赤星憲広(元阪神タイガース)の発言に基づいて考案された盗塁指標。
計算式は
【赤星式盗塁=盗塁-盗塁死×2】
で表される。
概要
古くから盗塁王というタイトルについては、盗塁成功数と同時に盗塁死も多く技術や貢献度に疑問符の付く選手が受賞する問題が存在していた。盗塁死が公式記録として公表されたのは1942年からだが、本年に44盗塁19盗塁死(6赤星式盗塁)の坪内道則が40盗塁7盗塁死(26赤星式盗塁)の呉波を抑えて盗塁王を獲得した出来事が公表のきっかけと言われている。
したがって、盗塁死を抑えつつ盗塁を増やす者が真の盗塁王ではないかという疑問に応える指標が求められていた。
例えば近年で言えば、2012年セリーグ盗塁王の中日・大島洋平(32盗塁)は同時に17盗塁死をしているため、-2赤星式盗塁となり、盗塁王ながらその活躍はチームに貢献できていないと言える。
上記の背景の中、赤星は「盗塁は、成功数だけでなく失敗数にも着目して評価して欲しい。具体的にはいくら盗塁が多くても、それが盗塁死の倍と等しいならば価値はゼロ、下回るならば価値はマイナスである」という主張を展開*1。
この発言を2014年になんJ民が数式に起こしたものが「赤星式盗塁」である。
本指標の長所として、
- 盗塁数と盗塁成功数を両立している選手ほど高い数値になるので、真の盗塁王を明らかにすることができる。
- 最終的に「プラスならば良い」「マイナスならば悪い」という基準が分かりやすい。
- 暗算で容易に計算できる。
- 現代野球における盗塁の第一人者として名高い赤星の発言が原案である。
- セイバーメトリクスによる統計的分析結果とほぼ一致している(後述)。
- 盗塁死が持つ2つのデメリット「走者がいなくなる」「アウトカウントが増える」*2ことから、盗塁死を2倍して引く計算式が直感的に理解できる。
等が挙げられ、なんJにおける盗塁指標の決定版として定着。毎年のシーズン終了後に当年の赤星式盗塁ランキングが集計されるのが恒例となっている。
赤星式盗塁という名称は片岡式本塁打から取られたと思われるが、片岡式がもっぱらネタとしてバカにされている*3のに対し、赤星式はまともな指標として肯定的に扱われている。
分析
赤星の発言は「赤星式盗塁が0ならばチームへの盗塁での貢献は0であり、マイナスならば走ってアウトになった損失のほうが大きい」と解釈することができる。
赤星式盗塁が0を下回るのは盗塁成功率が2/3(約67%)以下の場合となるが、この数字はセイバーメトリクスによる研究結果「盗塁の損益分岐点は約70%」とほぼ一致しており、盗塁のスペシャリストである赤星の体感と、セイバーメトリクスによる統計学的分析結果が同じ答えをはじき出したと言える。
セイバーメトリクスで用いられる多くの指標の計算式においては、盗塁死の係数が盗塁の係数のマイナス2倍前後となっている*4。よって各指標から盗塁部分だけを抜き出したものが赤星式盗塁だと言うこともできる。
式を変形すると【赤星式盗塁=盗塁×(3-2÷盗塁成功率)】と読み替えが可能で、盗塁と盗塁成功率の双方を考慮してチームへの得点貢献度を数値化していることが分かる。
赤星式盗塁の記録
通算記録
シーズン記録
選手名 | 年 | 盗塁 | 盗塁死 | 赤星式盗塁 | |
---|---|---|---|---|---|
最多 | 福本豊 | 1973 | 95 | 16 | 63 |
ワースト | 小玉明利 | 1956 | 16 | 24 | -32 |
赤星本人の記録
年 | 盗塁 | 盗塁死 | 赤星式盗塁 |
---|---|---|---|
2001 | 39 | 12 | 15 |
2002 | 26 | 7 | 12*8 |
2003 | 61 | 10 | 41*9 |
2004 | 64 | 12 | 40 |
2005 | 60 | 12 | 36 |
2006 | 35 | 13 | 9 |
2007 | 24 | 8 | 8 |
2008 | 41*10 | 9 | 23 |
2009 | 31 | 5 | 21 |
通算 | 381 | 88 | 205*11 |
太字はシーズン1位。
盗塁死の記録が公表されるようになった1942年以降の赤星式盗塁王はなんJ民の調査によって全て明らかにされている(スレッド、1942~2014年)。
また、赤星式盗塁に関するデータを扱う個人サイトも多数存在する。
2020年の赤星式盗塁ランキングとその他盗塁関連データまとめ
その後
本指標の優秀さゆえになんJの枠を飛び越え、各種メディアに取り上げられる機会が増加している。
- 2015年:産経新聞に取り上げられる。
https://www.sankei.com/smp/premium/news/151004/prm1510040009-s.html
野球は「失敗のスポーツ」といわれる。成功の陰には失敗の繰り返しがある。以前、ネット掲示板で考案されて話題になった「赤星式盗塁指標」というユニークな物差しがある。赤星とは元阪神の赤星憲広のこと。50メートル5秒6という俊足を武器にセ・リーグで5年連続盗塁王に輝いた。引退後、野球解説者となった赤星の「盗塁は成功数だけでなく、失敗数にも注目してほしい」という発言をもとに編み出されたユニークな評価法だ。例えば「100盗塁成功しても50盗塁死なら価値はゼロ」ということになる。
- 2020年:テレビ番組『戦え!スポーツ内閣』の「セイバーメトリクスを徹底解析SP」に赤星及びDELTA(セイバーメトリクスによるデータ分析を扱う企業)の社長である岡田友輔が出演。岡田による盗塁の統計学的分析とともに、赤星式盗塁を紹介するVTRが流された。岡田は「素晴らしいと思います。本当に合理的な盗塁をされています」と赤星を絶賛した。
- 2021年:ベースボールチャンネルにて「注目を集める有力な盗塁指標」として特集記事が組まれる。
価値ある盗塁王は誰だ! ”赤星式盗塁” で見る歴代盗塁ランキングトップ10、2020年ランキングトップ5は?
https://www.baseballchannel.jp/npb/91061/
足のスペシャリストとして名を馳せた赤星憲広氏の発言をもとに生まれた“赤星式盗塁”が有力な盗塁指標として注目されている。計算式は以下の通りだ。
赤星式盗塁=盗塁-盗塁刺×2
(余談)赤星式盗塁阻止
応用編として赤星式盗塁阻止(=盗塁阻止×2-許盗塁)も考案されているが、こちらは捕手が強肩である事が知れ渡っている場合に盗塁企図数が増えないため盗塁阻止数も増えず、数字が伸びにくくなる問題点が指摘されている*12。
また、盗塁阻止自体に関しては投手のクイックモーションも重要であり、捕手単体の成績評価に本指標を用いることに対する疑問も見られる。