怪文書(バレンタイン)

Last-modified: 2019-03-02 (土) 17:33:15
バレンタイン
びーふり

「指揮官?知ってた?明日はバレンタインデーなんですって!」
びーふりが後ろに何かを隠しながら声をかけてくる。彼女は期待を隠せないそわそわとした所作でウロウロと周囲を回る。
「えっ指揮官今アタシからのチョコが欲しいって言った?ごめんなさいよく聞こえなかったの!」
うん、何も言ってない…というかバレンタインは明日だよな…?思わずカレンダーを確認すると。びーふりは何を勘違いしたのかニマニマと笑い出す。
「指揮官指揮官恥ずかしがらなくたっていいのよ?アタシ指揮官が何を考えているかなんとなくわかるんだから。でも指揮官の気持ち、アタシははっきりと聞きたいな…ねえ…指揮官アタシに正直に言ってみて?」
そうか…なら遠慮なく。
ゆらゆらと揺れるびーふりの方を掴んでキスし、好きだと目を真っすぐに捉えて言う。
「ふわ…へ…あ…アタシも…す…きゅぅ~」
びーふりは目をまわして倒れた。手からはかわいらしくラッピングされたハート形の包みが零れ落ちたのだった。

UMP45

「全くバレンタインだからって浮かれすぎよね?指揮かーん」
45が不機嫌そうに髪をくるくるといじりながら机の上におかさったチョコを見て嘆息する。しかしなこれは義理チョコなんだ。一人でもチョコをもって身体にまでリボンを巻いてプレゼントは私!なんてやってくれる子がいたら話は別だがな。あーあ彼女欲しい…
「鈍感は立ったまま死ね…クソ…」
何か言った?
「んーん!何も♪」
コトンと机にマグカップ。45が珈琲を淹れてくれたのだ。
「甘いものには苦めのコーヒー、でしょ?」
なるほどこれは苦い。エスプレッソもかくやと言うほどだ。やっぱりなんか怒ってるよな?いくらなんでも苦すぎるぞこれ……
「にがーいコーヒーには甘いもの、だよねしきかぁん?」
熱々の泥水を飲んだ口内にひんやりとあまいものがねじ込まれる。
ちゅぷっと音を立てて離れた45の唇から舌が覗く。その舌には舐めとかされたチョコがのっていた。
「バレンタインプレゼントはわ・た・し…だっけ?しきかーん♪」

AR-15

『誰かのために何か行動をする』
エリートとして製造された私は、私のためにこそ誰もが動くものだと信じて疑っていなかった。その結果はご存じのことでしょうけど、それが悪いことだとは思っていない。たとえば、今この刻んだチョコレートを湯煎しているのにだって、私なりの少しこずるい目的と、彼を喜ばせたいと言う気持ちが同じ方向を向いているから。甘い匂いが鼻について、立ち上る湯気が思考をぼんやりとさせる。このチョコが完成した時に、どう渡そうか、渡したら指揮官はどんな表情をするだろうか。それを見たM4達がどういう反応をするのか。そんなことを考えていると頬が緩んでしまう。私は、弱くなってしまったのだろうか?なんて考えるまでもなくて、私は私の友達と、友達とは少しだけ違う指揮官のことを、悪くないと思っている。悪くない、だけでは少し表現に違いがあるけど、素直に認めてしまうのは何か癪で、だから私は涼しい顔で明日チョコを渡すだけでいい。指揮官には大きなハート。M4達には一口サイズのいろんなチョコを…駆け引きなんて、友達同士でしていいのは恋煩いとゲームだけだから、ね。
明日はバレンタインデー。指揮官の喜ぶ顔が目に浮かんだ。

416

「お菓子?」
フムムと首をひねる416。お菓子って自分で作るものなんですかとにべもなく言う。バレンタインは期待できなさそうだ。
「お菓子なんて買うか奪うかするものだから…でも、誰かが作らないとない…そういうものなんだよね…?」
416は不思議なことをつぶやき、考え事をしながら部屋に戻った。

 

翌日。

 

「指揮官、これ」
416が皿に乗ったものを見せてくる。この甘い香り…まぎれもなくこれは……
ふかした芋だね。食べやすいように四つ切りにしてある。そのままいただくと、ホクホクとした芋は甘みがあっておいしい。
「私は昔これを食べるのが好きだった。今は甘いものがあるし、ふかさなくてもよくて簡単だから携行食やお菓子ばかりだけど。だから、作ったのは久しぶり…思えば人に食べさせるのは指揮官が初めて」
思いもがけずに素敵なバレンタインプレゼントをもらってしまった。ありがとうと416のベレー帽の上から頭をわしわしと撫でると、俺は机の中から塩辛を取り出したのだった。

