業界仕組みネタ2/GDC2009

Last-modified: 2010-09-18 (土) 22:21:38

【GDC 2009】ゲーム開発をアウトソースする際のポイント

http://www.inside-games.jp/article/2009/03/25/34374.html
ゲーム開発において、一部の業務を外部にアウトソース(外注)することはもはや珍しいことではなくなりましたが、今回のGDCにおいてもアウトソーシングは重要なトピックで、「ゲームアウトソーシングサミット」が2日目に実施されました。専門分野に特化した人材供給を行っているBabel MediaのBen Wibberley氏は「The Aggregation of Minute Differences Creating Excellence in Outsourcing」として、開発をアウトソースする際のポイントについて説明を行いました。

まずWibberley氏はアウトソースする先の企業(ベンダー)を選ぶ際の選定基準について述べました。ここで挙げられたのは、

・Quarity (クオリティ)
・Security (セキュリティ)
・Cost (コスト)
・Process (プロセス)
・Experience (経験)

ゲーム開発をアウトソースするに当たって、仕事の質が重要なのは当然ですが、機密情報をきちんと保持できるのかということや、もちろんコストの面も重要です。またWibberley氏は、開発チームの一部となることが重要で、どのようなプロセスで仕事を行うことができるのか、過去にどのような経験を積んだチームなのか、という点も検討事項になると述べました。

続いて実際に選定する際に考えられるプロセスがいくつか紹介されました。

・RFI (情報提供依頼書)
・RFP (提案依頼書)
・Shortlist (ショートリスト)
・Pilot Test (パイロットテスト)
・Audit (監査)
・Pre-Production (プリプロダクション)
・SLA'S (サービス・レベル契約)

RFIやRFPは特に行政機関における調達などで利用されているもので、要求事項を開示し、それに対して各企業が回答を行うというものです。アウトソース先の選定には、こういった情報提供レベルのものから、パイロットテストやプリプロダクションのような実際の作業を伴うものまで様々に考えられます。動くものに近付けば近付くほど確実性は増しますが、一方でコストはかさみますし、それだけ多くの物を開示するというセキュリティ面でのリスクも考えられ、どこまでやるかは難しい判断になります。

これらを乗り越え、実際に作業をする段階では、「何を、何時までに」という管理を徹底することや、、更には、ゲームは進化が激しく技術的にも常に前進しているため、継続的なパートナーシップを続けることが重要で、アウトソース先を探すというのは継続的なプロセスであると指摘していました。そのためには定期的なミーティングを持つことが必要で、パートナーとの関係も同じままであるより状況に応じて変化させていくのが良いのではないかということでした。

講演はアウトソーシングにおける非常に基本的な内容でしたが、スタートとして参考になるものではないでしょうか。

【GDC 2009】知られざる「テクニカルアーティスト」の重要性

http://www.inside-games.jp/article/2009/03/25/34380.html
GDCの分科会「アウトソーシングサミット」にて実施された「Unknown Solider: Technical Artist」(知られざる兵士: テクニカルアーティスト)では、デザイナー寄りのプログラマーと言われるテクニカルアーティストが、ゲーム開発をアウトソースする側(クライアント)および受ける側(ベンダー)の双方にとってどのような役割を果たすのかについて講演が行われました。

登壇したのはExigent社のJesse Rapczak氏です。Exigentは中国やインドに拠点を持ち、ゲームメーカーからのアウトソースを受ける企業です。

まず「テクニカルアーティストとは一体何か?」という説明が行われました。Rapczak氏はテクニカルアーティストに求められるスキルとして「ロジカルに思考する」「チームプレイヤーになれる」「問題を解決できる」「全体を俯瞰できる」「イニシアティブを取れる」「常に学べる」といったものを挙げました。

テクニカルな面では、パイプラインを設計し、新たなツールを開発し、ソフトウェアのトレーニングやサポートを行い、トラブルが発生した際には内部のトラブルデスクのような役割を果たします。アートの面では、モデル・テクスチャ・アニメーション・レベルデザイン・ビジュアルエフェクト・オプティマイズ…(そう全ての面!)の技術的なサポートを行っていきます。開発チームのリーダーとして、アーティストを統括し、テクニカルなスキルを開発効率の向上や質の向上に繋げていきます。つまり、

