戦車の戦闘教義~軽戦車の戦闘~

Last-modified: 2017-11-08 (水) 15:13:03
 

軽戦車とはなにか

 

軽戦車の分類は、運用する陸軍部隊によって異なるが、その概ねは読んで字のごとく「軽い戦車」である。
全く何の変哲もない一文ではあるが、これを見て「軽戦車はその軽さを活かして縦横無尽に機動し、敵を翻弄する快速部隊」だと思われるのは、甚だしい誤解である。軽戦車にはそもそも、「軽戦車」という兵器分類が加えられた歴史的背景というものがある。

 

軽戦車の誕生

1914年7月28日。ドイツ帝国軍の攻撃を以って始まった第一次世界大戦は、最後の近代戦、または最初の現代戦であり、航空機・戦車といった現代兵器が登場した世界史・軍事史にその名を留める世界規模の大戦であった。1916年のソンム会戦にて、イギリス軍のランドシップ計画にて誕生した「戦車」は、大重量の巨大な車体に多くの武装を搭載し、工兵の突破力・砲兵の火力・歩兵の制圧力を兼ね備えた「陸の王者」としてその第一歩を踏み出した。戦車の突破力は、歩兵や航空機と組み合わされ、騎兵による近代的機動戦に変わる現代的機動戦兵器として、その地位を確立したのだが、その完成形と言えるのが、フランス陸軍「ルノーFT17」である。車体前部に操縦手を、車体中央に回転砲塔を、車体後部にエンジンを・・・という配置は、現用戦車にも受け継がれる改良の余地のない決定的レイアウトであり、一部の戦車を除き現用にある戦車もその形を保っている。何より、ルノーFT17で革新的だったことは、同時期の他の戦車と比較してともかく「軽かった」ことにある。戦車第一号こと菱型戦車の「Mark IV」はオス型重量28トン。ドイツ軍の突撃戦車「A7V」で30トンという重量の中、ルノー社によるこの現代的な戦車は、たった6トン半に過ぎず、速度は時速8キロ(ウィキペディアによると20キロまで出るらしい)と決して速くはないものの、カーゴトラックを使った高速輸送と、荒れ地での機動力を兼ね備えた戦車として大戦後も各国へ輸出され、「1920年代で最も成功した戦車」と称された。まさに、この「ルノーFT17」を以て、現代初期の戦車は完成したと言えるだろう。
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ルノーFT17

 

第一次世界大戦中には、他にも軽戦車が試作、あるいは運用まで至ったものもあるが、ここでは割愛する。

 

豆戦車と軽戦車

大戦による戦争特需が収まると、アメリカ・ウォール街発の世界恐慌が世界に波及した。そんな中、列強各国は、少ない予算から現代的機動兵器のあけぼのを潰さないべく、様々な戦車が考えられたが、その中で最も成功した車輌が、英サー・ジョン・カーデンと、同じくヴィヴィアン・ロイドによるカーデンロイド豆戦車である。
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カーデンロイド マークⅣ

 

ここから派生した車輌は、どれも定員1~2人の小型軽量車体に30馬力前後のエンジンを搭載し、武装は小さくて軽機関銃、のちの大型のものでも20ミリ機関砲程度のものであったが、路上では軽さを活かして速く機動でき、軽量な火砲なども牽引することが出来た。また、これと同時期に開発された画期的戦車が「ヴィッカーズ6トン戦車」である。英ヴィッカーズ・アームストロング社の独自開発であるこの軽戦車は、先の「ルノーFT17」が1920年代で最も成功した戦車であるなら、1930年代で最も成功した戦車であると言えるだろう。
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ヴィッカーズ6トン戦車B型

 

