吟遊詩人ビードルの物語 ‘The Tales of Beedle the Bard’

Last-modified: 2024-01-28 (日) 21:28:56

古代ルーン語

■日本語版
原語の古代ルーン語からの翻訳 ハーマイオニー・グレンジャー

■UK版
Translated from the original runes by Hermione Granger

■備考

  • 『吟遊詩人ビードルの物語』のサブタイトル。
  • 「ルーン語」という言語は存在しない。

お伽草子

■日本語版 物語を始める前に vi
「吟遊詩人ビードルの物語」は、魔法界の子どもたちのために書かれたお伽草子です。

■UK版 Introduction xi
The Tales of Beedle the Bard is a collection of stories written for young wizards and witches.

■備考

  • ビードルの前書き第一文目。
  • 「お伽草子」と言われると、どうしても室町時代の浦島太郎とか一寸法師とか純和風な物語を想像してしまう。
    「おとぎ話」と言いたかったのか?
  • 普通に「物語」や「お話」の方がいい。
    若い子向けだから百歩譲って「童話」でも「おとぎ話」でも良いだろうに、何で草子…
  • 電子版では「童話集」に修正されている。

一方「吟遊詩人ビードルの物語」でも苦労する点は同じ

■日本語版 物語を始める前に vi-vii
しかし、ひとつだけ大きく違うところがあります。
それは、マグルのお伽噺の多くでは、魔法が主人公を苦しめる根本的な原因になることが多い、ということです――
悪い魔女が毒リンゴを与える、お姫様を百年の眠りに落す、王子様を醜い獣に変えてしまう、などがそれです。
一方「吟遊詩人ビードルの物語」でも、主人公自身が魔法を使えるにも係わらず、問題の解決に苦労するという点はマグルの場合と同じです。

■UK版 Introduction xi-xii
However, there was one very obvious difference.
In Muggle fairy tales, magic tended to lie at the root of the hero or heroine's troubles -
the wicked witch had poisoned the apple, put the princess into a hundred years' sleep or turned the prince into a hideous beast.
In The Tales of Beedle the Bard, on the other hand, we meet heroes and heroines who can perform magic themselves, and yet find it just as hard to solve their problems as we do.

■試訳
しかし、ひとつとてもはっきりした違いがあります。
マグルのおとぎ話では、魔法が主人公達を厄介ごとに巻き込む原因となりがちです――
悪い魔女が毒リンゴをつくり、お姫さまを百年の眠りにつかせ、王子さまを醜い野獣にかえてしまいます。
一方、「吟遊詩人ビードルの物語」で私たちは、自ら魔法を使うことの出来るヒーローやヒロイン達に出会います。そして、それでも彼らが問題を解決するのに私たちと同じくらい苦労していることに気がつくのです。

■備考

  • 「一方」という言葉に続いて、「ビードルの物語でも苦労する点は同じ」と書いているのは変。
  • 違いの説明するなら、「一方、○○では」としないといけないのに「一方、○○でも」とした時点で日本語終わってるね。
  • 電子版では以下のように修正されている。
    しかし、非常に明らかな違いが1つあります。
    マグルのおとぎ話では、悪い魔女がリンゴに毒を盛ったり、お姫様を百年の眠りにつかせたり、王子様を醜いけものに変えてしまったりと、
    大抵の場合、魔法によって主人公に災いがもたらされます。
    一方の『吟遊詩人ビードルの物語』では主人公が魔法を操りますが、私たちと同じように問題の解決に四苦八苦します。

めでたし、めでたし

■日本語版 物語を始める前に viii
そしてこのお話だけは、「めでたし、めでたし」では終わりません。

■UK版 Introduction xiii
but there is no ‘happily ever after’ at the end of her tale.

■備考

  • 「毛だらけ心臓の魔法戦士」のみバッドエンドである事を示す一文。
  • 邦訳では「毛だらけ心臓の魔法戦士」以外の話は文字通り「めでたし、めでたし。」で終わる。
    原書にはそんなもの無い。
    何で勝手に付け足すかな…。

悪(わる)

■日本語版 物語を始める前に ix
ビードルはマグルのことを、(わる)ではなく無知なものとみなしていた

■試訳

  • (あく)

■備考

  • 態々「わる」何てルビを振らなくても「あく」で良いじゃないか…。

マグル的特徴

■日本語版 物語を始める前に ix(※原文は改行無し)
そのような行きすぎた魔法行為は、残忍さ、無関心、
または傲慢さによる能力の濫用といった、過度にマグル的特徴に根ざしていると考えていました。

■UK版 Introduction xiii(※原文は改行無し)
and he bilieved that the worst excesses of wizardkind sprang from the all-too-human traits of cruelty,
apathy or arrogant misapplication of their own talents.

