Tier 7 ドイツ 中戦車 Pz.Kpfw. V Panther/日本語表記: V号戦車パンター
ラッパ形の防盾が特徴的なF型。75mm*100口径長=7.5mに及ぶ長砲身は圧巻。
初期砲塔+7,5 cm Kw.K. 42 L/70
この状態が史実のPanther Ausf.G(パンターG型)である。こちらの見た目が馴染み深いという人も多いだろうが、上位モジュールが開発済みであるのにも関わらず初期の史実装備で出撃する事は本ゲームにおいては戦犯に等しいのでご注意を。
赤軍のT-34の出現を受け、それを圧倒すべく開発された、高初速7.5cm砲と傾斜装甲を兼ね備える中戦車。
当時としては重戦車クラスの性能と重量を誇り、Tiger I戦車と並んで現在でも人気の高い戦車の一つとなっている。
ゲーム内では優れた砲性能とそこそこの装甲、低隠蔽とやや鈍い足周りを持ち、この特性は強化・改善されつつもTier10まで引き継いで行くことになる。
関連車両: Panther/M10, Panther 8.8, Pz.V/IV,Bretagne Panther,Pudel
車体を流用した車両たち: JPanther, Rheinmetall Skorpion G, Grille 15
パンターに至るまでの試作車両: T-25, VK 30.01(DB), VK 30.02(DB), VK 30.02 (M)
- Maybach HL 210 TRM P30エンジンを追加。
- Maybach HL 230 TRM P30エンジンを追加。
- Maybach HL 174エンジンを追加。
- Maybach HL 210 P30エンジンを追加。
- Maybach HL 230 P45エンジンを追加。
- 前進最高速度を時速48kmから55 kmに変更。
- 車体重量を20,500 kgから18,775 kgに変更。
- Pz.Kpfw. Panther Ausf. A サスペンションの柔らかい地形での走破能力を8%向上。
- Pz.Kpfw. Panther Ausf. A の旋回速度を26°/sから37°/sに変更。
- Pz.Kpfw. Panther Ausf. G サスペンションの柔らかい地形での走破能力を4.35%向上。
- Pz.Kpfw. Panther Ausf. G の旋回速度を28°/sから39°/sに変更。
- 初期サスペンションの重量を12,050 kgから15,000 kgに変更。
- 二番目のサスペンションの重量を12,050 kgから15,000 kgに変更。
- 初期サスペンションの減速力を34,000 kgから40,000 kgに変更。
- 二番目のサスペンションの減速力を34,000 kgから40,000 kgに変更。
- Pz.Kpfw. Panther Ausf. G 砲塔に下記の変更を適用:
- 砲塔の重量を9,600 kgから7,745 kgに変更。
- 7.5 cm Kw.K. 42 L/70砲の仰角を17 度から 20度に変更。
- 7.5 cm Kw.K. 42 L/70砲の俯角を 6度から 8度に変更。
- 10.5 cm Kw.K. L/28砲の仰角を17 度から 20度に変更。
- 10.5 cm Kw.K. L/28砲の俯角を 6度から 8度に変更。
- Pz.Kpfw. Panther Schmalturm 砲塔に下記の変更を適用:
- 砲塔の重量を10,800 kgから7,760 kgに変更。
- 7.5 cm Kw.K. L70砲の仰角を17 度から 18度に変更。
- 7.5 cm Kw.K. L70砲の俯角を 6度から 8度に変更。
- 10.5 cm StuH 42 L28Pz砲の仰角を 17 度から 18度に変更。
- 10.5 cm StuH 42 L28Pz砲の俯角を 6度から 8度に変更。
直近90日の平均勝率:51.74%(2023年9月7日現在、ver10.1.5)
※平均勝率は参考数値であり、その車両の絶対的な強さを示すものではありません。
基本性能(v6.7.0)
車体 | Tier | 国籍 | タイプ | 耐久値 (HP) | 車体装甲厚 前面/側面/背面 (mm) | 最高 速度 (km/h) | 初期 重量 (t) | 本体価格 (クレジット) |
Panther | VII | ドイツ | 中戦車 | 1270 | 110/50/40 | 55/20 | 44.47 | 1,380,000 |
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武装
砲塔:Pz.Kpfw. Panther Ausf. G
Tier | 名称 | 発射 速度 (rpm) | 弾種 | 平均 貫徹力 (mm) | 平均 攻撃力 | DPM (HP/分) | 精度 (m) | 照準 時間 (s) | 総弾数 | 弾薬費 (Cr/G) | 重量 (kg) | 俯 仰 角 | |
VI | 7.5 cm Kw.K. 42 L/70 | 10.91 | AP APCR HE | 150 194 20 | 160 135 200 | 1745 1472 2182 | 0.35 | 2.3 | 81 | 0 2800 7 0 | 1,740 | +20° -8° |
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砲塔:Pz.Kpfw. Panther Schmalturm
Tier | 名称 | 発射 速度 (rpm) | 弾種 | 平均 貫徹力 (mm) | 平均 攻撃力 | DPM (HP/分) | 精度 (m) | 照準 時間 (s) | 総弾数 | 弾薬費 (Cr/G) | 重量 (kg) | 俯 仰 角 | |
VI | 7.5 cm Kw.K. 42 L/70 | 12.77 | AP APCR HE | 150 194 20 | 160 135 200 | 2043 1723 2554 | 0.35 | 2.3 | 80 | 0 2800 7 0 | 1,740 | +18° -8° | |