1. リーダーとして、他のアーティストがもっとテクニカルになる手助けをする
2. リーダーとして、優れたアーティストとして同僚を手助けし、開発プロセスを理解する
3. チームプレイヤーとして、開発効率の向上やより良い選択肢/結果の追求を行う

というものがテクニカルアーティストが現場で果たす役割ということになります。

Rapczak氏は、実際に起こりがちな幾つかのシチュエーションでテクニカルアーティストに求められるものを紹介しました。

1.アウトソースの経験のないクライアント
テクニカルアーティストはクライアントとのフロントに立ち、情報の取捨選択をして無茶なことを言うかもしれないクライアントからメンバーを守る必要がある。

2.助けて!あれが動かないの!!
開発中のトラブルは能率を低下させる。テクニカルアーティストは内部のヘルプデスクとしてトラブルを解決する手助けをする必要がある。ExigentではphpBBを改造した社内BBSでQAを公開。

3.全てのプロジェクトは全て異なる
パイプライン、ツール、必要事項は常にプロジェクト毎に異なる。テクニカルアーティストは先頭に立って、新しい技術をスタジオに導入していかなければならない。Exigentではwikiで情報を公開。

4.業界に歩調を合わせる
ゲーム開発手法は常に進化を続ける。テクニカルアーティストは常に最新動向をチェックし、より効率的で品質の高い作業ができるように動く必要がある。

5.アートチームがない!
クライアントによってはアートチームが小さすぎるか経験のあるメンバーがいない場合も。テクニカルアーティストはパイプラインの設計や最終的なアセットの制作を行う必要もある。

6.もう何回もやったよ
でも業界は常に変化していて、全く未体験の作業がある可能性も。テクニカルアーティストはそういった必要に迫られたメンバーを手助けする必要がある。

これらの例はアウトソースを受ける側の会社のテクニカルアーティストの役割になりますが、アウトソースをする側の会社にとっても、アートの素地を持っていて、かつ技術的な受け答えのできる担当者がいるというのは開発を進める上で非常に重要になってきます。日本ではまだまだ聞き慣れない職種ですが、高性能な次世代機でアートの可能性が広がった今、アーティストの思い描くものを、いかにして技術的に実現するかというサポートを行える人材は強く必要とされていくのではないでしょうか。

Rapczak氏はアウトソース先として有望な新興市場での難しさも述べています。まず、中国やインドなどの新興市場では広く知られた職種ではありません。実際にそのような仕事をしていても、自分がテクニカルアーティストだと考えていない人も多くいるでしょう。言葉の壁もありますし、そのような新興市場では開発された絶対数が少なく、経験を積んだ人材というのも限られます。

もしテクニカルアーティストが確保できない場合、どうしたらいいか。Rapczak氏は(1)自分が知らない人材がそういう役割をできないか探す (2)必要に足る人材を募集する (3)通訳を雇う そして英語のレッスンを提供する、のが良いのではないかと話していました。

【GDC 2009】上田文人、須田剛一、エミル・パグリアルーロ(Fallout 3)・・・日米の著名開発者がゲームデザインを語った

http://www.inside-games.jp/article/2009/03/28/34439.html
GDC3日目の25日(現地時間)、日米の著名開発者によるゲームデザインのパネルディスカッション“Evolving Game Design: Today and Tomorrow, Eastern and Western Game Design”(ゲームデザインの進化:今日と明日、西洋と東洋のゲームデザイン)が行われ、ストーリーゲームの企画と開発に関する議論が展開されました。

パネリストは『ICO』『ワンダと巨像』で著名なSCEJの上田文人氏。『キラー7』『ノーモアヒーローズ』を手がけたグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏。そして『フォールアウト3』でリードゲームデザイナーを務めたベセスダ・ソフトワークスのエミル・パグリアルーロ氏の3名です。モデレーターは海外ゲームメディアの編集者を経て、現在はローカライズを手がける8-4のマーク・マクドナルド氏が担当しました。

