業界仕組みネタ2/GDC2010

Last-modified: 2010-10-07 (木) 21:37:34

【GDC2010】世界最大のゲーム開発者向けカンファレンス、本日より開幕

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/10/40881.html
世界最大のゲーム開発者向けカンファレンス、Game Developers Conference 2010が本日より米国サンフランシスコのモスコーニ・センターで開幕しました。

初日となる9日(火曜)はサミット、チュートリアルデイで、専門分野に特化したセッションが組まれています。注目を集めるソーシャル&オンラインゲームサミット、iPhoneゲームサミット、GDCモバイルなどです。インサイドとGameBusiness.jpではサンフランシスコの会場からセッションの模様をどんどんお届けする予定です。

日本は寒い日々が続いていましたがサンフランシスコの日差しはまぶしく、気温も多少暖かめ。過ごしやすい気温です。初日ですが、既に多くの来場者が集まり熱気を帯びています。続報をお楽しみに。

【GDC2010】脚光を集めるゲームエンジン「Unity」・・・コンセプトから最も稼ぐアプリまでの最短距離

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/10/40890.html
世界には多くのゲームエンジンが存在しますが、その中でも今熱い視線が注がれているのが「Unity」です。デンマーク発の「Unity」はiPhone向けゲームエンジンとして脚光を集め、そのライセンス体系の平易さも手伝って多くの採用実績を重ねています。

Game Developers Conference 2010初日の火曜日、今年からラインナップされた「iPhone Games Summit」でUnity TechnologiesのTim Higgins氏が「Fastest Path from Concept to Top Paid」(コンセプトから最も稼ぐアプリまでの最短距離)と題したセッションを行いました。

Higgins氏は同社のプロダクトエヴァンジェリスト。製品を広く広めるのが仕事です。Unity入社前はマクロメディア(後にAdobo)に在籍しました。自身は大のゲームジャンキーであり、プログラマーとして経験を積んできたそうです。Unityは現在本社をサンフランシスコに置きますが、Higgins氏は5人目の従業員で、北米では最初の従業員だったそうです。

Unity Technologiesの創業は僅か4年前ですが、現在では60名余りのスタッフを抱えます。誰もがゲームを、あらゆるプラットフォームに向けて開発できる環境を構築する、というコンセプトを掲げ、ベンチャーキャピタルからの投資も受け、今後も積極的な展開をしていくとしました。

「Unity」はマルチプラットフォーム対応のインタラクティブコンテンツ開発ツールです。その使用は直感的に可能で、様々なアセットを組み合わせていくだけでもゲームが開発できるような仕組みになっています。特にライブプレビューの機能では、開発環境で変更を加えたものが、リアルタイムに実機で反映し、開発効率を大幅に向上させます。対応プラットフォームiPhone、Wii、Xbox360、PCに加えて、昨日の発表にもあるように、新たにPS3、iPad、Androidが追加されています。また、ブラウザにUnity Web Playerをインストールする必要がありますが、ブラウザ向けのコンテンツも開発可能です。これらは同じソースで、出力先を変えるだけでプラットフォームを超えた開発ができます。

特にiPhone向けの開発では多くの実績があり、これまでに500タイトル以上がApp Storeで公開されているそうです。Higgins氏は「Unity iPhoneはApp Stroreで稼ぐための最短距離である」と述べていました。会場ではデモが行われ、PC上で開発環境とプレビューが同期する様子や、「Unity Remote」を使って、iPhoneの実機にワイヤレスでデータを転送し、こちらもリアルタイムに同期する様子が披露されました。

最後にHiggins氏はサクセスストーリーとして幾つかのゲームを挙げました。『Way of the Warrior』はプログラマ1人とアーティスト2人とオーディオ1人で開発されたゲームですが、2人はWindowsで、2人はMacで制作したそうです。通常iPhone向けゲーム開発はMacでしか行えませんが、「Unity」があればこのような手法も可能になります。また、『Zombieville USA』はなんと1人がたった5週間で開発したゲームですが、2009年の1年間、ずっとApp Storeの上位100位に入っていた唯一のゲームだったそうです。

iPadにも初日から対応するという「Unity」。夏にはバージョン3.0がリリースされる予定だということで、今年は更に注目を集めるゲームエンジンになりそうです。

【GDC2010】急成長するソーシャルゲームをうまくマネタイズするには? RockYouが語る

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/10/40894.html
世界的に急成長するソーシャルゲーム。それは初日の段階で多くの来場者に印象付けられたでしょう。「Social & Online Games Summit」を始めとしてソーシャルゲーム関連は多くのトラックが予定され、そしてどれも来場者で溢れかえっています。

ソーシャルゲームデベロッパーの中でも大手に位置づけられるRockYouのLisa Goslin氏は「Monetization and Business Models for Social Games」(ソーシャルゲームのマネタイズとビジネスモデル)と題して講演を行いました。Chief Revenue Officerという変わった肩書きのGoslin氏の講演は後発のデベロッパーにとって非常に有益なもので、会場は立ち見も出る盛況ぶりでした。

RockYouは4年前に設立。FacebookやMySpaceなどのSNS向けにソーシャルゲームを展開してきました。AppData.comによればFacebookでのユーザー数は約9000万人で、Zyngaに続いて第2位です。

まず最初はソーシャルゲームのおさらいです。Goslin氏はソーシャルゲームがここまで成功した理由について、SNSの巨大なユーザーベース、マネタイズ手段を用意した上で世界のユーザーにリーチしたこと、Wiiのようにノンゲーマーをカジュアルゲーマーに変えることができたことを挙げました。

次にソーシャルゲームを図る指標についてです。どのようなゲームが成功と言えるのでしょうか。Goslin氏はDAU(デイリーアクティブユーザー)こそ全てだと言います。そしてDAUを増加させるには、Network Effect(ソーシャル要素)、Engagement(楽しませる)、Arbitrage(マネタイズ)の3要素が循環的に生み出せているかが重要だと述べます。それぞれを詳しく見ていきます。

Network Effectはソーシャル性、もしくはネットワーク効果と言えばいいでしょうか、SNSならではの友人関係によってユーザーを引き付ける効果です。ソーシャルゲームではユーザーの行動をフィードするアクティビティフィードや他のユーザーへのリクエストを発信することが可能で、特にリクエストは既に登録しているユーザーの7割がクリックするそうです。他のユーザーの行動を見せたり、巻き込むことで休眠ユーザーをアクティブユーザーにする事が肝要です。

Engagement、アクティブなユーザーを楽しませる仕掛けとしてはマメなアップデートが挙げられます。RockYouでは、基本的にゲームは毎週アップデートを行いますが、5週間がセット構成になっていて、その内容は、3つの新コンテンツ(アイテムなど)、1つのバイラルイベント、1つのゲームプレイのアップデートというものになっているそうです。試行錯誤の結果、これが最も効果的なサイクルだということです。

またEngagementを継続させるためにソーシャルゲームに導入すべき要素としては、収集、デコレーション(アバターなど)、共同作業、冒険、お世話、競争の6つが挙げられていました。

さて、マネタイズです。RockYouの場合、DAUのうち課金するのは1~3%のユーザーに過ぎないそうです。しかしながら、一度課金したユーザーが二度目の課金をする確率は40~50%と高いそうで、いかに最初に課金してもらうかが鍵となりそうです。決済手段としてはPayPalが60%、クレジットカードが25%、オファー広告によるものが25%となっているそうです。

課金のキーとなる要素はドラマ、友人関係、競争、収集、ギャンブル、個人の6つです。これらを上手く盛り込めば、決済金額を上げられそうです。

また指標としては1000人のDAU当たりの課金決済額を使っているようです。最もマネタイズが上手くいっているゲームでは100ドル以上になりますが、平均的には10~30ドル程度で、30ドルを超えれば上手く軌道に乗っていると判断しているようです。

またGoslin氏は次世代のマネタイズ手法として一般的な広告も増加していくのではないかという見方を示しました。ユーザーはレベルアップしたいとは思いますが、それでお金を払おうというユーザーは前述の通り3%に過ぎないからです。ソーシャルゲームは既に多くのユーザーがおり、ブランド広告を打つ場としても有益になりつつあります。さらに広告主にとって安全かつクリーンな場にしていくことで広告モデルも確立することができそうです。

【GDC2010】DSiで現実拡張を楽しむ『GHOSTWIRE』メイキング

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/11/40911.html
水曜日の午前10時より、2010年にDSi専用タイトルとして発売が予定されている『GHOSTWIRE』に関する講演「GHOSTWIRE: Creating Augmented Reality Experiences on Nintendo DSi(DSi向け拡張現実ゲームの開発に関して)」が行われました。スウェーデンで携帯電話向けのアプリケーションを作っている開発会社、A Different Game のCEO兼エグゼクティブ・プロデューサー、Tom Soderlund 氏によるセッションで、通常の1時間枠ではなく、限られた議題をシンプルに説明する25分枠での講演でした。

『GHOSTWIRE』は元はノキアの携帯向けに作られたアプリケーションで、携帯を「幽霊探知機」として使用します。実際に自分のいる部屋を携帯のカメラを通して見回すと幽霊が現れるので彼らとコミュニケートし、なぜ現世に留まっているかを聞き出し、その原因を見つけ出し、問題を解決して彼らを昇天(成仏?)させてあげるというゲームです。

既に携帯では大ヒット、2008年の Nokia Game Summit でも1位に選ばれていますが、DSiの機能がこのゲームに向いていることから今回の移植を決意したのだとか。

ゲームを作る上での大きなチャレンジとして、 カメラからの映像をリアルタイムに処理して本体の動きをトラッキングしますが、通常のARソフトのようにマーカーを使わないためトラッキングの精度を高めるための様々な試行錯誤があったそうです。実際には、フレーム内の映像の中央あたりをタイルパターンとして持ち、動きがあった際にそのパターンを探し、カメラがどの方向に動いたかを検知します。この際、タイルパターンの解像度を必要最低限のレベルまで落とすことで、処理速度の向上と精度のバランスを保ったそうです。

ゲームデザインに関しての課題は以下の3つ:

(1) Suspension of disbelief(ユーザーに不信感を与えない、リアリティを保てる題材を選ぶ)
「幽霊」という題材はこの課題を十分にクリアしてると考えています。最初のチュートリアルでユーザーに近くに物の無い空間を選んでもらうようにしていますが、仮にオブジェクトがあってそれを通り抜けてしまっても幽霊であれば違和感はありません。

(2) Robustness(モーションの精度を保つには)
モーショントラッキングのエラーを回避するために、幽霊の自由度をプログラム内である程度制限し、ある程度の距離と上下の移動幅の中に必ず収まるようにしています。これにより、難易度により多少の差はあるものの、ユーザーは必ず幽霊を見つけられます。

(3) Longevity(長く遊んでもらうには)
Augmented Reality(拡張現実)は確かに大きなフックですが、それだけではプレイヤーがすぐに飽きてしまいます。そのため、ARはあくまでもパズル、収集、探索、仕掛け、ミニゲームなどといったゲームを構成する要素の1つとして扱っています。

興味のある方は、是非彼らのウェブサイト、www.ghostwiregame.com にアクセスしてみて下さい。また、ツイッターでも情報をアップデートしているそうです。@ghostwiregame

通常の1時間セッションを聞き慣れていると「25-minute session」はどうしても説明不足に感じてしまう部分もありますが、逆に今まで「話したい事はあるが1時間も間が持たない」と思っていた開発者には良いニュースかもしれません。来年以降のエントリーが増える事を期待しましょう。

【GDC2010】クラウドでゲーム機は不要になる・・・OnLiveが6月正式サービスイン

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/11/40926.html
PCの世界ではクラウド(インターネットの向こうのデータセンター)にアプリケーションやデータを置くことによって、いつでもどこでもアクセスでき、かつアクセス元の性能には左右されないというサービスが増えてきました。例えばGmailなどもそうです。メールソフトやデータはクラウド側にあり、手元のPCではアクセスして表示するだけです。そんなクラウドサービスがゲームにも登場してきそうです。

OnLiveはゲームをクラウド化することによって、ネットワークさえ備えていれば、あらゆる環境で、ハードの性能に左右されずに、ゲームを楽しむ事を実現しようという意欲的なスタートアップです。OnLiveのSteve Perlman社長兼CEOがGamesBeat@GDCのキーノートとして登壇しました。

GamesBeat@GDCは、ベンチャー情報サイトVentureBeatが協力して今年で2回目の開催となる、ゲームビジネスに特化したサミットです。「Xboxの蹉跌」の著者としても知られるDean Takahashi氏がコーディネーターとなって、今年は「既存のゲームビジネスを破壊する破壊的な取り組みをしているスピーカーを集めた」ということです。

