セイバーメトリクス

Last-modified: 2023-01-08 (日) 20:27:56

統計学的に野球を分析する手法の総称。研究分野そのものの名称としても使われる。

概要

ビル・ジェームズという野球ライターが1970年代に統計学の知見を野球に持ち込むことを提唱したのが発祥である*1
2000年代にオークランド・アスレチックスがセイバーメトリクスを活用して安価に常勝チームを作り上げたことでMLB全体でセイバーメトリクスがブームとなり、現在ではセイバーメトリクス学会と呼ばれる学会が組織され、セイバーメトリクス学者たちによる研究が進められているほか、各球団がセイバーメトリクス学者を雇用してチーム作りや采配の助言を求めるのが常態化している。
日本ではアメリカほどの浸透はしていないものの、一部の球団がセイバーメトリクスの導入を発表するなど、徐々にアメリカから知見を輸入する動きがある。
その一方、スポーツメディアでは野球系サイトで使用する例があるものの、テレビの解説やスポーツ新聞で使用する例はほとんど見られない。

なんJにおけるセイバーメトリクス

なんJでは主に煽りの道具として活用されている。これは一言で言えばセイバーメトリクスによって選手を多面的に数値化できるようになったことが原因である。様々な数値の中から自分に都合のいい数値を提示し、自分に都合の悪い数値を無視することで煽りの道具とするのである。
また、セイバーメトリクスを過信し、数値に現れない特性や統計誤差といった要素を無視してちょっとした数値の大小を大袈裟に騒ぎ立てたり、野球通気取りで指標を知らない相手にマウントを取る者(セイバー厨)や、逆に自分の印象という主観を根拠にしてセイバーメトリクスで算出されたデータを否定して回る者(アンチセイバー厨)によるレスバトルがそこかしこで展開されているのもまた事実である。

注意点

当然のことながらセイバーメトリクスは煽りの道具ではないし万能の指標群でもない。野球は元来様々な数値指標(例えば打率や防御率など)で選手が評価されてきたスポーツである。セイバーメトリクスは統計学を使ってさらに指標を精密化したり数値の新しい見方を提示するものにすぎない。数字には現れない選手の特性(例えばリーダーシップなど)を否定するものではないし、一つの数値で選手の全てを表すものでもない。
更に言うと、セイバーメトリクスは結果の集計である。傾向は存在するとは言え、単純な横流しは禁物である。また統計学の宿命として、平均程度の選手の評価には非常に優れているが、平均から外れた極端な成績の選手の精度はどうしても落ちてしまう。
より正しく選手を知りたいと思うならば、指標をベースに「何故、この成績になったのか?」と技術的な分析を行うべきであろう。

なお、セイバーメトリクスに近い采配を行った監督経験者としては、岡田彰布が挙げられる。2005年の日本シリーズにおいて33-4を招いた原因の一つとして、岡田がセイバーメトリクスに拘りすぎたためとされており、対戦相手のロッテを率いたボビー・バレンタインから「10年前の私を見ているようだ」とも発言されている。ただし、岡田は自身の著書『頑固力』にで、セイバーメトリクスに関する本は読んだことはないと発言している。