はじめにゲームデザインのアプローチについて、須田氏はストーリーを考えてから、それをゲームに落とし込むというプロセスについて語りました。まず背景として映画や小説などの、他のエンターテイメントから受ける刺激があり、それらを糧として、誰も考えつかないような純度の高いストーリーを生み出すというわけです。

エミル氏も須田氏の方法論に近いと語りました。ただし須田氏が基本的に一人でシナリオを書いているのに対して、エミル氏は開発チームのゲームデザイナーが分担でシナリオを作成し、最終的に自分が統括していると語りました。

これに対して上田氏は、まずゲーム内のさまざまなシーンを映像としてイメージし、それを絵コンテにする作業からはじめると語りました。次にデザイナーやアニメーターと、この絵コンテを映像にします。その上でプログラマーと共同で、実際のゲームに落とし込んでいくのです。

ただし、これらの映像は、もともとゲーム機で実現できるか否か考慮されていないため、実際の開発はさまざまな妥協や変更点の連続だといいます。ただし上田氏は、ある制約の中で、いかに良い物を作るかが楽しみでもあるので、こうした作業が苦労だとは思わないと語りました。

またストーリーゲームでつきものの「会話」という手法について、おもしろい違いが語られました。『ICO』『ワンダと巨像』では、ゲーム中にNPCとの会話メッセージがほとんど登場しません。一方で『フォールアウト3』では、大量のNPCと会話メッセージがある一方で、決められたストーリーは存在せず、プレイヤーのゲーム体験がそのまま物語となる構造をとっています。

『キラー7』『ノーモアヒーローズ』は会話については中間ですが、表層的なストーリーの背後に裏の物語が存在し、何度もプレイする過程で、それらに気づく仕掛けが散りばめられています。

これに対して上田氏は、自分が最も重用視しているのは、フィクションとしてのリアリティだと語りました。ゲーム中でNPCとの会話は、往々にしてプレイヤーに謎や手がかりを与える手段として描かれます。

そのためプレイヤーの求めに応じて、何度も同じ台詞を表示せざるを得ないなど、リアリティとして限界が生じます。であるならば、いっそのことNPCとの会話シーンをすべて削除しても、成立するようなゲーム内容にすればいい、というわけです。

このように、さまざまなアプローチがあることに対して、エミル氏は非常に刺激を受けたと語りました。エミル氏によると『フォールアウト3』のようなRPGは伝統的なコンピュータRPGがルーツにあるので、ユーザーも大量のNPCと会話メッセージを期待する傾向にあるが、固定観念にとらわれてはいけないとコメント。

NPCの会話や行動をよりリアルにするためにも、AIの進化が求められていると語りました。これに対して上田氏も、今後AIの進化でNPCを本当に生きているように描けるようになれば、大量のNPCが登場するゲームを作るかもしれないと語りました。

一方で3人のゲームはいずれも、仮想世界に浸らせるという共通点があります。これについては3人ともゲームデザインの方向性として「没入感」というキーワードを上げました。

須田氏は上田氏、エミル氏のゲームを共に没入感に優れた、雄弁なゲームだと評価した上で、映画「イグジステンス」で描かれた、脊髄にプラグを埋め込んで仮想世界にダイブするような、バーチャルリアリティによるゲーム体験が理想だとコメント。最終的にゲームは映画をこえる存在になるというビジョンを語りました。

これに対してエミル氏は、ゴーグルやグローブなどのガジェットを使わずに、プレイヤーに仮想体験が提供できるようなゲームの未来像を語りました。そのうえでNPCの描写をよりリアルにして、プレイヤーが現実世界と見間違うようなゲーム体験を提供したいとコメント。一つのストーリーにそってゲームが進むのではなく、ゲーム自体にストーリーを伝える力を持たせることに興味があると述べました。

一方で上田氏は、「今作っているゲームはまったく違うが」と前置きした後で、ゴーグルやヘッドマウントディスプレイを用いたゲーム体験に興味があると語りました。その上で自分の理想のゲームとは、仮想世界で少しの間、気晴らしをして、現実世界で生きる勇気をもらえるようなものだと語りました。

またアーケードゲームから始まった「ゲームオーバー」というルールを、うまくゲームシステムに組み込んで、ただ単にストレスとしての存在以上のものにしたい、というアイディアを語りました。

