不死鳥の騎士団/11~17章

Last-modified: 2023-12-23 (土) 13:23:36
 

11章

やつがれ

■日本語版 11章 p.334
「(略)しかし、私の死を愚弄する生徒がいることには、この(やつがれ)、慣れております!」

■UK版 p.189
‘(略)But I am quite used to students poking fun at my death, I assure you!’

■備考

  • ニックのセリフ。古い。
  • 一人称が統一されていない。

やつがれ 【▽僕】 (代)
〔「奴吾(やつこあれ)」の転。古くは「やつかれ」〕一人称。
自分自身をへりくだっていう。上代では男女ともに用いた。
「亦―憂へまうす所なり/日本書紀(安閑訓)」
〔近世には、男性がやや改まった場で用い、明治以降は書生言葉などで用いられた〕

12章

赤むけ

■日本語版 12章 p.360(※原文は改行無し)
「それで君たちにはテストが控えているのである。
先生たちは君たちの神経を擦り減らして赤剥けにする」

■UK版 p.204(※原文は改行無し)
‘So you've got your exams coming up, haven't you?
They'll be keeping your noses so hard to that grindstone, they'll be rubbed raw,’

■試訳
「だからテストが待ちかまえているじゃないか。
5年生は徹底的に勉強に集中させられるよ。神経がやられちゃうぜ」

■備考

  • 赤剥け=皮膚などが擦りむけて赤くなっていること。また、その部分。
  • keep your nose to the grindstoneは慣用表現で「気をそらすことなく一生懸命やること」。
    (引用:クリストファー・ベルトン著作)
    (grindstone(砥石)で研磨する仕事は気をそらすと大怪我をしてしまうかららしい)
    3行目のbe rubbed rawは「神経を逆なでされる」と言う意味。
    つまりフレッドはOWLを控えたハーマイオニーに「試験勉強は(他になにも出来ないくらい)非常にハードだ」、
    「(適当にサボらないと)神経がもたない」と例の危ないスナックを勧めているんだろう。

いたずら書き

■日本語版 12章 p.364
残りの三十五分は、ロンと二人で羊皮紙の端にいたずら書きして遊んだ。

■UK版(初期版) p.207
he spent the remaining hour and twenty minutes playing hangman on a corner of his parchment with Ron,

■UK版(後期版)
he spent the remaining thirty-five minutes playing hangman on a corner of his parchment with Ron,

■試訳

  1. 残りの三十五分は、ロンと二人で羊皮紙の端でハングマンをして遊んだ。
  2. 残りの三十五分は、ロンと二人で羊皮紙の端で単語当てゲームをして遊んだ。

■備考

  • hangmanはハングマン(単語当てゲーム)の事。
  • 携帯版は「残りの三十五分は、ロンと二人で羊皮紙の端で文字当てゲームをして遊んだ。」に変更されているが、修正としてはやや不十分。
  • なおUK版の初期版だと時間の部分が1時間20分(hour and twenty minutes)になっているが、
    後期版では日本語版と同じ35分(thirty-five minutes)に変更されてる為、恐らく原作者側のミス。

猫撫で声

■日本語版 12章 p.370
「教えてくれ、ポッター」スネイプが猫撫で声で言った。「字が読めるのか?」
■日本語版 12章 p.386
「ここは学校です。ミスター・ポッター。現実世界ではありません」先生が猫撫で声で言った。
■日本語版 20章 p.34
「そうね。家畜番は、新鮮な空気がなかなか吸えないでしょうしね」アンブリッジが猫撫で声で言った。

■UK版 p.211
‘Tell me, Potter,’ said Snape softly, ‘can you read?’
■UK版 p.220
‘This is school, Mr Potter, not the real world,’ she said softly.
■UK版 p.387
‘Yes, as gamekeeper fresh air must be so difficult to come by,’
said Umbridge sweetly.

■備考

  • 猫撫で声(ねこなでごえ)
     猫をなでるように、当りをやわらかく発する声。相手をなつかせようとするときの声。
     猫が人になでられたときに発するような、きげんを取るためのやさしくこびる声。
  • スネイプはハリーに対して皮肉を込めてるんだから、「猫撫で声」というのは可笑しい。
  • アンブリッジには裏があるから猫撫で声でも良いかもしれないが、
    この場合は「静かに言った」・「優しい口調で言った」・「優しく言った」位が妥当では?

