話題の問題点

Last-modified: 2021-10-11 (月) 17:59:14

代表的な問題点をまとめました。

 
 

リリー&ペチュニア・姉妹関係問題

英語では通常姉妹はsisterと書き、多くの場合、姉と妹を区別しない。
区別する必要がある日本、中国、韓国などの翻訳者は作者に確認するのが常識。

1巻 静山社は独断でリリー妹、ペチュニア姉とする 
3巻 何の断りもなくリリーを姉に変更 
4巻 ふくろう通信で「ペチュニアは意地悪なので姉にしたが作者が妹だと言ったので変えた」と言い訳 
5巻 以下、5巻の記述も携帯版もすべてリリー姉に変更 
7巻(原書) リリー妹(younger)、ペチュニア姉(elder)だったことが判明 
7巻(中韓) 中国語版ではずっとリリー妹であることが判明 
 韓国語版でもずっとリリー妹であることが判明 
7巻(日本) リリーが妹であることを表わす記述を省くという荒技で処理  
 (しかしペチュニアが仕切っているのでどちらが年上かはあきらか) 
電子版・
文庫版以降
 再びリリー妹、ペチュニア姉に戻る 

FAは、ペチュニア=姉、リリー=妹

 

名付け親問題

godfather(parents)はもとは宗教関係の教育をする人という意味で
代父、教父、後見人、保護者代理、名付け親などの訳語がある。
「名付け親」というのは古い訳語。原則godfatherは名前をつける人ではない。

 

テッド⇔ハリー

「男の子だ! ドーラの父親の名を取って、テッドと名付けたんだ!」(7巻下p.191)
「君が名付け親になってくれるか?」ハリーを離して、ルーピンが聞いた。(p.192)

 

7巻に上のようなわけのわからない記述が出てくるのは
godfatherを安易に「名付け親」と訳したため。
ルーピンがハリーに頼んでいるのは「後見人」(まさかの時の保護者役)

テッドの名前をつけたのは、おそらく両親であるトンクスとルーピン。

 

ハリー⇔シリウス

3巻でシリウスがハリーを引き取ろうとしていたり、保護者代理として
ホグズミード行き許可証にサインしたりしていたのは「後見人」だから。
ハリーに名前を付けたわけではないということは当時から言われていた。

ハリーの名前をつけたのは、おそらく両親であるジェームズとリリー。

 

ハーマイオニーの「マーリンの猿股!」(7巻上p.327)

魔法界では驚いたとき、Merlin's beard!(マーリンのヒゲ!)と言う。
現実で言うところのOh my God!と同じ位置づけのイディオムである。
日本語版では従来発言者により統一性のない訳になっていた。
(ロンは主に「おどろき桃の木」、ミュリエル「おやまあ」、
 アーサー「なんたるこった!」「なんてこった!」、
 ハグリッド「おい、おい」、マッドアイ「たまげた」など。)

7巻でハーマイオニーは、Merlin's pants!(マーリンのパンツ!)と言って驚いており、
この訳がなぜか「マーリンの猿股!」になった(今までマーリン完全無視だったのに)。

これは原作で、ロンが常々「beard(ヒゲ)」の部分を「pants(パンツ)」や
「saggy left―(ぶらさげてる左の…)」など下ネタ改変していたため、
ハーマイオニーが慣れない魔法界の慣用句を口にしようとして、
ロンへの恋心でか、つられて変なことを言ってしまったという感じで面白い場面。
しかし日本語版でのロンのマーリンの下ネタシリーズは、
「おっどろき、桃の木、山椒の木だ」「おたんこなすのすっとこどっこいの」と訳されたので、
ハーマイオニーのセリフは意味も事情もわからない唐突なものになってしまった。

※Oh my God!も全て同じ訳になることはないが、せめて7巻のMerlin's beard!は、
 ロンとハーマイオニーのセリフに共通点があるようにするべき。

 

スネイプの「僕を……見て……くれ……」(7巻下p.404)

原文は" Look ... at ... me ..."
死ぬ前にリリー譲りの緑の目を見るため、ハリーを振り向かせようと言った。
あたりまえに訳せば「私を…見ろ」「こちらを…向け」のようになる。
次の文に「緑の目が黒い目をとらえた。」とあることからわかるように
この言葉でハリーは振り向き、最期に一瞬だけふたりの目が合っている。
スネイプが普段の意識で「僕」というのは考えられないため、邦訳の彼は
朦朧としてリリーの面影に語りかけたように感じられ、最期の最後に
緑の瞳をしっかり見て逝ったという原書の演出がぼやけてしまった。

