どんなに弱いチームでも3割は勝つ

Last-modified: 2025-11-08 (土) 13:49:57

ニンテンドーDSのゲームソフト『パワプロクンポケット11』にて発せられた台詞。
なんJにおいては、シーズン序盤に負けが込んで極めて低い勝率を推移するチームに対して用いられる。


概要

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サクセス開始1年目、新規参入球団ナマーズのオーナーを務める神条紫杏が、ライバル球団のホッパーズとの開幕戦で初勝利した後の発言。野球はプロスポーツの中でもシーズン試合数が非常に多く、一人の選手に出来ることが限られているため、最終的に勝率が3割を切るケースはほとんど無い*1*2

NPBにおいて勝率3割を切った例(2リーグ制以降)

日本のNPBでは2リーグ制以降は下記の9例のみである。

チーム名試合勝率備考
広島カープ195013841961.299球団ワーストタイの13連敗を記録。
松竹ロビンス195212034842.288この年のセ・リーグは「勝率が3割未満のチームには
何らかの処罰が与えられる」という取り決めがあった*3
シーズン終了後、大洋ホエールズと合併して大洋松竹ロビンスとなる。
近鉄パールス195210830780.278
洋松ロビンス195413032962.250シーズン終了後、松竹が球団経営から撤退して大洋ホエールズに戻る。
大洋ホエールズ195513031990.238歴代最低勝率タイセ・リーグ最多敗戦記録。
近鉄パールス195813029974.238歴代最低勝率タイ、当時の引き分けは0.5勝0.5敗扱い。
現在の計算方法では.230単独ワースト記録
近鉄バファロー*41961140361031.261NPB最多敗戦記録かつ、唯一のシーズン100敗以上
ヤクルトアトムズ197013033925.264歴代2位タイの16連敗を記録。*5
東北楽天
ゴールデンイーグルス
200513638970.281平成唯一の勝率3割未満。
  • チーム名の赤字:参戦初年度、青字:参戦から10年以内*6

NPBで勝率が3割を切る要因

  1. ドラフト制度導入前(~1964年)で戦力均衡ができていない。
    →9例中7つが1961年以前。

  2. 新規参入した球団の戦力が不十分。
    →9例中6つが参戦から10年以内、2つが参戦初年度*7。上述のように本来の元ネタのナマーズもこれ*8

MLBにおいて勝率3割を切った例

球団数が多く歴史も長い米国のMLBでも、勝率3割を切った例は下記の16例のみである。そのうち勝率1割が2例あるが、どちらも19世紀に記録されたもの。

チーム名リーグ試合勝率備考
ルイビル・カーネルズ1889AA13827111.196
セントルイス・ブラウンズ*91898NL15039111.260
クリーブランド・スパイダーズ1899NL15420134.130ナ・リーグ最多敗戦記録かつ最低勝率。シーズンオフに解散。
ワシントン・セネタース*101904AL15138113.252
フィラデルフィア・アスレチックス*111916AL15436117.23520世紀以降の最低勝率
ボストン・レッドソックス1932AL15443111.279
ボストン・ブレーブス*121935NL15338115.248
セントルイス・ブラウンズ*131939AL15443111.279
フィラデルフィア・フィリーズ1941NL15443111.279
ピッツバーグ・パイレーツ1952NL15442112.273
ニューヨーク・メッツ1962NL16040120.250
デトロイト・タイガース2003AL16243119.26545年ぶりの勝率3割切り。ドラフト制度導入後初の例
ボルチモア・オリオールズ2018AL16247115.290露骨なタンキング*14とされている。
デトロイト・タイガース2019AL16147114.292
シカゴ・ホワイトソックス2024AL16241121.253ア・リーグ最多敗戦記録。
ロッタリー方式後初の例。翌年ドラフト指名順位を決めるロッタリー参加不可*15
コロラド・ロッキーズ2025NL16243119.26521世紀初の1000失点
ナ・リーグでは63年ぶりの勝率3割切り。来年のロッタリーにも参加不可*16
  • チーム名の赤字:参戦初年度、青字:参戦から10年以内。