現実世界

■日本語版 12章 p.385
現実世界
■日本語版 12章 p.386
現実世界

■UK版 p.220
the real world?
■UK版 p.220
the real world,

■試訳
実社会

■備考

  • 学校が現実では無いのなら大の大人で魔法省の高官が子供相手に躍起になるなと思うし、
    そもそも二人とも虚構の世界の住人なんだけどと思わずにはいられない。
  • 学校は虚構や空想の世界では無い。
  • 「学校」の対義語は「社会」。

13章

オレンジ色の蕪

■日本語版 13章 p.413
ルーナはオレンジ色の蕪をイヤリング代わりに着けていた。

■UK版 p.236
Luna was wearing what looked like a pair of orange radishes for earring,

■試訳
ルーナはオレンジ色のラディッシュのようなものを耳につけていた。

■備考

  • 『オレンジ色のラディッシュのようなもの=蕪』と決め付けてるね。
    日本人はラディッシュ何て知らないとでも思っているのか。
  • 勝手に和風の物に置き換えちゃうのも不愉快だが、
    “ラディッシュのような物”と書いてあるのに“蕪”と断定しているのが問題だと思う。
    まさか後からこの植物が別の植物だと判明するとは思っていなかったのだろうが、
    “のような物”の部分には意味があったんだから、勝手に削るとか無神経な訳をしないで貰いたい。

14章

)の位置

■日本語版 14章 p.469
明日の「日刊予言者新聞」を読んでみたまえ! 僕からはこれだけ言っておこう――いま現在アンブリッジ先生に進んで協力する姿勢を見せた生徒は、二年後に首席になる可能性が非常に高い!)。

■UK版 p.267
see the Dairy Prophet tomorrow!). I shall say only this - a student who shows himself willing to help Professor Umbridge now may be very well-placed for Head Boyship in a couple of years!

■試訳
明日の「日刊予言者新聞」を読んでみたまえ!) 僕からはこれだけ言っておこう――いま現在アンブリッジ先生に進んで協力する姿勢を見せた生徒は、二年後に首席になる可能性が非常に高い!

■備考

  • パーシーからのアドバイスは、カッコの外。

オイローパ・氷と子鼠

■日本語版 14章 p.473
「(略)オイローパは氷で覆われているの。子鼠じゃないわ。(略)」

■UK版 p.269
‘(略)Europa's covered in ice, not mice -(略)’

■試訳
「エウロパは(アイス)で覆われているの。子鼠(マイス)じゃないわ。」

■備考

  • ハーマイオニーのセリフ。
  • 原文は「ice」「mice」と言葉遊びになっているが、氷と子鼠では意味が分からない。
  • オイローパは日本で定着している物なら「エウロパ」、英語らしくするなら「ユーロパ」では?

15章

覆水盆に返らず

■日本語版 15章 p.517
マートラップ液のボウルを割らなければよかったと後悔した。
■日本語版 15章 p.518
マートラップ液は覆水盆に返らずだった。

■UK版 p.294
He wished he had not smashed the bowl of Murtlap essence.
■UK版 p.294
but there was no returning the Murtlap essence to the bowl.

■試訳
彼はマートラップ液のボウルが壊れないように願った。
しかしマートラップ液がボウルに戻ることはなかった。

■備考

  • 普通で良いんだけどと言うのは置いておいて。
    「覆水盆に返らず」は「やってしまったことは取り返しがつかない」「壊れた物は直せない」の様な例えで
    本気で液体の状態を表現している訳では無い。
    原文では「マートラップ液は戻せなかった」と状況を説明してるだけなのだから
    ここを諺で表現するのは不適切に感じる。
    と言うかコーヒーが覆水盆に返らずとかいう説明を今まで読んだ事が無い。斬新。

16章

最後の二回

■日本語版 16章 p.520
ロンはさらに四回のクィディッチの練習を、そのうち最後の二回は怒鳴られずにこなし、

■UK版 p.295
Ron had had four more Quidditch practices and not been shouted at during the last two;

■試訳
ロンはさらに四回クィディッチの練習を重ね、後半の二回は怒鳴られることなくこなした。

■備考

  • the last twoの直訳と思われる。
    語順の納まりが悪いのも気になるのが、「最後」とは「一番終わりの一つ」であって「最後の2つ」とは言わない。
    しかも100回の内の99回目と100回目ならまだしも、4回のうちの3回目と4回目。

鼻先

■日本語版 16章 p.528(※原文は改行無し)
暖炉脇の薄暗い一角には、爪先まで分厚い黒いベールに身を包んだ魔女がいた。
ベールが少し突き出しているので、かろうじて魔女の鼻先だけが見えた。

■UK版 p.300(※原文は改行無し)
in a shadowy corner beside the fireplace sat a witch with a thick,
black veil that fell to her toes. They could just see the tip of her
nose because it caused the veil to protrude slightly.