このほか会場からの「ゲームはアートか?」という質問に対して、上田氏は自分のゲームをそのように評価してもらえることは嬉しいが、自分は商業作品を作っているので、そのように見られるのは本意ではないとコメント。エミル氏はプレイヤーに喜ばれるものを作ることが第一で、ゲーム開発者はアートのことはあまり考える必要はないと語りました。一方で須田氏は「エンターテイメントの中でアートフォームをするのは挑戦的な行為」と語り、ゲームのブラウン管に光を照射する美しさは、芸術としても強い力を持っているとコメントしました。

3名の議論は、東西の違いを超えて、ストーリーゲームの未来に大きな可能性を示すキーワードで溢れていました。RPGやアドベンチャーといった既存の形式を超えて、プレイヤーにどのようなストーリー体験を提供できるかが鍵というわけです。ハードウェアの性能が確実に進化していく一方で、ゲーム開発者として、どのようなビジョンを指し示せるか。このことが、あらためて問われている時代だと、本パネルシンポジウムが指摘したように感じられました。

【GDC 2009】ピーター・モリニューが明かす「革新的でリスキーなアイデアを実現する方法」

http://www.inside-games.jp/article/2009/03/28/34446.html
『シビライゼーション』『BLACK & WHITE』『FABLE』といったゲームで知られるゲームデザイナーのピーター・モリニュー氏がGDC 2009に登場。「Lionhead Experiments」というタイトルで、モリニュー氏の会社であるライオンヘッドスタジオがいかに革新的でリスキーなアイデアを実現していくかという手法を明らかにしました。世界中で尊敬を受けるモリニュー氏の登場とあって、会場は多くの開発者に埋め尽くされ、随時Q&Aを挟むなど、活気のある1時間となりました。

大きな拍手で迎えられたモリニュー氏は「ライオンヘッドはイノベーションのための会社で、それを望む開発者が集まっている」と切り出し、「ゲームユーザーもイノベーションを望んでいて、それが成功のカギになる」と話しました。しかし、イノベーションは非常にリスキーです。『BLACK & WHITE』の頃は30人程度のチームで、革新的なアイデアに挑戦するのはまだ比較的容易でした。しかし、近年モリニュー氏が手がけた『FABLE』のような100人を超えるようなプロジェクトでは、それは非常に困難なこととなります。

そこでライオンヘッドが行っているのは「Experiments」という手法です。これは1〜12週程度のごく短期間のプロジェクトで、1〜5人程度の少人数で、革新的なアイデアに挑戦するものです。大体はプロジェクトを終わってフリーになったゲームデザイナーが始めます。イノベーションへの挑戦をゲームの本制作の過程から切り離し、小規模かつ短期に行うことで、リスクを低減する手法と言えます。

「Experiments」はどのメンバーも提案可能で、必ずサポートしてくれるシニアメンバーを見つける必要があります。シニアメンバーはクリエイティブボードに提案し承認を受ける必要があります。そして通常のプロジェクトと同様にスケジュールがあり、適宜マイルストーンやチェックポイントを設定する必要があります。開発コストは社内のCenter Technology Groupと呼ばれるグループが持ち、過去のプロジェクトの利益から捻出されるようです(「たとえば『FABLE』の、、、いやあれは使いすぎてもう残ってないんだっけ」との下りに会場は笑いが起きてました)。

このような実験的なプロジェクトでは過去のアセットを使い回して効率的に行うことが重要で、ライオンヘッドでは非常に使いやすいプロトタイプ用のゲームエンジンが用意されているほか、過去のゲームのエンジンを流用する場合もあるようです。「コンクリート」というフレームワークがあり、過去のゲームのアセットから使い回せる仕組みがあるようです。

「Experiments」が上手くいけばゲームに導入されたり、それに基づいたゲームの開発へと進む方向があります。最後のモリニュー氏は「Experiments」から生まれた幾つかの興味深いアイデアを紹介してくれました。