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VII | 8.8 cm Kw.K. 36 L/56 | 8.96 | AP APCR HE | 150 200 44 | 220 190 270 | 1971 1702 2419 | 0.38 | 2.3 | 60 | 0 3200 8 0 | 2,050 | +17° -6° | |
VIII | 7.5 cm Kw.K. L/100 | 13.64 | AP APCR HE | 198 244 20 | 160 135 200 | 2182 1841 2728 | 0.32 | 2.3 | 80 | 0 2800 7 0 | 2,100 |
砲塔
Tier | 名称 | 装甲厚(mm) 前面/側面/背面 | 旋回速度(°/s) | 視界範囲(m) | 重量(kg) |
VI | Pz.Kpfw. Panther Ausf. G | 100/45/45 | 41 | 250 | 7,760 |
---|---|---|---|---|---|
VII | Pz.Kpfw. Panther Schmalturm | 160/60/60 | 33 | 260 | 7,760 |
エンジン
Tier | 名称 | 馬力(hp) | 引火確率(%) | 重量(kg) |
VII | Maybach HL 210 TRM P30 | 650 | 20 | 850 |
---|---|---|---|---|
VIII | Maybach HL 230 TRM P30 | 700 | 20 | 1,200 |
履帯
Tier | 名称 | 積載量(t) | 旋回速度(°/s) | 重量(kg) |
VI | Pz.Kpfw. Panther Ausf. A | 48.00 | 42 | 15,000 |
---|---|---|---|---|
VII | Pz.Kpfw. Panther Ausf. G | 48.00 | 44 | 15,000 |
乗員
1 | Commander | 2 | Gunner | 3 | Driver | 4 | Radio Operator | 5 | Loader |
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派生車両
派生元 | VK 30.02 (M)(MT/48,600)/VK 30.01 (D)(MT/50,500) |
---|---|
派生先 | Panther II(MT/88,500)/Tiger II(HT/108,000) |
開発ツリー
VK 30.01 (D) | ━ | Panther I 50,500 | ━ | 7.5 cm Kw.K. 42 L/70 | ━ | Pz.Kpfw. Panther Schmalturm 10,100 | ┳ | 8.8 cm Kw.K. 36 L/56 11,210 | ||
┗ | 7.5 cm Kw.K. L/100 20,130 | ━ | Panther II 88,500 2,390,000 | |||||||
━ | Pz.Kpfw. Panther Ausf. G | |||||||||
━ | Maybach HL 210 TRM P30 | ━ | Maybach HL 230 TRM P30 15,800 | ━ | Tiger II 108,000 2,450,000 | |||||
━ | Pz.Kpfw. Panther Ausf. A | ━ | Pz.Kpfw. Panther Ausf. G 8,200 |
:必要経験値
解説
車体
正面上部は実質185mm程度あり、格下~同格相手ならばかなりの確率で弾を防ぐことができるが、広い車体下部や機銃口部は実質100mm~120mm程度で格下からもあっさり抜かれてしまう。
また、側面装甲は上部は傾斜も含めて55㎜程度と、車体の大きさも相まって大口径砲の榴弾が容易く貫通する。側面下部は履帯に守られているが40mm装甲で、口径120mm以上の主砲に対しては豚飯などをしてもほとんど防御力を発揮できない。
地形や障害物などで側面と車体下部を隠しつつ、優秀な正面上部装甲に角度をつけて敵戦車の砲撃から防御を狙おう。
また、ドイツ車伝統の正面下部のトランスミッション判定と履帯上の部位(スポンソン)に弾薬庫判定を抱えているため、豚飯、昼飯をする際はモジュールへの被弾に注意する必要がある。
砲塔
Schmalturm(狭幅砲塔)の名を持つ改良砲塔は、前方投影面積自体は初期砲塔と大差ない。ところが正面から見える面積の大半が防盾および70°を超える傾斜を持った砲塔側面となる。砲塔正面に見える大きな防盾部に命中すると跳弾が発生し、貫通力200mm程度の砲弾まで非貫通に抑えることができる。ただし防盾の下面で跳弾が発生した場合、車体上面が抜かれてダメージを被る「ショットトラップ」となるケースもあるので注意して欲しい。砲塔側面は傾斜を加味すると実質240mm程度となり、この部分に命中した場合は格上重戦車の弾ですら弾くことができる。それ以外の垂直部は170mm程度と頼りないものの防盾より上の部分は面積が狭く、動いてさえ居ればここを抜かれることは少ない。よって砲身と同程度までしか砲塔を見せずに狭い垂直部のみを曝し、前後運動などで狙いをブレさせることができれば貫通力や精度の低い戦車相手にかなりの防御力を発揮できる。実際に抜かれることが多いのは防盾より下のやや面積が広い垂直部分で、ここは格下中戦車であっても課金弾を使用すれば普通に抜ける。よってハルダウン時には砲身と同程度までしか砲塔を見せず、相手の発砲を確認した後に砲身を曝して射撃する等のテクニックを使えば貫通力や精度の高い相手であってもそれなりに戦う事ができる。