■試訳
暖炉脇の薄暗い一角には、爪先まで分厚い黒いベールに身を包んだ魔女がいた。
ベールが少し突き出しているので、かろうじて魔女の鼻の位置だけは分かった。

■備考

  • ホッグズ・ヘッドに入ったシーン。
  • 「ベールが突き出しているので鼻が見えた」とは、意味が分からない。
    魔女は全身を厚い黒いベールで覆われていたがベールが突き出ているので鼻先の位置だけが分かった
    (could just see)のでは無いか?
    突き破っているのではないから見えたとすると辻褄が合わない。

17章

襟巻き

■日本語版 17章 p.552
またまた帽子や襟巻(えりま)きを編ませた。

■UK版 p.312
producting more hats and scarves.

■試訳
またまた帽子やマフラーを編ませた。

■備考

  • あれはマフラーで良いよね。
    現代の多くの人がイメージ出来る訳語を持ってくるのが翻訳。
    舞台が古くて、わざわざ古い言葉を使わないと可笑しい場合は別だけど。
  • 正直、日常若い子が使わない言葉は使わないで欲しい。

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  • 覆水盆はフィッグばあさんの発言あってのことじゃないかな -- 2019-07-30 (火) 13:12:36
  • ページ名を「不死鳥の騎士団/11~17章」に修正した方がいいと思う -- 2020-08-15 (土) 10:17:06
    • このページ名を良く見たら「章」が抜けてる… -- 2021-11-04 (木) 14:53:10
      • ページ名をリネームしました。ご指摘ありがとうございます (// -- nevi 2021-11-04 (木) 15:45:41
  • 木星の月ではなく木星の衛星と訳さなかったことが疑問です。 -- 2020-11-30 (月) 09:04:24
    • ↑手元のアメリカの出版社の子供向け宇宙図鑑では木星の衛星はmoonと書かれていますが、月は(the)Moon。英語では区別されて書かれるようです。しかし日本語で月と言うと、ルーピンの怖いあの月を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。日本語の図鑑では衛星を「月」と表しているものは見かけません。自然な、分かりやすい日本語として衛星と訳すべきだと思いました。 -- 2020-11-30 (月) 09:17:01
    • Wikipediaだと日本語版の記事名は「木星の衛星」、英語版の記事名は「Moons of Jupiter」になってるね。 太陽系に関する情報を調べずに、「Moon」=「月」に置き換えたから「木星の月」という違和感を覚える訳になったんだと思う。 -- 2020-11-30 (月) 13:54:02
      • 文芸翻訳家になるにはいろんな知識が必要だね -- 2022-10-20 (木) 19:27:12
  • 猫撫で声は、ハリーポッターの誤訳として挙げられているのはおかしい、正しい日本語だと思っていました。なぜなら「猫撫で声」をハリーポッターで覚えたから。嫌味をこめた甘ったるい声なのだと文脈から判断していました。 -- 2021-05-24 (月) 21:34:06
    • 猫撫で声は相手の機嫌を取るためにやさしくこびる声なんすよ... -- 2022-10-18 (火) 21:13:29
    • 日本語版ハリポタはこういった日本語の誤用が多いのがなぁ -- 2022-12-17 (土) 17:09:56
  • 「しかも、(ヘドウィグの)片方の翼がおかしな角度に伸びている」(17章p.561)が微妙。翼が伸びるって、どんな状態になっているの? -- 2023-07-11 (火) 08:10:44
    • それ意味不明だね -- 2023-12-12 (火) 23:18:07
    • 原文だと「some were bent the wrong way, and she was holding one of her wings at an odd angle.」ですね。 -- op2chスレ主 2023-12-23 (土) 13:23:36