怪文書(AK-12)

Last-modified: 2021-01-30 (土) 14:47:42
ネイト

「指揮官今日もお話しして?」
ネイトちゃんは今日も私に話をしてくれとせがんでくる
毎日私の話を聞いてくれるので私もついつい色んな話をしてあげることが多い
「ところで指揮官は戦術人形AK-12についてどう思っているの?」
突然ネイトちゃんが私に聞いてきた
ネイトちゃんが私に突然聞いてくるので少し戸惑ったがそういう日もあるのだろう、今日のネイトちゃんはAK-12のように両目を閉じていた、どうやら茶目っ気が彼女にもあったようだ
AK-12はとても頼りになるし話していて飽きないし美人だよと、本人には言わないようなことを彼女に話してみた
どれも私の本音である
「…そう、ありがとう指揮官。でもそういうのは本人に話した方が一番いいと私は思う」
ネイトちゃんはそういうと私の体に顔を突っ込みながらそう言う。
今日は珍しく甘えん坊なネイトちゃんだ、と思いながら彼女の頭をなでる
すると突然ネイトちゃんは突っ込んでいた顔を私の体から離して、その場を後にした
結局雑談だけで終わってしまった。いったいどうしたのだろう
数分して私の部屋にAN-94が深刻そうな顔をしながら私に言った
「AK-12が…AK-12が枕に顔をうずめながらバタバタしているんだ!きっと何か異常なことが彼女に起こっている!」

貴方の子よ

「貴方の子よ、責任取ってくれない?」
AK-12のメンタルがバグったのかSix12を連れながら突然そう言いだした
「私は君とそういう関係ではないしそういう行為をした覚えはないしそもそも君は人形だ」
「ひどいわ…私とは遊びだったってわけなの?」
AK-12はそういいながら両手で顔を覆いながらすすり泣くような声で喋るが手の隙間から彼女の口がにやけていたのを見逃さなかった
Six12はどうしたらいいかわからないのか、私とAK-12を交互に顔を見てくる
「もういいかな私は仕事があるんだ」
私はそう言い彼女たちを外に出そうとしようとする直前、Six12はこう言った。
「お…おとう、さん…?」
瞬間私の心臓はあまりの衝撃に停止した

許して

「許して…お願いなんでもするから」
「いいやダメだ、絶対に罰は受けてもらう」
偶々指揮官の部屋の前を通りかかったAN-94はこのような不穏な会話を聞いてしまう
この声はAK-12と指揮官!?一体中で何が起きているのだろう…
そう思うAN-94をよそに二人の会話は続いていく
「どうしてこんなことを…」
「悪いのは君だろAK-12。これは君への罰なんだよ、反省するまで続けるからね…」
今にも泣きそうなAK-12の声に思わずAN-94は中に飛び込む
「一体何をしているんだ!」
AN-94が勢いよく中に入ると、そこには椅子に縛られているAK-12と彼女の前で見せびらかすようにプリンを食べる指揮官の姿があった
「一体…何をして…」状況が理解できないAN-94の声は徐々に小さくなっていく
「ひどいのよAN-94、私指揮官にこんな辱めを受けて…縛られてる私の目の前で私のプリンを…」
「君が勝手に私のおやつを食べるからいけないんだよ、私言ったよね勝手に私の物を食べないでって」
縛られたまま涙を流すAK-12をよそに、指揮官はじっくりと味わってプリンを食べている
「ひどいわ、私の大切なプリン…大切に取っておいたのに」AK-12の目から更にボロボロと涙が溢れ出すと、流石の指揮官も慌てだした
「うっ…わ、悪かったよAK-12…私もちょっと大人げなかった…」
その様子を見てどうやら自分は邪魔をしたようだと理解し、ゆっくり部屋から出ていく
指揮官はわかっていなかったようだがAN-94にはわかっていたのだ
彼女の涙はすべて演技で、ただ指揮官をからかって遊んでるだけだというのを…

指輪を外すということ

指揮官と誓約してから30分、AK-12は指揮官から貰った指輪を外して基地を歩いていた
別に指揮官が嫌いなわけでもなく飽きたわけでもなかったが、単純に興味があったのだ
自身と誓約した指揮官がどういう反応をするのかを
怒った表情を見るのだろうか、それとも悲しむのだろうか?
どういう表情をするのかを想像するだけでAK-12は期待で胸を弾ませた
そんなことを考えているうちに、指揮官が自身に近づいてくる気配を感じたAK-12は先に話しかける
「見なくてもわかるわ、指揮官よね?」
「ここにいたのか、いや探したよAK-12。悪いけどさっきの指輪返してくれない?」
指揮官の突然の言葉に固まるAK-12
何を言っているんだろうか指揮官は。返せ?何を?
「ごめんなさい、何を言ってるのかよくわからなかったわ。何を返せって?」
「ああごめん聞こえなかったかな?さっき渡した指輪を返して欲しいんだけど」
聞き間違えを期待していたAK-12は、今度こそはっきりと指輪を返せという言葉を聞き取り混乱した
「…なんで指輪を返す必要があるの?」
「いや、私が無神経で申し訳なかった。本当は君指輪をいやいや受け取ってたんだろう?UMP45から聞いたよ」
話を聞くとどうやらUMP45が誓約したのに私が指輪を外していたのを見ていたらしくそれを指揮官に話したようだ、それも話を誇張して
「すまなかったAK-12、もうこういったことはしないようにするよ。さ、指輪を返してくれ」
AK-12は懐に仕舞っていた指輪を無言で指揮官に渡すと、何も言わずにその場を立ち去った
AK-12は自身の行動を後悔しながら落ち込み、隠れて様子を見ていたUMP45はほくそ笑んでいた