RO

「指揮官…本当にこれがバレンタインの作法なのですか…?」
ニットのセーターを脱ぎ、YシャツをはだけたROにチョコを塗りたくりながら、指揮官はそうだよと答える。フロントホックがはずされた下着の隙間からは健康的な美しい肌が見えており、チョコを塗りたくってはしゃぶり、ねぶられ唾液でてらてらと輝いている。
「でも指揮官…あの、さすがにこれは恥ずかしすぎると言いますか…」
スカートはめくりあげられ腰で止められており、下着を隠すことすら出来ていない。半端に開かれた分裸より恥ずかしい格好に、ROは耳まで赤くして抗議するも、指揮官の望みとあって、断りきれずにずるずると身体を許してしまっている。
丹念に乳首をなめころがし、つんと勃起した先端を更に吸う。はしたない声が漏れでて太ももを子擦り合わせて耐えようとすると今度は濡れた下着からも嫌らしい音が響く。身体中チョコで味付けされ、舐められるROは捕食者の目の前にぶら下げられた餌も同然だった。指揮官はROの顔にチューブチョコを近づけると、彼女は舌を出す。反射のような動きだったが、舌にチョコをのせられ舌を吸われる。
(そうか、吸って欲しいところにチョコを塗ってもらえばいいんだ…)
ROは絆され、思考は支離滅裂になっていた。

 
P7_冷え症打ち上げパーティー
 

2月22日0時00分、最後の紅包収集任務から帰投した人形達は、整備のため装備を預け、大きく伸びをした。
低体温症作戦も無事終了し、明日からはまたいつもの日常に戻るのだろう。
人形達も度重なる戦闘で疲弊しているはずであったが、その顔は皆一様に明るかった。
というのも、この後には作戦完全攻略を祝した祝勝会…と言う名の馬鹿騒ぎの場が用意されているのだ。

 

HPが高いと言うだけでジュピター破壊の先陣を切らされたエルフェルト、ストーリーの整合性を一切無視してアーキテクトに銃弾の雨を浴びせたAR小隊フルメンバー、
紅包集めで編成されF陣形の端に置かれ装甲兵の攻撃を顔面で受け続けたSVD、そして別に勝った訳でもないのに当たり前のように参加するつもりのアーキテクト…

 

みな期間中は大変な思いもしただろうが、今日くらいは飲んで食って忘れてほしいものだ。まあ明後日にはIOPに根こそぎむしられる予定なのであまり大盤振る舞いはできないが…
銃があると120%会場は大惨事になるだろう。会場は銃火器およびクラッカー以外の火薬を禁止とし、警備を持ち回りで担当させることにした。
取っ組み合いで喧嘩はするかもしれんが、まあ銃がなければそこまで大きな被害にはならないだろう。

 

そこまで考えていたところで、手元の残務処理にも終りが見えてきていた。
実を言うと、私も少しワクワクしている。パーティーと聞いて心躍らないものなど、おそらくこの世にはいないだろう。
仕事を引き出しに押し込め、重しのようなコートを脱いだ私は、軽い足取りで会場となる宿舎に向かった。

 
 

…おっ!次の出し物は私ね!イエーイ!皆さんこんにちわP7でーす!
今回私が披露するのはこちら!わくわく実験工作ターイム!パチパチパチ
まず用意するのはこちら使い捨てカイロ!中身はより高温に発熱する生石灰とすり替えておいたのさ!
そしてこちらはSGの皆に持ってきてもらった防弾ベスト!中身はより融点の低い特殊合金になってるよ!
そして極めつけはこれ!グリフィンの司令部模型!裏返すと…ジャーン!精密に作られた金型になってるの!
水と混ぜた生石灰でベストの合金を溶かして金型に流し込んで…冷えたパーツを組み立てて…最後にこの万年筆のキャップの頭を外して組み込めば…完成!
銃火器禁止の会場になんと!お手軽ハンドガンが颯爽登場!弾薬はこのパチンコ玉と、クラッカーに仕込んだブラックパウダーを銃口から詰めてね!
そして皆さん!手元の包みを開けてみて!
なんと!予め全員分の銃を作っておいたの!偉いでしょ!
そしてこの会場に、生きたウサギをいっぱい放したわ!もう皆分かるわよね!

 

第二次ウサギの巣作戦!開幕よ!

 

後日、修理ドックに並ぶ人形達の長蛇の列と膨大な修理費を目の当たりにし、指揮官の精神は崩壊した。