装甲方式考察

Last-modified: 2020-08-13 (木) 18:22:30

※Rule the wavesⅡ Ver1.17において、装甲方式の特徴を考察するために行った検証結果の報告になります。艦艇設計の際の参考にしていただければと思います。
※注意事項として、今回の検証結果には、作者の操艦テクニックの影響があることに留意してください。別のプレイヤーにやってもらった場合、全く異なる結果が出ることも十分あり得ます。
※以下、考察に用いたデータと、何故そういったデータを用意することにしたのかをご説明しますが、イチイチ読むのは面倒くさいという方は、末尾の作者考察の部分のみをご覧ください。
※2020.8.13追記 Narrow(記事中ではNallowとしていますが誤記です)ベルトで、速度の低下が起きやすい原因がよく分からない、としていましたが、改めて調べ直してみたところ、Narrowベルトは装甲を施す範囲が狭い=水線下にも装甲が無い→水中弾などで大きな損害が出る、ということの様です。
AIはあまり水中弾を使って来ない(日米などは使って来るかも? )感じがするので、プレイ中には気がつきませんでした(作者は水中弾を使う派なので、記事中の検証でNarrowベルトに水中弾による被害が出ていた様です)。
Narrowベルトはマガジンボックスと異なりデッキ装甲には省略がなく、水中弾を考慮しなければ強力な装甲を施しつつ排水量を削減できるので、作者は艦艇設計で使うことがある(AIはあんまり水中弾を使わない印象なので、普通にプレイしている分には欠点に見合ったコスト削減ができる装甲方式の様に思います)のですが、こういった欠点もあるので、ご使用の際には注意をお願いいたします。
↑USA攻略記録の艦艇設計例でNarrowベルトを多用しているので、念のため、こういう注意点があるということをご紹介しました。

:目次

:1.はじめに

 本ゲーム、Rule the wavesⅡでは、歴史上に実在した様々な艦艇や技術を題材として、自由自在に自分だけの艦艇を設計し、その艦艇で編成された艦隊を指揮して、敵国の海軍や、自国の予算と戦うゲームであります。
 しかしながら、プレイヤー側が艦艇の設計で選択できる装甲方式はいくつも用意されているのにも関わらず、プレイ人口の少なさや、ゲームの対応言語が日本語にほぼ非対応ということから、各装甲方式の特徴については、未だによく分からない点が多いと思われます。
 そこで、今回、作者が自分様に検証してみた結果を、本ゲームプレイヤーの皆様のご参考になればと、公開してみることといたしました。
 作者の検証結果が皆様の役に立てば幸いです。

:2.考察する4つの装甲方式の特徴

 本ゲームでは、歴史上に実在した艦艇や技術を元にして、いくつかの装甲配置方式が選択可能となっています。
 作者はその中で、各装甲方式の特徴を考察するのに検証が必要な装甲方式を4つに絞り込み、相互に演習して戦わせることで、その特徴を明らかにしようと考えました。
 作者が検証で用いた装甲方式は、以下の4つです。
① Sloped Deck ( 以後S )
② Sloped Deck Nallow ( 以後SN )
③ Sloped Deck Magazine box ( 以後SM )
④ All Or Nothing ( 以後AON )

 本来であれば、AONかつNallow、AONかつMagazine boxの装甲方式も検証するべきでありますが、Nallow、Magazine boxの特徴は②と③の装甲方式の検証によって把握できると判断したため、ゲーム中で艦艇を用意する都合と検証に要する時間節約のために省略いたしました。

 以下に、4つの装甲方式の特徴を示します。

① Sloped Deck
S.png
 この装甲方式は、ゲーム最初から使用できる装甲方式です。
 装甲甲板を2段持つのがその特徴と言えると思います。これは、舷側装甲を貫通してきた敵弾が機関室や弾薬庫を直撃するのを防止するために斜め配置の装甲(Sloped Deck)を設け、舷側装甲を突破してきた敵弾を弾く、炸裂してもその威力が重要区画に及ぶのを阻止する、といった効果を狙ったものです。
 また、甲板装甲を貫いてきた敵弾に対しても、2段目の装甲甲板でそれを受け止め、重要区画への損害を防ぐ効果を狙ったものと考えられます。
 装甲方式の中では最も充実した防御内容となっています。

② Sloped Deck Nallow
SN.png
 これは①の亜種で、防御範囲を減少させた方式となります。
 作者がゲーム中でいじってみたところ、上記のデータの様に、舷側装甲の重量のみが変化することが分かりました。
 これは、防御範囲の減少が、装甲甲板を一段下げることによってなされているためだと考えられます。
 つまり、Nallowとは、艦の長さ方向の装甲範囲を減少させるのではなく、高さ方向の装甲範囲を減少させるものであると言えます。長さ方向も減少させているのであれば、甲板装甲の重量も変化するはずです。舷側防御の無い所に甲板装甲を張ってもあまり意味は無いからです。

