賢者の石/5~9章

Last-modified: 2024-04-14 (日) 12:44:47
 

5章

真鋳

■日本語版 5章 p.109
銅、真鋳、錫、銀

■UK版 p.56
Copper, Brass, Pewter, Silver

■試訳
真鍮

■備考

  • 1巻 5章に出てくる鍋屋の看板に書かれてある材質一覧。
  • 「真鋳」はおそらく「真鍮」の誤字。

家族の姓

■日本語版 5章 p.120
「(略)君、家族の姓は何て言うの?」

■UK版 p.61
”(略) What's your surname, anyway?”

■試訳

  1. 「君のファミリーネームは何て言うの?」
  2. 「君の姓は何て言うの?」

■備考

  • ハリーとマルフォイが初めて出会ったシーン。
  • 普通に「苗字は何?」じゃダメなのかな。
  • 「ファミリーネーム」か「姓」で良かったと思うよ。
    多分ファミリーネームを馬鹿正直に「家族の~」と訳したんだろうけど「家族の姓」が意味不明。
    「姓」に「家族の」って付くのが可笑しい。
    苗字はちょっと日本的過ぎるかなと個人的に思う。

ハッフルパフには劣等生が多い

■日本語版 5章 p.121
「(略)ハッフルパフには劣等生が多いとみんなは言うが、しかし……」

■UK版 p.61
”(略) Everyone says Hufflepuff are a lot o’ duffers, but -”

■試訳
「ハッフルパフには愚鈍な連中が多いとみんないっちょるが、しかし……」

■備考

  • このduffersは不器用と言う意味だと思う。
  • duffer:〈俗〉ばか者、愚か者、あほ、間抜け、能なし
    不器用なとか退屈なとか太ったとかいうニュアンスもある。(参考
  • ハッフルパフからは死喰い人は(本編の時間軸だと)一人も出てないのに酷い話だ。

しなくていいのはわかってる

■日本語版 5章 p.123
しなくていいのはわかってるよ。

■UK版 p.62
I know I don't have to.

■試訳
必要ないのはわかってるけど俺の気持ちなんだよ。

■備考

  • ハリーが最初にダイアゴンに行った時、杖を買う前の会話。
  • 「誕生祝を買ってやってなかったな」
    「そんなことしなくていいのに」
    「しなくていいのはわかってるよ。そうだ。動物をやろう」
    しなくていいのにって言われたら普通は「そんなこというなよ」みたいな返事をする事は有っても
    「しなくていいのはわかってるよ」と言うのは不自然。

霧のような瞳

■日本語版 5章 p.126
霧のような瞳

■UK版 p.64
misty eyes

■試訳
潤んだ瞳

■備考

  • misty eyesは潤んだ瞳の事。

6章

みんなパンク

■日本語版 6章 p.135
「(略)空飛ぶ絨毯はみんなパンクかい?」

■UK版 p.68
‘(略)Magic carpets all got punctures, have they?’

■試訳
「(略)空飛ぶじゅうたんは全部穴が開いているのかい?」

■備考

  • 「みんな」は基本的に人に対して使う言葉。物に対して使う場合は「全部」を使うべき。
  • puncturesをそのままカタカナの「パンク」にしているが、じゅうたんに対して「パンク」は不適切。
    この文のpuncturesは「穴が空く」とするのが適切。
  • 「絨毯」は間違った表記ではないが、常用漢字ではない。

近代魔法史

■日本語版 6章 p.159
「(略)あなたのこと、『近代魔法史』『黒魔法の栄枯盛衰』『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ」

■UK版 p.79
‘(略)and you’re in Modern Magical History and The Rise and Fall of the Dark Arts and Great Wizarding Events of the Twentieth Century.’