まずPerlman氏は既存のコンソールゲームビジネスについて、5年というコンソールサイクルが壊れそうで、既に4年が経過しているのに次が見えない。物理的なメディアを使ったビジネスは中古や海賊版の影響が大きい。ソフト販売は低迷し、特にPCゲームの収益性が激減、PS3やXbox360のタイトルも収益を上げるのが困難な状況になっていると指摘。非常に厳しい状況にあるとしました。

そしてあらゆるメディアが「Now」(いま)のメディアになりつつあるとして、何でも、何時でも、何処でも、すぐに届けられるものが求められているとしました(パッケージを売るようなビジネスは論外で、ダウンロードして後で遊ぶというビジネスも時代遅れというわけです)。最初に「Now」になったのは音楽で、続いて映像/映画がそうなりつつあり、そしてゲームは今まさに「Now」に向かって走り出したと宣言します。

ゲームを「Now」のメディアにする「OnLive」はクラウドサービスの一つで、最新のハイエンドゲームがラインナップされ、どのタイトルも即時に遊べる、かつデバイスは問わず(TV、PC、Mac、スマートフォン、タブレットPC・・・)その性能も問いません。また、5年に一度ハードを買い替える必要もありません。

「OnLive」の外観は普通のゲーム機に見えますが、中身は大きく異なります。中には立派なCPUもGPUも積まれていません。ユーザーからコントローラー操作があると、その情報をクラウドに送信し、クラウドではその情報を処理し、ゲーム画面(映像)を生成してプレイヤーの手元のデバイスに返します。ユーザーの手元で発生しているのは、操作情報の送信と映像の受信だけです。デバイスの性能は関係なくなり、ネットワーク帯域次第で、いくらでも精緻な映像が実現できます。

インターネットの通信速度が課題になってきますが、「OnLive」では独自の映像圧縮技術を採用して、負荷を減らしているほか、全米5か所にデータセンターを設置することで、どの場所からのアクセスも容易になっています。回線速度はSD画質のテレビであれば1.5Mbps(米国のユーザーの71%以上が1.5Mbps以上の回線を保有)、HD画質の場合は5Mbps(同23%)あれば快適に遊ぶ事が出来るそうです。

実際に会場ではデモが行われました。『Assassin's Creed II』や『Bioshock』『Borderlands』など最新のゲームがズラリとラインナップされ、どれもハードディスクにインストールされているかのように一瞬でアクセス可能なようでした。プロフィールやフレンド機能もあり、SNS的な要素も実装されていました。友達が遊んでいるゲームの様子もチェックできるようです。「OnLive」のブラウザ画面やゲームは非常に快適に動いていました。また、iPhone版も用意されていて、筆者の手元でも、そのままの画質で『Unreal Tornament』が動いているのが確認できました。これは驚愕と言ってもいいくらいです。

「OnLive」では通常のパッケージよりも大きなマージンを参加パブリッシャーに支払う事を約束しています。また、他のプラットフォームからの移植も非常に容易になっているそうです。現在、EA、ユービーアイソフト、テイク2、ワーナーブラザーズ、アイドス、アタリ、THQ、コードマスターズなど主要ゲームメーカーが参加しています。

そして気になるサービス開始日は6月17日(米国)に決定しました。価格体系は基本料金が14.95ドル/月という以外は今後発表の予定だとのこと。個別タイトルの価格がどの程度に設定されるかが気になるところです。

家庭用ゲーム機という長年続いてきた形を壊すかもしれない破壊的な新サービス「OnLive」。価格体系やラインナップ、実際にどのくらいの回線速度が実現されるのかなど、まだ気になる面は沢山ありますが、実際にサービスインできるところまで漕ぎつけたというのは素直に称賛しても構わないでしょう。正直なところ、最初に耳にした時にはまさか実現可能には思えませんでした。残念ながらパートナーの中に日系メーカーは一社もなく(アイドスはスクウェア・エニックス傘下ですが)、メジャーパブリッシャーやテクノロジーベンダーがこぞって参加してこのようなサービスの実現に向けて走れる、その風土は羨ましくもありました。

【GDC2010】ソーシャルゲームは永遠のライブサービス~Playdom社

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/11/40938.html
『Mobsters』『Social City』『Tiki Farm』『Wild Ones』などのソーシャルゲームを提供するPlaydomは、「Social & Online Games Summit」にて「Games as a Live Service: A 360-Degree Look at the Art and Science of Managing Social Games」(ライブサービスとしてのゲーム: 360゜から見たソーシャルゲーム運営)と題した講演を行いました。

PlaydomはMySpaceやFacebookなどにソーシャルゲームを提供するゲームメーカーで、MySpaceでのナンバーワンゲーム『Mobsters』など多数のゲームを展開しています。月間のアクティブユーザーは2000万人を超えるとしています。世界の従業員は約300名です。

■自ら広がるゲームこそソーシャルゲームの真髄

最初に登壇したDavid Stewart氏は「バイラリティ」について話してくれました。バイラリティとは、ユーザーがゲームを広げたくなるメカニックを指し、スパムと判断されないように、これを上手く使うことができればユーザー数が自ら広がっていきます。

同氏はバイラルが広がるかについて、Kという指標をPlaydomでは用いていると紹介しました。KはInfection RateとConversion Rateをかけあわせた数値です。Infection Rateはこの場合、1人のユーザーが何人他のユーザーを招待するかという数字と考えれば良いでしょう。Conversion Rateは実際に招待で入会してくれる率です。

例えば一人のユーザーが4人誘い、10%の確率で成功すると仮定すると、Kは0.4となります。この数字はそのまま1人のユーザーが何人のユーザーを集めるかという数字になります。誘われて入会したユーザーはまた別のユーザーを誘っていきますから、1人のユーザーが潜在的に集める会員数は、1×0.4×0.4×0.4×0.4×・・・となります。ひとまず4人目まで計算する0.67人ということになります。

招待が成功する確率が一定だとすると、バイラルで広がるかは、1人のユーザーが何人を誘うかにかかってきます。例えば、4人を誘う場合は0.4ですが、これが8人を誘うという風になると、Kは0.8です。Kが0.8になると1人のユーザーは4世代目までで4~5人の会員を集めることになります。Kによって獲得できる想定会員は比例関数的に伸びていきます。シンプルに言えば、Infection Rateの向上がソーシャルゲームの会員獲得には鍵になります。

もちろん理論だけでは会員は獲得できません。Kを伸ばすためには、(1)ユーザーに共有を促す (2)ゲームプレイの中にバイラル/ソーシャルの要素を入れておく (3)アバターはバイラルにとって良い (4)コンテンツは常に最適化する (5)既に上手くいっている部分で勝負する という5つを同氏は挙げました。指標とアドバイスを参考に良いゲームを!

■ゲームを進化させるのはユーザー

続いてはMarianne Borenstein氏がゲームを進化させる方法について語りました。同氏が提唱するのはQA(品質改善)にユーザーを上手く活用しようというもの。常にベータを続け、ユーザーの動向を見図りながら、新しい要素を入れるか、現状の改善を進めるかを選択していこうということです。

満足度を向上させてくれるのもユーザーです。Playdomではゲーム内だけでなく、Facebookのファンページ、外部のブログ、フォーラム、そしてサポート窓口をコミュニティとして位置付け、ユーザー同士の交流を活発化させ、ゲームの外でもゲームの世界への満足度を引き上げようと努力しているようです。

また、PlaydomのソーシャルゲームではUGC(ユーザー生成コンテンツ)も大きな役割を果たしているそうです。『Sonority Life』のクリスマスと新年のアイテム販売では、Playdomの制作したアイテムの販売が52.5%、ユーザーの制作したアイテムが47.5%とほぼ拮抗したセールスを記録したそうです。

このようにユーザーを活用することでソーシャルゲームの幅も広げていけそうです。

■ゲームのことはユーザーに聞け・・・ばいいの?

最後に登壇したのはクリエイティブディレクターのDavid Rohrl氏。長年コンソールゲームに携わってきたベテランのゲームデザイナーは、既存のゲームとは異なるソーシャルゲームの事はユーザーに聞けばいいのではないかと提唱します。

ただし、聞くといっても直接の言葉ではないかもしれません。Rohrl氏は、ユーザーが何をしているかは常に耳を傾ける必要があると言います。直接的な言葉にはならないユーザーの動向やログデータです。データは嘘をつきません。

一方で、フォーラムなどに寄せられるユーザーの言葉にも時々耳を傾けるのが良いのではないかとRohrl氏は言います。ユーザーは、コアユーザー向けに改善する方法、戦略的にユーザーにチャレンジを与えるべきポイント、既にある機能のマイナーアップデートのアイデア、複雑さやリッチさを増す方法、については詳しいと同氏は指摘します。対して、ゲームのビジョンを定義する、幅広い市場にリーチする方法、ゲームをもっとカジュアルにする方法、もっと遊びやすくエレガントにする方法、については全く詳しくないので、それを踏まえた上で意見はチョイスする必要があるということです。

最後にRohrl氏は、ソーシャルゲームはプラットフォーマーの意向でルールが常に変わる可能性があり、提供される機能も常にアップデートしていきます。ソーシャルゲームメーカーは常にその変化の最前線に立たなくてはなりません。それはゴールのあるマラソンではなく、ハムスターの遊び道具のようです。ゲームはサーバーの中で生きていて、その寿命は(あなた次第で)永遠です。ユーザーは新しい要素やゲームプレイを待ち望んでいて、増えるバグにも対処する必要があります。ソーシャルゲームに注ぐべき努力の80%以上はロンチ後のものなのです。

【GDC2010】神は細部に宿る・・・グラスホッパー山岡氏が語るゲームと音楽

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/12/40967.html
『サイレントヒル』シリーズで知られる作曲家・山岡晃氏がグラスホッパー・マニファクチュアに移籍したというのは今年初めの大きなニュースでした。その山岡氏がGDC3日目に登壇し「As Long as the Audio is Fun, the Game will be too.」(音楽が楽しければゲームも楽しい)と題した講演を行いました。尚、本講演はオーディオトラックのキーノートとして行われ、同時通訳が入りました。

山岡氏が最初に始めたのは日本という国の紹介でした。日本からサンフランシスコまでは5131マイル。実に6852個の島で構成される国です。冗談を織り交ぜながら紹介する山岡氏は、諸外国に知られる日本のイメージは、フジヤマ、ゲイシャ、サムライであるが、実はそこに日本人の本質が秘められていると指摘します。3者に共通するのは派手な見栄えと、それに相対するような繊細さを持ち合わせているということです。日本とは細かいディティールに気を使った文化で、それはゲームの音楽作りにも非常に重要な要素になると山岡氏は言います。

山岡氏は元々作曲家としてゲームのキャリアを始めましたが、後にゲーム全体のプロデュースを行う立場になりました。しかし、最初から作曲家志望であったわけではありません。20年前くらいにコンピューターゲームの楽しさを知り、4000色出るというパソコンを買ってCGの世界を志そうとしていたそうです。しかし、そのパソコンの中に音楽作曲ソフトが入っていたことで運命が変わります。ソフトと言っても、現代のそれと比べると非常に原始的で、16進数を書きこんでいって音を鳴らすような代物だったそうですが、山岡氏は一気に魅力されのめり込んでいったそうです。翻って現代は環境が向上し、誰でもある程度のクリエイティブを実現できるようになってきました。そんな中、プロとはどうあるべきか、講演では語られます。

講演内容を一言で言えば「神は細部に宿る」です。サウンドは人を動かす力がありますが、それは単に優れたメロディラインのみが実現するわけではありません。それは何か、沢山のヒントがありました。講演からは長年の経験から培った自信と、それを裏打ちする理論が感じられました。

(1)感情を刺激するサウンド
人間の機能の中で視覚は客観的な情報を脳に伝えます。色や形、構成、位置関係、これらは脚色される事は余りありません。一方で音はより感情的な情報としてボリューム、方向感、質感を伝えます。

(2)人間の特性を捉える
人間は自身を非常に理論的な存在と捉えますが、特性がもちろんあります。山岡氏が挙げたのは、「左周りに比べて右回りを不安に感じる」「高低差を行き来するのを不安に感じる」「共同作業と言われると個々人は手を抜く」「物を食べながら説得すると受け入れられやすい」「重い物を持たせて喋ると大事な事だと思ってしまう」といったものです。ホラーゲームを作ってきた山岡氏は、単にグロテスクな絵を出すのではなく、人間の特性に注目して表現を行うことを心がけていたようです。これは音楽にも同じ事が言えます。

(3)ミクロな機微
これも人間の特性になりますが、ゲームで足音などを表現する場合は、視覚の表現から3フレーム程度遅らせるとマッチするように人間は感じるそうです。逆に3フレーム早くすると緊張感や不安感を演出できるそうです。こうした僅かな差でも人間は感情を揺さぶられるということです。

