17章
イライラ低い音
■日本語版 17章 p.426
スネイプは、薄暗がりの中で、「信じるものか」とばかり、イライラ低い音を立てた。
■UK版 p.242
Snape made a soft noise of impatient disbelief in the shadows.
■試訳
(?)暗がりに立っているスネイプが苛立ちと不信をこめて小さく鼻を鳴らした。
■備考
- イライラ低い音を立てたというのはどう言う意味か?
何を使ってどの様な音を立てたのかの説明が一切無い。
とりあえず今の所、下記3つの意見が出ている。
- 不信と苛立ちを表すフンみたいな小声
- 欧米人がイライラした時にやる鼻を鳴らす音
- 英国人はそう言う時に「ハァーっ!」と大きめに息を吐いて(吸って)わざと顔を逸らしたり、
周りの人達に同意を求める様な感じで辺りを見回したり、モゾモゾしたりする事がある。
だろうがなんだろうが
■日本語版 17章 p.444
作り笑いだろうがなんだろうが、ロンの顔にはもう笑いのひとかけらもない。
■UK版 p.252
(前略)and there was no trace of a grin, forced or otherwise, on his face now.
■試訳
ロンはにこりともしなかった。もはやその顔には作り笑いさえ浮かべていない。
■備考
- 「××だろうがなんだろうが」と来れば、「知ったことじゃない」「だめなものはダメだ」の様に続けるのが普通。
邦訳は日本語の文としてあまりにも不自然。
18章
千切り
■日本語版 18章 p.464
あまりの理不尽さに、ハリーはスネイプに呪いをかけて、ベトベトの千切りにしてやりたかった。
■UK版 p.263
The injustice of it made him want to curse Snape into a thousand slimy pieces.
■備考
- a thousand slimy piecesは「千切り(細く切る)にしたい」では無く、スネイプの油っぽいと言う表現に
引っ掛けて「1000個のヌルヌル(スライム)した物体にしてやりたい」みたいな感じ?
それなら千切りじゃなくて油っぽい物に分割する表現にすべきでは?
「ハリーはスネイプにコールタールになる呪いをかけて、ぶちまけてやりたいと思った」とか。廃油とかなるべく汚そうな…
自動速記羽根ペンQQQ
■日本語版 18章 p.470
自動速記羽根ペンQQQ
■UK版 p.266
Quick-Quotes Quill
■試訳
自動速記羽根ペン
■備考
- 「QQQ」はさりげない補足のつもりで付け加えたと思われるが
注釈は当然ないため、原書を読まないとなぜ「QQQ」が付いているのか分からない。
- なお、似たような固有名詞としてAuto-Answer Quillがあるが、
そちらは「自動解答羽根ペン」と普通に訳されている。
目に涙
■日本語版 18章 p.474
「僕、目に涙なんかない!」
■UK版 p.269
"I have NOT got tears in my eyes!"
■試訳
- 「涙なんかあふれてません!」
- 「僕は泣いてません!」
■備考
- あまりにも直訳。
前の文でQQQが「~涙が溢れた。」と勝手に書いているので「涙なんかあふれてません!」とか
「僕は泣いてません!」とかもっと自然なしっかりした口調で否定させたら良いのにと思いました。
19章
胸キュン
■日本語版 19章 p.489(※原文は改行無し)
ハーマイオニーがウォンキー・フェイントと言うのを聞いたら、
ロンがどんな顔をするかと思うと、また胸がキュンと痛んだのだ。
■UK版 p.278(※原文は改行無し)
it caused him another pang to imagine Ron's expression
if he could have heard Hermione talking about Wonky Faints.
■備考
- ハリー→ロンの感情の表現。
色んな意味でラブコメ禁止。
営巣中
■日本語版 19章 p.506
営巣中の母親ドラゴンがほしいという注文だった。
■UK版 p.288
They wanted nesting mothers,
■試訳
- 卵を抱いているドラゴン
- 就巣中の母親ドラゴン
■備考
- 第一課題の為に連れて来られたドラゴンは営巣中(巣作り中)じゃなくて就巣中(卵温め中)。
- 英語だと営巣中も就巣中もnestingだから訳者が間違えたんだろう。
もちろん児童書の普通の会話でこんな難しい言葉を使う事自体ナンセンス。
「卵を抱いているドラゴン」で良いと思う。 - nesting motherなら「卵を抱いてる母(鳥)」って感じだけど
nestingには「営巣」という訳語を出してる辞書が有るから、
よく分からないけどこれで良いやって感じで採用したのだろう。
児童書の会話に相応しくない難語という時点でダメだが、更に使い方を間違えてる。
生首
■日本語版 19章 p.510
シリウスの生首が炎の中に座っていた。
■UK版 p.290
Sirius' head was sitting in the fire.