主砲
以前は有効な砲の選択肢が多く、乗り手の好みに合った砲を選ぶといったことも可能であったが、Tier7戦車の装甲がバフされた現在では貫通力の高い7.5cm L/100を搭載することが一番望ましい。
- 7.5 cm Kw.K. 42 L/70
初期砲塔状態ではこの主砲しか搭載できない。
初期砲としては良好な貫通力と、それなりの分間火力を持つ。
俯角を8度と他の砲より広く取ることができ、地形に合わせた戦法が他の主砲と比べて容易である。なお、初期砲搭では名前の通りKwK42、改良砲搭ではKwK44/1になる。史実だとKwK 44/1はPantherF型の装備である。
- 8.8 cm Kw.K. 36 L/56
VK 30.01 (P)やVK 36.01 (H)で研究しておくことが可能。
7.5 cm Kw.K. 45 L/100と比べて、単発火力が高い分貫通力や精度などで劣るがこのTierでもある程度は通用する。
- 7.5 cm Kw.K. 45 L/100
単発火力には乏しいが、駆逐戦車並みの貫通力と非常に良好な精度を持つ。
Ver6.7でTier7戦車の装甲が全体的に強化されたため、現在ではこの主砲を搭載するのが一番望ましい。
機動性
旋回性能や最高速度などは標準的であるため走行中のストレスは少ないが、エンジンが据え置きでやや出力が不足するため走り出しはやや重い。
これは常備品改良型燃料などの搭載である程度改善可能であるので機動性に不満があるなら搭載するといいだろう。
なお、燃料系の常備品は砲塔旋回速度も強化できるので砲塔旋回速度が遅めの本車とは極めて相性がいい。
立ち回り方
防御力の高い改良砲塔を活かしたハルダウンで敵砲弾を弾きつつ、優秀な主砲で着実にダメージを与えていくのがこの車両(シュマールトルム砲塔を持つ車両)における理想である。
しかし、狭い俯角と大柄な車体のためにハルダウンできる地形は限られており、ハルダウンに失敗すると苦手な格闘戦を強いられることになるので、事前にトレーニングルームを使ってハルダウンできるポジションを把握しておくといいだろう。
ハルダウンできない場合は自分で前線を張ることは避け、精度を活かした遠方からの狙撃、強力な味方戦車に随伴して高めの耐久力を活かしたアシストでも十分に活躍できる。
また、このルートの車両群は他の中戦車に比べて1.5倍近い車体重量を持っている。
過信は禁物であるが、重戦車並みの質量を中戦車の速力に乗せた強力なラムアタック(体当たり)が攻撃の選択肢になることを頭の隅に置いておくといい。
格下相手には理不尽な戦闘力を誇るので、周りに格下MTやLTしかいないならゴリ押しも検討に値する。
特徴
長所
- 非常に優れた精度、貫通力、装填速度を持つ最終砲
- 格上の砲撃も弾く砲塔装甲
- 同格までなら弾ける車体装甲
- 強力な体当たり(重戦車に対してはやらないこと)
- Tier7MTトップの耐久値
短所
- 大柄な車体とそれによる低めの隠蔽率
- 中戦車としては悪い機動力(燃料や加速器で改善可能)
- 低めの単発火力
- モジュールの壊れやすさ
- 物足りない俯角(6度)
豚飯した時の履帯裏45㎜装甲
初期の研究
エンジンはVK 30.01 (D)と全て互換するため、中戦車としての機動力は最低限備えている。
まずは砲塔を改良して防御力を上げ、最終砲7.5 cm Kw.K. 45 L/100の開発を早急に目指そう。
履帯の開発はその後でも十分である。
歴史背景
パンターD型(戦車研究室より)
1938年、ドイツ陸軍は戦車隊の中核を担う主力中戦車として、III号戦車とIV号戦車を統合した新たな戦車の開発計画を立ち上げた。当初の計画ではこの新型戦車は重量20トン級、5cm級の戦車砲を装備した中戦車として計画名称「VK20.00」が与えられていた
1941年に独ソ戦が開始されると、T-34戦車を始めとしたソ連戦車に対しIII号/IV号戦車は苦戦を強いられることになった。この事態に衝撃を受けたハインツ・グデーリアン将軍は、調査団を東部戦線に派遣し、T-34の評価を行った。
この調査結果を受け、T-34には従来の設計思想に基づいた車両では対抗できないと考えられるようになり、VK20.00計画は30トン級の中戦車の開発計画として拡大され、計画名称も「VK30.02」に改称された。VK20.00の制式名称として予定されていた「V号戦車」の制式番号は、当車の開発が開発・生産中の戦車のうちでもっとも優先するものとされたことと、T-34に対抗する新型車両を開発していることを秘匿するために引き続き使用されたため、開発・設計がVI号戦車(ティーガーI)の後に開始されたにも関わらず、番号はそれよりも古いものとなっている。
「パンター(Panther:豹)」の名称は、先行して開発されていた重戦車が非公式ながらヒトラーにより「ティーガー(Tiger:虎)」の愛称を与えられていた(後に正式名称として決定される)ため、より快速で軽量な機動力の高い俊敏な車両として完成することを印象づけるために命名されたものである。しかし、VK3002は当初35tクラスの予定から設計段階で重量が大幅に増加した上、設計がほぼ完了した時点でヒトラーの要求で車体前面装甲を60mmから80mm、砲塔前面を80mmから100mmへと強化したため、当時の重戦車クラスの約45tの重量を持つ「中戦車」として完成した。
パンター戦車はT-34ショックから急ぎ生まれた新型主力戦車であったが、良くその期待に応えシリーズ総計で5,995両が生産され、ドイツ最後の日まで主力戦車として戦い抜いた。
その性能はソ連軍の主力戦車であるT-34中戦車と、その改良型であるT-34-85中戦車にも勝り英米軍の主力戦車を凌駕していた。
しかもパンター戦車の可能性はそれだけでなくその改良型は終戦時に生産の途上にあり、さらに発展型も計画されていた。
パンターはまだまだ発展余裕のある優秀な戦車であり、第2次世界大戦における最優秀中戦車の1つであったといえよう。