先の豆戦車が、雑用もこなす多目的車輌として列強をも含む各国で好まれ、中小国でも機甲戦力の配備の際の「練習台」として打って付けであったが、機関銃と薄い装甲しか持たぬ豆戦車は、その機甲戦力としての威力に関しては疑問が持たれていた。一方で、「ヴィッカーズ6トン戦車」は、47ミリ砲か7.7ミリ機銃2丁を装備し、豆戦車よりは遅いものの、(豆戦車に比べれば)良好な不整地機動力を持つこの画期的戦車は、まさに「実戦仕様」の戦車であり、数さえ揃えられればより本格的な機甲部隊を創設できた。「ヴィッカーズ6トン戦車」は手頃な戦車として、ソ連、日本、ギリシャ、ポーランド、ボリビア、タイ、フィンランド、ポルトガル、中国、ブルガリアへ輸出され、機甲部隊「主力」としてその礎となるか、その改良型が主力を務めた。

即ち、小さな主力戦車・・・それが「軽戦車」である。

 

以上に軽戦車の簡単な背景概説と、「軽戦車」の誤解を解くことを終える。

 

軽戦車の機動特性

  • 軽戦車の特性として覚えておくべきは、ともかく「遅い」ことである。
    特にドイツ軍軽戦車シリーズの戦車はルクスを除きとりわけ遅い。ソ連軍軽戦車シリーズの車輌群はどれもドイツのそれよりましである。また、軽戦車ではなく快速戦車であるが、BT-5BT-7は例外的に中戦車よりも速い。
     
  • 軽戦車の機動力が悪い理由は以下の4点にある。
     
    • 小さな車体故、搭載できるエンジンが重量に対して非力。
    • 履帯幅が狭く接地圧が高過ぎるため、地面に足を取られやすい。
    • 車体と地面とのクリアランスが狭いため、凹凸が激しい不整地・塹壕ではスタックしやすい。
    • 軽い故に重量バランスが悪く、樹木をなぎ倒した時や障害物を超えるときなどに転覆しやすい。
       
  • 以上の点を踏まえて、軽戦車で敵と対するときは以下の3点に気を配る。
     
    • 凹凸の激しい荒れ地には極力乗り入れない。速度を極端に奪われる。
    • 森林には身を隠す目的以外では侵入しない。侵入する場合、木々との接触に気を配る。
    • 障害物は無理に乗り越えず迂回する。対戦車バリケードを軽戦車で突破しようなどもってのほか。
       
      上記の障害物突破に関しては、車輌の速度が速い場合突破できる可能性が上がるが、転覆するリスクも上がるので注意。同様に、対戦車砲や土嚢を無理に蹂躙しようとすると転覆する危険がある。
       

塹壕などでスタックした場合の脱出方法

  • 軽戦車でスタックした場合、以下の方法で脱出できる。
     
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  • 榴弾を装填し、砲身いっぱいまで下げて直下を射撃する。この時、遅延信管は切って着発にしておく。操縦手に少し後退を指示しておくと直下を狙いやすい。これで地面を均すのだ。
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  • 脱出成功。
     

軽戦車の本領!歩兵支援の典型例演習

 
  • ここでは、走攻守全てに劣った軽戦車による歩兵支援戦闘の一例を提示する。
     以下の地形が我々、38(t)軽戦車二個小隊の眼前にあり、歩兵二個小隊を伴い前進。敵陣地後方の村落を制圧すると仮定する。
    LT_Battle.jpg
     
  • 村落前面の防御は以下の通りである。
    • 53-K 45mm対戦車砲x5
    • 重機関銃分隊(マキシムPM1910x2)
    • 対戦車銃分隊(PTRD-41対戦車ライフルx4)
    • 狙撃兵分隊x3
       
      もうこれだけで軽戦車にとっては絶望的だが、ありとあらゆる如何なる状況下に於いても、歩兵が頼りにできるのは戦車だけであるということを覚えておこう。
  • 事前に確認しておくべき事項としては・・・
    • 砲兵・航空支援を受けることは出来ない。
    • 目標村落は小高い丘の上にあり、前面の敵陣地からはこちらを見下ろすことが出来る。
    • 枯れ川は軟弱地であり、軽戦車の機動には向かない。
    • 38(t)C/D型の正面25ミリは、45ミリ徹甲弾B-240に1キロ以遠から破られる。

コメント欄

  • これ続き無いの? -- 2017-11-08 (水) 15:13:03