ヴェーンの手記
…大災厄から五十年以上が過ぎた。
しかし、私に老化の兆しは見えない。
恐らく他の四人も同じであろう。
村人たちが怪しみ始めている。
騒ぎになる前に村を出なければならない。
こうして元の世界に帰ることもできず、
私は永久にさまよい続けるのか…
……長年考えてきたことを実行に移す。
大災厄は自然の防衛機能と私は考えている。
人間が自然と対立することなく生きられれば
この機能は発動しないはずだ。
そして、私の流浪の生活も終わる。
神がかりなことをしなければならないが、
安住の地を得るためには仕方がない……
……試みは失敗であった。
破壊なしに前進できない愚かな生き物、
それが人間だ。
この世界に人間が存在する限り、大災厄は
何度でもやって来るだろう。
それを力ずくで抑え込んだ私たち五人も、
愚かな者の仲間だ……
ヴェーンの手記 付記
ブルークォーツ。清らかな輝き。
虚無に捕われた私が持つ唯一の光。
戻ることのない故郷の想い出。
情けない、石ごときに慰められるとは!
手放してしまえば、踏み出せるのか?
全てを終らせる、破壊と開放の道へ……。