wikipediaより抜粋
Wikipediaより
1941年11月末、ダイムラー・ベンツ社とMAN社に30-35t級新型中戦車、VK3002の1942年4月までの期限での設計が発注された。
ダイムラー・ベンツによるVK3002(DB)はT-34の影響を大きく受けたスタイルではあるが、足回りは大型転綸とリーフスプリング式サスペンションの組み合わせであり、この為ターレットリングの小型化、車体の小型化などが実現された。
MANの初期案であるVK3002(MAN)、秘匿名称“トラディショナルなドイツの戦車”と共に両者の案は42年1月から3月までフリッツ・トート、後にアルベルト・シュペーアによるレビューを受け、両者ともDB案をヒトラーへ提案する事を支持していた。しかし、最終案提出に際しMAN社はDB社の提案を参考にデザインを変更し、最終的に採用となったのは、よりドイツ戦車的構造であるVK3002(MAN)の方であった。この決定の決め手の一つに、MAN社のデザインは既存のラインメタル―ボルジッヒの砲塔を利用できた、と言う事も挙げられる。
この新型中戦車は1942年5月15日に「V号戦車パンターA型(Sd.Kfz.171)」と命名された。しかしこれは1943年1月に「パンターD型」に変更され、A型の名はより後の型につけられている。
最初の量産型(D型)は、ツィタデレ(城塞)作戦に間に合わせるためにさまざまな問題が未解決のまま戦場に送り込まれた。
重量増のため、転輪や起動輪、変速機など駆動系に問題が多発。また、機関部の加熱問題に対処するために新たに開発されて装備された自動消火装置の不具合により、燃料漏れによる火災事故も発生し、2輌が戦わずして全焼全損するなど、稼働率は低かった。また最初にパンターを装備し実戦投入された第51・52戦車大隊は、それぞれ既存の戦車大隊を基に再編成されたものであったが、一握りのベテランを除く乗員は、東部戦線での実戦経験の無い新兵が多く、また訓練期間も不足していた。さらに同隊の作戦将校にも実戦経験のある者が少なく、指揮にも問題があったため、クルスク戦では十分な活躍はできなかった。
後に問題点が改良され、装甲師団の中核を担う戦車となる。それまでドイツ機甲部隊の中核を担ってきたIII号戦車の生産は打ち切られ、突撃砲を除いて全て本車の生産ラインに切り替えられた。
本車に搭乗したエースとしては、第2SS装甲師団のエルンスト・バルクマンSS曹長が有名である。1944年7月のフランス、サン・ロー/クータンス間の十字路でアメリカ戦車M4シャーマンをたった1輌で迎え撃ち、近接戦闘で9輌撃破、1輌中破せしめ、後年の戦記では「バルクマン・コーナーの戦闘」として語られている。バルクマンはこの後の二日間に、さらに15輌の敵戦車を撃破、7月30日には乗車を撃破されるも脱出に成功している。同年12月、古いD型で「バルジの戦い」に参加した彼は夜間、敵戦車の列に紛れこみハッチから漏れる車内灯の色で識別し攻撃、M4戦車数輌を撃破している。
パンター戦車G型はA型に続く生産型であり、量産された最後の型式である。
G型は1943年5月にニュルンベルクのMAN社で開かれた会議で生産が決まったもので、パンター戦車の発展型として開発が進められていたパンターII戦車の生産延期によって、パンター戦車の生産が継続されることとなったため、パンターII戦車の開発で得たノウハウをパンター戦車に盛り込んで作られたものであり、装甲の合理的強化と生産性の向上が図られている。
パンター戦車G型の生産は1944年3月から開始され、1945年4月の生産中止までにMAN社が1,143両、ダイムラー・ベンツ社が1,004両、MNH社が806両生産し合計で2,953両が完成した。
これは、パンター戦車シリーズで最多の生産数である。
パンター戦車G型の車体製造番号は残念ながら生産開始第1号車しか判明しておらず、MAN社が120301、ダイムラー・ベンツ社が124301、MNH社が128301を与えられた。
G型での最大の変化はD、A型の場合、車体側面の装甲板が燃料タンクの部分で2段となっていたのを改めて、単純な1枚板とし、そのままだと後方に行くほど左右が広がり過ぎてしまうので、装甲板の傾斜角を40度から29度(これは計画時の値で生産型では30度となっている)に変更したことで、併せて装甲厚も40mmから50mmに改められた。
この装甲強化などで戦闘重量が約305kg増加するものと計算されたため、車体前面下部の装甲厚を60mmから50mmに減じ、さらに車体下面前部も30mmから25mmとして合わせて250kgの重量を減らすことで、重量の増加を55kgに抑えることとした。
加えて操縦室から前方の車体上面の装甲厚も16mmから40mmに強化されたが、これによる重量増加量は不明である。
いずれにせよ、パンター戦車G型の装甲防御力がD、A型と比べて大きく向上したことは間違いない。
車体側面装甲板の形状の変更は袖部底板と履帯との間隔を狭めることになり、履帯が袖部底面を叩く可能性が増した。
このためこの部分にあったシュルツェン取り付け部のパーツは廃止され、シュルツェン取り付け具は車体側面装甲板に設けられることになった。
それに合わせて、シュルツェンの形状も変更されている。
さらにパンターII戦車で採用された、前後の幅を減じた機関室上面吸気口のデザインがそのまま用いられた。
これは火炎瓶攻撃や弾片防御として開口部の縮小を目的としたのは明らかで、このままではラジエイターへの空気導入量が減ってしまうが、これはラジエイターの能力向上等を中心とした改良を行うことで、冷却能力の向上が図られたために問題無しとなった。
またこの改良によりA型で採用された追加吸気管は必要が無くなり、再び以前の単純なものに戻されている。
さらに操縦室上面の操縦手および無線手用ハッチは、それまでの上方に持ち上げてから旋回させるという方式を改めて、外側にヒンジを持つ跳ね上げ式に変わった。