MLBで勝率が3割を切る要因

  1. ドラフト制度導入前(~1965年)で戦力均衡ができていなかった。
    →16例中11つが1962年以前。

  2. 新規参入した球団の戦力が不十分だった。
    →16例中3つが参戦から10年以内、1つが参戦初年度。

  3. そもそも勝とうとしていなかった。
    →一時期のMLBにおいて問題化した、完全ウェーバー制であったドラフト指名順を有利にするために意図的に勝率を下げる行為のことであり、これは「タンキング(Tanking)」と呼ばれる。これが発端となり2022年のドラフトからはロッタリー方式*17に切り替える対策が為された。それでもドラフト導入後からウェーバー廃止までに勝率3割を切ったのは僅か3例のみである。
    ちなみに元々MLBでは一部球団を除き、契約金が高額な選手などを大量放出(つまり戦力をわざと大幅に落とした状態)した上でドラフトやトレードで得た有望な若手(プロスペクトと呼ばれる)を数年掛けて育ててチームを再建する方法が一般的である。

セイバーメトリクスの観点からの考察

セイバーメトリクスで用いられる指標「WAR」で定義される「代替可能選手(=一軍向けに二軍からの昇格やトレードなどですぐに用意できる選手)」だけで1シーズン*18を戦った場合の想定勝率は.294とされており、セイバーメトリクス的には「どんなに弱いチームでも2割9分4厘は勝つ」と考えられている、すなわち偶然にもある程度近似した数値が出ているとも言える(なお前述の3割切りの例のうち1950年の広島以外は.294も切っている)。

(参考)1リーグ制時代の記録

  • 最低勝率(公式):.214(1937年春、後楽園イーグルス、12勝44敗0分)参考
  • 最低勝率(非公式):.000(1936年春夏、大東京軍、0勝13敗1分)※春のリーグ戦×3回と夏のトーナメント戦×3回の合算。参考1参考2

詳細は割愛するが、2リーグ時代より戦力差が大きく試合数も少ないため、勝率3割以下は多数発生している。

関連項目

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*1 サッカーやバスケットボール等他競技の国内トップリーグでは、試合数の違いや引き分けの多さ、チーム間の戦力差・選手獲得能力の開きから、下位チームの勝率が3割、時には1割を切ることも珍しくない。一例としてバスケットボール・B1リーグの2023~24シーズンにおいて富山グラウジーズは4勝56敗勝率.067というすさまじい成績を叩き出している。
*2 逆に勝率が7割を超えたのはNPBでは7回あり、全ての記録が(球団間の戦力差が大きかった)1950年代に記録されている。最高勝率記録は1951年の南海ホークスが記録した.750であり、他6回は巨人が3回(1951・53・55)、南海が1回(1955)、毎日オリオンズ(現在のロッテ)が1回(1950)、そして後述の通り1952年に消滅した松竹ロビンスが1回(1950、2リーグ制分裂後初のセ優勝チームで現DeNAの傍系前身)記録した。
*3 ブービー(6位、当時は7球団)だった広島は勝率.316で、紙一重で回避。
*4 1959~61年の球団愛称。
*5 なお、2019年に同じ連敗を引き分けなしでNPBワースト記録を打ち立てている。
*6 洋松ロビンスは大洋ホエールズ基準。
*7 特に2005年楽天のものは上でリンクされている26-0項で簡単な背景解説がある。
*8 ちなみにゲーム中では多少経緯が異なることはあれど、ナマーズの1年目は確定で最下位となる。実はここも「他球団では使い道がないような選手」と新人ドラフト指名メンバーのみのため明確に戦力が不十分だったと描写されている。
*9 同名チームが複数あり、これはセントルイス・カージナルスの前身(1883~1898)。
*10 同名チームが複数あり、これはミネソタ・ツインズの前身(1901~1960)。
*11 同名チームが複数あり、これはオークランド・アスレチックスの前身(1901~1954)。
*12 アトランタ・ブレーブスの前身(1912~1935)。
*13 同名チームが複数あり、これはボルチモア・オリオールズの前身(1902~1953)。
*14 その後2019年に108敗、2021年に110敗している。2020年は短縮シーズンで60試合しかなかった為か35敗のみ。
*15 前年に全体5位指名権を得たため。
*16 2年連続で全体6位以内の指名権を得たため(収益分配対象のチームは2年連続で全体6位以内の指名権を得た場合に翌年除外)。即ち敢えて負けるメリットに乏しく、タンキング狙いでもない3割切りである。
*17 ロッタリー(Lottery、英語で抽選の意)方式→指名順(特に上位指名順序)を文字通り抽選で決定する。NPBでも1967~77年はこの形式であった。他のプロスポーツでは、NBAとNHLがこの方式を採用している。
*18 MLB方式の162試合。