■試訳
炎の中にシリウスの頭があった。
■備考
- 「生首」は「切って間もない生々しい首」と大辞泉にあった。
シリウスの首を切り落としちゃいかんな… - 生首、原書ではただのheadです。
- 首が座ってたもおかしいよね。
ごく基本的な意味範囲の広い単語でも英和辞書の最初に載ってる訳語で通そうとするんだな。
20章
ビジネス魔ン&即席頭の皮はぎ
■日本語版 20章 p.522
『忙しいビジネス魔ンのための簡単な呪文――即席頭の皮はぎ』
■UK版 p.296
Basic Hexes for the Busy and Vexed: instant scalping
■試訳
『忙しくて困っている魔法使いのための簡単な呪文集』の『即無毛』
■備考
- 原文にはBusiness要素も~wizardも無いのに「ビジネス魔ン」を入れた理由が知りたい。
- 次いでにVexedの訳も抜けている。
- 更にinstant scalpingの部分が直訳になっている上に、何故か本の題名の一部になっている。
ピーチクパーチク
■日本語版 20章 p.522
「あの人のファンクラブがすぐ来るわ。ピーチクパーチクって……」
■UK版 p.296
‘his fan club'll be here in a moment, twittering away...’
■試訳
「すぐにあの人のファンクラブがやってくるわ。ぺちゃくちゃうるさくなるから……」
■備考
- クラムが図書室に来たから、ファンクラブが来て騒ぐ前に談話室に帰りましょうと
ハーマイオニーがハリーに促すシーン。
- twittering awayはさえずり続ける、しゃべり続けるの意。
小鳥がチッチッと囀る様な喋り方のイメージがあるので、ピーチクパーチク程は煩くない感じ。 - またピーチクパーチクはかつては鳥のさえずりやうるさいお喋りを意味する言葉として使われたが
(熊本県の有名な民謡「おてもやん」の一節にも「ピーチクパーチク ひばりの子」とある。) 、
今時の若い女の子が使う事は殆ど無いので、ハーマイオニーの台詞としては違和感がある。
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- 文学作品に俗語はあまり使ってほしくない -- 2022-06-01 (水) 16:44:04
- 著作権切れてだれでも自由に訳せる作品ならまぁ許せるってレベル -- 2023-12-03 (日) 20:52:29
- ビジネス魔ンださすぎ・・・ -- 2022-10-25 (火) 11:38:26
- 即席頭の皮はぎもダサいし生々しすぎる -- 2022-12-18 (日) 12:29:10
- すごく同意 -- 2023-11-24 (金) 21:20:41
- 即席頭の皮はぎもダサいし生々しすぎる -- 2022-12-18 (日) 12:29:10
- ビジネス魔ン&即席頭の皮はぎですが、多分ビジネス要素は「scalping(デイトレードの手法)」から出てきたものと思われます。後半の訳からビジネス用語が抜け落ちたので意味不明になってますが。 -- 2022-11-07 (月) 23:08:50
- 補足:scalpingは数秒~数分の売買で手早く薄く利ザヤを稼ぐトレード手法を指す言葉なので、原文は前半と後半をうまくひっかけて捻ってあるのです。訳が難しい洒落の類ですが、いくらなんでもこの訳はダサい。 -- 2022-11-07 (月) 23:11:32
- instant scalpingをビジネス用語的に訳せば「すぐにできる超短期的取引」になるので、忙しくて困っている人にお勧めの呪文というわけ。逆に魔法的に解釈して「即座にハゲにする」という意味合いになると、Vexed(困っている、イライラしている)のニュアンスがイライラに寄ってきて、多忙のあまり八つ当たりでお手軽な呪いをかける魔法使いの図になったり。 -- 2022-11-07 (月) 23:27:50
- 日本語版は意味不明になってる部分がたまにあるよな -- 2023-01-22 (日) 18:44:01
- 補足:scalpingは数秒~数分の売買で手早く薄く利ザヤを稼ぐトレード手法を指す言葉なので、原文は前半と後半をうまくひっかけて捻ってあるのです。訳が難しい洒落の類ですが、いくらなんでもこの訳はダサい。 -- 2022-11-07 (月) 23:11:32