モルタル球シフトノブ製作

Last-modified: 2012-04-23 (月) 21:44:26

はじめに

S2000の純正シフトノブの位置は高く、かつ純正ノブは俵型であるため、余計に高くなってしまう。横から握る人にとっては最適な高さであるとは思うが、自分は上からつかみたいのでちょっと合わない。

そして金属ノブなので夏と冬がアウトである。実際マイチェン後に革巻きに変更になった。

純正ノブの重さに近い球型のノブを探すものも、4k~10k円とあまりに高い。シフトノブぼったくりすぎだろ・・・。というかホンダ純正TypeRノブくらいしかよさげな選択肢が無い。Fitの純正も2500円で球で良いかなと思ったが、ちょっとボールがでかいのと全体的に背が高いのでNG

ということで、安価に非金属製の球型シフトノブを自作してみようと思い立った。

目的

球型の雌型にモルタルを打ち、球型の非金属シフトノブを作成する。

素人のコンクリ基礎知識

当方、素人なので最低限の知識を適当に調べてメモ。間違ってるかも。悪しからず・・・。セメント/モルタル/コンクリは適宜読み替えでよろしく。

とりあえずコンクリは打設後もずーっと生きているということを念頭に置くと分かりやすいっぽい。

固まるメカニズム

  • セメントが水と反応すると、粒子間を埋めるように新たな微細粒子が生じることで固まるので、セメントを打ったら混ぜないこと。
  • 一度固まると、水で溶ける事は無い。

養生

  • セメントが固まるメカニズムは、上記のとおり粘土のそれとは違う。水が蒸発して固まるのではなく、固まるために水が必要。そのため、打設後も水分が必要。しっかりと強くなるまで子守りが要る
  • 打設後のコンクリが乾かないように水をかけたり、濡れたもので囲う、シートで包む、小さな製品を水につけるなどの必要がある。これを養生という。
  • 養生は1週間ほど必要。強度がある程度出るまで行う。
  • 凍らせると固まらなくなるため、冬期は考慮する必要がある。ただしコンクリを加熱してはならない。

強度の発現

  • コンクリート内部では硬化反応が月・年単位で進行している。そのため、固まって数日では必要な強度が生まれない。
  • 打設当日は手ではほぼ動かなくなった状態でもほとんど硬化は始まっていない。1~2日すぎると硬化がかなり進行する。このとき水が化合するため一見乾いたように見える。
  • 気温が低いと強度の発現が遅い。しかし、長期的強度はこちらの方がでるらしい。

水セメント比

  • 水とセメントの重量比を水セメント比(W/C)といい、通常は0.4~0.6
    • 体積比で無いので注意。重量比は案外感覚では分からないと感じた
  • セメントの硬化に必要な最低限の水があれば、強度の強いコンクリとなる。しかし水が少ないと流動性に欠け打設しづらく、硬化時にひび割れやすくなるため養生が難しくなる。
  • 一方で流動性の確保のために水を多く入れると、硬化に関与しない水が多くなり、低強度なコンクリートとなる。このため、適切な水セメント比を選択する必要がある
  • 水を過剰に入れるとセメント同士は結合できなくなる。このため、用具等を水で洗い流すことが可能。

  • 離型剤塗布済みのコンパネもあるが、普通のコンパネに離型材を使わなくても普通に離型できるという噂・・・。
    • 長ボルトにより間隔をたもったコンパネ2枚にコンクリを打って、コンパネを外したあと、はみ出たボルトが錆びないように既製のコンクリっぽい栓で埋めたのが、よく見かけるコンクリの壁についてる丸いえくぼっぽいやつ
  • 今回は軟質塩ビの型を使ったが果たして。。

材料の選定

作戦

球を作るのは難しい。旋盤でのジュラコンや金属球削りだしというのはそれ自体が難しいし、そもそも設備が無い。

既存の球を再利用することも検討したが、自分の手にフィットする5~6cmの球が意外と無い。テニスボールとピンポン球/ゴルフボールの間を埋めるボールが無いのだ。ビリヤードは入手性が・・・。ホームセンターを見たところ、犬用の遊具ボールが丁度良かったのだがw さすがに質量が足りないし、柔らかいのでNGである。

