炎のゴブレット/13~16章

Last-modified: 2024-04-12 (金) 23:51:04
 

13章

原文にないダッシュ

■日本語版 13章 p.300
「占い学」はハリーの一番嫌いな科目だ――「魔法薬学」はまた別格だが。

■UK版 p.183
Divination was his least favourite subject, apart from Potions.

■試訳
「魔法薬学」を除けば、ハリーの一番嫌いな科目は「占い学」だった。

■備考

  • 原文にないダッシュが使われている。
  • なお、電子版では以下のように変更されている。
    「占い学」はハリーのいちばん嫌いな科目だ――「魔法薬学」を別にすればの話だが。

グショグショ

■日本語版 13章 p.301
グショグショした野菜畑

■UK版 p.172
the sodden vegetable patch

■試訳

  1. ぬかるんだ野菜畑
  2. ずぶぬれの野菜畑

■備考

  • グショグショは地の文としてふさわしくない。
    「ぬかるんだ」や「ずぶぬれの」などとすべき。

心配事もお預け

■日本語版 13章 p.301
温室でスプラウト先生にいままで見たこともないような醜い植物を見せられて、心配事もお預けになった。

■UK版 p.172
he was distracted by Professor Sprout showing the class the ugliest plants Harry had ever seen.

■試訳
温室でスプラウト教授に今までに見た中で最も醜い植物を見せられたため、気が紛れた。

■備考

  • お預けは約束や計画に対して使う言葉で、不安な事に対しては使わないはず。

二つ目のバーン

■日本語版 13章 p.317
バーン!
(略)二つ目のバーンだ。

■UK版 p.180
BANG!
(略)he heard a second loud BANG,

■試訳
「バーン!」という音が聞こえた。
(略)二度目の大きな「バーン」という音が聞こえた。

■備考

  • 「バーン!」だけだと意味不明なので訳す時は工夫すべき。
  • あと「二つ目のバーン」という表現に違和感。
    二つ目より二度目とした方が適切では?

さよう!

■日本語版 13章 p.319
「さよう!」とムーディ。

■UK版 p.182
“Yep,” said Moody.

■試訳
「ああ!」とムーディは答えた。

■備考

  • 「さよう(左様)」は時代劇の印象が強く、現代イギリスが舞台の作品には似つかわしくない。

銘々皿

■日本語版 13章 p.322
それからハーマイオニーはビーフシチューを三人の銘々皿に取り分けた。

■UK版 p.183
Hermione began doling beef casserole onto each of their plates.

■試訳
ハーマイオニーはビーフキャセロールをそれぞれの皿に取り分けた。

■備考

  • 銘々皿は、5枚1組の直径13cm前後の小皿で
    ビーフシチューが入る様な皿じゃないと思うんですが。
  • 「それぞれの皿に取り分けた」のが無難は無難かね…
  • それよりビーフキャセロールはシチューにしなくても良いんじゃないのかな。
    鍋ごと食卓に出す料理だから取り分けているんだよね。
    英国らしい料理だし、雰囲気出してると思うんだけど…


14章

「苦痛」

■日本語版 14章 p.334
「苦痛」ムーディーが静かに言った。

■UK版 p.190
"Pain," said Moody softly.

■試訳

  1. 「そう、苦痛だ」
  2. 「苦痛の魔法だ」

■備考

  • 英語では日本語で「××とは」「つまり××だ」とか言いそうな場面で、名詞だけ投げる事がある。
  • ムーディーは授業で蜘蛛にクルーシオを掛けたけど、
    原文では呪文に「苦しめ」とか付け加えないから、
    蜘蛛にどんなショックが与えられたか生徒達は様子で理解する。
    ムーディーの"Pain"はその答え。
  • 日本語らしく言葉を補うと「そう、苦痛だ」という感じ。
    これを「今のは苦痛を与える魔法だよ」と詳しく言い過ぎたら迫力無いし
    まんま「苦痛」とだけ訳すと邦訳読者には分かり難い訳だね。
  • 「そう“苦痛”だ」「“苦痛”の魔法だ」の様に苦痛を強調しても良いかもね。


15章

針山

■日本語版 15章 p.363(※原文は改行なし)
「(略)お忘れではないでしょうね、トーマス、あなたの針山は、何度やっても、
だれかが針を持って近づくと、怖がって、丸まってばかりいたでしょう!」

■UK版 p.205(※原文は改行なし)
‘(略)I might remind you that your pincushion, Thomas, still curls up
in fright if anyone approaches it with a pin!’