(4)耳の特性
印象に残りやすい音の高さもあります。人間の可聴範囲は、低音に弱く、ある程度上げないと聞こえません。高くなっていくと聴きやすくなり、ちょっと高いと思う4000hz付近の音が最も聴きやすく、印象に残るそうです。効果的なポイントで使用すると良さそうです。

(5)対比に印象付けられる
カラーコーディネートでは白と黒のような対比は、色をより鮮明を見せます。音楽でもそれは同じで、雑音の中で鳴るピアノの旋律などは非常に印象的な音になります。また、山岡氏は無音の効果的な使い方を考えると良いとアドバイスしてくれました。例えば、プレイヤーが音楽を欲しがるような場面で敢えて無音を使えば、そこは非常に印象深いシーンになりそうです。

最後に山岡氏はギターで生演奏を披露して締めました。

山岡氏は、ハード性能の向上でゲームでは何でも表現できるようになってきたと指摘。そうした中で、ゲイシャやサムライに通じるようなディティールにこだわった作り方で勝負していきたいと語りました。山岡氏が講演の中で示したのは幾つかのTipsに過ぎませんが、経験と理論に裏打ちされた「神は細部に宿る」を実践した音作りは後進の作曲家にとって大きな刺激になったのではないでしょうか。グラスホッパーではまず音楽を手掛けていくとのこと。楽しみですね。

【GDC2010】巨大なオープンワールドゲームを少数精鋭チームで作る方法・・・『inFAMOUS』開発元

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/13/40974.html
木曜日の午前9時より、『怪盗スライ・クーパー』シリーズや『inFAMOUS』の開発を手がけた Sucker Punch Productions のメインプランナー、Nate Fox氏による講演「Building an open-world game without hiring an army(オープンワールドのマップを、軍隊(=大量の人員)を使わずに作る方法)」が行われました。

PS2用タイトル「怪盗スライ・クーパー」の時は建物の中が舞台の中心だったため、限られたデザイナーでも何とかマップを作れていましたが、「インファマス」ではプラットホームがPS3になり、舞台は開けた都市空間、さらにプレイヤーの自由度が格段に高まったため、通常の手法では莫大なコストが発生してしまいます。かと言って、舞台を小さくしてしまうと見た目やゲーム性にネガティブな影響を与えてしまいます。

GTA3をプレイした時に感じた、制限を感じさせない空間と体験、マップのどこに行っても見た目のクオリティを一定以上に保ち、さらに置かれたオブジェクトとのインタラクティブ性も持たせ、プレイヤーの行動に制限を設けず、さらにマップのあちこちに「発見」を隠しておき、ディズニーランドのように場所によって見た目や雰囲気を変化させる、PS3でこれを実現するのに彼らが採ったアプローチ、それは「ヘックス型のタイルを何種類も作って組み合わせる」方法です。

かつてボードゲームのマップを作る時に使われた方法を参考にしたそうです。

タイルの縁に一定の規則性を持たせ、道路、建物、線路、川、海、坂(高さ)などといった属性を揃えて組み合わせることで、現実感のある広大な都市空間をローコストで作ることができました。また、タイルを回転させることで、同じものを使いまわしていると気づかないほど複雑な地形を作ることも可能です。

そして、そこで削減されたコストをボスのいるエリアなど再利用の利かない特徴的なランドマーク(目印となる建物、巨大電光掲示板、)に投入することで、全体としてメリハリのあるマップになる、というわけです。また、デザイナーも規格品ばかりでなく凝ったオブジェクトが作りたいため、この手法で彼らのモチベーションを高く維持できるとの事。

街中の建物の基本構造もスタンプの様に使いまわします。そもそも都市というものは繰り返しの地形が多いため、そのようにしてもあまり違和感が無いそうです。

建物も、「外枠」をコンテナを並べるように共通の企画にし、看板や店先のテクスチャのみ変化させることでローコストでも十分なバリエーションを持たせられます。

実はゲーム中に登場する車も基本は2種類、タクシーにするならテクスチャと屋根のサインを加える、などの簡単な方法でたくさんの種類に見せています。

格子状の交差点は見た目が似てしまうため迷子になりやすく、また遠くまで描画する必要がありますが、ヘックスタイルの場合交差点がY字型になるため風景のバリエーションを増やしやすく、またカメラが引っかかりづらくなる、などのメリットもあります。

しかし、それでも都市部ばかりが続いてしまうとマップが単調になってしまうので、公園、破壊されたエリア、海岸や埠頭などといった「有機的な」地形を作ったり、またプレイヤーの興味を維持するために最初からアクセスできないエリアを作っておく、などの工夫も必要になります。公園はモデリング的にはそれほど大変なものではなく、ベンチや木は使いまわしが可能です。壊された建物も、窓のテクスチャを割れたものにし、コンテナのような基本構造の上に瓦礫を乗せればそれらしく見せることができます。

プレイヤーは本当に広いマップが欲しいのではなく、広く「感じられる」マップが欲しいのだ、ということを理解する必要があります。道路の先に海岸線が見えてしまうと島のサイズが感じられてしまうのであれば、道路の先に埠頭と倉庫を配置して視線をブロックします。

しかし、Fox 氏は一方でこの手法の問題点についても説明しています。

・基本的に都市の交差点は十字型が基本であるため、Y字型の交差点ばかりでは現実味に欠けてしまう
・Y字型の交差点ばかりでもやはりプレイヤーが迷ってしまう
・ヘックスの縁を企画化したために、道路の幅やテクスチャ、建物同士の隙間などがどうしても同じになってしまう
・変わった形の建物が増えてしまう
・この手法が使えるのは都市など人工的な構造であり、自然の風景にはあまり応用が利かない

しかし、それでも今回のこの手法にはメリットの方が遥かに多く、一切作業をアウトソースすることなく、12人の社内デザイナーのみでこのサイズの空間を作り上げることが出来たのは良かった、と結論付けました。

【GDC2010】伝説のゲームデザイナー、シド・メイヤーが語るゲームデザインとは・・・GDC基調講演

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/13/40977.html
金曜日の午前10時より、「Civilization」シリーズなどで知られ、以前 GDC 2008 の Game Developers Choice Awards にて Lifetime Achievement Award(生涯功労賞)を受け取った Sid Meier 氏による基調講演「The Psychology of Game Design (Everything You Know Is Wrong) (心理学的観点からのゲームデザイン(あなたの知っている事は全て間違っている))」が行われました。

今回のGDCではプラットホームホルダーによる基調講演が行われなかったため、氏のキーノートスピーチが最も注目を集めるものとなりました。GDCのイベントディレクターであるMeggan Scavio氏から紹介を受け登壇したMeier氏は会場から大きな拍手を受けて講演を始めます。

まず彼は「ゲームとは心理学的な経験である」とし、彼が歴史をベースとしたゲームを数多く作ってきた理由を、それらを可能な限りリアルにすることが可能だからだ、と説明しました。当初彼は史実に忠実にすることのみにとらわれ、プレイヤーの感情には配慮しなかった、と言います。

しかし、経験を積んでいく中で彼はプレイヤーの心理こそが最も重要であることに気づき、その分析を始めます。そしてたどり着いたキーワードが「egomania、paranoia、delusions(自己中心主義、偏執病、妄想)」です。「Civilization」の目的である「最強の文明をつくり時代の覇者となれ」はまさに自己中心主義そのものではありませんか、と会場を爆笑させました。

続いてのキーワードが「Winner's Paradox(勝者のパラドックス)」です。現実ではいつも勝てるわけではなく、勝者はただ1人です。しかしゲームの世界では全てのプレイヤーが勝者になれる可能性があり、それにクレームをつける人もいません。映画や小説もしかり、ランボーは常に勝ち、シャーロック・ホームズは必ず事件を解決します。プレイヤーは常に満足、達成感を求めており、現在のMeier氏のゲームデザインはそれに報いるものになっているそうです。

次のキーワードは「Reward and Punishment(報酬と罰)」、プレイヤーはほめられる限りはそれを素直に受け取ります。「ホントにほめられるような事をしたの?」とわざわざ内容を確認するプレイヤーは多くありません。しかし、プレイヤーがミスした場合、なぜそうなったのかがプレイヤーに明確になっている必要があります。次に同じミスをしないためです。プレイヤーが段階的に学習できるような構造になっていること、それがまた遊びたくなる欲求(リプレイ性)につながります。この仕組みが非常に大切だ、とMeier氏。

次に、彼はゲームの最初の15分は報酬を与え続けるべき、少なくとも15分間はプレイヤーが迷うことなく楽しんでゲームを遊ばせるようにし、不安を感じさせないようにするべきだ、と説明します。しかしそれは難易度を下げることではなく、カジュアルゲーマーもコアゲーマーも楽しめるようにするには異なる難易度設定が必要です。

続いてのキーワードが「Unholy Alliance(不条理な同盟)」です(商標登録しておこうか、とキーワードに「TM」がくっつき、会場を笑わせます)。かつてフライトシミュレーターはグラフィックもシンプルで操作も簡単でした。しかし、ハードが進歩するにつれグラフィックはリアルに、そして操作系もリアリティを求めるためにどんどん複雑になっていき、結果として脱落するユーザーが続出する事態になってしまいました。製作者はプレイヤーを常に喜ばせておく必要がありますが、それはリアリティの追求ではありません。映画の中で主人公が超人的な活躍をしても、かつてゲームに16色しか使えなかった時代にもユーザーは不満を抱いたりはしませんでした。「suspension of disbelief(ユーザーに不信感を持たせない)」が重要なのです。

次のキーワード、「Moral Clarity(明瞭な道徳性、意志)」。「Civilization Revolution」では様々なリーダーがいますが、彼らはあと都市が1つしか無い瀕死の状態でも極めてアグレッシブな態度を示します。開発中、テストプレイヤー達は「これはおかしい、この状態でそんな強気でいられるわけがない」と言ってきたそうです。しかし、逆にリーダーに命乞いをさせてみると、今度は「そんな相手を攻め落としても達成感が無い」と言ったのだそうです。

続いてのキーワードは「Mutually Assured Destruction (MAD) (相互を認識した破壊)」。Meier氏は、「Cold War」の開発チームとプレイヤーの関係性がとても面白かった、と言います。そのどちらもがゲームバランスを完全に破綻させることが出来るから、だそうです。その他にも、MicroProse 社にて途中でキャンセルになってしまったアドベンチャーゲームを例として挙げました。そのゲームではプレイヤーが苦労して探し出した王様が実は敵で、その後ゲームの振り出しに戻されてしまう、というプロットを採用、開発チームはとても気に入っていたのですが、ではプレイヤーがこれを気に入るかというと間違いなく怒り出すだろう、と開発を中止させたそうです。

ここまで説明した事例、そして「Civilization Revolution」の戦闘システムを開発しているとき、プレイヤーというものがいかにわがままなものなのかに気が付いた、とMeier氏は語ります。

「Civilization Revolution」では戦闘前に勝利確率が表示されるのですが、例えば確率3対1の戦闘で負けるとプレイヤーは怒り出します。こちらが「確率なので負ける場合がある」と説明しても聞く耳をもってくれません。しかし、逆の状況になった時はそうではありません。確率1対3の戦闘に勝利した場合に不条理に感じるか、と聞いても、「正しい戦略があったから勝てたのだ」などと自分を正当化します。また、2人対1人の戦闘で負けてもそれほど怒らないのに、20人対10人の戦闘で負けるとたいていのプレイヤーが怒るそうです。数学的にはそこに違いは無いのですが。

このように、プレイヤー心理というものは論理や数学とは異なるものですが、それでもプレイヤーに不信感を抱かせないようにするためのさらなる調整を行うことが重要だ、と説明しました。

続いて、彼は今までの経歴の中でのミスについて語りました。

・初代の「Civilization」はリアルタイム式だったので、プレイヤーはプレイヤーというより観察者となってしまいました。そして、ターン制になってからはその問題は解決され、ゲームのコンセプトである「プレイヤーこそが王である」が実現できました。

・また、「Civilization」シリーズの中で「Rise and Fall(落としてから持ち上げる)」によりプレイヤーがより大きい達成感が得られると思っていましたがそれは間違いで、多くの場合落ち目になってしまうと復活する前に脱落してしまいました。

・あるいは、プレイヤーはゲームをセーブしながら遊ぶので、仮に失敗するとすぐロードしてやり直してしまいます。なので、落ち目を見ないまま進んでしまうのです。

・ゲーム中の技術革新についても、かつてはランダム性を持たせていたので、単に時間を費やせば火薬を開発できる、というようなシンプルなものではありませんでした。また、シムシティのような天災も検討されていました。しかし、これらはプレイヤーを被害妄想に駆り立ててしまいます。