これは従来のハッチが弾片等による損傷や詰まりにより開閉不能になるという、前線からの報告を基に改善が行われたもので、脱出もより素早く行うことができるようになった。
またこの変更に合わせ、耐弾性の面から問題となっていた操縦手用のヴァイザーが廃止され、新たに旋回式望遠ペリスコープが操縦手席の上面に装備されたが、これもまたパンターII戦車において採用されたものであった。
この他、A型からの細かい変更点としては前照灯の位置移動やジャッキ台の大型化、牽引用ワイアーを32mm径・8.2m長のものに交換、戦闘室内の弾薬庫形状等を改めて弾薬搭載量を82発に増加し、袖板の上に配された弾薬庫に4mm厚のスライド式カバーを設ける等の改良が行われた。
もっとも、これらの細部の変更がG型の生産時より導入されたとは断言できず、段階的に実施されたものと見る方が実状に即しているものと思われる。
当初、その形状から「直線車体」と呼ばれたパンター戦車G型の試作車は1944年3月に2両が完成し、4月から生産が開始された。
1944年10月26日付で出された生産計画では、当時開発が進められていたパンター戦車F型に生産が切り替わるまで2,650両のG型を生産する予定が立てられたが、結局F型が本格的な生産に入ることは無く、これに替わる形でG型を前述のように2,953両と、生産計画を上回る数量を送り出している。
パンター戦車G型も他の型式と同様に、生産中に多くの改良が実施されている。
以下、生産時期による改良点を列記する。
1944年5月からの生産車は、排気管の付け根カバーがそれまでの鋳造製から単純な溶接式に改められ、続いて6月からは夜間に灼熱した排気管により存在が発見されることを防ぐための、排気管を囲むカバーを新設した。
また、2t簡易クレーンを装着するためのピルツの装備もこの月から開始されている。
7月生産車では車長用キューポラに装備されているペリスコープの固定具を改良型に改め、操縦室上面のヴェンチレイターへ装甲カバーを新設した。
さらにドイツ陸軍兵器局第6課は、車長用キューポラから上方に突き出して使用する視察用TSR.1ペリスコープのマウント廃止や、操縦手用の旋回式ペリスコープの上に雨除けの追加を要求し、この雨除けは8月の生産車から導入されることになる。
8月からは操縦手および無線手用ハッチが、車内からヒンジのボルトを緩めることでそのまま外すことが可能となり、主砲防盾上面の後部には弾片防御を目的とした鋼板が新設された。
また8月19日付で、工場において迷彩塗装を施して完成させる旨通達が出されている。
この時定められた迷彩がいわゆる「光と影」と呼ばれるもので、通常の3色迷彩の上からその地色とは異なる色を用いた細かい斑点を打ったものであり、前線でこれを見た搭乗員たちに車種を問わず広くコピーされることになったため、工場で施された車両をはるかに上回る例を見ることができる。
迷彩の変更にわずかに遅れて車内の多色塗装が中止され、錆止めのプライマーのみとすることも決まった。
さらに9月からは磁気吸着地雷対策のツィンメリット・コーティングが廃止され、併せて錆止めとして最初に塗装されている酸化防止プライマーを、ロートブラウンの代わりに用いてもかまわないことが決まった。
また、主砲照準機の開口部上方に備えられていた雨除けが日除けを目的として前方に延長されたのも、9月の生産車からである。
9月の生産車からの最も大きな変更点は、赤外線暗視装置の導入である。
これは1936年から開発に着手し1943年に実用化の域に達していたものの、あまり必要性は感じていなかったようで実用化は行われなかった機材だが、1944年6月のノルマンディー戦において夜間に作戦行動する必要性が高くなったために導入が決まったものである。
車長用キューポラと主砲照準機、そして操縦手にそれぞれ独立して赤外線ライトとスコープを装備するのが標準とされ、スコープ装備車は車体後面右側の雑具箱が角形の装甲箱に換装され、昼間時にはここに暗視装置を収容するようになっていた。
また戦闘室内右後方に備えられていた3発入りの主砲弾薬庫を外し、この部分に暗視装置への電力供給を行うGG400発電機とバッテリーが新設される等、各部に変更が見られる。
この暗視装置は当初のスケジュールでは1944年9月に50基が引き渡されるのを皮切りとして、10月に70基、11月に80基、12月に100基がそれぞれ引き渡される予定であったが、実際には生産に手間取り車両自体は装備改修を施して完成したものの、装置を装備できた車両は少数に過ぎなかった。
このため11月には以前の仕様に戻す車両も現れる始末で、最終的に暗視装置を装備したパンター戦車G型は113両と伝えられている。
同じく9月の生産車では、パンター戦車の欠点とされていたショットトラップ(砲塔防盾下部に弾丸が命中した際、下に滑って装甲の薄い車体上面を直撃することを指す)への対処として、防盾の下部に張り出しが設けられることとなった。
またMAN社の生産車の一部(車体製造番号121032~121055のみが判明している)では、従来のゴム縁付き転輪が不足したため、代わりにティーガーI/II戦車で用いられていたゴム内蔵式の鋼製転輪が装着されたが、その後さらに転輪が不足したために、1945年3~4月にかけて同社で生産された車両の一部にもやはり鋼製転輪が用いられている。
この鋼製転輪は、パンターII戦車で用いられたティーガーI/II戦車と同じ直径800mm(通常の転輪は860mm)のものがそのまま用いられたが、サスペンションアームの軸径に合わせるため、中央のハブは新型に変わっていたのが相違点である。
またラジエイターの排気ファンが強化型に替わり、袖板の上に備えられていた弾薬庫のスライド式カバーも廃止されることになった。
10月の生産車では、誘導輪が新型に換装された。
これは泥等が詰まり易かった従来のものの対策として登場したもので、リブの形状を一新しサイズも直径650mmに大型化されており、識別は容易である。