■備考

  • マクゴナガル先生がディーン・トーマスに言うセリフ。
  • still curls upと現在形でマクゴナガル先生は喋ってるから
    「あなたの針山と来たら、未だに恐怖に怯えて丸まるのよね!」という意味では?
  • 1文目の主語を変える意味とは?マクゴナガル教授が少し嫌味たらしく聞こえる。

赤むけ その2

■日本語版 15章 p.367(※原文は改行無し)
煤けた肖像画の何枚かが汚れ落としされた。
描かれた本人たちはこれが気に入らず、額縁の中で背中を丸めて座り込み、
ブツブツ文句を言っては、赤むけになった顔を触ってギクリとしていた。

■UK版 p.208(※原文は改行無し)
Several grimy portraits had been scrubbed, much to the displeasure of
their subjects, who sat huddled in their frames muttering
darkly and wincing as they felt their raw pink faces.

■試訳
何枚もの汚れた肖像画がゴシゴシ洗われた。描かれた本人達は大いに
迷惑がり、額縁の中で縮こまってぶつぶつ文句を言ったり
ひりひりするピンクの顔に触れては顔をしかめている。

■備考

  • 赤剥け=皮膚などが擦りむけて赤くなっていること。また、その部分。
  • ボーバトンとダームストラングが来るので城が大掃除され、長年良い感じに汚れていた肖像画の人物達が
    いきなり綺麗な顔にされて嫌がって落ち着かない様子が描かれている訳だが、
    原文にあるraw pink facesの中で一番注目しなくてはならないのはrawの部分。
    これは正に皮膚が擦り剥けてたり、擦り剥けないまでもこすれてヒリヒリ痛くなってる状態の時に良く使う表現。
    つまり肖像画さん達もゴシゴシ擦られ過ぎて、本当にヒリヒリ痛かったんだと思われる。
    今まで出てきた中では一番「赤むけ」に近いと言えるが、「きれいになったピンクの顔」とでも訳すのが無難。
  • またwinceには「顔をしかめる」という訳語が有るのだから「ギクリ」では無く、それを使うべきだと思う。

16章

作れない

■日本語版 16章 p.392
「ホグワーツじゃ、ああいう女の子は作れない!」
「ホグワーツだって、女の子はちゃんと作れるよ」

■UK版 p.223
‘They don't make them like that at Hogwarts!’
‘They make them OK at Hogwarts,’

■試訳
「ホグワーツじゃ女の子はああ(魅力的に)はならないよ!」
「ホグワーツの女の子だってそう悪くはないさ」

■備考

  • ボーバトンの女学生を見たロンとハリーのセリフ。
  • この場合のmakeっていうのは英語によくあるただの言い回しで
    本当に「作る」という意味で使われてる訳じゃないけど。
    (勿論ロンはジョークで女の子をモノ扱いした言い方をしてるけどね)
  • こう言うのは直訳だと変だからもっと意訳でも良いと思う。
  • それからここでのハリーのThey make them OKのOKって言うのは
    「いい」よりは「まあまあ」っていう意味合いが強い。

くり抜きかぼちゃ

■日本語版 16章 p.415
くり抜きかぼちゃ

■UK版 p.236
carved pumpkins

■試訳
かぼちゃのランタン

■備考

  • 場面がハロウィンなので「くりぬき~」でも分からなくは無いが、直訳過ぎて工夫が足りない。

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  • 「そう、苦痛だ」とかダサすぎw 「苦痛」でじゅうぶん -- 2021-09-19 (日) 20:17:22
    • ダサくはない。草をはやすようなことでもない。名詞そのままを、邦訳でも名詞のみにすると日本語ネイティブからすると"据わりが悪い"(から翻訳者は気をつけたほうが良いのでは)という指摘じゃないのかな? -- 2021-09-20 (月) 01:21:01
    • 実際の日本語の会話で、この場面で「苦痛」の名詞だけ喋ることなんてありますか? 不自然すぎる訳はダサいかダサくないか以前の問題ですよね。 -- 2021-09-21 (火) 21:17:00
      • 確かに名詞だけ喋ることなんてありえんな -- 2022-12-13 (火) 07:02:46
  • くり抜きかぼちゃも直訳すぎる -- 2024-03-02 (土) 19:44:52
  • バーンは気になってた -- 2024-04-10 (水) 17:37:40