■試訳
「(略)あなたのこと、『現代魔法史』『闇魔術の興亡』『二十世紀の魔法大事件』に載っているわ」

■備考

  • ハリー・ポッターの事が本に載っている事をハリー本人に教えるハーマイオニーの台詞。
  • ヴォルデモートの攻撃から生き残ったハリーの事は現代の出来事なので、『近代魔法史』ではなく『現代魔法史』とするのが適切。
  • なお電子版では『黒魔法の栄枯盛衰』が『闇の魔術の興亡』に変更されている。

ちょっと短すぎて

■日本語版 6章 p.165
ちょっと短すぎて

■UK版 p.
a bit short

■試訳
少し短くて

■備考

  • 「少し短い」だけでいいと思うのですが「すぎる」も付け加えているため読者が混乱すると思います。
    「すぎる」が余計な訳ではないかなと。
  • 一見誰かのセリフかと思ったんですが、地の文なんですねこれ…

7章

ゴーストとダンブルドアの白髪だけ

■日本語版 7章 p.182
広間の中では、ゴーストとダンブルドアの白髪だけが同じようにキラキラ輝いているだけだった。

■UK版 p.91
Dumbledore's silver hair was the only thing in the whole Hall that shone as brightly as the ghosts.

■試訳
広間の中でゴーストと同じくらい明るく輝いているのは、ダンブルドアの銀髪だけだった。

■備考

  • 組み分け直後のシーン。
  • 「だけが~だけだった。」では日本語が変。普通なら校正が入る箇所。
  • 邦訳だと輝いている物がゴーストとダンブルドアの髪しかない様に感じる。

そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい!

■日本語版 7章 p.182-183
「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」

■UK版 p.91-92
“Welcome!” he said. “Welcome to a new year at Hogwarts! Before we begin our banquet, I would like to say a few words. And here they are: Nitwit! Blubber! Oddment! Tweak!
“Thank you!”

■試訳

  1. 「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。間抜け! 泣き虫! 半端物! 未熟者! 以上!」
  2. 「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。はみ出し者の半端物、はみ出たお腹の大でべそ! 以上!」
  3. 「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。間抜けのぜい肉、よけいなおまけ! 以上!」
  4. 「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。マヌケなハミダシ、ハンパなオマケ! 以上!」
  5. 「ようこそ! ホグワーツの新入生、ようこそ! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。それでは ―― ふたこと! みこと! ご静聴ありがとう!」

■備考

  • 何これ言葉じゃなくて掛け声だよね。
  • これはダンブルドアのジョーク。
    よくお偉いさんが「二言、三言(a few words)いわせていただきたい」と言って
    それから長々とスピーチを続けたりする事があるが、
    ダンブルドアは文字通り、単語を幾つか並べてみせたと言うもの。
    とても語呂が良くて、調子の良い軽妙な囃子言葉の様な感じ。
  • 豆ふくろう通信の作者談によると「言葉の意味は関係ないので、調子のよい言葉に訳して欲しい」と言う事
    だったらしい。
    (あくまで「調子のよい言葉」である。「威勢のいい掛け声」では無い!)
  • “Nitwit! Blubber! Oddment! Tweak!”を直訳すると
    「間抜け(馬鹿、阿呆、愚か者)! 贅肉(泣き虫)! 半端物(変わった物)! 未熟者(微調整)!」となり、
    どれも役に立たないものや余計なものを表している。
  • ダンブルドアは子供達にお預けを食わせている「二言、三言」など余計なものだという事を言いたかったのでは?
  • 馬鹿正直に「まぬけ!ぜいにく!はんぱもの!おまけ!」だとダンブルドアが頭おかしくなったみたいだしなあ。
    ちょっと遊び言葉っぽく工夫する必要はあると思う。
    テンポ良い言葉にすることで、「そういう言い回しなんだ」とも思わせられるし。
  • 「はみ出し者の半端物、はみ出たお腹の大でべそ」
    昔の囃子言葉っぽく、リズムある文にしてみたよ。
  • 「間抜けのぜい肉、よけいなおまけ!」の方が良いかな。「け」が効いてる。
  • 『マヌケなハミダシ、ハンパなオマケ!』なら「ケ」と「ハ」が利くぞ
  • 「二言、三言、言わせていただきたい。では行きます・・・二言、三言!」とかで良いんじゃね?
    司会「では一言お願いします」、客「一言!」みたいな受答え、ジョークであるじゃん
  • こういう部分こそ「センス」が必要だね。
    無意味な囃子言葉をいきなり言わせておいて、読者が??ってなった後、注釈やあとがきで補足してあげれば良いのに。

バカバカしい

■日本語版 7章 p.187
バカバカしいターバンを巻いたクィレル先生は、ねっとりした黒髪、鉤鼻、土気色の顔をした先生と話していた。

■UK版 p.94
Professor Quirrell, in his absurd turban, was talking to a teacher with greasy black hair, a hooked nose and sallow skin.