排気管への消炎機装着が指示されたのもこの月で、消炎機の採用に伴い排気管を覆っていたカバーが廃止されることになったが、実際に消炎機の装着が開始されたのは12月に入ってからのことであった。
この装備は以前の生産車に対しても行うよう指示が出されたが、新規生産車に装備することさえ難しかったことを考えると、この指示は実行自体が不可能に近かったものと思われる。
さらに、戦闘室ヒーターがより簡易なものに変更されたのも10月の生産車からである。
これは機関室左側に設けられていた冷却ファンの上に被せる形で載せる箱型の装置で、冷却ファンの開口部に蓋をして暖かい空気を外部に出さず、新設されたダクトに流すことで戦闘室に暖かい空気を導入するというものであった。
この場合、右側の吸気グリルの上には開閉式のシャッターが装着され、ラジエイターの水温を上げパイプで結合されている左側のラジエイター水温をさらに高めるという小技が盛り込まれていた。
もっとも水温計が80℃を超えた場合には、シャッターを開いて水温を下げるように指示が出されていた。
MNH社の記録ではこのヒーターが装備された最初の生産車は、1944年11月22日に完成した車体製造番号128827の車両とされており、また右側のシャッターは12月9日に完成した車体製造番号128862の車両から装備が開始されたとしている。
また同時期に後部のショック・アブソーバーの廃止が決まり、操縦手席のシートもハッチを開放して直接外部を見ながら操縦できるように、2段階に高さを調節することが可能となった。
これに併せて変速機の操作レバーが延長され、計器盤にも変更が加えられている。
さらに、この月の生産車から毒ガス防御が盛り込まれることになった。
これは第2次世界大戦末期にドイツ軍が毒ガスを用いることを考えていた証で、砲塔上面3カ所に毒ガス検知パネルの装着具が溶接され、併せて戦闘室内に検知パネル収容箱を新設し、ガスマスクの収容ケースやブレスチューブ2本の追加などが実施された。
この装備と並行して本格的な毒ガス対策も研究されており、変速機から動力を抽出して駆動する吸塵用フィルターと2基の炭素フィルターを、車体製造番号120303のパンター戦車G型に装備して試験を行ったが、幸いにも試験の域を出ること無く終わっている。
1944年10月31日には車内塗装の廃止(もちろん錆止めは塗られるが)が決まり、さらに12月20日付で基本色をそれまでのドゥンケルゲルプからドゥンケルグリューンに改め、迷彩色としてロートブラウンとドゥンケルゲルプを用い、各色とも境界線はぼかさずに明瞭なものとせよという指示が出された。
また時期は不明だが、砲塔上面中央にペリスコープ・ガードと酷似した形状のアンテナ基部の装備が始められたが、これはごく一部の車両が装備しただけに留まっている。
1945年1月20日には機関室のボルト数を半分に減らすように指示が出され、1月24日には車長用キューポラに装着されていた対空機関銃架装着用レールの廃止が決まり、2月15日には砲塔内に限って車内色であるエルフェンバイン(アイボリー)の塗装が再び行われることになった。
1945年3月には、車長用キューポラのペリスコープ・ガードに対空機関銃のマウントを固定するポストが溶接されることが決まり、砲塔側面に擬装用の小枝などを固定する際に用いるU字型フックを溶接することになった。
生産中に公式な形で実施されたパンター戦車G型の改良は以上の通りだが、車体側面に設けられていたクリーニングロッドのケースを車体後部に移したり、砲塔側面に予備履帯止めを設ける等前線での独自の改良も多く見られる。
●戦歴
1944年にパンター戦車を配属された主な機甲師団はSS第3機甲師団トーテンコプフ、SS第5機甲師団ヴィーキング、第3、第4、第5、第8、第14、第19機甲師団などである。
1943年7月のクールスク戦当時の機甲師団の編制では、パンター戦車の配備数は4個戦車中隊に各22両(中隊本部に2両、戦車小隊4個に各5両)に本部車両を加えて99両のはずであるが、そんな例はほとんど見られない。
1944年4月に変更された編制では、各戦車中隊が3個小隊編制でパンター戦車は合計79両になっている。
1944年6月のノルマンディー戦で見ると第12SS機甲師団は66両、教導機甲師団は89両のパンター戦車を装備していた。
その後増派された第9機甲師団、第116機甲師団では79両のパンター戦車を装備していた。
また1944年半ばには東部戦線での大敗北の穴埋めのため、多数の独立戦車旅団も編制されている(ただしすぐに機甲師団または機甲擲弾兵師団に吸収されてしまった)。
独立戦車旅団編制では3個戦車中隊に各11両(中隊本部に2両、戦車小隊3個に各3両)で、大隊では36両のパンター戦車が配備されていた。
1944年末の編制では、師団は3個戦車中隊に各17両(中隊本部に2両、戦車小隊3個に各5両)で合計60両となるが、各小隊を4両(中隊で14両)としたもの、3両(中隊でわずか10両)にしたような編制例も見られる。
戦車定数は減らされるばかりで、師団の戦力は名前に見合うものでは無くなっていった。
1944年12月16日に始まるラインの守り作戦に参加する部隊には、優先的にパンター戦車が配備された。
参加師団のパンター保有数はSS第1機甲師団が42両、SS第12機甲師団が41両、教導機甲師団が30両といったところである。
一方東部戦線については、1945年1月の段階で707両のパンター戦車が使用されていた。
1945年2月1日時点のパンター戦車の全登録数は、2,133両であった。
パンター戦車は、ベルリン・マリーエンフェルデのダイムラー・ベンツ社の工場で戦争最後の日まで生産が続けられた。
1945年4月6日に編制されたドイツ陸軍最後の機甲師団クラウセヴィッツには、2106戦車大隊とプトロス戦車大隊に22両のパンター戦車が配備されていた。
<パンター戦車G型>
全長: 8.86m
車体長: 6.88m
全幅: 3.43m
全高: 2.98m
全備重量: 44.8t
乗員: 5名