■試訳

  • そして彼はそのような魔法族による最悪の乱行は、残酷さ、冷淡さ、
    自らの力を悪用する傲慢さといった、あまりにも人間的な習性から生じるのだと考えていました。

■備考

  • マグルは悪じゃなくて無知でビードルは好意を抱いてたんだけど、
    「残忍、無関心、傲慢」というのはマグル的特徴だと思っていたの?
    闇魔術を使う人はマグル的なの? 何か支離滅裂じゃない?
  • 原文では、all-too-human traits(あまりにも人間的な習性)と書いてある。
    このhuman(人間)にはマグルも魔法族も入っているはず。
    なので、ちゃんと魔法族の人間的弱さを認めている。
  • 電子版では「魔法族による行きすぎた悪行は、残酷さや冷淡さ、自らの力を悪用する傲慢さといった、人間的な性質から生じていると信じていました。」に修正されている。

ポンポン跳ぶポット

■日本語版 p.1
ポンポン跳ぶポット

■UK版 p.3
Hopping Pot

■備考

  • ポットっていうと自分は魔法瓶とか水差しを思い浮かべるんだけど…
  • 英語だと、壷やかめ、鉢、瓶、深鍋も全部pot(ポット)なんだよ。
    日本語のポットより、ずっと対象範囲が広い。
    本編を訳す時に、作者にどんなポットなのか聞いてみれば良かったのに。
  • ポンポンと軽やかな擬音も適切ではない。

ガラン、ガラン、ガラン

■日本語版 p.8(※原文は改行無し)
つぎの朝も、ポットは朝食のテーブルまで、ポンポン跳びながらしつこくついてきました。
ガラン、ガラン、ガラン。真鍮足のポットが跳びはねます。

■UK版 p.6(※原文は改行無し)
and next morning the pot insisted upon hopping after him to the breakfast table.
Clang, clang, clang, went the brass-footed pot,

■備考

  • 真鍮の足で飛び跳ねてるからガンガン、バンバン音がしてるんだよ。
    ガラン、ガランだと鐘みたいだけど、訳者の選んだ擬音が適切じゃないだけだ。
    ポンポンと軽やかな擬音も添えてあるのは、7巻でHopping Potを「ポンポン跳ぶポット」と訳してしまったから。

本を粉々にしてくれ

■日本語版 p.27
激しくゲーゲー吐きはじめ、早く本をどこかに持っていって粉々にしてくれ、と頼むのである。

■UK版 p.18
uncontrollable retching, followed by an immediate demand to have the book taken from them and mashed into pulp.

■備考

  • 本を「粉々にする」何て言わないと思う。

損傷不可能性

■日本語版 p.79(※原文は改行無し)
この物語は、魔法の中でも最も強い誘惑であり、
かつ認知度のきわめて低い「損傷不可能性」の探求という誘惑に触れている。

■UK版 p.56(※原文は改行無し)
It addresses one of the greatest, and least acknowledged, temtations of magic:
the quest for invulnerability.

■試訳

  • この物語が扱っているのは、傷つかない自己への探求であり、
    多くの者は認めないが、最も強く人を魅了する魔法のひとつである。

■備考

  • 損傷不可能性と言うとややこしいけれど、要するに不死身の事ですよね?
  • また、最も強い誘惑なのに認知度(知っている割合?理解している割合?)が最も低いの辺りがよく分かりませんでした。
  • 「~誘惑であり、~という誘惑に触れている」という文章構成が可笑しい。
    「認知度」だの「損傷不可能性」だの自分でも意味を把握しないまま使ってるとしか思えない。

ペチャクチャ切り株

■日本語版 p.85
ペチャクチャ切り株

■UK版 p.63
Cackling Stump

■備考

  • 作中ではcacklingを「ケタケタ笑う」と訳してるから、
    7巻がなければ絶対「笑う切り株」にしていたはず。

ニワトコの別称

■日本語版 p.142
接骨木/註6 ニワトコの別称
■日本語版 p.145
庭常/註8 ニワトコの別称

■UK版 p.101
Ellhorn/6 An old name for "elder".
■UK版 p.103
Eldrun /8 Also an old name for "elder".

■試訳

  1. エルホーン/註6 エルダー(ニワトコ)の古称
    エルドラン/註8 エルダー(ニワトコ)の古称
  2. エルホーン/註6 エルダー(ニワトコ)の古い呼び名
    エルドラン/註8 エルダー(ニワトコ)の古い呼び名

■備考

  • どちらも「別称」ではなく、読みは「にわとこ」。
    「別称」という日本語の意味を知らないのだろうか…
  • これは注釈の訳なんだから「エルホーン」「エルドラン」と書いて
    「エルダー(ニワトコ)の古い呼び名」と書けば良いのに。
  • 原書で、EllhornとかEldrunとかの「古称」が使われているのは
    古い文献からの引用という設定だからだよね。
    そういう作者の狙いもまるで分かってないんだろうけど、漢字や当て字にしただけで「別称」とするのは酷い。

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  • ニワトコの別称のとこ、さすがにひどいな -- 2022-03-21 (月) 14:10:01
    • 別称というよりただの当て字... -- 2022-04-26 (火) 13:03:35
    • 日本語版ハリポタは当て字がチラホラある気が -- 2023-02-17 (金) 11:22:34
  • お伽草子という言葉を見た時に思い浮かんだ画は、和綴の本、カチカチ山や浦島太郎などの物語、和服を着た子どもでした。松岡さんの訳だと思うとこちらの本は買う気になれず、図書館で目を通したきりです… -- 2022-03-23 (水) 23:38:33
    • その気持ちわかる・・・ -- 2022-04-21 (木) 16:48:36
    • 松岡佑子訳じゃない数少ないローリングの作品のカジュアル・ベイカンシーおすすめしとく -- 2022-10-21 (金) 17:38:54
  • マグル的特徴って... -- 2022-04-05 (火) 02:44:40
    • 意味不明よな -- 2023-07-25 (火) 18:35:33
  • 「めでたし、めでたし」日本の昔話かな? -- 2023-07-06 (木) 11:13:04
    • 個人的にはこれは通じてると思う 概ね対応している語では? -- 2023-08-11 (金) 04:08:08
      • 一番の問題は物語の最後にも原文にない「めでたし、めでたし」を付け足してることだと思うわ -- 2023-08-13 (日) 05:37:42