③ Sloped Deck Magazine box
SM.png
 Magazine boxは、作者も該当する単語を見かけたことが無いので断言はできないのですが、弾薬庫周りのみに重点的に装甲を施し、機関室やその他の部分は薄く作る設計のやり方であるようです。もしかしたら非装甲になるのかもしれませんが、その点はよく分かりませんでした。
 作者がいじってみた限りでは、チェックを入れるだけで舷側装甲や甲板装甲に使用される装甲重量が大幅に減少しました。このことから、各装甲方式の中では最も防御が薄い装甲方式であると考えられます。

④ All Or Nothing
AON.png
 AONは、戦艦の大型化に伴い、排水量や建造費用の節減のために使用されるようになった装甲方式です。史実では軍縮条約などで戦艦の排水量が制限されたため、その条約内で可能な限り有力な艦を建造するために採用例が増えました。
 ゲーム中では、①の状態からAONにすると甲板装甲の重量だけが減少し、舷側装甲はそのままでした。このことから、純粋にSloped Deck部分だけを取り除いたのがAONであると考えられます。
 こういった装甲方式が採用されたのは、艦砲の威力増大に伴い、防御力確保のためには艦の際限のない大型化が求められ、予算の都合や軍縮条約の存在から、これを抑止するために、装甲を抜かれた時の防御策であったSloped Deck部分を排除し、その分の装甲重量を舷側装甲や甲板装甲に持って行って、装甲を抜かれない「安全域」の確保を図ったものであると考えられます。

 以下に、①Sloped Deckと比較し、装甲の設計数値を同じにした状態で、装甲方式を変化させると装甲重量がどの様に変化するかをまとめた表を示します。
重量比較表.png

:3.検証用の艦艇設計データ

 以上のことをふまえて、作者は、各装甲方式の特徴を検証するために以下の4種類の艦艇を設計、建造し、ゲーム内で演習して戦わせることとしました。
 建造は、少しでも乱数の影響を減らすために2隻ずつ行い、演習も2対2で行うこととしました。
 作者はゲーム中で用いる主力戦艦としてどんな艦が良いかも検討していたので、装備砲はAIが出してくる新型戦艦を上回る17インチ砲とし、同じ排水量ではどの装甲方式が最も効果的に防御力を発揮できるかを見るため、各艦の総排水量を同じにして、その排水量の中でそれぞれの装甲方式でできるだけの装甲を施すこととしました。(砲塔装甲も完全に一致させるつもりでしたが、SM方式の装甲だと重量が余っちゃうので、砲塔装甲も少し強化しちゃっています)

a.BB1950Sloped
BB1950Sloped.png
b.BB1950Sloped Nallow
BB1950Sloped Nallow.png
c.BB1950Sloped Mbox
BB1950Sloped Mbox.png
d.BB1950AON
BB1950AON.png

:4.対戦方法とその結果

 作者はa、b、c、d各艦を2隻ずつ建造し、2対2の演習を行わせることで、各装甲方式の特徴や効果を検証することとしました。
 本当は4隻ずつ建造して4対4で戦わせた方が、砲塔の故障や砲弾の命中判定などのランダム要素を小さくできるのでそうしたかったのですが、予算をとても工面できなかったので涙を呑んで2隻ずつ建造となりました。
 演習条件は、以下の表の様に、敵味方共に2隻構成の戦隊が1つずつで、確実に交戦して、検証時間を省略するためにクラシックモード(演習開始時のスタート地点が敵味方で近く、すぐに捕捉できる)で行いました。
 また、結果をなるべく普遍的なものとするため、各方式の対戦は2回ずつ、計24回の演習を実施しました。試行数としては少なめですが、作者にはこれが精一杯でした。
演習条件.png

 次に、各方式での対戦結果を示します。
 スクリーンショットを全部乗せると分かりにくくなると思ったのと、考察をし易くするために一覧表にまとめてみました。
・対戦結果1:プレイヤー操作S
Sh.png
・対戦結果2:プレイヤー操作SN
SNh.png
・対戦結果3:プレイヤー操作SM
SMh.png
・対戦結果4:プレイヤー操作AON
AONh.png

・ダメージポイントランキング
DPまとめ.png

 また、どの装甲方式が最も粘るか(撃沈されるまでにそれくらい抵抗できるか)を見るために、敵にした場合の表もまとめてみました。
 与ダメー被ダメポイントが少なくなる方式ほど、撃沈されるまでに粘り強く抵抗していると考えられます。

