謎のプリンス/16~20章

Last-modified: 2024-06-02 (日) 17:13:20
 

16章

ムフニャ?

■日本語版 16章 p.15
「ムフニャ?」みかんの皮を剥きながら、コックリコックリしていたおじさんが言った。

■UK版 p.310
“Mphf?” said Mr. Weasley, whose head had been nodding over the satsuma he was peeling.

■試訳
「んん~?」みかんの皮を剥きながら、居眠りをしていたおじさんが言った。

■備考

  • ウィーズリー家でセレスティナ・ワーベックの歌が流れているシーン。
  • Satsumaを「さつまいも」と訳さなかっただけマシ…なのか?
  • しかし「ムフニャ?」は止めて欲しいな。
  • 「ムフニャ」も酷いが、「コックリコックリしていた」ってのも幼稚園児向けの本みたいで何とも…
  • ちなみに、Satsuma(日本のみかんと同じ)はイギリスのスーパーや八百屋でほぼ一年中何時でも買える。
    (旬はもちろん冬)
    オレンジとかより簡単に皮が剥けるからClementine(Satsumaとオレンジを掛け合わせたもの。
    みかんと同じような大きさで、もっと甘みが強い)やバナナ・りんご等と並んでよくランチボックスに入れられたりする。
    クリスマスイブにはプレゼントを届けてくれたサンタクロースの為にミンスパイと
    (ドライフルーツがフィリングになってるクリスマス用の小さなパイ)
    グラスに入れたポート酒と一緒にSatsumaを暖炉の前に置いておく習慣もある位でイギリス人にとって凄く身近な果物。

誤逮捕

■日本語版 16章 p.15
『三件逮捕』と言えば『三件誤逮捕して釈放』より聞こえがいい

■UK版 p.310
‘three arrests’ sounds better than ‘three mistaken arrests and releases’

■試訳
『三件逮捕』と言えば『三件誤認逮捕して釈放』より聞こえがいい

■備考

  • 「誤逮捕」は「誤認逮捕」の事だよな。

犠牲者に仕立て上げ

■日本語版 16章 p.39
「あなたはスタンを犠牲者に仕立て上げ、僕をマスコットに祭り上げようとしている」

■UK版 p.325
‘You're making Stan a scapegoat, just like you want to make me a mascot.’

■備考

  • スタンの逮捕に関してハリーが怒っているシーン。
  • 原書でハリーが言ってるのは「あなたがたはスタンを犠牲(生け贄)にしようとしてる」って事。
    スタンは誰が見ても本当のデス・イーターの仲間とは思われないんだけど
    魔法省の「仕事してまっせ」というポーズの為に逮捕された。
    つまり本当の犠牲者(生け贄)だから、確かに「仕立て上げる」は変だと思う。
    まあ、邦訳に良くある間違い日本語の一つだろう。

17章

目をグリグリさせた

■日本語版 17章 p.47
ハーマイオニーは、先に立って込み合った談話室に入りながら、呆れ顔で目をグリグリさせた。

■UK版 p.329
said Hermione, rolling her eyes as she led the way into the packed common room.

■試訳
呆れたように目を天井に向けた。

■備考

  • ハーマイオニーの「目グリグリ」は、ロンでおなじみのrolling one's eyes(呆れたように目を天井に向ける)の誤訳。

ウォンウォン

■日本語版 17章 p.47
「ウォン‐ウォン!」

■UK版 p.329
"Won-Won!"

■備考

  • ラベンダーがロンのあだ名を叫びながら登場したシーン。
  • 「ウォンウォン」は小さい子がRの発音が出来なくて
    RonがWonになってしまうのが分からないと意味不明だよね。
    二つ重ねるのも可愛らしさを強調してるとか…
    こんな時は注釈入れてもいいけど、分かり易く「ロンロン」でも良いかな?
  • ラベンダーがふざけて犬の鳴きマネでもしてんのかと思ってた。