エンジン: マイバッハHL230P30 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 700hp/3,000rpm
最大速度: 55km/h
航続距離: 177km
武装: 70口径7.5cm戦車砲KwK42×1 (82発)
7.92mm機関銃MG34×2 (4,200発)
装甲厚: 16~110mm
パンター戦車F型はG型に続く改良型として1943年末に開発が始められたもので、その骨子には戦訓を加味した装甲強化と生産性向上があった。
これに従ってデュッセルドルフのラインメタル・ボルジヒ社では、パンターII戦車への搭載を目的として設計した砲塔をベースに新型砲塔の開発を行い、1944年3月1日に基本図面を提出した。
この砲塔が俗に「シュマールトゥルム」(小砲塔)と呼ばれるもので、従来のパンター戦車の砲塔と比べて前面の装甲板の幅がやや減らされ、ショットトラップを引き起こすため評判の悪かった従来の横長円筒形の主砲防盾は、いわゆる「ザウコプフ」(豚の頭)型という円錐形に先が窄まった鋳造製の小型のものに換装されていた。
さらに、画期的な新装備としてステレオ式測遠機が採用されていた。
これは軍艦の測遠機や砲兵観測機材などに使われている、左右に長い鏡筒を持つ距離観測機材である。
それまでの戦車の測遠機は、要するに目測で目標までの距離を測る(見積る)ものだったのに対して、ステレオ式測遠機は正しいデータとして距離が示されるのである。
戦車砲の弾道は低進するので近距離なら距離測定の正誤は大した問題とならないが、遠距離では距離測定の精度が影響してくる。
これは数に劣るドイツ陸軍戦車が、優越した砲戦性能を生かして遠距離から敵を撃破しようとした発想を示すものであろう。
この図面を受領したドイツ陸軍兵器局第6課は、検討を行って基本要求をまとめ上げた。
兵器局第6課の要求は
・砲塔重量を増やさずに装甲強化
・内部容積を保ちながら砲塔面積の縮小
・ショットトラップを生じない防盾形状
・指揮戦車用アンテナ基部と暗視装置取り付け具の標準装備
・生産期間とコストの減少
といったもので、同様に武装も
・主砲は70口径7.5cm戦車砲KwK42、もしくは改良型のKwK44
・同軸機関銃の7.92mm機関銃MG34をMG42に変更
・7.92mm突撃銃MP44に曲銃身を装着したフォアザッツP 2挺装備
とされた。
これらは当時としては極めて常識的な要求であり、このF型がパンター戦車の正常進化に位置していることは明らかであろう。
ラインメタル社で作成された新型砲塔の基本図面と、兵器局第6課でまとめられた要求仕様書はベルリン・マリーエンフェルデのダイムラー・ベンツ社に送られ、同社は直ちに新型砲塔の設計作業に着手した。
その開始時期ははっきりしないが、遅くとも1944年5月前後には設計作業を開始したものと思われる。
ダイムラー・ベンツ社で設計されたシュマールトゥルムは兵器局第6課の要求もあって、以前ラインメタル社でまとめられたものよりはるかにすっきりとした外観に変貌した。
また砲塔の装甲厚は前面120mm(パンター戦車G型では110mm。以下同様)、側面60mm(45mm)、上面40mm(16mm)、後面60mm(45mm)と大きく強化が図られたが、砲塔前面の装甲板がかなり小型化され、砲塔上面の面積も減少したのに加え、G型までの大きな防盾に代わる150mm(100mm)厚の小型のザウコプフ型防盾が採用されたため、装甲厚が増加したにも関わらず重量は従来よりわずかに減少し、製造工数は30~40%も減少した。
また砲塔リング径は従来のまま1,650mmであったため、そのまま現用のパンター車体に搭載することができた。
車長用キューポラは背の低い新型に改められ、上面には7基のペリスコープとそのカバー、そして対空機関銃架や双眼式望遠鏡等を装着するマウントが設けられており、このため機関銃架のレールは装着されていなかった。
主砲はパンター戦車D~G型で用いられたラインメタル社製の70口径7.5cm戦車砲KwK42に代えて、ラインメタル社がチェコのシュコダ社と協力して開発した改良型の70口径7.5cm戦車砲KwK44/1が搭載された。
このKwK44/1は揺架が新設計のものに替わったのに加えて、生産工程の簡略化を図って溶接部分を減らしており、これも重量軽減に寄与している。
圧搾空気を用いた砲身内の発射ガス排出装置は、新たに装着されたリコイル・シリンダーと一体化が図られたのも見逃せない変化である。
パンター戦車F型の試作第1号車では主砲の先端に砲口制退機が装着されたが、第2号車では装備されなかった。
これは駐退機が強化され後座力が12tから18tに増えたことによるもので、結局生産型では砲口制退機は装備しないことが決まった。
さらに将来的にはシュコダ社が開発した機械式高速装填装置付きの70口径7.5cm戦車砲KwK44/2、もしくは新たに開発された71口径8.8cm戦車砲KwK44をパンター戦車に搭載することも計画されていた。
パンター戦車F型の主砲には当初、新たに開発される新型の単眼式TZF.13照準機が用いられることとされ、ヴェッツラーのエルンスト・ライツ光学製作所に対して4,802基が発注された。
しかし実際には開発に手間取り、1944年10月と翌45年1月にそれぞれ1基ずつが完成しただけであった。
このため以前からライツ社で開発が進められていた、ジャイロ式安定装置を備える次世代の照準機SZF.1が急ぎ装備されることになった。
SZF.1照準機は試験用として1944年半ば頃にまず10基が発注され、翌45年1月には1,000基が発注されているが、1944年9~12月までに完成したのは5基にしか過ぎず、1945年1~2月にかけて改良型のSZF.1b照準機が4基引き渡されただけに終わった。