近年のゲーム開発は肥大化していて、その一方で求められるものは多くなっています。モリニュー氏が紹介したライオンヘッドの取り組みは、奇しくも先日の基調講演で岩田氏が明らかにした宮本茂氏がごく小規模なメンバーで様々な実験を行い、そこで成功したものを本制作のステージに上げていくという手法をシステム化したもののように思えました。社内の活気を保ち、イノベーションを持続していく一つの手法と言えそうです。

【GDC 2009】海外企業との取り引きを目指す日本メーカーの取り組み

http://www.inside-games.jp/article/2009/03/29/34453.html
GDC会場では、講義以外にもさまざまなイベントが併設されます。ビジネスマッチングイベント「ゲームコネクション」(GC)もその一つで、3月24日から3日間(現地時間)、さまざまな商談が繰り広げられます。ここで日本貿易振興機構(ジェトロ)が「GDCジャパン/ジェトロブース」を設置していると聞き、取材に行って来ました。

GC会場はGDCで基調講演が行われる「モスコーニュ・サウス」の地下にあり、数十の小さな商談ブースが設置されています。登録もGDCとは完全に別で、中にはGDCに参加せず、GCだけに訪れる人もいます。ドイツやカナダ、韓国など、ゲーム産業の支援策を採る国々では、ブースが固められて、カントリーゾーンとして設置されているものもあります。ジャパンブースもそうした一画にありました。

ジェトロがGCに出展するのは今年が2回目で、昨年はGDCのエキスポ会場にも出展したのですが、今年はGCに絞り、商談サポートに重点が置かれました。今年参加したのはゲームディベロッパー・CG企業の9社で、海外のゲームパブリッシャーに向けて、日本のゲームコンテンツのPRやビジネスミーティングを行うことを目的とされました。

取材ではそのうちの2社、バウハウス・エンタテインメントとプレミアムエージェンシーに話を伺うことができました。共にCG関連に強い企業で、昨年度に引き続いての参加となります。

『NINJA GAIDEN Σ』PS3版)『無双OROCHI』(PS2版)などの開発協力で実績のあるバウハウス・エンタテイメントでは、海外のパブリッシャーからの製作受注を目的に参加したとのことでした。ただし世界同時不況の影響で、昨年度に比べるとパブリッシャーとのマッチング数が減少したそうです。逆に海外のディベロッパーがミーティングに訪れて、日本のパブリッシャーへの共同営業をもちかけられることもあるとか。同社の西村和久プロデューサーは、こうした変化を逆に好機と捉えて、立体的な国際戦略を展開していきたいと話してくれました。

PS3『メタルギアソリッド4』や、映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」などのCG制作に携わったプレミアムエージェンシーでも、景気の不透明感に関する話題が出ました。一方で同社は数年前からアジア圏を中心に分業体制を敷いており、海外展開に一歩先んじている企業でもあります。セガ・エンタープライゼスで「シェンムー」などの開発にも関わった山路和紀社長は、ジェトロブースのメリットとして、北米だけでなく、欧州企業とのビジネスミーティングもできる点をあげました。今後もGCの参加を含めて、多面的な営業展開を行っていくそうです。

海外市場、特に欧州の伸びが著しい一方で、国内のゲーム市場は再び縮小傾向を見せており、中小のディベロッパーが生き残っていくには、海外受注を視野に入れた企業戦略が欠かせない状況になりつつあります。こうした中でジェトロが中小企業を中心としたゲーム産業の支援を行っていることは興味深く、ますますの発展と成果を期待したいところです。

■ジャパンブース参加企業
アークシステムワークス▽リズ▽デジタルワークスエンターテイメント▽ヴァンガード▽ランド・ホー!▽ジークレスト▽アクワイア▽バウハウス・エンタテインメント▽プレミアムエージェンシー

【GDC 2009】新たなるゲーム機、新興市場向け「Zeebo」がベールを脱ぐ

http://www.inside-games.jp/article/2009/03/24/34355.html
ゲームができる携帯電話は多数発売されています。しかし、携帯電話の機能を盛り込んだコンソール機が明らかになりました。米携帯電話キャリア大手のQUALCOMMが出資するZeebo社のゲーム機「Zeebo」がそれです。GDCモバイルの講演「4-Gaming for the Next Billion」で実機が公開されました。

