目次
概要
紙にレーザープリンタ・コピー機等でプリント基板パターンを印刷し、このトナーをアイロンにより生基板に熱転写してレジストとし、エッチングを行いプリント基板を作成
参照
- この記事を書いた後に行ったLM386を用いたベース用小型簡易アンプの製作も参考にして下さい。
- 更に分かったノウハウなどが書いてあるかも。
特徴
- 一般的な用具で作れる
- それなりに高速。
- 気が向いたら気軽にすぐ作れる。
- たいした基板じゃなくても作ろうと思う。
- コストが低い
揃える物
- (富士フイルムインクジェット用紙)画彩シリーズ・マット仕上げ(ぶどうの表紙)
- 富士のインクジェット紙で一番低グレードと思われる(ぺらぺらな紙で、1袋300円強くらいだった気が。A4
一枚の版下台が3円w) - 葡萄と林檎
- 同一の展着材で紙の厚さが違うと思われる。
- リンゴの方が厚みがあり、熱が伝わりづらく転写しづらいという声もある
- リンゴの方が高いので葡萄を選択。無かったので文具店で取り寄せした。コジマ電器で売っていることを確認。
- 富士のインクジェット紙で一番低グレードと思われる(ぺらぺらな紙で、1袋300円強くらいだった気が。A4
- レーザープリンタ
- 確かcanonを使った。
- 生基板
- PCBマテリアルズで10cm四方を10枚500円で購入(FR-4)。
- ガラエポ、紙フェノ共に成功しています。
- 特に酸化もしていないのでクレンザー等で表面を荒らすことはしていませんが問題ありませんでした。
- アイロン
- 普通のやつ。
- エッチング液
- 画材屋(店の名前を忘れた。後日書きます)で版画用腐食液を購入。
- 大変安い。1L300円くらい?ちなみに袋を使うので1Lも要らない。
- 基板用の必要なし。サンハヤトは数倍のぼったくり価格で売っています。なんの問題無く使えます。ただし廃液処理剤は付属せず。
- 服などについたら直ぐ洗剤で洗い流さないと落ちない。ちなみに直ぐ洗濯したら残ることなく落ちた。
- 画材屋(店の名前を忘れた。後日書きます)で版画用腐食液を購入。
- ジップロック
- 消しゴム
- 洗面器
- タオル
手順
版下印刷
左右反転について(CADごとの違い)
- 各レイヤーはエッチング可能幅を大幅に下回っていてもいいので何かしらのテキストを入れておくと、レイヤー反転ミスを防げる(エッチングでボロボロになっても人が読めて表裏がわかればいいので)
- 普通のCAD(含むEagle)は、トップレイヤーから半透過の基板=レイヤーを見下ろしている感じで編集している。
- このことはボトムレイヤー(半田面)にテキストをおくと反転することからもわかる(部品面から見て反転している文字は、半田面から見ると普通に読める文字となるので)
- ボトムレイヤーなどはCADによってはテキストを扱うときのために左右反転できるものもあるけど・・・
- 編集画面はどのCADでも大体同じだと思うが、印刷時の扱いはCADによって違うのかも??どちらのCADを使っているか把握してください。
- 非反転で印刷→編集画面通りに印刷されるもの(普通はこうだと思う。Eagleも。一般的には印刷はあくまで基板編集の確認印刷用であり、製品を作るためのデータではないため。)
- このタイプだと、ボトムにおいたテキスト(編集時に鏡文字状態)が、印刷時にもそのまま鏡文字として印刷される
- 非反転で印刷→反転されて印刷(印刷によるプリント基板目的で設計されたCADにおいては考えられるかも)
- 非反転で印刷→編集画面通りに印刷されるもの(普通はこうだと思う。Eagleも。一般的には印刷はあくまで基板編集の確認印刷用であり、製品を作るためのデータではないため。)
左右反転について(アイロン転写法における設定)
- 脳が混乱しない考え方(Eagleなどの通常の表示画面がそのまま印刷されるタイプのCADにおいて)
- 印刷した紙はトップビュー(=編集画面と同じ)における、レイヤーの1枚と考えられる(ボトムからトップに向かって、ボトム葡萄紙/ボトム銅箔/ガラエポ/トップ銅箔/トップ葡萄紙<-----View)
- ボトムレイヤー(ハンダ面)
- 上記の考え方により、編集画面におけるボトムレイヤーと印刷結果は等価であり、編集画面の見た目どおりとなる。→ボトムは非反転(鏡文字状態)
- トップレイヤー(部品面)
- レイヤーがそのまま印刷され、それを銅箔の上に置くと確かに正しいレイヤーとなるが、それだとトナーが銅箔の面に来ずアイロンに転写されてしまう→トップは反転(鏡文字状態?)