コロコロ笑い

■日本語版 17章 p.47
ハーマイオニーはコロコロ笑い、

■UK版 p.329
Hermione gave a tinkling laugh and said,

■備考

  • 「コロコロ笑う」と訳されたのは、tinkling laugh.
    tinklingはベルの音だけど、高い声で小さく笑う感じか。
  • 可愛らしい笑い声を「鈴をふるような」と言う事がある。
    あと屈託なく朗らかに笑う事を「ころころ笑う」と言う事がある。
    「鈴のようにころころ笑う」はそれ等を混ぜてしまった変な感じだよ。
  • ハーマイオニーはロンとラヴェンダーが抱き合うのを見て
    わざと声を上げて笑ったんだと思う。
    まあ「コロコロ」位に見逃せなくは無いが、
    その前後も微妙な訳ばかりだからこれも目に付くんだね。
  • ころころ笑うのは、屈託ない感じで響きが良い笑い声を表現するのが普通だから
    このシーンでは相応しくないような…昭和な感じもするし
    「かん高い声で笑い」とかの方が雰囲気に合ってると思うけど。
    「まあチリンチリン」と笑ったとか訳されるよりはマシか…

ロックをかけ合っている

■日本語版 17章 p.48
ロンとラベンダーが、レスリング試合よろしく立ったままロックをかけ合っているのを(略)

■UK版 p.329
Leaving Ron and Lavender locked in a kind of vertical wrestling match,

■試訳

  1. 締めつけ合っている
  2. 固く抱き合ってる

■備考

  • 「ロックをかけ合ってる」はlockをそのままカタカナにした訳。
    自然に訳すなら「締めつけ合っている」や「固く抱き合ってる」だろう。

ハーマイオニー、だめかな

■日本語版 17章 p.48
「あのさ、ハーマイオニー、だめかな――?」

■UK版 p.329
‘Look, Hermione, can't you-?’

■試訳
「ねえ、ハーマイオニー、頼むから――」

■備考

  • 「ウォンウォンはどうだったの?」とハーマイオニーに聞かれて、
    ハーマイオニーとロンの冷戦状態に困ったハリーが仲直りして欲しくて何度も言うセリフ。
  • 「だめかな?」じゃ何の事か分かんないね。
    「ねえ、ハーマイオニー、頼むから――」とかすれば仲直りを懇願してると分かり易かったのじゃないかな。

ヒョー!

■日本語版 17章 p.54
「ヒョー!」シェーマスは驚いたように声を漏らした。

■UK版 p.333
“Whoa!” whispered Seamus,

■試訳
「すげえ!」

■備考

  • フリットウィックの授業中のシーン。
  • シェーマスの「ヒョー!」は‘Whoa!’ 「すげえ!」みたいな間投詞。
    ヒョーは無いヒョーは何時の時代だ。

18章

二月が三月に近づいた

■日本語版 18章 p.102
二月が三月に近づいたが、天気は相変わらずだった。

■UK版 p.364
February moved toward March with no change in the weather except

■試訳
二月が終わり三月になったが、(略)

■備考

  • 「二月が三月に近づいた」は他の本では聞いた事が無い表現。
  • move towardは「~に移行する」という意味。

19章

夕方だった

■日本語版 19章 p.118
夕方だった。窓にはカーテンが引かれ、静かな病棟にランプが灯っている。

■UK版 p.374
It was evening; the hospital wing was quiet, the windows curtained, the lamps.

■試訳

  1. 日はすっかり暮れていた。
  2. 夜だった。

■備考

  • 毒入りの蜂蜜酒を飲んで病棟に運ばれたロンの元に双子が訪れるシーン。
  • ハリー達が入れて貰えたのは8時(20:00)。双子が来たのは更に10分後(20:10)。
  • ホグワーツは日照時間が四季によって大きく違うスコットランドにあるらしいが、
    この日(ロンの誕生日)は春分に近い3月1日。
  • 8時と言えばとっくに日が暮れているはず。「夕方だった」とするのは変。
    eveningは大体「日の入りから就寝」までの時間を指す言葉。
    ここは「日はすっかり暮れていた」「夜だった」として良いと思う。
  • 電子版では「その日の夜。」に修正されている。

バッチイやつら

■日本語版 19章 p.148(地の文とドビーのセリフは省略)
「バッチイやつらがつかみ合い。パックンバックン、ポックンボックン――」
「――ケッポレ、カッポレ!」
「ヒッパレ、ツッパレ!」

■UK版 p.393(地の文とドビーのセリフは省略)
‘Look at the ickle creatures squabbling, bitey bitey, punchy punchy ―’
‘―kicky, scratchy!’
‘Tweaky, pokey!’

