闇魔道の力に着目。原住民達の文化的な独立を保障する代償としてこの魔道体系の広い解禁を要求する。この結果、イントヴァルド公爵領はこの独特な魔道体系を利用する方法を確立する事に成功した。

宗教

所謂聖教圏を構成する。イントヴァルド大司教の下で統一した教区の中に置かれ、原住民の教化や適切な埋葬、宗教儀式の執行、医療の提供を実施する。
聖俗の関係は比較的良好であるが、公爵のシャーマン重用に対しては明確に批判を行っている。

魔法鉱石

フィルモアに属するイントヴァルドでは鉄や石材の他、魔力の行使に必須と言われるミスリルや宝石といった魔法鉱石の鉱床の存在が古来から伝わっており、これらの掌握も紫陽花騎士団に課せられた任務だったと言われている。
ミスリル、水晶、藍晶石、鷹目石、血星石・・・これらの特殊な鉱石は公爵領の重要な交易資源であり、公爵による監督の下で大々的に採掘が行われている。

軍事

平地が極めて少ない事から機動戦力としての騎兵は衰退し、その代わりとして蛇竜騎兵と歩兵部隊による陸空連合を志向する。

蛇竜騎士

イントヴァルド公爵軍を特徴付けるモノの一つとして蛇竜騎兵が挙げられる。
イントヴァルドに広く分布する蛇竜、所謂ワイバーンは極めて凶暴で人里を襲う危険な生物であるが、一方で賢く強い社会性を持つと言われている。
人間がワイバーンの性質に気づき、初めて実際に騎乗したのはまだ紫陽花騎士団がイントヴァルドの南方で小部落との戦いを続けていた4代総長の時代であり、黎明期の蛇竜騎兵達は高い事故率やフィードバックの不足に起因する無謀な襲撃による損耗に悩まされながらも次第に人竜一体の術と空中での戦術を会得していき、戦況を一変させる空の王者としてイントヴァルドに君臨する。支配地が森の奥へと広がるにつれ、紫陽花騎士団は雪と木々に苦しめられる騎馬を捨て専ら蛇竜騎兵と歩兵達による調整攻撃に専念するようになり、この伝統は現在の公爵軍の軍制にも受け継がれている。

山々を縫って鋭く飛翔し標的を一瞬で壊しつくす力を持つ一方で、彼らの死傷率の高さは決して否定できない。ワイバーンはあくまで「竜」の眷属であり、炎を吐けなければ鱗は竜のそれよりはるかに脆い。更には先天的に魔法耐性を持たず、弓兵や魔術士による手痛い反撃を受ける。
その為、歩兵や射手との連携、襲撃する相手の陣容の把握が最も重要であり、幾度となく戦場を飛んだ者ほど地上の農兵達を敬い、地上の様子を常に懸念するようになる。

ワイバーンの支配は現在でも非常に困難で危険を伴うが、主人と共に空を駆ける彼らは空から敵に襲い掛かる最良の機動戦力として、また斥候として、あるいは士気を奮い立たせる「信仰と勇気の象徴」として欠かす事のできない存在である。
蛇竜を駆り大陸を転戦する傭兵達もおり、「ヘビ使い」「トカゲ乗り」の蔑称を頂く彼らの登場は軽騎兵の任務をことごとく奪い去った。

  • 聖アードルング蛇竜騎士団
    騎士の守り神、聖アードルングを奉ずる蛇竜騎士団。白で統一された武具と、それが真紅に染まる程の残虐な戦いぶりで知られる。

人物

  • ディルリッヒ猛進公
    初代イントヴァルド公。騎士団最後の総長の息子として兵を率い、イントヴァルド全域を掌握した事により、爵位を下賜された。その勇猛果敢な戦いぶりと古今類の無い勢力拡張から『猛進公』という渾名を、数多の戦傷と敗走から『蛮勇公』『無思慮公』という蔑称を持つ。
    【不屈/stubborn】
  • 公妹ヘンリエッテ
    イントヴァルド公妹。イヴァインベルクの竜姫。その美貌は兄である公と比して「同じ種から生まれたとは思えない」と称される程であるが気性は兄譲り。武芸に秀で、蛇竜を駆り槍を振るう女傑。
    【勇敢/valorous】
  • 公妹ヘレーネ
    イントヴァルド公妹。鈍色の地に咲く白百合。武門の血を色濃く受け継いだ兄達とは対照的な可憐で純真な少女。
    【純真/innocent】
  • ベアトリーセ・バーデ・アイブリンガー
    イントヴァルド大司教。ヤード大公によるハレヴエルツ虐殺を糾弾する「アイブリンガー書簡」を各地に送る。
    【夢想家/romantic】
  • 烟月のアロイジア
    猛進公の寵愛篤い巫師。公の影の如く常に付き従う。
    【狂信的/zealous】
  • エドモント・ラ・ブリュイエール
    公爵に仕える将軍。軍歴の後に小さな修道院で神の教えを説いていたが、還俗し再び軍を率いる事となった。
    古典的な歩兵の粘り強い指揮と射手の火力発揮を得意とする。
    詩作や演劇を好む文人でもある。
    【賢明/wise】
  • ヴィクトール・コンセプシオン
    公爵に仕える将軍。蛇竜騎兵指揮官。
    粗野で智謀に欠ける面もあるが持ち前の嗅覚と統率力で虎の子の決戦軍を指揮する生粋の武人。
    【不屈の軍人/tough soldier】