・「恐竜ゲーム」は3つのバージョンを作ろうと思っていました。カードゲーム、RTS、そして「Civilization」タイプです。

・「Civilization Network」もミスだった、と認めています - まだリリースされていないにも関わらず。

続いて、「AAA Games on a shoestring(ローコストでできる高品質ゲーム)」という議題の説明に入ります。

・プレイヤーの想像力に委ねる:例えば「Civilization Revolution」の途中で「ザンジバルの王から12匹の踊る熊が贈られてきた」というメッセージが出てきますが、実際にこの踊る熊をモデリングする必要はありません。プレイヤーがすでに贈り物を贈られる立場にいるなら、実在しないものであってもその光景を想像できるのです。いくらゲーム内の描写が細かくなってもユーザーの想像力にはかなわないのです。

・プレイヤーの既に持っている知識に頼る:「Pirates!」では悪役にカールした黒い口ひげを付けていたので、悪役だとすぐに認識されます。

・AIの役割:AIがゲームの中に存在してもかまいませんが、人間と同じように扱われるべきではありません。AIのプログラムには大きなコストが必要で、成功すれば驚くような成果が現れますが、チューニングは極めて困難です。あまり賢くなければプレイヤーにバカにされてしまいますし、逆に賢すぎればプレイヤーは「ずるい」と感じてしまいます。ある程度の賢さにとどめ、プレイヤーが何度か対峙した後に勝つことで達成感を与えられるような存在である必要があります。

これらのポイントを押さえることで、開発コストを削減することができるでしょう。

続いての議題は「Protecting the Player(プレイヤーを守ること)」です。何からでしょうか? Meier氏は、プレイヤーをプレイヤー自身から守ることが重要だ、と説明します。

シミュレーションゲームでは、プレイヤーが戦闘前にセーブをし、戦闘に失敗するとロードして同じ部分を繰り返す、というケースを良く耳にします。しかしこれはとても非生産的な作業であり、時間の浪費です。そのため「Civilization Revolution」では戦闘前に結果もセーブされるような仕組みにしたそうです(「Ha ha ha!」と大きく高笑いをし、観客を挑発しました)。プレイ時の戦略そのものに時間をかけて欲しいから、だそうです。

また、例えばキャラクターのカスタム要素を豊富に用意するとプレイヤーはしばらく夢中になるかもしれませんが、それは本来開発サイドの仕事ではないか、ある程度以上の自由度は不要なのでは、と指摘します。

さらに、チートについても同様です。たしかに中世のマップに近代兵器を置くのは楽しいかもしれませんが、それは本来の遊び方ではありません。開発時、チートはトップメニューからすぐにアクセスできたそうですが、Meier氏はプログラマにお願いしてもっとメニューの下の階層に移してもらったそうです。

続いては「Listening to the Player(プレイヤーの声に耳を傾ける)」という議題です。

まずは「本当にユーザーの声に耳を傾けること」、しかし、これは単にユーザーの意見を取り入れる、という意味ではありません。例えばゲームの一部分について改善案が提示された場合、それを反映させてもゲームの他の部分のバランスを崩してしまう場合があります。なぜプレイヤーがそのような不満を持っているのか、その心理的な理由を探し出すことが重要なのだ、ということです。

また、プレイヤーの感情を考慮することも重要です。ゲーム内で同じイベントが起こっても、プレイヤーの心理状況によってその捉えられ方が全く変わってきます。どうやったらプレイヤーのネガティブな感情を減らし、ポジティブな感情を増やせるか、それを常に考えましょう。

さらに、ゲームのプレイヤーの性格、個性も意識しておく必要があるでしょう。

…とここで、「さて、今日の、今までのこの話のポイントは何でしょう?」とMeier氏が自問します。

それは「The Epic Journey(大きな、素晴らしい旅)」です。ゲームはそのどれもが旅のようなものであり、それをいかに素晴らしいものにするのかが重要なのです。

そして、素晴らしくするための要素をたくさんゲームの中に盛り込みましょう。例えば、ゲームの途中で2つの選択肢があったとして、その両方が魅力的だった場合、プレイヤーはもう片方の選択肢について常に考えるでしょう。今回は選択肢Aだったけど、次は選択肢Bでやってみよう、と思わせることです。

プレイヤーに学ばせ、成長させることも大事です。プレイヤーは常に自分が学習し、進歩していると感じたがるのです。「World of Warcraft」ではこの部分がとても良く出来ていた、とMeier氏は語ります。

「One more turn(あともう1ターン)」という感情も大切です。プレイヤーが自然と続きを期待するような構造、ストーリーの伏線などがそれに当たります。

こういった要素がゲームデザインにおける聖杯、すなわち「また遊びたくなる欲求=リプレイ性」を生み出すのです。

そして最後に、この言葉でスピーチが締めくくられました。「Now you know everything(これであなたは全てを知ったのです)」

最後のスライドが画面に現れると、会場はまたも大きな拍手で包まれました。その後、基調講演では珍しく質疑応答がありましたが、さすがに質問者が大行列になり、しかしそのどれにも真摯に答える Meier 氏の姿が印象的でした。

【GDC2010】PopCap、Zynga、CrowStarが語る次世代ソーシャルゲーム

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/13/40978.html
水曜日は朝から「GamesBeat@GDC」というくくりでゲームビジネスに関連する11のセッションが行われました。その中の1つ、午後1時半から開かれた「Next-Generation Social Games(次世代のソーシャルゲーム)」というタイトルのパネルディスカッションについてのレポートです。

Bejeweled などライトながら中毒性のあるフリーゲームを提供しユーザーを集める PoPCap Games や、ソーシャルゲームで最も成功したと言われ、1億人以上の登録ユーザーと3000万人以上のアクティブユーザーを持つといわれる Farmville を運営する Zynga などソーシャルゲーム界の大手が集まった事もあり、600人近く収容できる大きな会場が立ち見の出るほどの盛況となりました。

アバターやそれに着せる衣服、アクセサリー、あるいはプレイの報償として得られるコインを軸にした経済的要素により、ソーシャルゲームの成功は2009年には一般的にも大きく認知されるようになりましたが、その要因な何だと思いますか、というモデレーターの質問に対しては:

・プレイの対価としてコインやアイテムがもらえ、それでアバターや自分の家を飾ることで他人に見せることができる、という事がプレイヤーのモチベーションを保っている。

・周囲の友人が遊んでいる場合、自分もそこに参加しなくては、という感情が芽生え、さらなるユーザーの導入につながっている。

・ゲーム性の高い、ビジュアルも丁寧に作られたソーシャルゲームの場合、参加ユーザーの半数近くが課金ユーザーとなり、多い人では月に45ドルものお金を使う、という統計が出ている。この分野で成功したいなら、高いゲーム性とインタラクティブ性、バリエーションに富んだ見た目の良い環境はとても重要である。

・自分の友達や、(オンライン上での)近所の人々と交流したり助け合うことは、ゲーム性だけでなくそのコミュニティに参加するためのモチベーションになっている。

…という答えがありました。

続いて、今後新規に参入する開発会社が、既に成功しているソーシャルゲーム界の巨人たちにどのように立ち向かうべきか、というモデレーターからの質問に対しては以下のような答えが提示されました:

・まだ業界、ジャンル自体が若いので、出来ることは色々あるはず。

・しかし、さすがに農場タイプ(Farmville系)のゲームは止めておいたほうが良いだろう(笑)

・かつては小さいスタジオがアイデア1つで勝負でき、利益を上げることが可能だったが、業界の構造が徐々に変わりつつあり、そのようなビジネスモデルが成立しづらくなっている。

・しかし、小さいスタジオに将来性が無いというわけではない。

・独自性、ポテンシャルのあるアイデアを持っている場合、特に重要なのは良いディストリビューターを見つけることである。

・現在の課金システムは一朝一夕で作られたものではなく、様々な試行錯誤の末に生まれているものである。アイデアはコピー出来ても、システム、利益構造は簡単にはコピーできない。

・幸い我々は成功したと言われているが、それは別に我々がラッキーだったからだけではない。やはりヒットするゲームを作るのは大変なのだ、という事を理解してほしい。

そして、今後ソーシャルゲームがどのように展開していくべきか、という質問にはこのようなコメントが挙げられました:

・今まで以上のユーザー同士の交流、社会性を提供していく必要がある。

・新しいソーシャルゲームをプレイする際、フレンドリストを作り直さなくてはいけないのには本当にウンザリする(笑) 今後作られる全てのソーシャルゲームは Facebook のフレンドリストをそのままインポートできるようにするべきだ。

・コンシューマーゲームと比較して我々が有利な点を正しく認識しておくべき。PCとiPhoneから同じゲームにアクセスしてプレイするなど、プラットホームに縛られない展開は我々の方が有利である。また、リリース時にインターフェースやゲームバランスに多少の問題があったとしても、我々であればすぐに対応することが出来る、これはコンシューマーゲームでは難しい。

・我々はソーシャルゲーム会社であり、ゲーム会社ではない。ユーザー間の交流によって生まれる感情など、ソーシャルゲームならではの要素を最も重要なものとして認識する必要がある。

・例えば43歳の女性が楽しめるソーシャルゲームとは何か、今までユーザーとしてあまり認識されていなかった層に向けてどういった楽しさを提供できるか、など、今後考えなくてはいけない点はたくさんある。

モデレーターから質問が提示されるたびに議論が様々な方向に展開し、とても1時間でまとめ切れないほどの内容となりました。オンライン上で無料で遊べるFlashベースのゲームから始まったソーシャルゲームですが、かつてはコンシューマーゲーム業界から学ぶべきものも色々あったものの、現在では全く異なる存在である、という事が各パネリストによって強調されていたのが印象的でした。

【GDC2010】究極の体感型ゲームを実現!? 「バーチャルスフィア」

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/13/40979.html
GDCのエキスポ会場で見つけた凄い奴を紹介します。

米国の360VirtualVentures.comが販売している「Virtual Sphere」がそれ。会場の一番外側に、遠くからでも見つけられる大きな球体の物体を展示していました。

動画をチェックしてもらえれば分かりますが、まるでハムスターが周り続けて遊ぶ玩具(回し車というそうです)の人間版。グルグル回っています。

「Virtual Sphere」が回転すると、その動きがコントローラーのスティック操作となり、ゲームの主人公を動かします。中に入った人は液晶画面が付いたゴーグルをして、この中を歩くことによって、まるで自分の動きとゲームのキャラクターの動きが連動しているように感じられます。

会場ではFPSのゲームがデモ用に用意され、この中を歩き周りながら、敵を倒すという様子が見られました。2番目の動画は少々見辛いですが、「Virtual Sphere」の動きと左上にあるモニターと連動しているのが分かると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=iLVkOkGfbhw&feature=player_embedded

http://www.youtube.com/watch?v=rSBgN-Ppmb8&feature=player_embedded
この発想は無かったと思わせる商品です。アミューズメント施設にあると面白そうです。既に実用化は問題ないようで、会場で配布されていたチラシには「毎月2万ドルは稼げる新商品。興味ある方はぜひパートナーシップを」という文言がありました。

http://www.360virtualventures.com/

【GDC2010】ゲーム開発者が選ぶ「Game Developer's Choice Awards」授賞式が開催~日本勢は2年連続で受賞ナシ

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/13/40980.html
GDC3日目の夜、好例の「Game Developer's Choice Awards」(Choice Awards)が開催され、『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』がゲームオブザイヤーをはじめとした5冠に輝きました。一方で「国産」ゲームは2年連続で受賞作がゼロという、寂しい結果に終わりました。

Choice Awardsは国際ゲーム開発者協会(IGDA)の会員による投票を下に贈られる賞です。日本からも投票は可能ですが、北米の会員が約半数を占めるなど、実質的に欧米のゲーム開発者のリスペクトを集めた賞という位置づけになっています。そのため売上げではなく作品性、それも開発者の「こいつはすげえや!」という驚きや、憧れが色濃く反映される賞だと言えるでしょう。

そのため受賞作には、その時々の欧米のゲーム事情が垣間見えます。4年前、会場を席巻したのは『ワンダと巨像』で、ゲームオブザイヤーを含む5冠に輝きました。しかし昨年、本年と日本のゲーム開発スタジオによるタイトルの受賞作はなく、欧米の開発シーンからの「日本離れ」が感じられます。

本年度もゲームオブザイヤー部門ではフロムソフトウェア開発の『デモンズソウル』、ハンドヘルド部門では『ゼルダの伝説 大地の汽笛』、ダウンロードゲーム部門ではキュー・ゲームスの『ピクセルジャンクシューター』がノミネートされましたが、残念ながら受賞には至りませんでした。