・Sの坑湛性
SK.png
・SNの坑湛性
SNK.png
・SMの坑湛性
SMK.png
・AONの坑湛性
AONK.png
・坑湛性ランキング(どれだけ抵抗できたか)
DPK.png

:5.対戦した感想

 対戦させてみた感じですが、敵AI操作の戦艦はかなりグイグイ寄せてきます。
 作者側はなるべく距離を取って遠距離砲戦をしたかったのですが、AI側が勇猛果敢に突進してくるので、接近戦になることがほとんどでした。各設計で速力を一緒にしたので距離を維持した同航戦が多くなると予想していたのですが、敵に全門斉射するために舷側を向けようとすると、どうしても接近されてしまいました。
 このため、重防御にしたはずの砲塔を撃ち抜かれ、一方的に勝負が決まってしまった戦いもありました。
 しかし、この過程で、AON方式の戦艦で、弾薬庫に直撃して爆沈するという事態が発生しました。このことから、AON方式では装甲を抜かれた後に防御が何も無いので、安全域以外の戦闘では注意が必要なのではないかと思われます。(他の方式では弾薬庫に直撃して轟沈という事例は無かったので、多分こう言えます。事例が少ないので断言はできません)

 また、SM方式の戦艦では、速力の低下が発生しやすいことが確認できました。他のSloped Deckを使用した方式では、速力の低下は段階的に、2とか3ノットずつ発生するのですが、SM方式では一挙に10ノットか、それ以上の速力低下が発生することが何度か見られました。
 これは、SM方式は弾薬庫を重防御しているものの、その他、機関室なども含めて軽装甲になっているためだと考えられます。作者はこの弱点を秘孔と呼ぶことにしました。
 つまり、SM方式では、弾薬庫などは重点防御されるため、弾薬庫の誘爆は起きないし、重装甲部分に砲弾が命中しても余裕で耐えることができるのですが、秘孔に1発でも命中すると大ダメージが発生するということです。
 このことから、作者の操艦テクニックにもよると思いますが、SM方式の戦艦ではあっという間に戦況が崩れることがありました。
 一方で、弾薬庫等は守れるため、廃艦になるまで割と粘って、敵にした時に少し驚かされもしました。ちょっとクセの強い装甲方式だと言えます。

 SN方式は、SMほどではありませんが速力の低下が起きやすかった様に思います。これは、装甲範囲が1段低いので、煙路とかに被弾して機関出力が発揮できなくなる機会が増えたり、波で破口から浸水する事態が増えたりしたためだと考えていますが、細かいところはどうなのかちょっと曖昧です。

 S方式ですが、今回の検証ではちょっと不遇だったかなと思います。対戦結果を見ていただけるとお分かりいただけるかと思いますが、ダメージポイントで、S方式の戦艦はプレイヤー操作時に負け越している上に、最も打たれ弱いという結果になってしまいました。
 これは、搭載砲を威力の大きな17インチ砲にしたことと、今回設定した排水量の艦ではそれに耐えられるほどの重装甲を施せなかったことに起因するものと思われます。
 S方式では、速力の低下が急激に起こることは滅多になく、徐々に落ちる感じでした。また、敵に回した際にも、容易には戦闘不能にならず、粘り強い印象がありました。

:6.作者考察

その1:プレイヤーが最も操作しやすいのはAON
 対戦結果のダメージポイントを見ていただければお分かりいただけるかと思いますが、プレイヤー操作時に最も活躍したのはAONでした。
 これは、作者がなるべく敵艦と距離を保ち、遠距離砲戦に努めた結果であると思われます。AONは同排水量であればより装甲を厚くでき、結果として、安全域が広くなり、装甲の安全域で戦う限りは高い防御力を発揮できるのだと考えられます。
 その一方で、装甲を抜かれた後の備えは何も無いため、安全域以外では扱いに注意が必要で、当たり所が悪ければ弾薬庫を直撃するなどして一撃で轟沈する場合があります。
 このことから、AONを使用する際は、速力が十分にあり、敵と常に装甲の安全域で戦える、距離を保てる様な艦にするのが良いと考えられます。

その2:Sloped Deckは大艦巨砲主義の王道を行くべき
 作者としては、Sloped Deckが最も防御力に長けていると予想していたのですが、今回の検証の結果は意外にも、最も脆弱であるというものでした。
 しかし、これは、排水量の制限の中で、Sloped Deckは装甲一枚当たりの厚みを十分に持たせることができず、装甲を抜かれた後の備えはきちんとしているが、そもそも装甲が抜かれ易い、そういう状況になってしまったためだと考えられます。
 ですので、この装甲方式を用いる場合には、予算を思い切って使ったロマン戦艦を作ると、その良さを生かせると思います。
 予算はかかりますが、十分な装甲厚を備えたSloped Deck装甲は、驚異的な抗堪性を発揮してくれることでしょう。