一方、これまたドイツ陸軍戦車初の装備となるステレオ式測遠機は、イェーナのカール・ツァイス社が開発を行ったもので、基線長1.32mで15倍という高い拡大率と4度の視野を有しており、当初車長と砲手いずれが操作するか議論があったものの、結局砲手が用いることで結論を見た。
しかし開発が完了したのが1945年4月で、敗戦までに1基が完成しただけに終わっている。
予定では1945年7月より生産を開始することとされ、発射時の衝撃や砲塔旋回による狂いが生じることが危惧されたものの、スプリング式ベアリングを採用することでこの問題は解決できると考えられていた。
砲塔の旋回は変速機から得た動力を油圧モーターに伝えて行うのは従来と同じだが、それまでのペダル式に代えて砲手の手元に置かれるスイッチ式が採用され、全周旋回には30秒を要した。
また従来と同じく補助旋回装置として手動式の旋回ハンドルも備えられており、この場合全周旋回には4分が必要であった。
この他砲塔関係では車長用キューポラの右側に、指揮戦車として運用する際に増設される無線機用のアンテナ基部の開口部が用意された。
試作車ではアンテナを装備したものと、三角形のプレートを用いて塞がれたものの2種が存在していたようで、砲塔自体は少なくとも3基が製作されたようである。
また最初に試作された砲塔では右上面に装填手用のペリスコープが備えられていたが、続く2号砲塔からは必要無しと判断されて装着されていない。
さらに砲塔後面には、パンター戦車A型で廃止されたガンポートが復活したのもF型の特徴である。
車体はパンター戦車G型のものが用いられることになったが、戦訓を加味して一部に改良が盛り込まれた。
最大の変化は、それまで操縦室の前方にあたる上面部分のみ40mmとしていたのを改めて、砲塔リングの手前までが40mmに、その後方も16mmから25mmに強化されたことで、このため溶接ラインがG型とは異なることが識別点となっている。
パンター戦車A、G型で車体前面上部右側のボールマウント式銃架に装備されていた無線手用の7.92mm機関銃MG34は、F型では7.92mm突撃銃MP44に換装されている。
また操縦手および無線手用ハッチはG型の跳ね上げ式からD、A型のようなスライド式に替わり、ハッチの横にはガイドが新設され、車体側面と前面の装甲板を溶接している部分の切断線がわずかに変化する等の変更点も確認できる。
パンター戦車F型の転輪は試作車では従来と同じゴム縁付きのタイプが用いられたが、戦略物資のゴムを節約するため生産型には鋼製転輪が用いられたものと思われる。
というのは1945年2月20日に兵器局第6課から出された、開発中の戦車は全て鋼製転輪とするという通達が存在するからである。
もっともパンター戦車F型を生産することになったダイムラー・ベンツ社の第40工場において、戦後の検証では鋼製転輪の在庫は無く、全て通常の転輪しかストックされていなかったことが判明しており、初期の生産型では通常転輪を装着して完成した可能性も充分ある。
パンター戦車F型のエンジンは、D~G型で用いられたフリードリヒスハーフェン・マイバッハ発動機製作所製のHL230P30 V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力700hp)が用いられたが、将来的には燃料噴射装置を追加した発展型のHL234 V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力800hp)または、KHD社製の2ストローク・ディーゼル・エンジンT8M118(出力700hp)に換装することも計画されていた。
1944年10月に決定されたスケジュールでは1945年3月にはF型の生産が開始され、8月には全てのパンター戦車の生産がF型に切り替えられることになっていた。
しかし生産スケジュールは遅れ、1945年1月の段階では最初のF型が完成するのは8月になる見通しとなっていた。
結局1945年5月に戦争が終結した時までに、完成したパンター戦車F型は公式には1両も無かった。
ただし、すでにF型用の車体は生産ライン上でG型用車体と並んで生産され、G型砲塔を搭載して完成したものがあり、F型砲塔は砲塔で完成していたのだから、最後のベルリン攻防戦で両者が結合されてF型が実戦投入された可能性も無くはない。
パンター戦車は、第2次世界大戦におけるドイツ陸軍のIII号戦車に代わる新世代の主力戦車であった。
大戦前、III号戦車にほぼ匹敵する主力戦車を持つ国は多くあったが、次世代の主力戦車を大戦に間に合わせて開発できた国は多くはない。
戦争中に改良型ではなく完全に一から、世界水準を凌駕する主力戦車を開発し量産配備したことは、ドイツの戦車開発技術および工業技術水準の高さを物語るものである。
パンター戦車はT-34ショックから急ぎ生まれた新型主力戦車であったが、良くその期待に応えシリーズ総計で5,995両が生産され、ドイツ最後の日まで主力戦車として戦い抜いた。
その性能はソ連軍の主力戦車であるT-34中戦車と、その改良型であるT-34-85中戦車にも勝り英米軍の主力戦車を凌駕していた。
しかもパンター戦車の可能性はそれだけでなくその改良型は終戦時に生産の途上にあり、さらに発展型も計画されていた。
パンターはまだまだ発展余裕のある優秀な戦車であり、第2次世界大戦における最優秀中戦車の1つであったといえよう。
<パンター戦車F型>
全長: 8.86m
車体長: 6.88m
全幅: 3.44m
全高: 2.92m
全備重量: 45.0t
乗員: 5名
エンジン: マイバッハHL230P30 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 700hp/3,000rpm
最大速度: 55km/h
航続距離: 200km
武装: 70口径7.5cm戦車砲KwK44/1×1
7.92mm機関銃MG42×1
7.92mm突撃銃MP44×1
装甲厚: 25~120mm
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