■受賞作一覧
*タイトル名は日本未発売のものは英語で表記。また開発スタジオ名のみ記した。

デビュー部門:TORCHLIGHT(RUNIC GAMES)
オーディオ部門:アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団(ノーティドッグ)
ゲームデザイン部門:アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団(ノーティドッグ)
シナリオ部門:アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団(ノーティドッグ)
ソーシャル・オンラインゲーム部門=FARMVILLE(ZYNGA)
携帯ゲーム部門:SCRIBBLENAUTS(5TH CELL)
テクノロジー部門:アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団(ノーティドッグ)
ダウンロードゲーム部門:FLOWER(THATGAMECOMPANY)
ビジュアルアーツ部門:アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団(ノーティドッグ)
イノベーションアワード部門:SCRIBBLENAUTS(5TH CELL)
ゲームオブザイヤー部門:アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団(ノーティドッグ)

このほかゲームコミュニティの拡大に貢献した業界人に贈られるアンバサダー賞には、ウェブコミックサイト「PENNY ARCADE」を運営するジェリー・ホルキンス、マイク・ラーリック、ロバート・クー氏の3名。新しい分野を開拓した人物に贈られるパイオニア賞には、人気FPS『ハーフライフ』シリーズを開発し、PC向けゲーム配信ポータル「STEAM」を運営するバルブソフトウェアの共同設立者であるゲイブ・ニール氏が受賞しました。

そして生涯功労賞には、『DOOM』『QUAKE』などを手がけ、FPSというジャンルを作り出した天才プログラマーとして名高い、イドソフトウェアのジョン・カーマック氏が受賞しました。同賞のプレゼンターを務めたのは『シムシティ』『スポア」のゲームデザイナーとして著名なウィル・ライト氏で、カーマック氏の名前が読み上げられると、会場はスタンディングオベーションと拍手がわき起こり、受賞をたたえました。

毎年細かい部門賞の修正が行われてきたChoice Awardsですが、今年のポイントはソーシャル・オンラインゲーム部門が創設されたことでしょう。第1回目の受賞作は、Facebookアプリとして提供され、「村ゲー」というジャンルを作り上げたZYNGA社の『FIRM VILLE』が受賞しました。実際、今年のGDCではソーシャルゲームの一大旋風が巻き起こり、その勢いはChoice Awardsに新しい部門賞まで創出するほどでした。

部門賞のノミネートで、パッケージゲームに混じって、iPhoneアプリやカジュアルゲームが選出されていた点も特徴でした。中でもゾンビの進行を植物を植えて撃退するタワーディフェンスで、カジュアルゲーム大手のPOP CAPによる『PLANTS VS. ZOMBIES』は、ゲームデザイン部門・ダウンロードゲーム部門、イノベーションアワード部門の3部門でノミネートされたほどです。こうした選出が行われる点に、欧米開発シーンでの関心度の高さが伺えます。

このほかDS向けのパズルゲームで、5TH CELL社の『SCRIBBLENAUTS』が携帯ゲーム機部門とイノベーションアワード部門の2冠に輝いたのも驚かされました。本作はタッチペンで英単語を書くと、そのアイテムがゲーム世界に登場して先に進めるという斬新な内容で、携帯ゲーム機部門では『ゼルダの伝説 大地の汽笛』、イノベーションアワード部門では『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』を押さえての受賞となります。日本版が未発売なのが残念ですが、こうした先進的なタイトルが無名の開発スタジオから登場してくるところに、懐の深さが感じられます。

なお、会場にはSCEワールドワイドスタジオ・プレジデントの吉田修平氏の姿も見られ、『アンチャーテッド』受賞チームを祝福していました。

同シリーズをはじめ、SCEの海外タイトルは日本語ローカライズも含めて、おしなべて質が高く、国産タイトルと変わらない感覚で遊べます。その原点となったのがPS1の『クラッシュ・バンディクー』で、開発スタジオのノーティドッグを日本側で支えたのも吉田氏でした。同社は以後もSCEのセカンドパーティとして、高い技術力に裏付けされた、ヒットタイトルを量産していきます。いわば吉田氏は今回の受賞の、影の立役者だったと言えるでしょう。

もちろん日本のゲーム開発シーンでも、マリオやポケモン、そしてワールドワイドで500万枚を出荷した『ファイナルファンタジーXIII』をはじめ、いまだ高い競争力を秘めていることに、かわりはありません。しかし欧米の同業者からリスペクトを受けるタイトルが、ここ2年出ていないというのも寂しい話。ゲームのようなポップカルチャーは売上げでだけでなく、受け手の魂をゆさぶり、「日本ブランド」の向上につながるという、金銭に換えられない力も併せ持つのですから。来年のChoice Awardsでの奮起を期待したいところです。

【GDC2010】ファンとのコミュニケーションをいかにゲーム開発に取り入れるか

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/13/40981.html
木曜日の午後1時半より、「Community 2.0: Integrating Social Design into the Production Pipeline(コミュニティ2.0:ファンとのコミュニケーションをゲーム制作過程にどのように組み込むか)」というタイトルのパネルディスカッションが行われました。

パネリストは Nathan Fouts 氏 (Mommy's Best Games)、Brian Jarrard 氏 (Bungie Studios), Ryan Schneider 氏 (Insomniac Games, Inc.)、Christian Arca 氏 (Toy Studio)、そしてモデレーターは、かつてゲーム誌「Electronic Gaming Monthly」の編集長を務め、現在ではBitmob.comの共同創設者である Dan "Shoe" Hsu 氏。

ゲーム開発会社がファン向けにコミュニティを作り、積極的に交流を図り、それをどのようにマーケティングにつなげていくか、という議題です。日本でもプロジェクト単位では専用サイトやブログで開発中からユーザーに対して情報が提供される、などの活動がなされていますが、欧米市場においてはその重要性が急速に増してきているようです。

モデレーターであるHsu氏がいくつか質問を投げ、それに対してパネリストが答える、という形式でセッションが進んでいきます。

■ゲーム制作における「コミュニティ」とは何でしょうか? 5年前と何が変わってきましたか?

・インソムニアックにおいてコミュニティとはファンとのコミュニケーションの窓口です。特に我々のように独立した開発会社にとってはマーケティング活動の面から見ても極めて重要なものです(Schneider)

・バンジーでもファンコミュニティを大切にしています。ユーザーをファンとして維持できるだけではなく、開発スタッフも様々なインスピレーションを得ることができます(Jarrad)

・5年前と違うのは、単なる開発サイドからの情報発信ではなく、ファンからのアドバイスをもらえるところでしょうか(Fouts)

・大手開発会社のプロジェクトの一部を担当しているような場合でも、チーム内でその重要性に対する認識は変わりません(Arca)

■コミュニティはゲーム開発をどのように変えましたか?

・かつてコミュニティは開発過程の中の小さな追加作業のようなもの、という認識でした。PRのためのちょっとしたギミックです、コミュニティ1.0とでも言いますか。それが現在では、ファンを開発過程から巻き込んでコミュニティを育てていくことがとても重要になってきました。

・オンラインでの対戦、協力プレイはそれまでのゲームを大きく変えました。それまで無かった、大きな魅力になりました。さらにキャラクターや車のカスタマイズなどユーザーが作るコンテンツ(UGC)がさらなるユーザーを呼び込む力は無視できません。対応するのは簡単ではありませんが、やる価値は十二分にあると思います。

・開発の途中でフォーカステストを行い、ターゲットとするユーザーの好みを正しく把握することも重要です。

■コミュニティとの付き合い方は?

・ファンコミュニティを持つということは、開発会社がコミュニティと結婚するようなものです。そして絶対に離婚できないのです。

・ユーザーの声が必ずしも正しいとは限りません。しかし、コミュニケーションを続けることが重要です。仮に間違ったアイデアが提案された場合も、それを採用しないことを表明した上で、提案してくれたこと自体には感謝する、というように、ファンを大切に扱っている、という姿勢を示すことが大切です。

・開発サイドからも、当然何でも発言して良いわけではありません。言うべきこと、言わない方が良いことは社内でフィルタリングしておく必要があります。可能であれば、それらを専門的に扱うコミュニティマネージャーを立てるべきでしょう。

・ゲームのクオリティの向上はもちろん、上手く付き合うことで開発チームの士気の向上にもつなげられます。

■HALO、Guitar Hero、Resistance といった大型タイトルなら十分なマーケティング費用が与えられるでしょうが、中規模、小規模のプロジェクトにとってコミュニティはどのようなものでしょうか?

・コミュニティを正しく維持することそのものがマーケティング活動だと認識するべきです。コミュニティの参加者全員がマーケティングスタッフなのです。

・現在ではゲームを買うきっかけは「テレビのCMを見て」から「友達が遊んでいるから」、「フォローしている人のツイートを見て」、の方が多くなっています。コミュニティの影響力は計り知れません。

・無料のトレーラーやデモも良いでしょう。とにかく会話のきっかけになるような活動が重要です。

■皆さんの会社ではどのようにコミュニティを維持していますか?

・最初インソムニアックではファン向けのフォーラムを作ることに否定的でした。発信する情報の内容を十分に吟味して、問題無いと確認できてから発信する、というところから始めましたが、その反応は我々の想像以上でした。今ではコミュニティのメインテナンスを担当する専属のスタッフが3人います(Schneider)

・ファン同士のイベントに会社からTシャツを寄付してとても喜ばれたことがあります(Jarrard)

・ゲームのリリース後にオンライン向けの追加機能をリリースしたところコミュニティで話題になり、トランザクションが30%も増加しました(Arca)

・インソムニアックでは、年に1回コミュニティで募集したファンを会社に呼んで見学ツアーを開きます。競争率が高いこともあり、実際にツアーに来た参加者がコミュニティ内や自分のブログなどでそれに関する発言をし、そこからさらに会話が広がる様子を見ていると、その広告効果は計り知れません。開発スタッフも直接ファンと話すことで様々な刺激を受けられますし(Schneider)

・ウェブに載せるインタビュー、コラム、写真、ポッドキャスト、ビデオなどの制作は、かつては開発中片手間でやるものでした。しかし今ではマーケティング活動の一環として、業務としてやらせるようにしています(Jarrad)

その後フリーディスカッション形式になりましたが、いくつか気になる発言をピックアップすると:

・「There is no reason not to do community(コミュニティをやらない理由は無い)」

・「Marketing brings people, community keeps people(マーケティングは人を呼び、コミュニティはその人たちをファンであり続けさせる)」

セッション終了後の質疑応答で「コミュニティにいるファンの大半は良いファンだと思うが、一部には悪意を持ったファンもいると思う、そのようなファンとはどのように付き合うべきか」という質問がありました。

それに対しては:

・誠意を持って対応した上で、態度が変わらないようであれば毅然とした対応でキック、バンする、といった対応も必要だと思います。

・他の善意のファンに対する影響力を考え、自分たちのスタンスをコミュニティの参加者に対して明白にしておく必要があるでしょう。

・そういったタイプの人間が発言しづらくなるような雰囲気を作って行くことが大事です。

…という回答でした。

最初にも書いた通り、個人的には日本の開発会社ではまだファンの集まるコミュニティはあまり重要視されていないように感じますが、これをマーケティングツールとして捉え、積極的に活用していこうという今回の議題にはとても刺激を受けました。

【GDC2010】データで見る「新規IPと既存IP」そして「アチーブメント」の有用性・・・EEDARアナリスト

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/13/40985.html
ゲーム専門の調査会社であるEEDAR(Electronic Entertainment Design and Research)は、金曜日午後に「Intellectual Property and Achievement Trend」と題して、「新規IPと既存IPの関係性」および「Xbox Liveのアチーブメントのトレンド」に関する講演を行いました。新鮮なデータが次々に飛び出す興味深いセッションとなりました。

まず社長兼COOのGeoffrey Zatkin氏が語ったのは「新規IP」と「既存IP」についてです。これらのデータはこれまで発売されてきた8000以上のタイトルのレビュースコアやマーケティング予算データ(Nielsen Monitor Plus)、ユーザー評価(GameTrailers StreamStats、Nielsen Video Game Tracking)、販売データなどを元にしています。

新規IPと既存IPの年別シェアPS3/Xbox360とWiiの違い
gdc2010.jpggdc20101.jpg

全体的なトレンドとしての新規IPと既存IPのシェアは、新規IPが徐々に数字を伸ばして2009年には22%となっています。これをPS3/Xbox 360とWiiに区別して集計すると、Wiiの新規IPが大幅に増えている事が分かります。通常、プラットフォームの発売時には新規IPが増え、その後、その続編が発売されることで割合は減っていきます。Zatkin氏はWiiのモーションコントローラーという要素がプラスに働いているのではないかとコメントしています。また、PS3/Xbox 360は新規IPが減っていますが、今年後半に発売する周辺機器によって再び増加する可能性があると予測しています。

ジャンル別の本数シェアジャンル別の販売シェア
gdc20102.jpggdc20103.jpg

ジャンル別に新規IPの作品シェアが多いのは「アクション」「シューター」「その他エンターテイメント」といったカテゴリです。一方売上のシェアでは「RPG」「その他エンターテイメント」「アーケード」といった形になります。