 

もちろん解釈は読む側の自由なので、スネイプのキャラクターや
この言葉の真意について、あれこれ思い巡らすのは読者の勝手。
しかし邦訳は一人称を「僕」にすることで「少年時代の意識でリリーに懇願した」
という特殊な解釈のみ押しつける形になっており、問題がある。

 

※スネイプが直前に「記憶」を渡しているので、それを「見て欲しい」と
いう意味だと思った人もいるようだが、"Look at me."は原則としてその場で
相手の視線や意識を引く言い方なので、そういう意味にはならない。

 

冒頭のエピグラフ(引用)の訳が抜けている件(7巻)

献辞(訳あり)の隣に原文のままで載せられている。
上はアイスキュロスのギリシャ悲劇オレステイア三部作の「供養する女達」から。
英雄アガメムノンの息子オレステスが父の敵討ちを決意する場面で
冥府の神に勝利を祈る合唱隊の歌の一節。
(物語に惨い戦いが出てくることを示唆? 心の準備を誘う)
下は民主主義の先駆者ウィリアム・ペンの格言集「孤独の果実」(1682年)から。
友は死すとも友情と団結は死せず…のような感じの文。
(これも登場人物の死を暗示するが、こちらはかなり救いになる)

 

どちらも作品の一部のようなもので、読めると読めないとでは
作品の印象も違う。訳さない、説明もないというのはずさんな手抜き。

 

ハッフルパフは劣等生(1巻p.121)

ハッフルパフは目立つ生徒の少なさや毎年の寮対抗レースの印象から、他の寮生からは馬鹿にされる傾向にあるのだろう。
しかし、ハグリッドはbutのあと「真面目な努力家も多い」と続けたかったのではないかと思われる。

組み分け帽子はjust and loyal(公正で忠実)とほめているし、セドリックのように優秀な生徒もいたので、「劣等生」などという決め付けは無神経極まりない。

なお原作者自身も、自分の子供を入れるならハッフルパフと言っている。

 

かまぼこ墓(4巻)、ジャガバタ墓(7巻)

トム・リドルの墓とハリーポッターの両親の墓のイラストが、
それぞれ「頭頂部がかまぼこ型に丸みを帯びた和型墓石・縦書き楷書体」、「その辺にあるような適当な岩の形・ポップ体」になっている。

なお、原書には墓石のイラストはなく、墓碑銘が本文の中に効果的に入ってる。
日本語版ではこれを勝手に抜き出してしょぼい墓石の絵にいれているため、実は本文のほうも秘かに壊されてる。

 

予言について(7巻下p.458)

原書におけるハリーに関する予言は
"neither would live, neither could survive."
(一方が生きている限り、両方とも生きられない)となっており、
「片方を殺したら、残った方は生きられる」という解釈と
「片方が生きていたら両方とも死ぬ運命」という解釈の二通りが成立する。

しかし、邦訳では「どちらも生きられない。どちらも生き残れない。」と訳されており、
「片方を殺したら、残った方は生きられる」という解釈しかできない。

そのせいで、原書の「読者を騙そう」という仕掛けが台無しになっている。

 

フォントいじり(全巻)

日本語版は特殊フォント・太字・囲み文字・網かけ文字やイラスト風の囲みが多用されている。
これは、「読者がイメージを膨らませられるように」という訳者の独断…もとい解釈で付与されている。

しかし原書では「強調したい箇所はイタリック、大きな音・声を表わすためには大文字を使用」という、
英文筆記のごく通常の習慣を踏襲しているだけ(作者の独創ではない)で、
日本語版のように特殊フォント・太字・囲み文字・網かけ文字やイラスト風の囲みといった技法は一切使われていない。
他の普通の小説となんら変わらない書き方がされている。

コメント欄

・情報提供、検証、議論、誤字脱字の指摘など様々な用途にお使いください。
・コメントの先頭にあるラジオボタンを選択すると、そのコメントにぶら下がる形で返信できます。
・スパムや荒らしコメントが投稿された際は、削除にご協力ください(「編集」から削除できます)。
・任意ですが、書き込みの際はできるだけお名前(HN)を入力してください。