■備考

  • ピーブスがドビーとクリーチャーのケンカを囃子立ててるシーンだが、邦訳だと伝わってこない。
    「ケッポレ、カッポレ」に至ってはどういう意味かさえ分からない。
  • ickle creatures squabbling=チビどもの小競り合い
    bitey=biting(咬む) punchy=punching(殴る) kicky=kicking(蹴る)
    cratchy=scratching(ひっかく) tweaky=tweaking(つねる) pokey=poking(突く)
  • チビ共がババッチイって言葉になったって事ですか…

ハーフネルソン

■日本語版 19章 p.149
「うん」ハリーは、クリーチャーの萎びた腕をハーフネルソンに締め上げながら言った。

■UK版 p.394
‘Yeah,’said Harry, twisting Kreacher's wizened arm into a half-nelson.

■試訳
「うん」ハリーは、クリーチャーの萎びた腕をねじ上げて羽交い締めにした。

■備考

  • ドビーとクリーチャーのケンカを煽るピーブズを、ハリーが呪いで黙らせる場面。
  • ハーフネルソンって何?
  • half-nelsonていうのはレスリングの技らしい。
    腕を背後から相手の脇の下に入れて、手を首の後ろに持っていく技(ジーニアスより)
    full-nelsonやquarter-nelsonていう技もあって、nelsonシリーズは首固めらしい。
  • …でもこんな事、格闘技に詳しい読者じゃないと普通は知らないよねえ。
  • ハーフネルソンは日本語では通常「羽交締め」という了解で良いのでは。
    これを調べなかったのはやっぱり訳者の怠慢ぽいな。
  • 読書の途中で分からない言葉が出てくると現実に引き戻されて白けてしまう。
    ハーフネルソンだのフリー・エージェントだの単語をカタカナにしただけじゃ翻訳にならないよ。
    分かんなきゃ検索しろはあんまりだよ。
    なるべく誰にでもすぐ分かる様な言葉に置き換えてくれないと。
  • 電子版では「「うん」ハリーは、クリーチャーの萎びた腕を羽交締めに締め上げながら言った。」に修正されている。

20章

文章の弱いところ

■日本語版 20章 p.158
ハーマイオニーは答えずに、ハリーの文章の弱いところを、大儀そうに削除していた。

■UK版 p.399
She did not answer, but merely crossed out a few of his feebler sentences in a weary sort of way.

■試訳
ハーマイオニーはただ面倒そうな様子でハリーの文のまずいところに線を引いて消していた。

■備考

  • 言いたい事は分かるけど、文章が弱いとは言わないでしょう。
  • 「文章が弱い」は説得力が無いみたいな意味で使わなくはナイト思うが「まずい」とかの方が分かり易いかもね。
    ここは読者の分かり易さを考えずfeebleを直訳した様な感じもある。
  • あとmerely(ただ)やcrosseed out~sentences(横線を引いて消す)とかの語の意味も出来るだけ省略しない方が
    様子が分かって良いと思うけど何故か訳出されていないね。
    いい加減な仕事って感じがする。

悪文

■日本語版 20章 p.186
「(略)わたくしが見てきた世の中では、わたくし流の魔法より愛のほうがはるかに強いものだという、あなたの有名な見解を支持する者は皆無だった」

■UK版 p.415
‘(略)But nothing I have seen in the world has supported your famous pronouncements that love is more powerful than my kind of magic,(略)’

■試訳

  1. 「(略)私が調べたところによると、魔法より愛のほうがはるかに強いものだと言う、あなたの有名な見解を支持する物は皆無だった」
  2. 「(略)私が得意とするような魔法より愛の方が強い、それがあなたの有名な説でしたね。でも私が見てきた限り、この世の中にその説を裏付けるようなものはありません」