レーティング別のシェアPS3/Xbox360の場合Wiiの場合
gdc20104.jpggdc20105.jpggdc20106.jpg

ESRBのレーティング別に新規IPと既存IPのシェアを比較すると、PS3/Xbox 360ではT(13歳以上)やM(17歳以上)に新規IPの率が高くなっている一方、WiiではE(全年齢対象)に極端に偏っています。

独占タイトルの新規vs既存
gdc20107.jpg

プラットフォームの独占タイトルを比較すると、新規IPも既存IPもWiiが極端に多い事が分かります。これはモーションコントローラーを採用しているという特殊性が考えられます。

新規IPを出しているパブリッシャーをプラットフォーム別にトップ5を出すと、PS3やXbox360ではそれぞれのファーストパーティやEA、Codemasters、セガなどのメジャーパブリッシャーで構成されているのに対して、WiiではDestineerやZoo Gamesといったカジュアルなユーザーをターゲットにした新興メーカーが目立ちます。

レビュースコアの比較 PS3/Xbox360レビュースコアの比較 Wii
gdc20108.jpggdc20109.jpg

最後に新規IPと既存IPの成果の違いです。レビュースコアを比較すると、新規IPが既存IPを上回るジャンルはアクションくらいで、その他の分野の多くが既存IPの方が評価が高いという結果になりました。評価されるからこそ続編が出るという見方も出来ますが、新規IPだからといってユーザーも甘くはないという事が分かります。

以上のように、全体的に新規IPは増える傾向にあるものの、その評価は決して高いとは言えず、問題があることが分かります。また、新規IPのリリースはプラットフォームの特性に大きく左右されていることも分かります。

続いては上級副社長のJesse Divinch氏です。PS3やXbox360向けゲームで実装される事が多くなったアチーブメント(実績)は、自分がゲームのどこまで進んでいるのかを、他のユーザーと比較できるような仕組みです。その使い方はゲームによって千差万別で確立したものはありません。しかしそのデータを集計すると興味深い事実が分かります。今回はXbox360の膨大なアチーブメントデータを集計したもので話がすすめられました。

まずEEDARが100のゲームをサンプリングしたところ、アチーブメントを100%獲得したユーザーは僅か4%に過ぎない事が分かったそうです。また、AAAクラスのタイトルだと更に減少し、2%以下にまでなります。また、50%以上に達したユーザーも27%と過半数には届きません。その達成率は直線的ではなく、徐々に持ち直していくグラフになります。アチーブメントはどの程度、ユーザーの動機付けになっているのでしょうか。余り詳細には触れられませんでしたが、後半はマラソンのゴールが見えた地点のように、あと少し頑張る動機にはなっているのではないかとDivinch氏はコメントしていました。

また、Divinch氏はアチーブメントはユーザーへの動機付けとなるだけでなく、ユーザーの評価を測る鍵にもなるのではないかと話しました。次の図はゲーム毎の、アチーブメントが50%に達しているユーザーの割合を示したものです。レビュースコアとの相関性は、コア向けタイトルに限ってはある程度見られるようです。

アチーブメントはある種の褒章としてユーザーを次に進める動機になりますが、データでは多数のユーザーが30%程度でドロップアウトすることが分かります。これはゲーム自体、最後まで遊ぶユーザーは稀だということを示しているのかもしれませんが、どの程度、動機付けになっているのかはこの数字だけでは補足できません。

一方でアチーブメントをユーザーの評価として捉えると、多くのユーザーが100%に近い数字になっているゲームであれば、ユーザーは続編やダウンロードコンテンツで続きを遊びたいと思っていると判断出来ます。アチーブメントの数字はウェブサイト「MyGamerCard」でも確認できるので、ゲームメーカーの担当者は参考にするといいでしょう。

【GDC2010】GDC恒例!今年のMega64はあの大物クリエイターが・・・

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/14/40987.html
GDCの風物詩、Mega64。英国チャンネル4のTrigger Happy TVの低予算テレビ番組で、有名テレビゲームが元ネタのパロディムービーが連発です。Game Developer's Choice Awardsでも毎年数本が上映され、会場の喝采を浴びるのですが、今年はどうやら様子が違うようです。

というのもChoice AwardsのステージにMega64のスタッフ3名が登壇したのです。しかもスクリーンにはわざわざ「過去に宮本茂氏、小島秀夫氏に出演してもらえたが、今年は大物ゲストの招聘が芳しくなく・・・」と断りの字幕が流れたほど。会場からも「やれやれ」といった雰囲気が漂いました。

ムービーは音楽ゲームの『ザ・ビートルズ:ロックバンド』のパロディで、壇上の3名が「ビートル」のメンバーに扮して街中に登場し、道行く人々に向かってビートルズの有名ナンバーを歌いまくるというもの。いつものMega64節に会場は大爆笑となりました。

そして道の向こうにいる、ある人物と鉢合わせしてしまいます。2007年はマリオのコスプレをしてはしゃぎ回る彼らに、宮本茂氏が登場して苦い顔をするというオチ。2009年は『メタルギアソリッド』シリーズのコスプレをしてはしゃぎ回る彼らの前に小島秀夫監督が登場し、共にスニーキングして去っていくというオチでしたが・・・。

カメラがパンすると、そこに立っていたのはプロレスラー級の太い首を持つ赤ら顔の男性。不思議そうに近寄るMega64トリオ。「あんた誰?」「リンゴ」「リンゴ・スター?」「イエス」

いやいや、こんなドスコイなリンゴ・スターなんてあり得ません。実はこれ、Choice Awardsでパイオニア賞を受賞したValve Softwareの共同創業者、ゲイブ・ニューウェル氏でした。これで晴れて「ビートルズ」となった4名は、大はしゃぎでジャンプしてオチ。この大物ぶりに会場は割れんばかりの拍手とスタンディングオベーション。体はでかいけど腰は軽い、いやー、いい人ですね。
 
ちなみにニューウェル氏の受賞式の最後に、プレゼン画面が突如ブルースクリーンになるというハプニングがありましたが、ブログメディア「beeeeeeeeep!」によると、これも計画通りだったことがわかりました。システム警告画面をよく見ると「GlaDOS」と書かれており、「Portal2の発表がE3までおあずけ」というメッセージが隠されていたとのことです。

Mega64をネタに壮大な一人芝居で真のオチをつけたゲイブ・ニューウェル氏。世界有数の開発スタジオのボスとは思えない茶目っ気ぶりです。すでに好例になってきた、このゲーム業界有名人ゲストシリーズ。次はどんな「大物」ゲストが登場するのでしょうか・・・。

なお、過去のMega64のビデオは、一部を公式サイトで見ることができます。最近の作品だと『ベヨネッタ』なんて必見。日本でも昔「街で見かけた~」なんて人がいたのを懐かしく思い出しました。

【GDC2010】家庭用からソーシャルゲームへ・・・1億ユーザー『FirmVille』開発者が語る「計測的開発手法」

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/14/40988.html
「自分たちがソーシャルゲームを作れば、もっと良い物ができる」・・・。そう考えているコンソールゲームの開発者は少なくありません。これは日本でも海外でも変わらないようです。

しかも日本ではソーシャルゲームの開発者自らが「自分たちはゲーム作りのノウハウがないので・・・」とへりくだる姿がよく見られます。これにも「だから一緒に、もっとおもしろいソーシャルゲームを作りませんか?」という本音が隠されていたりするのですが・・・。コンソールゲームとソーシャルゲームの開発文化には、広くて深い溝が横たわっています。
 
Zynga社のプロダクト開発副社長、マーク・スカッグス氏がGDCで11日に行った講演「Creating Successful Social Games:Understanding Player Behavior」は、こうした状況に活を入れるような内容でした。同氏はFacebookで大旋風を巻き起こし、「農場ゲーム」という一大ジャンルを作り出した『FirmVille』開発にもかかわった人物です。

そして彼はまた『コマンド&コンカー:レッドアラート2』や『ロードオブザリングス:バトルフォー・ミドルアース』など、コンソール向けに数々のヒットゲームを作り上げ、1600万枚にも及ぶセールスを記録した人物でもあります。会場は大入り満員で立ち見がずらりと並び、関心の高さを感じさせました。

スカッグス氏が主張したのは「計測的開発手法」ともいえるものでした。勘や経験、開発チーム内での議論に頼るのではなく、徹頭徹尾プレイヤーのゲーム内での行動を計測してデータを収集しろと説きます。そして、それを分析してゲーム開発に生かすことで、よりヒットするゲームが作れるというのです。

「ゲームのおもしろさを計測することはできないが、プレイヤーの行動は計測できる。そして何度もプレイヤーが反復して行う行為があれば、それが『楽しい』ということだ」(スカッグス氏)。

スカッグス氏はまず、ウェブの通販サイトやPCゲームにおけるユーザーアクションのモデルを例に出して説明を行いました。通販サイトでは数多くのユーザーが閲覧しても、そこから商品を検索して、購入操作をはじめ、実際に購入するのは、ほんの数パーセントにすぎません。ほとんどの人はその過程で、操作が分からなかったり、興味が持続せずに、脱落してしまうのです。

これはPCゲームでも同じで、ゲームを買ってもインストールして、チュートリアルを体験し、ゲームを始めるころになると、ユーザー数が減っています。そして一通り遊んで、また翌日も続きを遊ぼうと思うユーザーはさらに減少。そこからどんどん遊び続けて、友達に口コミでおもしろさを伝えるようなユーザーは、まさしくほんの一握り・・・。悲しいかな、これが現実なのです。

実際、スカッグス氏が過去に行ったPCゲームのフォーカステストでは、103名のユーザーのうちゲームのインストールで3名が脱落し、そこからチュートリアルをパスして実際のゲームに進めたのは、25名だけだったといいます。チュートリアルの過程で75名のユーザーが脱落してしまったのです。これでは何のためのチュートリアルかわかりませんが、実際にはしばしば見られる光景です。体験版がクリアできずに買う気がそがれてしまった・・・なども同様でしょう。

これと同じ失敗は、自社のソーシャルゲームでもあったと言います。ZYNGAが2008年8月にリリースした『Mafia Wars』では、5ステップのチュートリアルが用意されていましたが、途中で辞めてしまうユーザーが多く見られました。そこでランダムに2ステップを取り除いたところ、とにもかくにも25%以上のユーザーがチュートリアルをパスして、実際のゲームに進んだのです。しかし、そのためゲームの理解がより困難になったのは否めなかったのですが。

2009年後半にリリースされた『FirmVille』では、この教訓が生かされ、できるだけ画面を見ただけで遊び方がわかる工夫が凝らされました。チュートリアルも別途もうけるのではなく、ゲーム内のダイアログボックスに、ちょっとした情報が表示される形式となりました。これにより、より簡便でわかりやすいチュートリアルができ、ヒットの一要因につながったと言います。

「前に作った時はこうだったから」「プレイヤーはこの仕様を気に入るはずだから」「こんな仕様を入れるなんて本気か?」「もう決定したんだ!このやり方でやるんだよ」・・・。コンソール開発現場でよく聞かれる、こうした会話はすべて無意味だとスカッジ氏は続けます。それよりもテストをして、効果を測定するべきだと。なによりも重要なのは先入観を捨てることだというわけです。

よくウェブで見られる、ニュースなど強調したいリンクを赤色で表示するやり方も、本当に効果的なのかとスカッグス氏は疑問を投げかけます。実際に4色のリンクでクリック数を計測したところ、なんとピンクが一番多かったのです。これには『FirmVille』に女性プレイヤーが多かったから、という背景もありそうですが・・・。いずれにせよ常識を疑い、計測してみることが重要なのです。

この計測的開発は新しいアイテム開発にも生かされています。ある計測結果で、価格が安く成長が早いイチゴの種が多く売れていることがわかりました。そこでさらに成長の早い「スーパーベリー」を投入したところ、予想通り人気アイテムになりました。他のアイテム開発についても同様だと言います。

スカッグス氏が計測的開発を重視するようになったのは、バリバリのハードコアゲーマー向けRTS『コマンド&コンカー』シリーズの開発が背景にありました。テストプレイの結果、あるマップや仕様が本当におもしろいのか、効果的に開発チームにフィードバックする手段が難しかったのです。

そこでゲーム内のプレイヤーの行動を5分単位で計測し、グラフ化して、行動パターンを分析する試みが実施されました。その結果「資源採掘」「建造」「移動」「攻撃」の4つの行動比率が、ゲームの展開につれてバランスよく推移している時は、プレイヤーがゲームに熱中している時だとわかりました。そしてパターンが単調になった時は、ゲームに飽きてしまった証拠だとわかったのです。これにより開発チームへのフィードバックが格段に向上したと言います。