その3:Magazine boxはムラがある

 作者はゲーム中で、予算の削減などの目的からMagazine boxをよく使っているのですが、どうも、この装甲方式は急激な速力低下を起こしやすいです。
 弾薬庫周りは重防御されているので1発轟沈ということは無いのですが、秘孔に食らうと簡単に速力が落ち、ダメージレベルではそれほどでも無いのに速力が大幅に低下するという事態が頻繁に起き、今回の検証でもそれを確認することができました。
 ただし、秘孔にさえ当たらなければ、この艦は強いです。対戦結果でも、敵に回した時には意外なほど抵抗してきました。
 このことから、この装甲方式は、予算を獲得できないが他国の強力な戦艦に対抗できる艦をどうしても一定数揃えたいときや、巡洋戦艦などで、高速力で自身より強力な戦艦からは逃げ、自身よりも弱い巡洋艦や空母などを狩りたてる様な、アラスカ級や超甲巡の様な大型巡洋艦を建造したいときに用いるのが良いかと思われます。

その4:NallowはMagazine boxっぽい要素を持つ

 Nallowは、作者が使ってみた感じだと、Magazine boxほどではありませんが、速力の低下が発生しやすかった様に思います。
 しかしながら、同排水量という条件では、純粋なSloped Deckよりも装甲厚を厚くできるため、地味ですが意外に使えるなという印象でした。
 このことから、Nallowは、ゲーム初期などに予算を節約した戦艦を作りたい場合や、軍縮条約などで排水量を抑制しなければならないが、AONは避けたいといった場合に使用すると良さそうです。

:7.各装甲方式の特徴を生かした艦艇設計

・その1:AON採用の近代的高速戦艦
近代戦艦.png
 AONは装甲の安全域で戦っている限りは十分な防御力を発揮してくれるので、高速を発揮できて敵との距離を一定に保ちながら砲撃戦を行う遠距離ファイターにすると良いのではないかと思います。
 試しに設計してみた艦は、現実のサウスダコタ級に近いです。AIの出してくる新戦艦に対する優位を確保するために舷側装甲を厚めにしていますが、現実のサウスダコタ級の装甲厚に直すと排水量がほぼ近似します。
 予算が許すなら、もう少し速力と装甲が欲しいです。

・その2:Sloped Deck採用のロマン戦艦
ロマンあふれる超戦艦.png
 大艦巨砲主義のロマンをぐつぐつ煮詰めた様な艦を作りたい時におススメです。予算の確保は大変ですが、文字通り、浮かべる城として大活躍してくれることでしょう。
 その威容と堅牢さ、圧倒的な火力は、海の王者として、文字通り海軍の象徴となることでしょう。

・その3:Magazine box採用の巡洋艦ハンター
大型巡洋艦.png
 Magazine boxには秘孔がありますので、大口径砲を備えた敵の主力戦艦と戦う際には、途中まで順調に戦っていたのに突然大ダメージを食らって一気に形勢逆転されるという事態が起こり得ます。
 ですので、装甲重量を削減できることを生かして速力を増やし、巡洋艦や空母など、自分より砲戦能力に劣る敵艦を追い回し、より強力な敵からは逃げる、という艦を作ると活躍させられると思います。攻撃力を持たせて、戦艦の隊列の間から撃たせる支援役としても使えるかもしれません。ですが、敵の主力戦艦と撃ち合う時には、それなりの覚悟と腕が必要でしょう。

・その4:Nallow採用の初期戦艦
Nallowで節約した初期戦艦.png
 貧乏国家などでスタートする際に、数を揃えるのに使えると思います。Nallow無しよりも排水量で800tほど節約され、費用も2000ほど抑えられています。

・その5:Nallow採用の海防戦艦
海防戦艦.png
 防御甲板が1段低いというのなら、艦の全高そのものを抑えて、非装甲区画への被弾率そのものを下げてしまえという発想です。
 航洋力は低下するので、外洋に出て敵艦隊と艦隊決戦、という華々しい運用は難しくなりますが、十分な火力と装甲を持たせれば拠点防衛用として相応に活躍してくれるのではないでしょうか。
 オーストリア=ハンガリーなど、弱小国家でプレイする際に使えるかもしれません。

 本ページの記事は以上になります。
 皆様の参考になりましたら、幸いです。