ストーブの革ポンプカップの製作

Last-modified: 2020-08-19 (水) 01:03:52

はじめに

  • ポンプカップの死亡
    • 所有のコールマンのガソリンストーブ508Aの加圧用のポンピングカップが2年前あたりから時々不調で、たまに空振りすることがあったのだが、先日使うために久しぶりに取り出し加圧してみたところ、スカスカに動き一切圧をかけることができなくなっていた。
      オイルをぐちょぐちょになるまで入れたり、グリスを塗布したりしてみたが、全く駄目で、根本的対処が必要になってしまったようである。
    • 新品のポンプカップ写真と見比べると、本来は断面がコの字であるカップが、一度側面に癒着したのか√みたいな断面となり、長さが異なる状態になっていた。これではポンピングできない・・・
  • 補修方法の検討
    • コールマンのポンプカップは共通部品で、ゴム製のネオプレーンポンプカップと、それより100円ほど高いポンプカップ皮がある
    • ゴムは劣化するだろうし(事実した)、真偽は知らないが油さえくれ続ければ皮の方が長持ちするようである。また、なじんだ後は皮の方がポンピングの感覚が気持ちいいという眉唾な声もあるようだ。
    • ゴムはこんな風に自ら成型できないが、皮は水を使えば簡単に成型できる。以前レザークラフトをかじったことがあるので、皮なら簡単に作れそうだなと思った。
    • ということでたかだか210円の部品ではあるが、お金をかけずに高級な皮カップを作り、508Aを復活させるのが今回の目的である。ダメなら210円の正規品を買うw

作り方

材料の入手

  • 牛革といったそんな高級な部材を使ってられない。目標は\0である。
  • 手芸屋で皮を買うと大変高い。そこでワークマン。作業用の革手袋(豚)が200円くらいで手に入ると思うので、その端っこを切り取り手袋としての機能は温存させることで無駄ない消費となる。
  • 余った革手袋は起きた炭をつかんだり(えっ・・・)鉄板やランタンを触ったり、溶接したりとまぁ万能なので無駄はない。
  • 今回不要な豚革エプロンの一部をちょっと借用して作った。材料費0

ポンプの分解

  • 比較的長めのラジペン(短いとポンプノブと干渉する)をポンプの黒プラの溝に引っかけ、ちょっと回してロックを解除する。固着が無ければ軽々外せる。
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  • ポンプを引き出す
    • 真ん中に残る真鍮の角棒はチェックバルブの機能を更に確実なものとするためのネジ式の栓。ポンプノブを回すとこの棒がまわって、加圧エアと燃料の逆流を防ぐ。
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  • 真鍮の角棒(栓)を回して取り出す
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皮の切り出し

  • サイズ比較用の10円玉。大体これだけあれば十分
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  • 切り出しの円を書くための治具を探す。
    • ペットボトルのキャップが丁度ポンプカップの押しプラより一回り大きく良い感じだったのでお勧め
    • (後述:後に取り付けて実際に使用したところ、このサイズは完璧でした。ペットボトルの蓋の、面ではなく線で接地する方の径で切り抜くことを推奨します)
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  • キャップ+ボールペンでけがいて、ハサミで裁断
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ポンプカップの分解

  • 写真が暗くて見づらいかもしれないが、押しプラ/ポンプカップ/固定用の爪付きワッシャーの順番で真鍮パイプに刺さっている
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  • 爪付きワッシャーをラジオペンチで取り外す
    • ゴムとワッシャーの間にラジペンの先を入れ、爪のある部分(3箇所)を均等に持ち上げるように外せば、変形は最小限に留めて外すことができます。
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皮の成形

  • 皮を水中で揉むように洗って、水をしっかりと含ませ柔らかくする。
  • 水をしっかりと絞る
  • 濡れた皮をポンプのシリンダーの上に中心をあわせて置く。
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  • 押しプラのみをその上から押し込み、皮を成形する
    • プラの突起は手前側に。
    • かなり堅いが、プラを割らない程度に押し込む。
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  • 内径は手前と奥で2段階になっているので、実際に加圧される細い領域まで押し込む
    • 鉛筆やラジペンの先をつかって均等に円を書くようにプラを押すと入っていく
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  • 日なたで半日~1日乾かす。
    • 生乾き程度になったら大丈夫
    • 次の作業で変形する恐れがあるので、余裕があれば完全に乾かす方がいいと思う。

革の取り出し

  • 乾燥した革を取り出す
    • ラジペンで押しプラをつまみ、引き抜く
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  • 厚さはこんな感じ
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  • 内部はこんな
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  • 裏側はこんな
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穴開け

  • 真鍮パイプを通すための穴を開ける
    • 革ポンチで、と言いたいところだがそんな特殊工具がないので(ダイソーで5本組100円で売ってたりするのだがw)、万能な彫刻刀で。
    • 押しプラを使ってマジックでけがき、丸刀で抜いていく
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  • 完成品
    • 結構それっぽいが果たして加圧できるのだろうか・・・
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装着