既存の球がNGとなると、新たに球を作るしか無い。先述の理由により樹脂か何かを球の中で固める必要がある。S2はショートストロークなので、ノブにある程度の重さは欲しい。となるとポリエステル樹脂じゃダメか。というかそもそもポリエステル樹脂が高いし取り扱いが面倒だ。

と探しているとセメントに行き着く。セメントは水と反応して固まる接着剤みたいなもので、砂を固めりゃモルタル、砂と石を固めりゃコンクリになる。想像に容易いが、用途が用途だけに大量に必要になり、単価は非常に安い。その辺のホームセンターにも売っているし、既に砂と混ぜてある補修用モルタルがどの百均にも売っている。

美味いことに、密度は2.2程度でアルミより若干軽い程度。試算すると直径5cmの球で純正ノブと同じ重さくらいになる。しかもひんやり冷たい。見た目も垢抜けない。自由に成形できるし、硬化時間も適切、固まるまでなら水で洗浄できるので設備も簡単。こいつはうめぇ!

型の選定

ホームセンターと100均へ行って5cm位の球の雌型を探す。が、いい物が見つからない。とりあえず球は6cmが標準らしく、5cmのものはほとんどなかった。雄型ならいっぱいあるんだけど・・・。空気で膨らませてあるタイプも多い。内部が1気圧のものでないと型として使えない。
泣く泣く、謎のバスケットボール風の塩ビ製ボール(中空)を購入。100円で8cmと6cm入り。後者を使用。
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セメントの選定

5種類位売ってた。タイル用の白いやつ、水場用、ブロック用、白、灰色みたいな。
白はタイルの目地のように真っ白で綺麗だったが、真っ白なノブだとちょっと浮くのと軽くDQN臭がして嫌だったし、モルタルで作っているのにその個性を殺してしまう。ってことで、固く冷たく無愛想な感じすることを評価して、これぞセメント!な色を買ってきたw

セリアで250g、ダイソーは種類によるが400g、500g、600gが各100円。今回は600g100円。ホームセンターで20kg買っても確か数百円だったと思うが、使うのは150g程度なので買ったところで困る。

シフトノブの作成

へそのカット

  • ボールのへその部分を摘むようにボールを潰し、カッターナイフでへそを切り取る
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ナットのけがき

  • M10ナットをあてがい、ボールペンでけがく
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穴開け

  • ハサミの先端を使い、ナットがはまるような穴を開ける。
  • ボールが歪まずかつナットが落下しないように調整する。
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モルタル密度の計算

  • 600g袋に記載の標準施工面積40*34*0.3 [cm]より、密度は1.47、通常のモルタルよりも低密度のようだ。

仕上がり重量の試算

  • 試算結果に応じて、砂やら錘の検討をする。通常のモルタル密度を2.2 [g/cm3]と大体シフトノブサイズで適切な重量になったような(140~200g)。
  • 球の体積4/3πr^3より、今回使った6cm球の体積は113 [cm3]、密度1.47としてその質量は166 [g] 純正ノブが150g、TypeRノブが140gと考えると適正かなー、ってことで錘や骨材の追加は無し。ナットの重量分だけ重い方向にシフトすると思われる。

ナットの準備

  • M10*1.5(並目)のナット3つか4つをボルトにゆるくはめる。
    • (お金のある人は長ナットをどうぞ・・・。適当に転がってたのを流用しただけなので)
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  • セメントが侵入して固着しないように、ナット側面と先端の穴をテープで塞ぐ。
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セメント注入

  • 袋に書いてある分量を目安にセメントに水を加えてこねる。
  • 紙コップと棒アイスの木の棒が最適。溶けたアイスクリーム位の硬さに調整する。
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  • このセメントは作業時間は15分以内、硬化時間10hらしい。
  • 棒アイスの棒ですくい取り、穴に入れる。満たした後にトントンして脱泡する。
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ナットの挿入

