種族設定

Last-modified: 2012-07-24 (火) 00:02:56

人間/ヒューマン

 ヴァルダムに於ける主要種族のうちのひとつ。しかしながら人間はもっとも儚く弱く、他種族に対しても自然災害に対しても脆弱な抵抗力しかない。人間がもっとも心安らげるのはベルセリアだけであり、他地域は何らかの脅威に常に晒されている。
 個としての非力さを補うため、人間は政治と宗教の力を動員し国家を形成している。暗黒の歴史の中で人類は多数の諸侯を従える帝国を作り上げた。しかし帝国の求心力は低く、また帝国に属さない周辺国家たちも虎視眈々と豊かなベルセリアの覇権を狙っている。

吸血鬼/ヴァンパイア

 堕落の門に属する種族であり、高い知性と技術を持つ上級のアンデッドである。
 アンタンジルに本拠を置く吸血鬼は、闇の貴族であり不死の支配者であり、危険な誘惑者でもある。
 その勢力と吸血の習性はヴァルダムの人間たちにとって最大の脅威とされている。
 ヴァルダムに於ける奴隷貿易の買い手の最大手でもある。
 
 六つの血統が氏族を形勢している。氏族ごとに傾向がことなるものの、概ね血色の悪い人間といった風貌であり、吸血牙を持つ。
 ヴァルデマール氏族は背にコウモリの翼を生やし、飛行能力を持つ。
 ハウクヴィッツ氏族は人間型を止めつつも怪物的外見を持つ。
 オルトリープ氏族は個としてはもっとも力弱き存在だが、高い感染性を持ちしばしば吸血鬼禍を引き起こす。
 シュレディンガー氏族は年若い乙女のみで構成され、優れた容姿と魅了の魔力を持つ。
 エトリウス氏族は血の魔術を行使する魔術師団であり、"ベルクローゼン(黒薔薇)"の異名を持つ。
 
 吸血鬼の吸血行為は接吻や食餌と呼ばれる。吸血牙は触れるだけで犠牲者に性的快楽を与え、犠牲者は一生分の快楽を一夜で体験するとも言われる。吸血鬼の多くは失血死するまで吸血を行うことはしないが、多くの場合犠牲者の精神は崩壊し、吸血をねだるだけの廃人と化す。
 肉体的には死人であり、心臓は動いておらず、呼吸も排泄も不要。妊娠不能。仲間を増やすのは"抱擁"のみ。日光浴びると即死。肉体的には成長しない。

屍食鬼/グール

 吸血鬼が下僕として創造する魔物。人間の血を吸い、自らの血と呪いを与えて創造する。
 グールの知能は低く、その風貌は腐敗の進んだ死人に等しいが、並外れた怪力を持ち、吸血鬼の命令に忠実に従う。

ブラッドドール

 吸血鬼の虜になった乙女たちの成れの果て。愛玩用の屍食鬼と言った存在である。人間としての外見はそのままに、吸血鬼の魔力によって永遠の若さを与えられた存在。しかしながら、吸血の快楽と魅了の呪いは彼女らの精神で猛威を振るう。その思考は主人への愛と吸血の期待で埋め尽くされ、痴呆めいているようにも見える。人形の名の通り自発的な行動を起こすことも少なくなり、日常生活に支障がでることもある。また彼女たちは主人である吸血鬼からの定期的な魔力の供給を受けることができなければ、止めていた老化が倍になって跳ね返り、急速に老化して衰弱死する。

竜/ドラゴン

 竜族の門に属する種族であり、人語を解する種族としては最大の体躯を持つ。
 鋭く硬い牙やかぎ爪を持ち、刃の通らない鱗に覆われ、個体によっては口から火を吐き空まで飛べる。
 フィルモアの火山地帯に主に生息し、貴金属に価値を置いている。
 人間に対しては鉱物を腐らせる矮小にして悪性の種族という認識しかなく、また手頃な餌であると思っている。
 人語を解するとは言っても竜の気位は高く、交渉はドラゴン語でしか受け付けない。
 
   中世期のあいだに勢力を誇ったこの火竜は、フィルモアのありとあらゆる人間達にとって恐怖の的だった。
   その巨体と狂暴な性格、鉄をも溶かす炎が呼び起こした悪夢は数知れない。
   火竜はまさに、中世期の災厄の象徴だった。
     ― 「黒騎士ベロース:剣の時代」第一巻

蛇竜/ワイバーン

 竜の眷属。優れた飛行能力を持つが、知性は低い。イントヴァルトを初めとするフィルモアに生息し、凶暴な性質を持ちながらも人間に飼い慣らされることもある。

死霊/スペクター

 夢魔の門に属する種族。怨霊、悪霊といった類いである。不穏な気配を漂わせる精神生命体であり、その思考は悪意と狂気に満ちている。強い恨みや未練を持った人間の魂が魔の力によって変質したものという説が有力である。
 死霊はこのヴァルダムに数限りないほど存在し、死体に憑依することで動く死者となる。上級のものともなれば、生者に憑依し肉体を乗っ取ることもあるという。
 死霊は水と好相性を持ち、特に黒曜海沿岸に多く分布している。また転じて死人使いを生業とする人間も存在し、アンデッドを遠ざける役目を負う傍ら、死体取引や遺体盗掘も行われている。なお吸血鬼を含め、すべてのアンデッドは日光を浴びると消滅する。