Zeeboは新興市場向けのテレビゲーム機で、まず年内に199ドルで、ブラジルでの発売が予定されています。続いてメキシコ、2010年にはインドとロシア・東欧諸国、2011年には中国での発売も視野に入れています。

コントローラーは十字型ボタン+4ボタン+2アナログスティックで、Wiiのクラシックコントローラーに似ています。最大の特徴はソフトの配信を3G携帯電話ネットワークで行うことで、本体に1GBのフラッシュメモリを内蔵しています。

決済はクレジットカード・デビットカード・プリペイドカードの選択式です。これにより海賊版の被害を受けずにすむとしています。このほかPCの外付けモデムとして使うことも可能です。

ゲームソフトは『クラッシュ・バンディクー 爆走!ニトロカート』『鉄拳2』がデモされました。このほか『FIFA SOCCER 09』『ニード・フォー・スピード カーボン』『biohazard 4』などのタイトルがあげられ、ローンチタイトルは54本になるとのこと。すでにEA、アクティビジョン、イド・ソフトウェア、セガ、バンダイナムコゲームス、カプコン、ゲームロフトなどがタイトル供給を表明しています。

開発は携帯電話アプリで用いられるBREW言語で、グラフィック的にはざっくりとPS1〜2レベルといったところでしょうか。ZeeboのJohn Rizzo氏は講演で「携帯電話アプリ開発からのステップアップに最適」と述べました。

またiPhoneでは、すでに競合相手が多すぎるが、Zeeboではまだライバルが少ないと参加を呼びかけました。一方でQUALCOMMのMike Yuan氏は、Zeeboは今後世界中で爆発的に増加が見込まれる新興市場の中流家庭を焦点に当てていると説明。

これらの家庭でもゲーム機や携帯ゲーム機はないが、テレビと携帯電話はあると述べ、ニッチ市場での成功に自信を見せました。また、ブラジルでの価格は199ドルで、現世代機やPS2との価格の違いも大きくアピールしました。

一方でこれらの地域ではPCオンラインゲーム市場も急成長しています。Zeeboの挑戦が成功するか否かは不明ですが、台風の目になるかもしれません。

【GDC 2009】ゲーム開発者が選ぶ2008年のベストゲームは『Fallout 3』、小島監督が生涯功労賞を受賞

http://www.inside-games.jp/article/2009/03/28/34442.html
GDC3日目の夜、好例の「Game Developer's Choice Awards」(Choice Awards)が開催され、『フォールアウト3』がゲームオブザイヤーを含む二部門を受賞。生涯功労賞には「メタルギア」シリーズの生みの親として著名な、コナミの小島秀夫氏が受賞しました。また併設のIndependent Games Festival(IGF)の最優秀賞には、横スクロールタイプのカジュアルアクション「Blueberry Garden」が輝きました。

Choice Awardsは国際ゲーム開発者協会(IGDA)の会員による投票を下に贈られる賞です。いわば欧米のゲーム開発者のリスペクトを集めた賞という位置づけで、ゲーム版アカデミー賞ともいえ、受賞作にはその時々の欧米のゲーム事情が見て取れます。昨年度は大作『バイオショック』をおさえて、FPSパズルの『ポータル』がゲームオブザイヤーに輝き、欧米ゲームシーンのカジュアルゲームへの流れを感じさせました。

これに対して本年は『リトルビッグプラネット』がベストゲームデザインを含む4部門に輝いたものの、Choice Awardsを制したのは大作RPG『フォールアウト3』で、トレンドの揺れ戻しを感じさせました。一方で国内ゲームスタジオ開発の受賞は、第9回目にして初めてゼロとなりました。『ワンダと巨像』がゲームオブザイヤーを含む5冠に輝いたのが3年前のことで、ゲーム業界のサイクルの速さには、改めて驚かされます。

■受賞作一覧
*タイトル名は日本未発売のものは英語で表記。また海外でのパブリッシャー名のみ表記した。

ベストニューデビュー部門:リトルビッグプラネット(SCE、PS3)

ベストオーディオ部門:Dead Space(EA、PC・PS3・Xbox360)

ベストゲームデザイン部門:リトルビッグプラネット(SCE、PS3)

