31章
知識じゃないんだよ
■日本語版 31章 p.448
「もちろん、知識じゃないんだよ」(略)
「誰を知っているかなんだ。ところで、父上は魔法試験局の局長とは長年の友人でね――(略)」
■UK版 p.623
‘Of course, it's not what you know,’
‘it's who you know. Now, Father's been friendly with the head of the Wizarding Examinations Authority for years ― (略)’
■試訳
「もちろん、大事なのは何を知ってるかじゃない」
「誰を知ってるかってことさ。ところで、うちの父は魔法試験局の局長と長年の友達なんだ――(略)」
■備考
- マルフォイが試験について喋っているシーン。
- 「知識じゃないんだよ」の部分に違和感。
ここは次の言葉と対になっていて「何を知ってるかじゃない、誰を知ってるかなんだ」だと思う。 - こういうのは「大事なのは~」などとフォロー入れて、対比である事を明確に訳すものだね。
- 対比が全然生きていないから、マルフォイが言いたい事が伝わらない。
- このNowは話を切り替える時のNowで場合によって「さて」「ところで」等と訳される。
ドラコは話を切り替える風を装って、実は切り替えていないという微妙な言い方をしてる。
これが読み手に伝わるかどうかは他の部分の自然さにかかってる。
今日の試験官は~
■日本語版 31章 p.463(※原文は改行なし)
今日の試験官はぽっちゃりした小柄な魔女だったが、ハリーに微笑みかけて、もう行ってよろしいと言ったとき、
ハリーは城に戻る前に、ハグリットに向かって「大丈夫」と親指をさっと上げて見せた。
■UK版 p.632(※原文は改行なし)
When Harry's examiner, a plump little witch this time, smiled at him and told him he could leave,
Harry gave Hagrid a fleeting thumbs-up before heading back to the castle.
■試訳
今日の試験官だった小太りで背の低い魔女が、微笑みながら試験の終わりを告げた。
ハリーはハグリッドに向かって素早く親指を立てて「OK」のサインを送り、それから城の方に戻った。
■備考
- どの巻にも見つかる捩れた訳文の一つ。
- 「見せた」という述語に対して、タイミングを表わす副詞節を二つ(言った時/戻る前に)重ねているために文が破綻している。
二つに分ければもっと訳しやすいだろうにと思われる。
32章
後生だから
■日本語版 32章 p.490
「ハリー、後生だから!」ハーマイオニーが必死で言った。
■UK版 p.648
‘Harry, I'm begging you, please!’ said Hermione desperately.
■試訳
「ハリー、お願いだから!」ハーマイオニーが必死で言った。
■備考
- 詰まるのはその一昔の表現方法だ。
現代の女の子がそんな事言わねーって思っただけで物語から締め出される。
ポッター坊主
■日本語版 32章 p.497
「ポッター坊主の頭が暖炉にあります」
■UK版 p.652
‘It's the Potter boy's head in the fire,’
■備考
- そんなに無理やり訳さないでもよいと思う。
33章
コウモリ鼻糞の呪い
■日本語版 33章 p.
「(略)マルフォイをやっつけた――コウモリ鼻糞の呪い――最高だったね。
やつの顔がものすごいビラビラでべったり覆われちゃってさ。(略)」
■UK版 p.670
‘(略)she got Malfoy ― Bat Bogy Hex ― it was superb,
his whole face was covered in the great flapping things.(略)’
■備考
- このgreat flapping thingsを日本語版では鼻くそに合わせるために「ものすごいビラビラ」としてしまっているけど、
flappingをビラビラしたものというのは無理で、はためくもの、とかバタバタ動くものだろう。
この記述からするとBat Bogy Hexは「コウモリお化け呪い」とでもすべきものだろう。
34章
じゅげむじゅげむ
■日本語版 13章 p.413-414(※原文は発言者表記なし・ルーナのセリフの改行と最後の改行もなし)
(ルーナ)※1「だけど、ブリバリング・ハムディンガーとか、しわしわ角スノーカックがいるなんて、
昔は誰も信じていなかったんだから!」
(ハー)「でも、いないでしょう?」(略)
(ハー)「ブリバリング・ハムディンガーとか、しわしわ角スノーカックなんて、いなかったのよ」
■日本語版 34章 p.551(※原文は発言者表記なし・最後の改行もなし)
(ルーナ)※2「あの部屋に入ってたかもしれない物、なんだかわかる?」(略)
(ハー)「どうせまた、じゅげむじゅげむでしょうよ」ハーマイオニーがこっそり言った。
ネビルが怖さを隠すように小さく笑った。
■UK版 p.236(※原文は発言者表記なし・ルーナのセリフの改行と最後の改行もなし)
(Luna)‘but people used to believe there were no such things
as the Blibbering Humdinger or the Crumple-Horned Snorkack!’
(Her)‘Well, they were right, weren't they?’(略)
(Her)‘There weren't any such things as the Blibbering Humdinger or the Crumple-Horned Snorkack.’
■UK版 p.684(※原文は発言者表記なし・最後の改行もなし)
(Luna)"You know what could be in there?"(略)
(Her)"Something blibbering, no doubt,"said Hermione under her breath
and Neville gave a nervous little laugh.
■備考
- ※1:ルーナとハーのブリバリング・ハムディンガーは存在する、しないというやりとり。
- ※2:それからしばらくしてからルーナがいつもの調子で謎の生物について話そうとするのをハーマイオニーが茶化して、それを聞いたネビルが笑ったというシーン。
※1から考えるとSomething blibberingというのはBlibbering Humdingerの事。
だったら訳も「あのブリバリング何とかに間違いないわね」みたいな感じで繋がりを分かるようにしてほしかった。
※2はじゅげむじゅげむでは何の事か分からない(生き物ですらないし)。
- nervousに「怖さを隠す」という意味は無いのでは?
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- じゅげむじゅげむは落語を連想する... -- 2022-03-31 (木) 02:40:48
- 同じ事思った -- 2023-10-12 (木) 12:19:15
- なるほどそういうやり取りだったんだ。突然じゅげむじゅげむとか意味不明だしそもそもイギリスだし… -- 2023-01-09 (月) 18:16:31
- 日本語版31章p. 463の「次に」から始まる「魔法生物飼育学」の試験内容がわかりづらかったです。きちんと項目別に区切るように読点が使われてないのが原因と思います。「ボウトラックの正しい扱い方」、「火蟹の餌やりと小屋の清掃」、「病気の一角獣の食餌の選択」が試験項目なのだが、小屋の清掃が読点で挟まれているので、次の食餌を選ぶことと並列に読めてしまいます。UK版はp.661をみるとすっきりしました。 -- 2023-10-22 (日) 22:45:52
- 日本語版34章p.546:「石坑」に「せきこう」とフリガナが振ってあります。ネットで検索しても「せっこう」と読むのが基本のようです。「石坑」を「せきこう」と読むと、別の意味になるのでしょうか? -- 2023-10-30 (月) 18:22:52
- 日本語版34章p.547:「尖ったアーチ」をそのまま理解すると、「尖った半円形のアーチ」となります。UK版p.712には、「The pointed archway」とあるので、「尖頭アーチ」ということなのでしょうか?建築に詳しい方教えてください。 -- 2023-10-30 (月) 18:40:03
- 日本語版32章p.499:「隠密探知呪文」は忍者っぽさを感じるが「Stealth Sensoring Spells」の良訳かもしれない。google翻訳だと、ステルスたいう単語が一般化されたためか「ステルス感知呪文」となります。 -- 2023-12-30 (土) 10:09:24