動く死者/ゾンビ

 ヴァルダムに暗い影を落とす動く死者。屍術的に動かされているものや自然発生的に生まれるものも含め、数多くの動く死者がヴァルダムに蔓延している。脳髄は腐りきっており知能は低く、生前の記憶が微かにあるだけである。説得など考えないほうが良い。
 ゾンビは食人という行動原理に従って行動し、その数も相まって極めて危険な存在であるが、動きが鈍く、太陽光のもとでは活動することができない。またゾンビの群れに対処するため、多くの集落にはターンアンデッドの業を持つ聖職者が教会に赴任している。
 ゾンビは人間を食べることで、その腐敗の速度を低下させ、さらに強力な存在へと変わってゆく。場合によっては知性を得て屍術師の制御を外れることもあり、制御を失ったゾンビは周囲を巻き込んでのゾンビ禍を発生させる。

牛頭鬼/ミノタウロス

 争乱の門に属する種族。雄牛の頭を持つ人型の大鬼。ベルセリアの黒き森、フィルモアの山岳地帯を中心に比較的広く分布する。生半可な攻撃を寄せ付けない鎧のような体躯を持ち、巨大な斧の一撃は木を折り岩を砕く。
 怒りに心を囚われた戦士の成れの果て、もしくは人間の不実の生み出した鬼と信じられており、その角には薬効がある。功名心に駆られて不用意に近づく狩人や騎士達は後を絶たず、その大斧から血の滴りが失われる事は無い。

夢魔/ナイトメア

 夢魔の門に属する種族。リリスとは姉妹とも呼ばれるが、性質的には死霊の方が近い。
 死霊と同じく精神生命体であり、人間の絶望を啜って存在を保つ。憑依は行わず、人間の前では幻影を作り出すことが多い。肉体を持たないため、触れることも滅ぼすこともできない存在である。
 夢魔はほぼ全員が儚げな美女の姿の幻影を取る。夢と幻と運命を操るとされるが、個体数は少なく、所在が明らかなのは僅か2名のみである。
 この世界における夢魔はアンデッドの性質を持ち、日光の下では活動できない(消滅したという夢魔の話は聞かない)。

淫魔/リリス

 堕落の門に属する種族。吸血鬼や竜、死霊が猛威を振るうこのヴァルダムに於いては世界に影響を与えるほどの力を持たず、個体数も少ない。多くのリリスは吸血鬼の庇護の下で快楽を貪っているが、堕落の使徒である彼女らはベルセリアにも浸透している。
 蛇と共に姿を現す美女、美少女たちであり、お気に入りの奴隷を探すためにこの世界に顕現する。リリスに誘惑され契約してしまった女性は魅了と官能の魔力を与えられた娼婦あるいは魔女となり、さらなる美しさと魔力と快楽を求めるために暗躍する。
 契約の印として与えられる蛇の指輪は女性を徐々にアンデッド化させ、命と精と快楽を貪る幽鬼へと変えてゆく。
 ヴァルダムに於いてリリスとは娼婦を指す俗語でもある。思考が二重化されており、女性の人格と蛇の人格が共存している。女性人格は大抵快楽によって正気を失っているが、蛇の人格は極めて狡猾で計算高い。

戦乙女/ヴァルキリー

 太陽の門に属する種族。天使とは性質を同じくする側面を多々持つが、神学上は別個の存在とされている。魑魅魍魎が渦巻くヴァルダムにおいて稀な人間の友好者。戦死者の魂の守護者であり、彼女らの加護する戦闘ではアンデッドが発生しないとされる。強靱な肉体と類い希な武勇を持ち、竜にすら互角に渡り合えると言われているが真偽は不明。希少な存在であり、確認されている個体は一人のみである。

擬天使/アシュームドエンジェル

 学問の門に属する種族。その創造者であるアンゼロットが天使を霊的ベースに作り出した人工種族であり、存在個体数は一桁である。
 本来人類に比較的好意的な種族であるが、文明の停滞に甘んじるこの世界の人類は彼らの守護対象たりえず、この世界では没交渉的で、文明の進歩過程の観察に徹しており、世界への影響力は持たない。人間が彼らの加護を受けるという事例は存在しないわけではないものの、それはこの世界の価値観に反する合理主義という考えを手にするという歴史の流れを無視した途方もない偶然が必要となる。そしてそのためには彼らと交流を持つほかないであろう。

天使/エンジェル

 無限の愛と善意を持つ高次の精神生命体。聖教に於ける聖霊。生命と魂の守護者であり、小さき神と言っても差し支えない。住む世界、次元が余りに遠すぎてこの世界には顕現しない。そもそも存在する証拠すら何一つ存在せず、"いたらいいな"の域を出ない。ただ名前と神話がいくつか伝えられているのみである。神学上では太陽と月と星と大地の門に属するが、五つの領域により全ての魔力門を司るとも言われている。余談だが天使の世界が仮に存在したとしても距離にして一万光年離れているという(光年などという単位はこの世界に存在しないが)。

霊視の民/サードアイ

 月と星の門に属する種族。黒曜海沿岸の僻地ポダラディッカにコロニーを持つ。黒曜海沿岸の僻地ポダラディッカにコロニーを持つ。外見は人間に極めて似ているが、その相違点は名前の由来にもなっている複数の線で繋がれている左の胸元の第三の目(サードアイ)が特徴。外敵の多さから知覚を初めとする感覚が異様に鋭敏に進化した種族。
 第三の目は知覚器官と同時に意思伝達器官で、不可聴領域の音声でサードアイ同士は会話が可能。これは人間からみるとテレパシーのように見えた事から、現在でもこの種族はテレパシーを使う事が出来ると誤解している人が少なくない。
 また、相手の表情や声質、呼吸脈拍等から心理を読む事に長け、この種族の前では一切の嘘をつく事が出来ないという定評がある。サードアイが懐く人間は信用に足る人物と見なされる。なお、夢魔には決して懐かない。