ベストダウンロードゲーム部門:World of Goo(2D Boy、Wii・PC)

ベスト携帯ゲーム部門:ゴッドオブウォー 落日の悲壮曲(PSP)

ベストシナリオ部門:フォールアウト3(ベセスダ・ソフトワークス、PS3・Xbox360)

ベスト技術部門:リトルビッグプラネット(SCE、PS3)

ベストビジュアルアート部門:プリンスオブペルシャ(UBI、PS3、Xbox360)

イノベーション部門:リトルビッグプラネット(SCE、PS3)

ゲームオブザイヤー部門:フォールアウト3(ベセスダ・ソフトワークス、PS3・Xbox360)

生涯功労賞:小島秀夫(コナミ)

このほか『ロックバンド』シリーズの開発元として有名なHarmonix社の創設者、Alex Rigopulos氏とEran Egozy氏がパイオニア賞を受賞。ゲームコミュニティの拡大に貢献した人物に贈られるアンバサダー賞には、海外のゲームミュージックを多数作曲し、演奏会「ゲームミュージックライブ」の創設にも貢献したTommy Tallarico氏が輝きました。

生涯功労賞を受賞したコナミの小島監督は、こうした賞を受賞すると、たいてい引退すると思われがちだが、まだまだ現役でゲームを作り続けると、受賞のスピーチを力強く行いました。また日本人のクリエイターにしては珍しく、全編英語でスピーチをおこなったり、会場で流されたパロディムービー「Mega64」に出演するなど、海外の開発者の前でサービス精神を遺憾なく発揮していました。

受賞作の傾向についてですが、ファーストパーティタイトルの『リトル〜』を除けば、すべてマルチプラットフォームで開発されており、欧米の大作タイトルのマルチ傾向がよく分かります。また『リトル〜』とダウンロードコンテンツの『World of Goo』を除けば、こってり系の大作ゲームばかり、というのも興味深いところです。

もっとも、昨年度の欧米市場で上位を独占した任天堂タイトルは無冠となりました。同様に、昨年最も話題をさらったウィル・ライト氏の『Spore』と、同じく高いリスペクトを集めるピーター・モリニュー氏の『Fable 2』は、ノミネートのみで、共に無冠に終わりました。『グランドセフトオート4』『メタルギアソリッド4』『Left4Dead』についても同様です。「市場で評価されたゲーム」と「開発者がリスペクトするタイトル」の違いが感じられます。

また国内で大ブレイクした『モンスターハンター』シリーズが皆無というのも、携帯ゲーム機が主流の日本と、据え置き機が主流の欧米というように、ムーブメントの違いを感じさせます。携帯ゲーム部門では他に国内開発の『ファミコンウォーズDS 2』『無限回廊』『パタポン』『すばらしきこのせかい』がノミネートされたのですが、受賞を逃した点も残念でした。このほかIGF、Choice Awardsの双方でノミネートされた『PixelJunk Eden』も、惜しくも受賞を逃しました。

一方でベストオーディオ部門を受賞した『Dead Space』が、残虐描写から国内版の発売が見送られているのは、ハードコアなゲーマーからすれば残念でしょう。またベストダウンロード部門に輝いた『World of Goo』については、Wiiウェアでの発売ということもあり、早急に日本版のリリースが期待されます。これに限らずダウンロード配信ゲームについては、全世界でプレイできるような環境整備が求められるのではないでしょうか。

このほか今年の特徴として、IGFで受賞した作品が、Choice Awardsでノミネートされたり、受賞するという流れが明確になってきたことが上げられます。実はこの背後には、ゲームのプロトタイプをプレゼンするGDCの人気セッション「実験的ゲームプレイ」があり、GDCでプレゼンしてIGFで受賞し、商業配信される流れが明確になりました。今年Choice Awardsで受賞した『World of Goo』は、昨年のIGFで受賞したタイトルですし、昨年度のIGF最優秀賞に輝いた『Crayon Physics Deluxe』は、ハドソンからiPhone向けに移植リリースされています。こうした独立系ゲームディベロッパーの層の厚さと、クリエイティブをビジネスに繋げるシステム作りの巧さが、欧米のゲーム業界の強みだと言えそうです。