印刷
- 葡萄の光沢面にCADで生成したパターンを印刷
- 黒→銅箔パターン、白→銅箔除去より、ポジ印刷(非反転)多分。
- Eagleの印刷設定は以下をON
- Black(モノクロパターン。確か)
- Solid(ねじ穴の座金を黒ベタで埋める?どうでもいいオプションなのかも知れない・・・。
版下の下準備
- 葡萄の光沢面にレーザーで印刷
- 余白を残し鋏で切る
- 端ぎりぎりはアイロンが傾き、圧力不足に陥るため 版下とターゲット
アイロン余熱(設定温度)
- やってみたところ、どうやら松下のアイロンで中と高の中間がよさげ。
- 中だと転写不足の部分が出てくる
- 150~160度がいいという説がある。しかし、今回は様子を見ながら時間などを調整したら、特に温度は気にせずとも成功したのでそれで良いと思う。
仮転写
方法
- 表面のみさっと濡らし、最小限の水で接着して位置を出す
- 裏まで濡らさない。紙の寸法が狂い、パターンが狂う。特に大きな基板や両面基板
- 透けたパターンで位置をあわせる 水で接着
- 仮転写する
- 鉛直に体重をかけるようにアイロンを押しつける→浮かせて場所を変えるを繰り返す。
- 紙が乾き、ある程度接着される程度にアイロンがけをする
- これによりトナーが溶け、仮止めされる→今後濡らしてもパターン伸縮の恐れが無くなる。 仮転写後
転写圧力について
- 弱すぎると転写不足によるパターン切れ
- 強すぎるとパターン潰れによる短絡
- 特に横に擦り付ける時にトナーが一方向に流れることに注意しながら転写
- アイロンの根本の方で普通に押すように転写し、最後は保険として、トナー流れに気をつけ圧力を加減しながら擦り、アイロンの平滑度の影響が出ないようにした。
- アイロンの温度が最適温度より低い場合?押しただけでは転写不足でトナー剥がれがあった。そこでアイロン温度を中から中・高の間に上げ、アイロンの根本のRをつかってラミネーターのようにゆっくり動かしながら線で圧をかけて転写したら、結果的には上手く行ってた。
- 一方、シビアなパターン設計をしていると、ベタが一方向に対して滲んだ経験もあり。
- つまり、「押しつける←→スライドさせる」の判断は各々の経験でどうぞ。どちらが適するかは場合によるっぽいです。転写不足ならスライドにするのがいいかも。
- 高確率で再現性の良いパターン転写を行うための総論としては・・・
- パターン幅を16mil以上、推奨24milまで極端に太くする。
- ベタのアイソレーションを16milとする。
- 上記2つを代償とする代わり、アイロン温度を中・高の間以上にあげて、線荷重でゆっくりしっかり擦り付け、滲みを恐れないやや溶け気味側の確実な転写を行う。
- これらの条件で十分余裕のあるパターン転写が可能となります
本転写
- 基板を水に浸す
- パターンが透けるまで水を吸わせる
- 上の仮止めによって、紙の伸縮が防げている 本転写直前
- 仮転写と同様に、アイロンを擦らず押しつけるようにしてしっかりと転写
- 仮転写よりも時間をかける。基板裏まで火が通る感じに行う。
- 本転写では最終仕上がりに直に影響するため、特に上記の「転写圧力について」に注意してここぞとばかりに実践すべし。
- ここが本番であり全てです。
- 特にベタの溶け流れによるパターンとの短絡に注意。
- 紙の端は転写が弱くなりがちなので注意。先端などを使って。
- 紙の角を数mm持ち上げて、角のトナー展着部分が簡単に剥離しないようであれば、加熱は十分とみてよいと思う。
版下剥離
- 紙を濡らす
- ぬれタオルをかける
- アイロンを当て、紙を蒸らす
- アイロンを外し、すぐさま蒸らされた紙を爪でつまむようにピローっと剥がす。
- 紙が蒸されて透き通っているうちに紙を層状に剥がしていく
- 最初は爪で摘むように
- 最後は指の腹で擦り落とすように
- 紙が蒸されて透き通っているうちに紙を層状に剥がしていく
- 余熱で紙が徐々に透き通らなくなっていくので、蒸らし作業を再度行う
- これを4、5回ほど繰り返して、葡萄の台紙部分を大体除去する
- ここは適当なところでやめて大丈夫です。次の段階で一気に取れるので。
残留版下除去
- 水で濡らし(または水中で)指の腹で擦るようにすると、ぽろぽろと取れる 紙が漂う
- ある程度除去したら水から引き上げる これが水から引き上げた直後。一見綺麗に除去されているように見えるが・・・
- タオルドライ→軽く乾燥させる
- 乾かすとこのように全く紙が取れていないことが分かる
- このように、確認しながら指で擦って大まかな紙を除去する
- 仕上げとして、紙が湿った状態で消しゴムで擦ると、完全に除去される
- 歯ブラシやクレンザーなども試したが消しゴムが最強!。大きなMONO消しが使い勝手が良かった。
- 柔らかめのゴムの固まりでも行けるかもしれない?
