レコード3

Last-modified: 2022-09-04 (日) 19:51:12

キャラクター

少女

  • 女子高生。派手な見た目だが悪さはしないタイプ。
  • 転送先は校舎。生意気な他校の生徒数人と合流したものの、魔物と遭遇。身代わりにされかかるが、なんとか別棟へ逃げてきた。

テオドラ

  • ゴーゴン遺跡の館主。彫像化属性は石。
 

エンカウント:テオドラ

 

「お嬢さん、目を開けてください」
「や、やめろぉ」

 

 喉を鳴らしながら、私は獲物に身体を寄せた。
 勘の良い娘だ。あえて蛇髪を晒していた私を、ゴーゴンに連なる魔物と看破したのだから。咄嗟に目をつむったまでは良い。だが、教室の中にいては、机も椅子も邪魔だろう。目を閉じたまま逃げられるはずもない。

 

「廊下にあったオブジェ、見てくれましたか。ふふ。あれを作ったの、私なんです」
「あ、んんっ」

 

 机に腰かけた少女に指を這わせる。
 汗で透けた白いシャツに爪をひっかけ、プチプチと引き裂いていく。レースをあしらった可愛らしいブラジャーも同じようにして外す。標準以上であろう真っ白な乳房がぶるりと揺れた。
 二匹の蛇を獲物の双丘に促す。何かを察したのか、少女が身を離そうと小さく暴れる。可愛らしい抵抗だ。肩を押してやると、連なった隣の机に倒れ込み、か細い悲鳴を上げる。

 

「これならどうですか?」
「ひ……っ」

 

 ぷっくりと膨れた乳輪に蛇の舌が触れ、ちろちろと舐め上げる。獲物はピクピクと悶え、熱のこもった吐息を漏らす。初心な反応だ。派手な見た目に反して処女なのだろう。自然と笑みが深まった。
 いやいやをするように、仰向けのまま獲物が両腕をゆすって抵抗する。新たな蛇を三匹、少女の股へと差し向けた。

 

「目を開けたら、最高に気持ちよくしてあげますよ」
「あっ、はあっ」

 

 獲物のスカートをたくし上げると、内股に狙いを定め、二匹の蛇を向かわせる。執拗に舌を這わせ、滲んだ汗と分泌液を舐めとってやる。
 頃合いを見て、もう一匹を差し向ける。ショーツに張り付いた割れ目を、そして屹立したクリトリスを、濡れた布越しに何度も蛇舌で刺激する。
 膣内を掻き混ぜるようなことはしない。この獲物は、処女のまま石にしたほうが面白い。

 

 十分な愛撫を終えると、獲物は息も絶え絶えといった様子で、抵抗を諦めたようだ。汗と汁の匂いから発情の度合いが知れる。しかし両瞼だけは、頑なに閉じ合わせた状態を保っていた。
 下準備はもういいだろう。獲物を見下ろしながら、私は優しく語り掛けた。

 

「最後ですから、お願いがあるなら言ってくださいね」
「……み、見逃して。代わりに、他のやつの居場所、教えるから」
「へえ」
「あ、アタシじゃなくてもいいだろ、だから……!」
「いいえ、貴方がいいんです」
「……は? な、なんで」
「だって、オブジェになった貴方を使って皆さんを誘い出すほうが、ドラマチックだと思いませんか?」
「や、やめっ、待ってよ、やだぁっ!」

 

 そういって私は、魔眼封じの眼帯を解除する。五匹の蛇が愛撫を再開。加えて、新たな蛇を二匹、獲物の頭へと伸ばしていく。
 少女は涎を垂らしてわめきながら、両腕で顔をかばおうとする。私はやんわりと腕を掴み、整った目鼻立ちが隠れないよう移動させる。
 二匹の蛇は、頭を両側から挟み込む位置へ。気配を察した少女が、身体を緊張させる。次の瞬間、蛇の長い舌先が、容赦なく獲物の耳へ潜り込んだ。

 

 股、胸、耳。性感帯の同時責め。
 少女は悲鳴にも似た喘ぎとともに、痙攣しながら、弓なりに身体を仰け反らせた。
 切れ長の瞳が大きく見開かれる。

 

「ようやく見てくれましたね」

 

 瞳が交錯する。
 私は魔眼を解き放った。

 

「ん゛あ゛あああぁあっっ!」

 

 石化が始まった。

 

