怪文書(実家に挨拶)

Last-modified: 2019-08-14 (水) 00:18:22

AR-15(後日談から)
「ちゃあんとすたーちゃんつれてきたかい!?愛想つかされてないだろうね!!あ!!すたーちゃん!!おとうさん!?すたーちゃんきたよ!!」
指揮官の母親は玄関先で出迎えるやいなやダカダカと階段を駆け上がり父親を呼びに行く。
年齢を感じさせない素早い動きにAR-15は目をぱちくりとしていた。

 

「転んだら危ないからもう少し落ち着いて欲しいんだけどな…」

 

「あの、私お邪魔ではありませんか…?この前大失敗してしまったので…」

 

だから何度も言うように大成功だったと彼女をなだめながら二人分に増えた足音が戻ってくる。

 

「おーすたーちゃん!!倅が世話になってますなあ!!どうですか!!俺に似て粗忽者だから迷惑かけとらんか!!」

 

「暑かったでしょう水羊羹食べられる?スイカも用意したからね!!あとそうめんもようさんあるから好きなもの選んで…あっ今日は夏祭りなんだよ私の昔着てた浴衣でも!!」

 

想定以上の熱烈歓迎っぷりにAR-15は目を回すのだった。
騒々しい両親を茶の間に押し込んでいると、彼女が裾を引く。

 

「なんだか、その、こういうのいいですね」

 

AR-15は花咲ような笑顔でそう言うのだった。

 
 
 

416

 

「よんいちろくちゃん?変わった名前なのね?」

 

こら母さんと父親に窘められあらいけないと下を出して茶目っ気を出した指揮官の母親は矢継ぎ早に416に質問をする。
普通でいいよといったにも関わらず416は猫かぶりをやめる様子はなくなんというかいいとこのお嬢さんといった雰囲気を保ち続ける。
しかしそこは416なのでしまいには少しずつぼろが出始めていた。

 

「いえ美人だなんてそんな…指揮官にはいつもお世話になっていて…あ、はい…完ぺ…努力をしていますので…」

 

あんまり質問攻めにしたら疲れちゃうだろうと指揮官がやんわりと仲裁し、少し散歩に出ることにした。

 

「指揮官のお母様はよくしゃべられるのですね…」

 

げんなりとした416が明らかに疲れた顔でため息をつく。
まぁあんなでもなまくらじゃないからなんとか猫を剥がそうとしたんだろ、というと完璧なお嫁さんの方が嬉しいでしょう?と当然のように言う416違うそうじゃなくて、と説得するには骨が折れたが、戻って食卓に用意されたおびただしい酒の量に、指揮官は自身の見積もりの甘さを呪うのだった。

 
 
 

KSG

 

「ところで極秘任務とは何なのでしょうか?」

 

私服で来るよう伝えていたのに常在戦場な構えのKSGはいつもの黒い外套にシューティンググラスという出で立ちだった。指揮官は彼女に実家に行って親に紹介したいと伝えると、目に見えて挙動不審になった。

 

「指揮官!?私を試すようなことはおやめください!!」

 

うん。いやまさかね、本当に私服オーケーの面接にガチガチのスーツで来るような感じになるとは思わなかったんだ。
それにもう親には連絡済みだし諦めて欲しいと言うと彼女はがっくりと肩を落とす。まぁKSGは真面目で可愛らしくて素敵な女性だから問題ないだろう、と結局うだうだとしつつも実家にはいるのだった。

 

ところが。

 

「指揮官とお付き合いをさせていただいているKSGです。以後お見知りおきを」

 

ちょっとちょっとと廊下にひきずられる指揮官。

 

「ちょっとあんた!聞いてた子とずいぶん違うよ!?本当に本人なのかい??」

 

うn…そうなんだけど、見た目の印象から大分誤解を与えてしまっているようだった。

 

「あ、あの…私何か……」

 

「KSG。部屋のなかで上着と眼鏡は外しておきなさい」

 

あ、これは失礼しましたとシューティンググラスを外し、上着を脱ぐ。それを受け取ってかけると、初対面相手とはじめての場所というのもあって途端に落ち着かない様子になる。

 

「あ、あの、ご無礼をお詫びします…緊張してしまって…すみません」

 

その破壊力足るや、慣れた指揮官ですらくらくらした。陶磁器のように白い肌、美しい白い髪にくりくりとした目。
白い清楚な、それでいて活動的なワンピース。指揮官の親の第一印象を破壊するのには充分すぎるほどのインパクトだった。
親しみやすさを覚えあっという間に馴染んでいくKSG。
親に質問を浴びるKSGはほっとしたのか、自然な表情で微笑んでいてついその横顔に見とれてしまうのだった。