- このように乾燥させても白く浮く紙が無い状態になれば、版は完成!
- 極端に紙の繊維が残っているとエッチング不良の恐れあり。
- 一方、展着不良の場合、指や消しゴムで擦っているとどんどんとトナーがかけてしまったりもする。
- この場合は、タオルで拭いた直後、全体が白みがかっているのがうっすら分かる程度まで紙が除去できていて、パターン間の谷に紙が詰まっていないようであれば、十分エッチングに成功する。
- 従って、ここで終了としてパターンを温存する。
- ただし、欠けたパターンは次のステップで補修できるので、パターン欠けを意識する余り、紙の除去が不十分となってしまうとパターン短絡の恐れがあるので注意する。
- ベタなどのトナー上の紙繊維はもともと人畜無害です。
- 半乾きの状態でも露骨に白が浮かない&パターン間に紙がない状態を目処に終了する
手作業によるレジスト修正
説明
- 転写不良による、版下剥離時に欠損してしまったパターンを修正します。
- レジストペンはゼブラ社・マッキー極細(両端タイプ、細と極細)
- マッキーで十分な成功事例を持っています。パターン修正だけであれば、入手性と値段が悪い専用のレジストペンは不要と言い切れます。
- 主に「細」サイドを使います。
- 一方、マッキーだけで基板を作ろうとしても、エッチング時にマッキーが溶けて流れてしまいレジストになりません。あくまで修正用には十分すぎる性能を持つペンであると認識して、トナーと併用して下さい。
やり方
- 共通事項
- 可能な限り太いペンを使う。
- インク量の観点から
- 線を引く、点を打つのではなく、インクを盛るイメージで。
- 点を叩き打つようにすると、インクが過剰に盛られ、若干浮き上がる形で溶剤が飛び、盛り上がる形でインクが残る。
- これによって厚い皮膜を確保し、溶け出てしまう事を防ぐ
- 線は点の集合で構成する様にすると、厚いレジストができます。
- 要となる部分の修復では、一旦乾いたら再び軽くインクを乗せる感じにすると良いかも。
- 可能な限り太いペンを使う。
- ベタ修正
- 転写が上手くいっていても、どうしてもベタにはピンホールが開くのでこれを修正
- 「細」をつかって、ピンホールにインクを出し、引き上げてペン先に集まったところで離す
- ランド修正
- 盛るぜ~盛るぜ~超盛るぜ~。トントントン
- 銅色が透けて見えない程度に盛ることができれば、ランドが丸ごと消えたとしても完全に残すことができます。
- パターン修正
- なるべく細でw 24milラインなら細でいけます。
- ベタに打ったテキスト
- 転写は既に終わっているので、ベタ面積を増やすために塗りつぶしても可!
基板切断
- 基板を切断する。転写前に切断した方がいいのかもしれないが、切断時のバリでアイロンが浮く恐れがあったので後にした。
エッチング
- ジップロックに基板を入れ、エッチング液を入れる
- 密着したとき最小限+α程度になるような量で十分 エッチング液の量
- 風呂に入り、湯船につかりながら、エッチング袋をお湯に浮かべて温度を40度くらいまで上げる。
- ある程度温度が上がったら、袋を揉んだり揺すったりして、液を攪拌。
- 冷めてきてしまったら再び湯船に落とし、銅箔が無くなるまでこれを繰り返す
- 自分が風呂から上がる頃には十分エッチングが進みます
- 最後に風呂場のシャワーで水洗いして終了。
- 常に塗れた場所で作業しているので汚れが定着する恐れがなくてよい。服にもかからないし。
- エッチング液は再利用できるので、ジップロックごと安全の為何かの容器に入れて保管。
エッチング完了。銅箔が無くなり、基板の色が見えている。
トナー除去
- 細かい目のサンドペーパーを使って水研ぎして、レジストであるトナーを除去する
- 灯油やシンナーが使えるという説もあるが、やった感じダメだった。
- クレンザーやメラミンフォームも力不足だった
- 普通に800~1000等のペーパーで一瞬で、パターンが無くなったりすることもないので推奨します。
- コツ
- 力を多少入れても大丈夫です。なでろとまでは言いません
- 最初は全体を満遍なく適当に。
- 銅箔が見えてきたら、親指の先に軽く力を入れるようにすると、局所的に落ちていく
エッチング完了品
- ランド中央の点は0.3mil トナー滲みもなく、しっかりと除去されている。
- パターン幅はできないことも無いが、転写で気を使わなくても良いように、ある程度太くする方が良かった(後で最小パターン幅などの情報を書きたいと思います。確か可能な限り20mil位にしたような。最小12?16?)