 官能の濁流が視神経を介して脳へと叩きこまれると、ビキビキと乾いた音を立てながら、少女の全身が急激に強張っていく。
 焦点を失った瞳へ、紅潮しきった頬へ、涎を飛ばす唇へ、舌を晒した口腔へ、灰色のさざ波が襲う。艶めかしく乱れた茶髪が芸術的に癒着し、精緻な彫刻と化していく。
 灰色の電流が背筋を駆け抜けると、快感に粟立った上半身が、脱ぎかけの制服ごと硬化していく。首、鎖骨、肩、腕。ギュっと力んだ両手のひらが、頭の左右で永久に動きを止める。乳房が固まる瞬間、ビュッとしぶいた乳汁が卑猥な造形を付け加える。
 舌に弄ばれ尽くされた下腹部が石に飲まれる。陰唇と陰核はショーツに張り付いたまま、恥ずかしい形状を克明に彫刻される。お尻とスカートを汚す愛液の溜まりが、机から溢れた滴りを含め、ビキビキと固まっていく。
 ビクン、ビクンと二度跳ねた両脚が、中空を蹴った格好で石に塗り潰されていく。太腿、膝下、ふくらはぎが、こびりついた体液とともに動きを止める。右足には脱げかかった上履きが固着していた。左足は石のソックスだけで、足指の先がピンと伸びた状態で晒されている。

 

 絶頂の最中、快楽に打ち震える肉体が石へと変貌し尽くした。官能の大渦に飲まれた意識は二度と浮上することはない。石の牢獄に囚われた魂が、オブジェへと定義を書き換えられていく。

 

 机までもが石の台座に変わると、少女だった存在は、卑猥な石像へと成り果てた。

 

◆ ◆ ◆

 

 校舎の正面玄関に、叫び声が響き渡る。

 

 開けたスペースに、机を台座に見立てた石像が展示されている。端正な容貌は歪み、筋肉の強張り、体液を模した石の装飾が、作り物とは思えない生々しい淫靡さを醸し出している。学校という場所にはまるでふさわしくない造形。

 

 石像の周りには、制服姿の少女が三人集まっていた。
 いや、もう一人。
 異様な雰囲気を纏う黒いドレスの少女――テオドラが、三人と向かい合って佇んでいる。

 

「イ゛、イ゛ぐうぅぅぅ!」

 

 ビキビキと音を立てながら、少女の一人が石像に成り果てた。
 立ったまま両腕で股間をまさぐる自慰姿。よほど没頭していたのか、ひどく前屈みな姿勢で、表情はいやらしく弛緩しきっていた。ショーツを履いたままの股間からは、勢いよく噴出した液体の飛沫が彫刻されている。

 

「ダメぇ、イっちゃうよおぉっ」
「バカ! これじゃ、身動きが……っ!」

 

 ビキビキと音を立てながら、また一人、少女が石像に成り果てた。
 その石像は膝立ちで、隣に立つ生身の少女の腰に縋りついたまま姿だった。よく見れば、胸や股間を相方に擦り付けているのがわかる。それどころか、片手が相方のショーツの中へ差し入れられていた。さらに石の淫蜜が相方の脚をドロドロに汚し、床もろとも固定してしまっている。

 

「お嬢さん、目を開けてください」
「う、うるさい! 近寄るな、バケモノっ!」
「口が悪いですね」

 

 テオドラが、最後に残った少女へと歩み寄る。
 今やその髪はザワザワ蠢き、無数の黒蛇に姿を変えていた。

 

「わ、私にこんなことして、タダで済むとでも」
「せっかくキレイなのに、これじゃあいただけません」

 

 次の瞬間、黒蛇が一斉に身をもたげ、少女に牙を突き立てた。

 

「あ、あ゛あ゛っ、なにぃこれっ、身体があっ、疼いてえっっ」
「ああ、うるさい」

 

 テオドラが爛々と輝く赤い双眸で、少女の瞳を射貫く。
 ビキビキビキ。
 少女の全身が灰色に染まり始めた。

 

「あひっ、うあ゛、あああっっ!!」

 

 ビキビキビキ。
 意味をなさない叫び声。秒ごとに硬化する身体をギシギシと軋ませながら、狂ったように己の肉体をこね回す。脚に縋りつく石像の頭を押さえつけ、焼けるように火照った身体を慰める道具にする。
 底なしの渇望が満たされることはなかった。絶頂が弾ける直前、石化した肉体が完全に動きを止める。満たすことの叶わぬ欲求を抱えたまま、永遠に意識が固定される。
 生殺しの石像と縋りついた石像が、接触面で癒着する。不運にも、永遠に絶頂未達の状態が、二体の石像に刻み込まれていく。

 

 完成した三体の石像を、テオドラはつまらなさそうに一瞥する。
 そして机の石像へと視線を向け、呟いた。

 

「無様な末路だったでしょう。楽しんでもらえましたか?」

 

 一歩。一歩。物欲しげな様子で、机の石像へとにじり寄っていく。

 

「少々火照ってきたので……ふふ、慰めるのを手伝ってください」

 

 テオドラが石像に跨る。
 無人の校舎に、しばし、艶やかな女の嬌声が響き渡った。

 

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