ねぇ父さん

「ねぇ父さん、私おやつにプリンが食べたいわ」
「…は?」
突然AK-12がおかしなことを言いだしたのでメンタルに異常でもあったかと聞いたが特にそういうわけではなく何時もの彼女の思い付きでの行動だった
「と言うわけで父さんプリン食べさせて?」
「私はこんな大きな娘は持った覚えはないんだがな…」
だがAK-12のように美しい娘をいると思うと少し悪くない気分になってくる
仕方ない遊びに付き合ってやろう決して私がチョロいわけではない
「しょうがない娘だな、ほらプリンだぞ」
「ありがとう父さん、父さんのそういうところ大好きよ」
プリンを取り出し机の前に置くが何故かAK-12は動かない
「どうした食べないのか?」
「父さんに食べさせて欲しいのよ、ほらあーんってさせて?」
そういうとAK-12は口を開けたまままるで餌を待つひな鳥のように待機する
「流石にそれは…」
「ほら、あーん」
「いや…」
「あーん」
こうなると彼女は私が食べさせるまで動かないだろう
意を決して私はプリンをすくい、彼女の口へ運んだ
「んっ…ふふっ父さんに食べさせてもらうのもいいものね」
「…勘弁してくれ」

ケーキを食べましょう

「今日はな…久々の休暇だったんだよ」
「ええ」
「二週間も前から予定をワクワクしながら決めてたんだ」
「それはそれは」
「昨日だって興奮して少し寝付けなかったくらいだ」
「結構かわいらしいとこあるのね」
「…そしてこの店に入った瞬間に君を見つけた時どう思ったかわかるか?」
「神に感謝した?」
「神を呪ったんだよ!私がいったい何をしたのかって!」
「まあ…あんまり胸を張って言えるようなことはしていないわね、あと飲食店で騒ぐのはマナー違反よ指揮官」
「その原因の君がそれを言うのかいAK-12…!?」

今私とAK-12がいるのはグリフィンの基地から離れた市街地にあるケーキバイキングの店だ。
最近雑誌やテレビでも度々取り上げられている人気店であり、一部の人形達の間でも話題になっていた。
たまの休みくらい好物の甘味を目一杯楽しもうと考えていたのだが…

「店員から『お連れ様は既に向こうのテーブルでお待ちいただいております』って言われた時は耳を疑ったよ…お一人様で予約したはずなのにさ…」
「不思議なこともあるものね?」
「何をすっとぼけて…もういい、ケーキを取りに行くぞ」
「私の分はショートケーキでお願いするわ」
「自分で取りに行け!」

席を離れた私に向かってAK-12が手を振っている。
どうやら本当に自分で取りに行く気はないらしい。
しばらくして私はいくつかのプチケーキを取ってテーブルに戻ってきた。

「ほら、ご希望のショートケーキだ」
「えっ本当に取ってきてくれたの?」
「自分から頼んでおいてなんで驚いてるんだよ!?」
「ふふ…冗談よ。指揮官のそういうところ、私は好きよ?」
「…煽てももうケーキは取ってきてやらんぞ」
「あら、残念」

少し舌を出してわざとらしくガッカリしたポーズを取るAK-12は悔しいくらい可愛いかった。

「それにしても凄い繁盛しているお店ね…辺り一面人間だらけだわ」
「メインのデザートが美味しいし、なんでもデートスポットとしても人気らしいぞ」
「へぇ…デートスポット…。ねぇ指揮「却下だ」…まだ何も言っていないわよ」
「どうせ碌なことじゃないだろ」
「失礼ね、ちょっとお互いをハニーとダーリンって呼び合ってケーキをあ~んしましょうって提案しようとしただけなのに」
「やっぱり碌なことじゃない…」
「せっかくの美少女からの提案を勿体ないわね」
「普通自分で自分を美少女って言うか?」
「事実でしょう?」

AK-12はあっけらかんと言い放つ。その顔はいつも通りの自信あり気な表情であった。
私の心の中でその顔を崩してやりたいという欲望の炎がメラメラと燃え上がり出す。

「…いいだろう、乗ってやる」
「えっ?」

私はプチショートケーキをフォークで掬い、AK-12へ差し出す。

「ほらハニー、あ~ん」
「ちょ、ちょっと指揮官」
「ダーリンだろ?ほら…あ~ん」

珍しく狼狽した様子のAK-12を見て私は溜飲が下がる思いであった。
…慌てた様子の彼女も可愛いと思ったのは内緒だ。
しかしAK-12は何かに気づくと急に笑いを我慢し始めた。

「…なんだよ」
「フ、フフッ!ダーリン、あなた顔が真っ赤よ…ッ…!」
「…うるさい」
「ハハハ!もう無理耐えられない!本当にかわいい人ね!…ッフー…!」

AK-12は笑い涙を拭いながら深呼吸をする。
私は羞恥でどうにかなりそうだった。

「あー…笑った笑った…。っと、それじゃあショートケーキはいただくわね」

AK-12がようやく差し出されたケーキへ口を近づける。

「はむっ…うん、とても美味しいわ。来た甲斐があったわね…それじゃあ次は私の番ね、ダーリン💛」
「もう好きにしろ…」

その後口に突っ込まれたチョコレートケーキを私はまるで味わえなかった。