アズカバンの囚人/19章

Last-modified: 2023-10-12 (木) 12:45:06
 

復讐は蜜より甘い

■日本語版 19章 p.466
「復讐は蜜より甘い」

■UK版 p.264
"Vengeance is very sweet,"

■試訳
「復讐とは甘美なものだ」

■備考

  • 明らかな誤訳では無いが、スネイプの台詞としてなら甘美の方が受け入れ易い。

待っていた

■日本語版 19章 p.477
「こいつがわたしを追ってくるとわかっていた!こいつがわたしを狙って戻ってくるとわかっていた! 十二年も、わたしはこのときを待っていた。」

■UK版 p.269-270
‘I knew he'd come after me! I knew he'd be back for me! I've been waiting for this for twelve years!’

■試訳
「十二年間、ずっとこのときが来ると思っていた。」

■備考

  • シリウスに追い詰められたピーターのセリフ。
  • 「このときを待っていた」としてしまうと、ピーターがシリウスを待ち侘びていた様に感じられる。
    三行目を「十二年間、ずっとこのときが来ると思っていた」等とした方が良い。

ヘコヘコ その1

■日本語版 19章 p.480
「(省略)わたしがいつ、自分より強く、力のある人たちにヘコヘコした?(省略)」

■UK版 p.271
‘(省略)When did I ever sneak around people who were stronger and more powerful than myself?(省略)’

■試訳
「俺が自分より強い奴や力のある奴らにすり寄ったことがあるか?」

■備考

  • 追い詰められたピーターに「ヴォルデモートのスパイだったろう」と言われ、憤然と言い返すシリウスのセリフ。
  • 「ヘコヘコ」と言う表現が可笑しくて真剣に怒っている感じがしない。
    「すり寄る」「へつらう」「媚びる」等、この場合に相応しいちゃんとした日本語があるのに
    この様な奇妙な言い方にした理由が分からない。
    また「力のある人たち」という言い方も丁寧過ぎて怒っているセリフに相応しくない。
  • 更にセリフの全体に何となく力が入ってない感じがするのは
    When did I~を直訳し過ぎてるせいもあるのでは無いだろうか。
    シリウスが言いたいのは「俺は自分より強い奴らにへつらったことはない」とか
    「俺は自分より強い奴らにへつらうような人間じゃない」という事。
    こんな時、When did I~というのは英語ならではという感じもある。
    そのまま日本語で「わたしが(俺が)いつ~」と訳しても迫力が出ないので
    試訳の様にした方が良いのではないか。

『あの人』に密通

■日本語版 19章 p.487-488
「おまえはジェームズとリリーが死ぬ一年も前から、『あの人』に密通していた! おまえがスパイだった!」

■UK版 p.274
‘YOU'D BEEN PASSING INFORMATION TO HIM FOR A YEAR BEFORE LILY AND JAMES DIED! YOU WERE HIS SPY!’
(怒鳴っているから大文字)

■試訳
「お前はリリーとジェイムズが死ぬ一年も前からヴォルデモートに情報を流していた! お前は奴のスパイだった!」

■備考

  • クライマックス、叫びの屋敷でピーターの正体を暴いたシリウスがブチ切れるシーン。
  • 邦訳はHIMが「あいつ」でも「あの男」でもなく勝手に『あの人(You-Know-Who)』に変えられている。
    『あの人』と言う呼び方はヴォルデモートを恐れている証であり、それを登場当初から使っているかいないか
    ― それは原作者が提示した、キャラを理解する上での重要な鍵の一つである。
    (勿論、シリウスは『あの人』と言う様なヘタレでは無い)
    翻訳者は「あいつ」等では誰を指すか子供には分かり難いと思い、よく使われていた『あの人』にしたのかもしれないが、
    キャラクターを大切に思っている人間にとってはショックであり無神経とも取れる訳であった。
    仮に『あの人』がYou-Know-Whoを表していなくても、
    親友を殺され人生を滅茶苦茶にされた大の男が怒りの頂点で使う言葉として可笑しい。
  • また間違いでは無いが、「密通」は男女の秘め事としての意味合いの方が一般的である。

ヘコヘコ その2

■日本語版 19章 p.489
「このヘコヘコしている碌でなしは、あのとき君も死んでいたら、それを平然と眺めていたはずだ。(省略)」

■UK版 p.275
‘This cringing bit of filth would have seen you die, too, without turning a hair.(省略)’

■試訳
「この薄汚い腰抜け野郎は、目の前でおまえが殺されたとしても平然としていただろう」

■備考

  • ピーターを殺すのを止めようとしたハリーに対するシリウスのセリフ。
  • ここでも「ヘコヘコ」と言う変な表現が場面の緊張感を台無しにしている。
    またwould have seen you dieとは「死ぬ(殺される)ところを眺めていただろう」と言う意味だが、
    邦訳では「死んでいたら~眺めていたはずだ」となっているせいで「死体を眺めていた」とも解釈出来る為、
    分かり難い文になっている。

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  • ヘコヘコは気になってた -- 2022-08-06 (土) 16:41:51