■備考

  • ヴォルデモートが教職を求めてダンブルドアの所に来るシーン。
  • 意味不明な文。わたくし流は何処に掛かるのか。
  • 原文ではnobodyじゃなくてnothingだから、「支持する者」じゃなくて「物」となるはず。
  • 「支持する者は皆無」としたのはいい加減訳というかほとんど誤訳と言うか。
    支持する「人」ならダンブルドアの周りに沢山居るのは明らかな訳で。
  • 二つ以上の関係代名詞(省略されているのもあるが)で繋いでいる様な複雑な英文は
    二つに分けた方が訳しやすいし意味も通るものに成り易いと思うのだが。
  • 電子版では「わたくしが見てきた世の中では、わたくしが頼みとする魔法より愛のほうがはるかに強力だとするあなたの有名な見解を裏づけるものは、何もありませんでした」に修正されている。

博識ですね

6巻における代表的な誤訳を参照。

できることならそうしてやりたい……できることなら……

■日本語版 20章 p.189
しかし、トム、わしはできることならそうしてやりたい……できることなら……

■UK版 p.417
But I wish I could, Tom, I wish I could...

■試訳
しかし、トム、わしはできることなら今でもそうしてやりたい……

■備考

  • 原文は単純な仮定法が使われています。
  • トムに無理やり罪を償わせる事が出来た時代は遠くなってしまったけど
    「(今でも)それ(償わせること)ができたらよかった(でもできない)」と言うのが
    ダンブルドアのセリフの意味です。
  • 邦訳もあながち間違いでは無いですが、日本語の文章力のある人なら内容を分かり易くする為
    「そうしてやりたい」の前に「今でも」を入れたと思います。

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  • merelyは線を引いて消す行為にかかっているので、「面倒そうな様子で淡々と線を~」でどうでしょう -- 2020-03-31 (火) 10:42:09
  • move towardは「~に移行する」という意味なんで、February moved toward Marchは「二月が終わり三月になったが」の方がいいんでは? -- 2021-12-01 (水) 07:33:32
    • 「二月が三月に近づいた」の項目を修正しました。 -- op2chスレ主 2022-08-06 (土) 19:18:03
      • 乙 -- 2024-01-29 (月) 19:18:28
  • 日本語版16章p.26で、なぜに「私の愛しい人」を妙な絵にしたのだろうか?
    ハリーポッターのショップで、これを商品化してほしいわ。
    UK版p.282では、斜体で「My Sweetheart」と書かれているだけです。 -- 2024-05-15 (水) 11:44:49
  • 日本語版17章p.39:「scapegoat」を「犠牲者」と訳するのは無理があると思う。そのまま「スケープゴートにする」でもよいのではないでしょうか? -- 2024-05-15 (水) 15:57:39
  • 日本語版17章p.74-75:スラグホーンの太字のセリフ。強調しているのかと思いきや、スラグホーンが記憶に手を加えた部分なのですね。わかりずらい。 -- 2024-05-18 (土) 09:19:23
  • 18章で、ロンが惚れ薬の入った大鍋チョコレートを食べるシーンや、蜂蜜酒を飲んで手足が痙攣するシーンが、淡々と書かれている。映画のような滑稽さ、切羽詰まった感じが、読んでいても感じられない。 -- 2024-05-18 (土) 23:46:40
  • 1997年3月1日のスコットランドの日没は、05:50:58 PM(参考:イギリス スコットランド日の出日の入り時間) -- 2024-05-19 (日) 08:31:06
  • 日本語版 20章 p.166の「この城は古代魔法の牙城じゃ。」の「牙城」の意味がよくわからなかったので調べた。
    「牙城」の本来の意味は「城の本丸」で、それが転じて、「組織や勢力の中心地」という意味で使われることが多いようだ。strongholdの訳では、砦や要塞もあるが、訳者は「城」の字がついている「牙城」を選択したのかも。(UK版p.359 he castle is a stronghold of ancient magic.) -- 2024-05-24 (金) 23:37:10
    • 「牙城」の使い方がおかしいような、俺の気のせいか? -- 2024-06-02 (日) 17:12:58