■試訳
馬鹿げたターバンを巻いたクィレル(教授)は、ねっとりとした黒髪と鉤鼻を持つ青白い顔の教授と話していた。

■備考

  • 「バカバカしい」はひどいね。
    カタカナなのが余計幼稚さを増している。
    「馬鹿げた」「滑稽な」がいいとおもう。
  • 容姿紹介の表現も文脈がすこし崩れてておかしいね。
    英語の通り訳した語彙を読点で並べないで、助詞を工夫して並べてもらわないと。

8章

クラスへの道

■日本語版 8章 p.198
やっとクラスへの道がわかったら、(略)

■UK版 p.99
And then, once you had managed to find them,(略)

■備考

  • ホグワーツでの授業が始まった辺り。
  • 場所の事を「クラス」とは言うのは可笑しく感じる。「教室」等の方が自然。
  • それにこのthemは教室を指していない。
    この前の文章では動く階段、幽霊達、ピーブス、フィルチ等が教室移動の際にどんな邪魔をするかを
    語っているので(やや意訳だが)「そしてようやく移動の際の様々な障害の避け方がわかったら」等とした方が
    訳として誠実かな。
    (findには経験から知ると言う意味も有るよね)

ものすごく意地悪になる

■日本語版 8章 p.206
「やめたほうがいい」とロンが小声で言った。
「スネイプはものすごく意地悪になるってみんなが言ってるよ」

■UK版 p.104
"Don't push it." he muttered. "I've heard Snape can turn very nasty."

■備考

  • 初の魔法薬学の授業のシーン。
    スネイプのあまりの理不尽な減点に反抗しようとしたハリーを、ロンが諫めるときに言った台詞。
  • 「意地悪になる」って日本語おかしすぎない?
    もう既にだいぶ意地悪なんですけどスネイプ。
  • 後半のセリフを直訳すると「スネイプはすごく性悪になり得ると聞いた」ってことだけど
    自然な感じにすれば、「スネイプを怒らせるとすごく厄介らしいよ」ってとこかな…

ブーンとうなるようなほえ声

1巻における代表的な誤訳を参照。

グリンゴッツ侵入さる

■日本語版 8章 p.209
グリンゴッツ侵入さる

■UK版 p.105
GRINGOTTS BREAK-IN LATEST

■試訳

  1. グリンゴッツ侵入事件 最新情報
  2. グリンゴッツ侵入される

■備考

  • 「日刊予言者新聞」の記事のタイトル。
  • 文語表現のせいで古臭く感じる。意訳するにしてもせめて「グリンゴッツ侵入される」にして欲しい。

9章

麻痺したようにトボトボ

■日本語版 9章 p.221
マクゴナガル先生は大股に城に向かって歩き出し、ハリーは麻痺したようにトボトボとついていった。

■UK版 p.111- p.112
Harry caught sight Malfoy, Crabbe and Goyle's triumphant face as he left, walking numbly in Professor McGonagall's wake as she strode towards the castle.

■備考

  • 初めての箒飛行訓練で、勝手に飛んでしまったのをマクゴナガル先生に見つかり
    城に連れて行かれるハリーのシーン。
  • 麻痺したようにトボトボって?一体どんな歩き方?
  • 「麻痺したようにトボトボ」は相当苦しい訳だが、多分numb=麻痺したと言う融通の利かない知識だけで
    訳したのだろう。
    mist=霧という知識で、misty eyesを「霧のような瞳」と訳したのと同じかな。
    文芸作品でよく使われる訳語のバリエーションを知らないせいで不自然になっているのだが、
    不自然に気が付くだけの日本語力も無いからそのまま書いてる感じ。
  • numblyで「ぼんやり、無表情に」というのは割と一般的な訳語だと思う。
    要するに気持ちが麻痺して感情表現が出来なくなった状態だが
    そこはハリーが退学かもしれないと思ってショック受けてる所だね。
    その感じが一番出るのは「呆然としながらついていった」って感じじゃないかな。

終わりよければすべてよし

■日本語版 9章 p.228
いずれにしても、「終わりよければすべてよし」の一日にはならなかったなと考えながら、
ハリーはその夜遅く、ベッドに横になり、ディーンとシェーマスの寝息を聞いていた(略)

■UK版 p.115
All the same, it wasn't what you'd call the perfect end to the day, Harry thought,
as he lay awake much later listening to Dean and Seamus falling asleep(略).