なんJで煽りに使われることの多い指標

  • WAR
    走攻守投の指標を総合的に評価して、「代替可能な」選手*2と比べてその選手がどれだけ勝利に貢献したかを推定した指標。NPBではDELTA算出のもの(lWAR)とデータスタジアム社算出のもの(sWAR)がよく使われる。選手層にもよるがマイナスが大きいと控えの方がマシでは、ともされる。選手の総合的な価値に近い指標であるため、頻繁にマウントや煽りの題材に用いられる。もっとも、WARの値は算出する企業によって大きく異なっていたり、算出式の改定でいきなり過去の数値が変わったりするなど、非常に誤差が大きいものであり、わずかな差でマウント合戦をするのは無意味である*3。読み方は「ワー」だという人もいれば「ダブリューエーアール」だという人もおりしばしば論争になるが、実際の英語での発音は「ウォー」*4に近い。
  • WPA
    状況によらず選手個人個人で考えるWARに対して、WPAは状況によって付加価値が加わるというもの。打者で言えば、チャンスで打てば通常より大きくプラス、逆にチャンスで凡退した場合は大きくマイナスとなる。なんJにおいては専ら戦犯探しの指標として用いられる。
  • wRC+
    打撃総合指標の一つで、100をリーグ平均、これ以上ならリーグ平均以上の打者、以下なら平均以下の打者となるもの。投手などは0以下を通り越してマイナスになることもある。
  • IsoD
    出塁率-打率によって計算される四死球による出塁の率。待ち球タイプの打者は高くなりやすく、積極的に打つ打者は低くなりやすい他、選球眼の良さも影響を受けやすいとされる。
  • BABIP
    運の影響を受けやすいフェアグラウンドの打球がヒットになった率を計算して、成績の変化が運か実力かを見分けるための指標。一般には実力によらずどの選手も3割程度に収まるとされている。打者の場合、高すぎるときはたまたま運が良かった、低すぎるときはたまたま運が悪かった(野手の正面を突いたりしてたまたまアウトにされていた)と考えることができる(投手はその逆)。この数値があまりにも高い場合は以降成績の悪化が予想されるため、「バビる」「バビっている」などと言われ、煽りの対象にされやすい。ただし常に3割を大きく超えていたイチローのような打者もいるほか、ホームランか三振か四球かといった打者は例年低くなりやすく、チームの守備力にも左右されるため、いつでも3割ちょうどに収束すると考えるのは誤りである。
  • RC27
    その打者を9人並べて9イニングプレイした際、平均で何点取れるかを統計的に推計した指標。あまりに貧打の選手の場合、マイナスの数字になってしまうこともあり、得点が0点未満というのは指標の想定を超えた貧打であるとして煽られることがある。
  • UZR
    読み方は正しくは「ユーゼットアール」であるが、なんGでは専ら「うずら」と読まれる。打球の弾道を計測し、平均的な野手ならば何割の確率でアウトにできるかを統計的に求めた上で、結果的にアウトにできたかどうかでその野手の総合的な守備力を測定する指標。MLBではトラックマンやステレオカメラによる客観的データ分析から算出されているが、NPBにおいてはそのような環境が整備されていないため、算出を行う企業*5のスタッフが手動で元データを入力している*6。DELTA社も客観的な記録でないことは認めており(ただし、スキルの高いスタッフによる入力であるため問題ないと主張している)*7レスバトルではこのことを誇張して「主観で出されたデータなど無意味」などとデータが全否定される場合もある。類似指標としてDRS・OAAがある。また、主観の入らない客観的な守備指標としてはTZRがある。
  • フレーミング
    キャッチャーの技術。ストライクかボールか際どい球を工夫して捕球し、審判にストライクとコールさせるテクニックを言う。こちらもMLBとは違い、NPBにおいては客観的なデータ分析では無く主観的な人による評価が行われている為*8、盲信するようなことは避けたい。「ボール球をストライクと判定させる」訳ではないので注意。
  • FIP
    奪三振や被本塁打といった野手の守備に影響されない要素のみで計算される擬似的な防御率。防御率が悪くてもFIPが良ければその投手は野手の守備に泣かされているということになる。

これらの指標はIsoDのように簡単に算出できるものもあれば、WARやUZRのように算出が極めて困難(というか企業じゃないと無理)なものもある。NPBではDELTA(課金することでリアルタイムでデータを閲覧できる)やデータスタジアム(毎年紙媒体でデータが発表される)といった企業がデータを算出している。
DELTAが2021年頃に有料化してからはWARやUZRを煽りの材料にしたスレが立てられることは少なくなり、立てられた際にはデータのスクショを要求されるようになった。

関連項目



Tag: なんJ MLB


*1 野球は他のスポーツと異なり、1プレーごとにプレーが止まって結果が記録され、打率や防御率のように様々な数字が算出されてきたという特性があるため、統計学との親和性が非常に高かったことが背景にある。
*2 トレードなどですぐに手に入る選手のこと。標準的な控え選手のレベルに近い。代替可能な選手だけで戦った場合その勝率はおよそ.294となる。ただし、NPBではトレード自体が少ないため、このレベルの選手であっても簡単に手に入らないのではないかという批判もある。
*3 実際に米セイバーメトリクス大手FangraphsはWAR1未満の差に着目するのは無意味だと発表している
*4 「戦争」という意味の英単語「WAR」のそれに近い。
*5 現在はDELTA社とデータスタジアム社のみ
*6 https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53487
*7 https://news.yahoo.co.jp/articles/f9d8dd77cd9db3d599d49087dd14b998daa1552d?page=3
*8 https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53468