  • ボルトに通したナットをツライチ寸前まで入れる。穴の径が適切ならセメントはほとんど漏れてこない。
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  • 漏れ出た分は可能な限り拭き取るか、水が侵入しない程度に洗う。

硬化と養生

初期硬化(0-3日)

  • トイレットペーパーの芯を輪切りし放置
    • ボールで養生されているのでそちらは問題無いと思うが、ナットの接合面は乾燥していきそうだったので塗れティッシュを巻きつけ、1日1回水を与えた。

養生1(3-?日)

  • 3日目、ボールを持った感じ弾性が感じられなくなったので、そこそこ固まったようだ。
    • しかし、2日目に、同じように固まったかのように見えた紙コップのセメントを離型してみようと思ったら、表面だけ剥離した。内部はまだまだ固まっていなかったので、型を握りつぶしたり離型を試みるにはまだまだ危険な硬度と思われる。特に今回は水が多いので。
    • ちょっかいを出さず、優しく取り扱うことにした。離型はまだ先。
  • 型ごと水養生にシフト
    • ボールが変形しなくなったので、手に持って適当な容器に移して型ごと水に沈めた。邪魔なボルトはこの段階で取り外した。
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離型

  • 14日後、写真のラインでカッターナイフで切開。
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  • ガムテープを一周巻いて裂け防止
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  • 破らないようにめくる。お、いい感じ?
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  • 型の底を押しだし離型。・・・うわ?水がっ!!
    • 型の上部の方はしっかりとつるんと美しい球に固まっていたものの、型の底の方は水が溜まっており、砂利っぽく微妙に固まっていなかった。
    • 試しに水で洗ってみたらやはり若干流れてゆく。ジャガイモのようにボコボコにorz
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  • 型の上部はここまで完璧なのに・・・
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  • ボコボコである。握った感じ、触感、サイズ、重さともに完璧だったのに。これは上手く行けばかなり期待できる。今度こそ。
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反省と対策

今回は型の上部はしっかりと硬化したものの、下部が硬化不良で結果、球にならなかった。次回に備えてしっかりと考察と対策を行いたい。今度こそは・・・orz

下部が硬化しなかった原因の考察と対策

  • 締固め不足
    • 締固めが不足だった→今回はトントンが10回程度と足りなかった可能性がある。よく叩いて締固める。
  • 水セメント比が間違っていた
    • 定量的な測定を行わず、モルタルを手でこねたときの硬さで判断してしまった。→重量をしっかり測定する。打設に問題無い程度まで水の量を減らす。
  • 水養生への移行時期
    • 水養生への移行時期が早すぎ、型の隙間から入った水とモルタルが混ざり、硬化する限度を超えてしまった→1週間は水養生を行わない。ただし、型表面の場合、水が侵入するのは型上部からであり、下部がそうなった原因とは考えづらい
    • 水養生への移行時期が早すぎ、ナットを塞いでいたマスキングテープが漏水し、ナットの穴経由で底の方から水とモルタルが混ざり、硬化しなくなった→1週間は水養生を行わない。側面テープはやめ長ナットを使う。止水はホットボンドなどより漏水しない物を使う。
  • 寒中コンクリートだった
    • 屋外で硬化させたため、養生中に氷点下となった可能性も十分考えられる→屋内で管理し、氷点下とならないようにする。

まとめ

モルタルと軟質塩ビボールでよさげな感じのシフトノブが作れることは確認できた。
重量、形状、硬化などの基本的な部分は良好であることが確認できた。
しかし、型の底のモルタルが硬化不良を起こしたため、いびつな形状となってしまった。水コンクリート比の厳密な管理や、水養生の移行時期などの時期を検討し、再び挑戦する予定。

参考文献

コメント等ご自由にどうぞ

  • ボールによる密閉状態で、コンクリ乾燥時の水分の逃げ場がなくなったのが失敗の原因では? -- 金クリート? 2012-04-23 (月) 21:44:25