  • 押しプラを真鍮パイプに通す
    • 突起は棒の先端にむける
  • 革カップの穴に押しプラの突起をはめ込む
  • ワッシャーの爪が引っかるまでしっかりと押し込む
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  • カップの縁に適当な鉱物油(チェックバルブを殺す恐れが無ければ何でもいいと思う)を塗る
  • シリンダーに挿入する
    • 革が湿気を帯びてまだ柔らかくても大丈夫。
    • シリンダーの入口に指を添えるようにして、ポンプの柄を回転させるようにしてカップを回せばすべての縁がシリンダーに収まる。
    • 最初は引っかかる感じがあるが、ゆっくり底がつくまで押し込む。
  • 注油する
  • プラキャップを締める
  • 10回くらいポンピングする
    • 最初はぎゅっぎゅとした感じだが、10回くらいポンピングした辺りから革が馴染み、すこすこ入るようになる。
    • ネオプレーンポンプカップと余り違いを感じない。違和感がない。

点火

  • 自作製カップでも何ら問題無くフル加圧でき、無事に点火できた。祝復活!
    • ペットボトルの蓋の直径が素晴らしく良い塩梅だった。

おわりに

  • 火器のポンプカップが死んでも、自分で簡単に革ポンプカップを作ることができる事が分かった。
    • 材料は200円程度で売られている、溶接などに用いる安価な豚革の手袋などで十分機能を果たす事が分かった。
    • 革の直径はペットボトルの蓋と同じサイズにすると上手く行くことが分かった。
    • 自作カップを試したところ、市販品との違いが認められなかった。
  • 革の加工よりもポンプの分解の方が手間がかかり、新品のカップを買って取り付けるのと結局手間はそこまで変わらないと感じたので、気軽に作れる物だと思うので、ちょっと時間があれば試してみる価値は十分あると感じた。

コメント質問お気軽にどうぞ

  • ポンプカップを探して -- ポンプカップ? 2013-02-19 (火) 16:28:38
  • ポンプカップを探してて、こちらのサイトにつきました。早速、試しました。うまくいきました。大変ありがたく、貴重なアイデアを頂戴いたしました。本当にありがとうございました。 -- ポンプカップ? 2013-02-19 (火) 16:37:25
  • お役に立ててよかったです。割と簡単に作れたので自分でも驚きでした。 -- ほっけみりん? 2013-03-16 (土) 09:31:48
  • 大変すばらしい記事を共有してくださりありがとうございました。 -- 2013-05-10 (金) 16:07:11
  • 素晴らしい。39。 -- ninnikutoichi? 2013-07-05 (金) 20:40:34
  • なるほど!久々にすばらしい記事を見つけた!!たぶん革の厚さがポイントでしょうね。色々試してみます。 -- くま? 2013-07-24 (水) 18:56:36
  • 早速試してみた♪アンタ天才だわ!不覚にもこのアイデアまったく気づかなかった!恐れ入りました。レザークラフトをかじった方がコールマンのメンテをするという稀な組み合わせで生まれた裏業だな♪コレは!ホント表彰もんだけどコールマンからヒットマンが出向く可能性もある!ワケないか。。。イヤ久々に役立つネタに出会いました。ありがとう!! -- くま? 2013-07-25 (木) 15:20:55
  • 素晴らしい!Fantastic!我が家のツーマントル、508ストーブも見事に復活!感謝感謝の大感激!ポンピングの滑らかさも皮ならではです。作成方法の簡単さ、術式の細かさに脱帽いたしました。貴重な経験がこの珠玉なパーツを生み出されたと思います。ありがとうございました。 -- テツ? 2013-08-13 (火) 09:10:37
  • 早速作ってみました。 -- misenomono? 2013-12-26 (木) 12:44:34
  • 素晴らしい、明日早速作成予定。 -- カップ77? 2014-02-18 (火) 21:59:30
  • 自分の508もそろそろポンプカップ交換だなぁと検索してココへ来ました。とても参考になりましたありがとうございます☆後日作ってみようと思います♪ -- ヤマナカ? 2014-12-06 (土) 17:09:33
  • 素晴らしいです。30年も前の2バーナー、シングルストーブ、複数のランタンのポンプカップが劣化してるので全て補修しようと思います!! -- まさ+? 2015-03-08 (日) 23:19:29
  • 自分は噴霧器に使う革パッキンを使用してます。ほぼ同一サイズがありますよ。値段も一個50円くらいです。 -- 2015-04-11 (土) 18:56:49
  • 情報ありがとうございます、革パッキン、今度考慮してみたいと思います -- hokke? 2015-04-29 (水) 11:00:26
  • やってみました。工具箱に100円の自転車のエアポンプ用皮パッキンを見つけ、かなり皮が厚く、穴も大きすぎかと思いましたがやってみたら全然大丈夫でした。すでに30年まえのツーバーナーが新品の時よりもいい感触でポンピングできました。 -- タロイモ? 2015-06-07 (日) 16:25:49
  • 途中でアップしてしまいました。続きです。  これで味をしめたので、ピークワンのストーブとランタンのポンプも直してみようと思います。ありがとうございました。 -- タロイモ? 2015-06-07 (日) 16:32:51
  • 色々代用となる皮カップの存在があるんですね、皆さん情報ありがとうございます -- ほっけみりん? 2015-06-14 (日) 14:30:30
  • 古い草焼きバーナーの革パッキンを作成させていただきました。ありがとうございました -- 火炎放射器? 2016-11-13 (日) 22:15:45
  • 素晴らしい。30年前インドで買ってきたバーナーを車中泊で使おうと試したら加圧不能でした。もう少しで廃棄するところでした。 -- 誤苦労? 2019-05-01 (水) 17:21:23
  • お役に立ててなによりです。古い道具を愛着もって整備して使い続けることに感銘です。 -- ほっけみりん? 2020-08-19 (水) 01:03:52