■備考

  • ことわざを引用して「~にはならなかった」と否定している部分だけど、
    ことわざがあまりはまってない様な気がするのですが。
    何か無理矢理ことわざを引っぱってきて当て嵌めたみたいな、
    無理してことわざを使わなくて良いのにって感じがする。
  • 「終わりよければすべてよし」って、意味が逆じゃない?
    昼間素晴らしい事があったのに最後に宜しくない事になったと言うのが原文の意味だと思うし、
    話の流れもそう言う事だろうけど、ことわざの「終わりよければすべてよし」だと
    「昼間いやなことばかりあっても最後にいいことがあってよかった」という訳には行かなかったと
    ハリーは考えてる事になっちゃうのでは?

『どうぞ』と言いな

■日本語版 9章 p.235
「どっちに行った? 早く言え、ピーブズ」フィルチの声だ。
「『どうぞ』と言いな」
「ゴチャゴチャ言うな。さあ連中はどっちに行った?」
「どうぞと言わないなーら、なーんにも言わないよ」
ピーブズはいつもの変な抑揚のある癇にさわる声で言った。
「仕方がない――どうぞ」
「なーんにも! ははは。言っただろう。『どうぞ』と言わなけりゃ『なーんにも』言わないって。はっはのはーだ!」

■UK版 p.119
"Which way did they go, Peeves?""Quick, tell me."
"Say “please”."
"Don't mess me about, Peeves, now where did they go?"
"Shan't say nothing if you don't say please,"
"All right - please,"
"NOTHING! Ha haaa! Told you I wouldn't say nothing if you didn't say please! Ha ha! Haaaaaa!"

■試訳

  1. 「やつらはどっちへ行ったんだ、ピーヴス? とっとと言え」
    「『ください』って付けな」
    「うるさいぞ、ピーヴス。どっちなんだ」
    「『ください』付けなきゃ知ってても教えない」
    「仕方がない――教えてください」
    「知らない!ははははは!ちゃんと『知らない』って教えたぞ!ははははははは!」
  2. 「やつらはどっちへ行った、ピーヴス? 早く言え」
    「『お願いします』って言いな」
    「ごちゃごちゃ言うな、ピーヴス、さあ奴らはどっちに行ったんだ?」
    「お前が『お願いします』って言わないならなんにも言わない」
    「仕方がない―お願いします」
    「なーんにも!ハハハ!俺はお前に『お願いします』って言わなきゃ『なんにも』言わないって言ったよなあ!ハーッハッハッハ!」

■備考

  • 直訳過ぎ。「『お願いします』と言いな」位にして欲しい。
  • 知っててもうんたらの所は別として、「ください付ける」にするだけでダサく無くなるのに。
  • 人に何か頼み事をする時はplease(お願いします)を付けるのがマナー。
    それを付けない子供に大人は「what's the magic word?」と聞いてpleaseを付ける様に促します。
    ここはそういうあちらの常識を踏まえてのシーン。

悪夢にうなされる

■日本語版 9章 p.236
しばらくの間、ハリーは自分が悪夢にうなされているに違いないと思った――

■UK版 p.119
For a moment, he was sure he'd walked into a nightmare-...

■試訳
しばらくの間、ハリーは自分が悪夢を見ているに違いないと思った。

■備考

  • 真夜中に寮を抜け出し、ピーヴズに騒がれて逃げ込んだ先で怪物犬を見つけたシーン。

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  • 悪夢にうなされているって一瞬普通に使うと思ったが、他人に対してだな。 -- 2021-02-27 (土) 21:39:54
    • 「悪夢にうなされる」ってのは現在進行形で自分が見てる現実に使うには違和感しかないね -- 2021-04-21 (水) 13:58:55
  • 終わりよければ~ は「有終の美」とかどうでしょう…児童文学にしては硬すぎるかもしれませんが。 -- 2023-03-25 (土) 21:36:27
    • まあまあよさげ -- 2023-09-24 (日) 11:56:06
  • 漢字の間違いが多すぎる -- 2023-11-09 (木) 03:17:48