「計測は楽しい」とスカッグス氏は語ります。プレイヤーはすべてのゲームにおいて血液の循環のようなもので、その行動を追跡していくことで、問題を発見して解決できる。やみくもにユニークユーザー数や有料ユーザーの平均消費額の工場を求めて試行錯誤するのではなく、リアルのデータを客観的に分析しよう。そして「計測的開発」をソーシャルゲーム開発者の共通認識にしよう。それをもとにローンチ後の継続的な運営を行っていこう、そう述べられました。

スカッグス氏の「データ主体の開発」はオンラインゲームの運営でよく聞かれる内容で、それほど目新しいものではありません。しかし、すべてをクリック数で計測でき、オンラインゲームよりも圧倒的に開発負荷の軽いソーシャルゲームでは、この計測と改良のループを非常に短くできます。そして、この繰り返しがカジュアルユーザーを捉えて放さないコンテンツ開発につながるのです。

なにより本講演は、ハードコア向けゲーム開発のトップクリエイターが、その経験を生かしてソーシャルゲーム開発に、本気で取り組んでいる姿勢を広く示したという点で印象的でした。「この程度の作り込みで良いのか」「こんなのゲームじゃない」・・・。まだまだ、こうしたコメントが多く聞かれるソーシャルゲームですが、その影には、コンソールゲームの開発とは異なる苦労や取り組みが隠されています。逆にそれなくしてソーシャルゲームで成功することは困難だ、といえそうです。

【GDC2010】Spawn Labsは遠隔地からゲームを遊べる「Spawn HD-720」を展示

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/14/40994.html
先日「OnLive」という、ゲームをいつでもどこでも環境を問わず遊べるクラウドサービスを紹介しましたが、米国のベンチャー企業Spawn Labsもネットワークを利用した「Spawn HD-720」という製品をGDCのエキスポブースで展示していました。

「OnLive」は、ゲームがネットワークの向こうにあり、家や出先など場所を問わず、また、PCやスマートフォンなどプレイ環境も問わず、同じゲームをオンデマンドに遊べるというサービスでした。こちら「Spawn HD-720」は、家にあるゲーム機をネットワーク越しに操作して遊べるというものです。

具体的には家にあるゲーム機と「Spawn HD-720」を接続。さらにインターネットに接続します。この状態にしておけば、家にいなくてもPCを起動してSpawnのサービスに接続することで、自宅にあるゲーム機にアクセス。ネットワーク越しにゲームを遊ぶ事が出来ます。ネットワークの帯域は1mbps程度があれば問題ないそうです。

会場でもゲーム機と、それとネットワークで接続したPCで遠隔操作するデモが行われていました。製品自体は既に発売中で、199ドルでオンラインストアなどで購入可能です。月額の費用は発生しないようです。

「OnLive」や「Gaikai」のようなオンデマンドのゲームサービスや、この「Spawn Labs」など、ネットワークを使ったゲーム関連サービスが幾つか出てきました。日本はこちらよりもネットワーク帯域が潤沢で、同様のサービスは可能性の高い分野だと思われます。ぜひ期待したいですね。

【GDC2010】5日間の日程を終了・・・最後はサプライズでウィル・ライトが登場

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/14/40989.html
米国サンフランシスコのモスコーニ・センターで開催されたGame Developers Conference 2010は現地時間の13日16:00で全ての予定されていたセッションを終了し、閉幕しました。

最終セッションとして予定されていた「Metaphysics of Game Design」は当初、講演者が伏せられていましたが、サプライズとして登場したのは一昨日のGame Developer's Choice Awardでも登壇したウィル・ライト氏でした。サプライズに会場には入りきれない来場者が続出でした。

来場者数は発表されていませんが、昨年並みになった模様。

リーマンショック以降の市場低迷によりイベントとしての規模は昨年並みに留まりましたが、悲観論があり職を探す人でジョブフェアが大きな盛り上がりを見せた一方、ソーシャルゲームやモバイルなど希望の持てる新たな市場への取り組みが今回のGDCの大きなトピックとなりました。家庭用ゲーム機でも5冠を達成した『案チャーテッド』や『ファイナルファンタジーXIII』などの開発事例が様々な角度で語られ、従来型の大作ソフトも、作り方が確立してきた印象でした。レイオフなどの暗い話題が続いたゲーム業界ですが、依然として、積極的に意見交換をし、貪欲に経験を共有し、明日を見出そうという熱さを感じた5日間でした。

ただ、残念ながら講演者が減ったこともあって、日本の存在感は薄くなったと感じました。テクノロジーの分野でのキャッチアップは当然必要とされますが、このような場で積極的に自分たちの経験を伝えることも開発コミュニティへの貢献として意識されていくべきかもしれません。次は9月にCEDECが日本で行われます。残り期間は少ないですが、現在講演者の公募も実施されています。ぜひ皆さんの経験を共有してもらえればと思います。

GDCは来年も同じ会場で、2月28日~3月4日の5日間の開催となることが決定しています。また来年もここサンフランシスコでお会いしましょう。

閉幕しましたが、レポート記事は暫く続きますのでお楽しみに。

【GDC2010】大ヒットを連発する大手デベロッパーが語るプロデュースのノウハウ

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/23/41151.html
BungieやNaughty Dogなど、次々と大作を開発するデベロッパーのノウハウを借りようと数多くのプロフェッショナルがGDCを訪れます。講演の中でも、アーティストからビジネス・マネージャーまで、多様な背景の参加者が集結したセッションが「プロデューサー・サミット」です。「楽しく、なおかつ売れる」タイトルを作り出すための指導法が講演のトピック。内容は人によって大きく異なるようです。

「プロデューサー・サミット」で欧米特有の開発スタイルとして特に顕著だったのが、各社員がそれぞれの開発部門での担当作業をこなす以上に、タイトルの完成への責任の一端を担うこと、そして高効率に開発を進行させることがいかに重要視されていることでした。

■Monolith Productionsの場合

Monolith Productionsでは開発チームメンバーは性格・能力・実績などによって分けられます。それは、「それぞれの特性を活かす仕事に就かせることが開発進行速度そして品質を決定するから」とゲーム開発責任者のマット・アレン氏は言います。社員が当てはまるカテゴリーを把握すればベテランを新入社員とペアを組むなど、新鮮なアイディアと実績から思いも寄らなかった工夫が生まれると同時に、新社員を養成できることが可能になることがポイントだと語りました。

また、部門ごとのチーム分けもこの指針に沿って行われます。まず、開発分野ごとにチームが結成され、次にプログラミングやアニメーションなどそれぞれの部門から優秀なチームメンバーが抽出されます(もちろん、やる気を示すボランティアでの参加も大歓迎とのこと)。この第二段階のグループは「ストライク・チーム」と呼ばれ、部門専門の問題の解決や、業務そのものを管理に当たります。さらに、ゲーム性自体に関わる問題要素などは開発チームを代表する少数メンバーから編成された「集合ストライク・チーム」へ移され、開発の展開に応じたソリューションを検討します。

各チームはそれぞれがプロデューサーに報告します。それぞれが開発の進行度や問題などが直接確認することができるため、時間を品質改善や問題解決などに回せます。制作、自己管理、そして修正まで、小さなチームに重要な責任を与えることによって各人が開発の一片を担い、タイトルの品質に自分が直接関わっているという実感を与え、自発的な研鑽を促すという意味でこのチーム編成制度が導入されました。

■マイクロソフトの場合

マイクロソフトのプログラム計画総管理者のピート・アイゼンシー氏は同様にチームメンバーに責任を持たせるための工夫を説明しましたが、そのアプローチで品質管理はまったく異なる手法でした。

ビルドやアニメーションを壊してしまったプログラマーやアニメーターなど、社員が大失敗を犯した場合、なんと次の朝には台車に乗せた便器が社員の机の横に置かれるのです。もちろん、その理由はビルドが「糞」だったことを身に染みさせるためだそうで、その問題を直さない限り便器が残ったまま。ミスを犯した社員の仕事への熱意はそれだけ高くなるでしょう。

また、Monolith Productionsも同様の取り組みを行っているそうですが、、週初めに社員全員が集合し、手がけているタイトルをそれぞれの部門の担当範囲毎にプレイするそうです。スケジュールより遅れていたり、バグがまだ多ければ、その部門は大変恥ずかしい経験をします。「次の週末には、そのチームは絶対にバグを直していると私は断定する」、そうアイゼンシー氏は語りました。

もちろん、このやり方は少し変わっていると認め、このような社風を築くことが非常に困難だと彼は続けました。以前に、社員が面白半分にすこし下品なポスターを職場に貼った際に、ある重役がポスターに反感を持ち、そのような内容を社内では禁止する社内ルールを作りました。ささいなことでしたが、職場の雰囲気が変わり、4ヶ月後には数名の社員が他社へ移ってしまいました。アイゼンシー氏は、プロデューサーの仕事は専門的な作業より社員の潜在能力を引き出し、開発の成果へ繋ぐ「神経伝達物」のような存在であると述べ、「専門的な知識より人間関係で起こる摩擦をなくすことが出来るほうが良いプロデューサーになれるかもしれない」との意見を語りました。

■Naughty Dogの場合

開発において、欧米ゲーム開発に共通したこの「自由性と責任」を実行する形は以上の通り様々ですが、この概念を徹底的に追求したデベロッパーはNaughty Dogでした。「他社にケチをつける気はありませんが、実はNaughty Dogにはプロデューサーはいません」、とのコメントで始まったNaughty Dogのリード・ゲームデザイナーであるリチャード・レマルカンド氏の講演。合計150社員の会社の重役からは信じられないような発言でした。プレイステーションシリーズの長年に渡って大ヒットの新IPを生み出し続けきた同社―その一つの理由はNaughty Dogのいくつかのポリシーに宿るものでした。

まず、重役から秘書まで、誰に対しても発言する権利を全社員に与えることで、会社では警戒心や遠慮する気持ちが入らずに活発なアイデアの交流が可能になります。また、パーティションなどを職場では使わず、孤立した仕事専用スペースを避けたレイアウトがあることも秘訣の一つです。開発の各専門分野がそれぞれ混合して作業を進めるため、この環境の中で自然とゲームが改善されるとレマルカンド氏が語りました。「かっこいいエフェクトを作成している他の社員の姿を見れば、興味が湧いて互いに話し始めれば、そこから客観的な意見、もしかすれば改善案が得られるかも知れない」。

この「発言の自由」とオープンな環境を土台にして、Naughty Dogは斬新な開発主義を開拓しました。「オンザフライ開発」とは最後までスケジュールを埋めずに、余裕を残しつつ開発を進めることをいいます。「ある変更で迫力が増すことが分かれば、すぐにゲームに入れられように最後まで改善できる余地を残します」。このやり方が無ければ、『Uncharted 2』の迫力あるセット・シーンを創ることはできなかっただろう、と彼は続けました。驚くことに、この開発主義でNaughty Dog は一度も開発納期をミスしたことがないそうです。

終始満席だったプロデューサー・サミットでは、どのスピーカーも前注意として自分たちの方針をそのまま採用することが出来ない事情が他社にあるだろうと断りました。しかし、コミュニケーションの支援や、モチベーションを高めること、そしてより素晴らしいアイディアを生み出す試みはゲーム業界共通しているため、どのアイディアも何かの形で役に立つのではないでしょうか。

【GDC2010】海外デベロッパーが考える生き残り策~SUMO DIGITAL

http://www.inside-games.jp/article/2010/03/29/41265.html
GDCが拡大するにつれて、世界中から数多くの業界人が集まるようになり、その役割も変わってきました。今日では会期中、会場周辺の高級ホテルでスイートルームが予約され、さまざまな商談やインタビューなどが行われています。参加者に目のつきやすい会場内だけでなく、GDCの外側でもまた、熱いビジネスが展開されているのです。

筆者もまた、ゲーム・IT向けの職業紹介やコンサルティングなどを手がけるカイオス・記野直子さんのコーディネートで、海外ディベロッパーに特別インタビューを行いました。取材先は独立系ゲームディベロッパーの集合体である米Foundation9と、その傘下のスタジオである英SUMO DIGITAL。質問に答えてくれたのは、Foundation9で欧州マネージングディレクターを務めるカール・ケーバーズ氏と、SUMOのスタジオヘッド、ポール・ポーター氏、そして同クリエイティブ・エバンジェリストのショーン・ミラード氏です。

SUMO(スモウと読み、名刺にも力士のイラストが印刷されています)は英シェフィールドで120名以上のスタッフを抱えるディベロッパーで、2007年にはインドに「SUMO INDIA」として約50名のスタジオをスタートさせるなど、国際化も進めています。主なタイトルには『バーチャテニス2009』(セガ)、『Formula 1 2009』(コードマスターズ)、『GTI Club Plus ラリー コートダジュール』(コナミ)などがあり、日本のパブリッシャーとの取引実績も抱負です。

日本のゲーム業界では海外市場に向けたゲーム開発の重要性が増していますが、一方で欧米のゲーム業界もまた、不況の波に苦しんでいます。混迷を続けるゲーム業界の中で、彼らはどのような生き残り策を模索しているのか、話をうかがいました。

―――近年、欧米のゲーム開発シーンではメタクリティック(*)のスコアが非常に重要視されていますが、日本ではまだ、その存在自体があまり知られていません。このことをどのように感じますか? また高いスコアを得るために、どのような工夫をされていますか?