- ベタパターンのアイソレートは大きく離すこと。ベタは伸びやすかったです。
- フォントは読めるほどには転写されていますが切れ気味。フォントサイズも後で乗せます。確か8milくらいだったような。
穴開け
- ドリルは0.1mmステップの再研磨品を買ったが、ダイソーにピンバイスタイプの0.8mmなどが売っているのでそれを使う方が入手性と価格がいいかも?ただガラエポだと即死するのかも。
- Eagleでdrill-aid.ulpでランド中心にポンチ代わりのくぼみを付けておく。
- 0.3milでやったが、チゼルを乗せるのがすごく難しかったので0.4milの方がいいかも。ただ中心精度がずれちゃうかもしれないけど
- リューターにドリルをチャックし、フットペダルを付けて電源側で開閉した。
- 最初にすべて0.6mmなどで下穴を開けた方が楽だった。
- 大きなドリルは弾かれやすい
- 惰性でほんの少し回転させながら、滑り落とすようにチゼルエッジをセンターポンチに収める。停止時だと刃先が滑らず上手く行かない。
参考文献
- 以下のサイトを参考に、独自にミックスしたり工夫したりと挑戦させていただきました。
- このホビー技術の研究をおこない、最適な条件をネットにあげて広く広めて下さった先人の方々に、この場を持って深く感謝申し上げます。
- http://elegan-konya.at.webry.info/200904/article_1.html
- 特にこちらのサイトの手法を主軸に置き、アレンジさせていただきました。
- http://yoshiokasyd.web.fc2.com/AVR/PCB2.htm
- http://homepage3.nifty.com/bitmechakoubou/bit/copy/copy.htm
- http://www12.plala.or.jp/Chappy-DIY/diy49.html
- http://zao.jp/airon/
- http://www.oyajin.jp/~toko/pic/0060/index.html
- http://blog.goo.ne.jp/yas_1963/e/d664ebf3693604f2531c6ce848bc6c3c
- http://www.netlaputa.ne.jp/~yasuu/Denki/Lp-Timer/Kiban/
- http://d.hatena.ne.jp/Guitars590/20090927/1254062543
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- ほっけみりんさん、ノウハウ提供ありがとうございます。 -- ばんと? 2010-08-02 (月) 21:57:09
- そういっていただけるとこちらとしても幸いです。またノウハウができましたらこちらにも教えていただければ幸いです -- 管理人? 2010-08-02 (月) 23:15:37
- こんなやり方もあるんですね -- 執事? 2010-11-26 (金) 23:32:07
- トナーの除去には服の汚れ落しに使う「ベンジン」をティシュに含ませてこすればすぐ落ちますよ。 -- 農家? 2013-07-23 (火) 22:28:18
- 紙の繊維の除去には苛性ソーダの10-20%溶液にしばらくつけておくときれいに取れます。トナーにはまったく影響なし。 -- 農家? 2013-07-23 (火) 22:32:34
- 参考にさせていただきました。ありがとうございます。トナー除去はアセトンでも一発です。版下剥離は蒸らすよりも熱湯で煮ちゃう感じで熱々のうちに剥がすと綺麗にできます。 -- 酒? 2015-07-17 (金) 22:57:13
- トナー除去のノウハウありがとうございました。とても参考になりました -- ほっけ? 2015-07-18 (土) 13:02:51
- 「手作業によるレジスト修正」ですが、昔手書きで基板を作っていました。その時は赤色マジックを使っていました(黒だとダメ)。こちらだと1から手書きでもOKでしたのでお試しください。 -- ラック? 2015-12-12 (土) 08:50:01
- 「手作業によるレジスト修正」ですが、昔手書きで基板を作っていました。その時は赤色マジックを使っていました(黒だとダメ)。こちらだと1から手書きでもOKでしたのでお試しください。 -- ラック? 2015-12-12 (土) 09:01:42
- ラックさん、赤マジックの方がいいという情報、ありがとうございます -- ほっけ? 2016-07-27 (水) 20:02:59