(*)メタクリティック(http://www.metacritic.com/
海外でレビューサイトや雑誌などのスコアを集計し、その平均点を紹介しているサイト。映画・DVD・ゲーム・音楽などのカテゴリがあり、メタクリティックのスコアとゲームの販売本数は一定の相関関係があるとされる。近年ではメタクリティックで一定以上のスコアを納めることが、受注開発時の契約条件に盛り込まれる例もあるなど、ゲームビジネス全般に影響力を及ぼしている。

カール:うーん、どうだろう。究極的には、おもしろいゲームを作ることだね。

―――質問を変えます。メタクリティックのスコアは、ゲームの仕様の有無に基づいて上下する印象があります。たとえば、すごくおもしろいゲームだけど、オンライン機能がないためマイナス10点といった具合です。いかがでしょうか?

カール:オンラインプレイはとても重要だね。モデムの通信速度が28.8kbpsだった時代から、両チーム22人で楽しめるオンライン・サッカーゲームがあったくらいさ。これはすごくおもしろかったし、これがもっと重要になることは、当時からわかっていた。なので僕らはオンラインの仕様を常に重視してきたし、今ではオンラインが単なるシングルプレイの追加要素ではなくなっている。最初からオンラインモードを組み込むことを前提に、ゲームをデザインしているんだ。

ショーン:僕らはオンラインプレイはゲームモードの一つではなく、ゲームユーザーのコミュニティを築くツールとして捉えている。ただゲームで遊ぶだけでなく、ユーザー・クリエイテッド・コンテンツの要素についても積極的に取り入れているし、これがゲームなのか、ツールなのか、そんなことは意識しないで自然に楽しめるように注意している。これらを考慮してゲーム開発を行うことで、ユーザーの総合的なゲームプレイ体験が提供できるんだ。

一つの例として、とてもシンプルだけど効果的だったと思うのは、僕らが作った『New International Track & Field』(コナミ/http://www.newtrackandfield.com/index.html)だ。陸上競技が楽しめるDSのアクションゲームで、一人で遊ぶだけでなく、Xbox Liveのゲーマープロフィールのように、友達のスコアやタイムをウェブ上で確認できる。それもリアルタイムに情報がダウンロードされて、ニュースフィードの形で見られるようにしたんだ。このように、ユーザーコミュニティ独自の目標を設定することで、より効果的なプレイ体験にユーザーを導けるんだ。

もっとも、こういったサービスをゲームの発売後も維持・管理するのは大変だ。似たようなことは他のゲームでも行われているけど、ゲームの発売に合わせて行うだけで、継続して行われる例は少ないと思う。だいたい発売後5~6ヶ月くらいかな。でも『Track and Field』の場合は、世界中のユーザーがウェブを通してコミュニケーションをとったり、競い合うことができるので、ユーザーコミュニティを強化することは不可欠だと思ったんだ。もっとも、これは2年前の話なので、今はもっとネットユーザーが増えているよね。対戦モードや協力モードをゲームに加えて欲しいという声はよく耳にするよ。

ただし、これは友達同士でテレビの前に座って、画面分割モードで遊ぶことじゃない。オンラインプレイが重視されているんだ。逆にファミリー向けのゲーム、たとえば『レゴ スター・ウォーズ』などでは、画面分割モードが求められる。いずれにせよ、これらのモードやオンライン要素を強められれば、メタクリティックのスコアを10点以上、上げられるんじゃないかな。

―――ハードコアゲーマー向けのタイトル開発の時は、画面分割プレイではなく、オンラインプレイが重要ですか?

ショーン:それはもちろんだよ。もっとも家族そろって遊ぶ時や、仕事から帰ってきて一家団欒に用いられることもあるから、そんな時は画面分割プレイが必要だけどね。また学生のゲーマーにも画面分割プレイは人気なんだ。

カール:つまりグループ・アクティビティが重要だってことだね。

―――欧州のコンソール機のネット接続率はどれくらいでしょうか?

カール:正確にはわからないけど、総じてXbox360はPS3よりネット接続率が高い。各国ごと、地域ごとの接続率については、何ともいえないね。

―――メタクリティックの信頼性をどのように捉えていますか?

カール:もちろん理想のツールじゃない。でも、誰もが一目でわかりやすいので、ゲームのクオリティを判断する上で、使いやすいツールだと思うよ。ほとんどの場合で、開発費が50万ドルと1000万ドルのゲームでは、スコアにはっきり差が出るしね。メタクリティックでトップスコアのゲームは、市場でも一番売れる。そのためメタクリティックは100%じゃないにしろ、公正な評価ツールに思えるよ。

ショーン:メタクリティックは何百もの雑誌やウェブに掲載されたレビューの平均点を取ることで、そのスコアが裏付けられているし、これが高い信頼性につながっている。実際に誰が行っているかはわからないけど、ウェブ上のレビューを徹底的に探して、記録する「人たち」がいるので、この数値を信用せざるを得ないと思う。

―――メタクリティックのスコアが、これほどまでに影響力を持つようになったのは、何年くらい前からですか?

ショーン:僕らはマーケティングやビジネス関連で過去3年間使ってきたけど、他のパブリッシャーでは少なくとも5年間は使っているね。

カール:そこではやはり、「オンライン」が関係しているね。これはユーザーコミュニティがネットで情報を集めるようになったからだし、だからゲームでも、オンライン関係の仕様も重視される。

ショーン:でもそれは、メタクリティックだからというわけではなく、レビューのプロセス自体にかかわる点だと思う。たとえば『ダークサイダーズ~審判の時~』(コナミ)は高い評価を得たアクションゲームだけど、オンラインはあまり重視していない。このように、レビューの過程でジャンルが深く関係するんだと思う。僕らが得意としているようなレースやスポーツといったジャンルでは、だいたいオンライン機能が必要だね。

―――日本のゲーム開発ではフォーカステストをほとんど行いませんが、御社ではどうでしょうか?

カール:実は僕らもそうで、フォーカステストは行っていない。でも同時に開発段階で外部の評価や意見を、何らかの形で取り入れてはいるんだ。操作性の良さや適正な難易度だったり、ゲーマーから好感が得られるようなゲームに仕上がっているかを確かめるには、良い方法だと思う。特にレースゲームでは開発中のゲームを遊んでもらって、ゲーマーからフィードバックを受けることが必要だね。

ショーン:自分たちだけのためにゲームを作っているのではないことは自覚している。でも日本でも同じだと思うけど、フィードバックを受けても、それに従ってゲームを調整することに抵抗があるんだ。だいたい何も変えられないことが多いよ。もちろん努力はするけどね(笑)。

ポール:ただ、一番嬉しいのはゲームの内容をまったく知らないユーザーに遊んでもらった時、あまりにゲームがおもしろくて、コントローラーを手放せなくなっているような状況を見るときだね。そんな時「良くやった!」と思うんだ。そもそもクオリティが高くておもしろいゲームを作っても、僕らはユーザーが実際に遊んでいる光景を見る機会が、ほとんどどない。そんな時こそフォーカステストってすばらしいって思うね。

―――御社は日本のパブリッシャーとも直接、開発受注をされていますが、日本企業とビジネスを進める上で、何か注意している点や、必要な体制作りなどはありますか?

ポール:日本企業だからどうこう、ということはいえないけど、一般論としては、どんな文化であっても、互いに敬意を払うことは大切だと思うよ。我々が最初に日本のパブリッシャーと仕事をしたのは、2004年のXbox版『アウトラン2』で、日本のセガとだったけど、そこから6年間における我々の経験では、まずお互いの考えや特性に価値があることを、それぞれ理解しないといけない。その上で相手先の日本のパブリッシャーに、自分たちが開発するものの価値を認めてもらう必要があると思っているんだ。今では、この条件が両立していると思っているよ。

たとえば自分たちが考えているアイディアが一番優れていると思い込んでいては、他の考えを受け入れることは難しいよね。でも我々はアイディアなどを共有したり、互いの考えを取り入れることが大事だと思ってきたんだ。そもそもSUMO DIGITALを起業する前から、他のゲームスタジオでもゲーム開発を続けてきたけど、パブリッシャーが必要としていることと、自分たちの考えが必ずしも同じではないということは、自覚してきた。ゲーム作りは単独で進むのではなく、常に協力体制が必要だからね。

ショーン:とはいえ、僕らと日本側の関係は、ただ言われたことを100%受け入れるような、一方通行な体制じゃない。シリーズ物の開発では、タイトルのブランド価値やゲーム性などに敬意を払いつつ、どんな風にすれば今の時代に即したものにできるかなど、たくさんの話し合いを行うんだ。セガやコナミとは、お互いの意図を考慮しつつも、思っていることは隠さずにぶつけ合う、相互的な関係が作れているよ。この中ではエゴの対立はない。とにかく正直につきあうことが大事だ。また日本の文化を尊重することも、ずごく大切な要素だと思っているよ。

ポール:あとは、できるだけ長い時間を共有することかな。仕事が終わった後で一緒にカラオケに行ったり。

ショーン:そもそも僕らは漫画やアニメ、ゲームなど、日本のポップカルチャーが大好きなんだ。ガンダムとか少年ジャンプとか。これはすごく大きいね。

―――それでは最後の質問ですが、世界的に景気が後退する中で、今後のゲーム業界で、どのような生き残り策を考えていらっしゃいますか? 

ショーン:不景気になると、所得に余裕がない人たちは、外食の回数を控えるかもしれない。でもゲームは家の中で長時間遊べるので、それほど買うのに抵抗がないと言われているんだ。このことの正否はわからないけど、少なくとも僕らはユニークな立場にいると思うよ。というのもSUMO DIGITALはFoundation9の傘下にいることで、パブリッシャーとの雑務にふりまわされることなく、おもしろいゲームを作ることに専念できるんだ。しかもEAやアクティビジョン・ブリザード、セガ、コナミ、ディズニーといったメジャー・パブリッシャーとつきあいがあるので、たとえば予算が厳しくなっても、大幅な業務の変更は避けられている。もちろん厳しい状況にかわりはないけどね。

ポール:2つの重要なポイントがあると思っている。1つめは、どんな時でも柔軟な体制がとれること。2つめは、何があってもクオリティを最優先することかな。

―――ありがとうございました。

約30分の取材でしたが、一番印象に残ったのは、ゲームのプレイスタイルの違いでした。日本ではコアゲーマーは長時間黙々とゲームをプレイすることを好む傾向にありますが、欧米では対戦や協力プレイなど、みんなで遊ぶことを好む傾向にあるということです。一説には北米のXbox360のインターネット接続率は約50%だと言われますが、想像以上にオンラインプレイが求められていると感じました。

また『New International Track & Field』で、2007年発売のDSタイトルでありながら、ユーザーコミュニティが前提の仕様になっていた点にも驚かされました。このようにプラットフォーム化を見越したゲーム企画の提案は今後、開発会社においても、ますます求められることが予想されます。また、こうしたオンラインプレイとの親和性の高さが、ネットの口コミ効果やメタクリティックの重要性にもつながっているのでしょう。

こうしたことは頭ではわかっていても、実際にユーザーのゲームシーンを肌身で感じていないと、つい忘れてしまいがちです。そのためにも(同社ではそれほど重要視していないと答えていましたが)、日本企業が海外市場を前提にゲームを開発する場合は、フォーカステストなどを通して、現地の評価を得ることが重要であるように感じられました。

(コーディネート:記野直子/翻訳協力:オーラ・カイ)

「クビにされた人、GDC参加費6万円がタダ」 ― 再就職を支援する試みがスタート

http://www.inside-games.jp/article/2010/04/26/41772.html
「クビにされた業界人は入場無料」という粋な計らいです。

リストラが相次ぐゲーム業界ですが、GDCカナダは最近クビにされた業界人にフリーパスを発行すると発表しました。

GDCカナダはゲーム業界人を中心として様々なカンファレンスが行われる一大会議。2010年5月6日~5月7日に開催される予定です。著名メーカーも多数参加するため求職にはもってこいですが、参加には695カナダドル(約6万5000円)もかかります。

しかし過去12ヵ月にレイオフされたカナダのゲーム業界人なら無料で参加可能。予め登録を済ませた上で、会場に離職証明書を持っていく必要があります。

GDCカナダは「あなたのゲーム開発歴を再始動するためにフリーパスを提供したいと思います」とコメントしています。

カンファレンス側が再就職の支援とはユニークかつ有意義な試み。それだけリストラが激しいということでもありますが、新たな道を見つける人が一人でも増えることを祈るばかりです。